年末調整を始める前に知っておきたい基礎知識です。最初に基礎用語を理解しておくと、年末調整の勉強に役立ちます。年末調整は、会社員の所得税を確定させるための事務手続きです。毎年内容が変わるので、正しい年末調整を行いましょう。
年に一度の「年末調整」
職場で「給与事務担当者」になると、毎年、「年末調整」を行わなければなりません。年に一度の事務手続きのため、わりと忘れてしまい、毎年、勉強しながら悩むことになります。
年末調整は、会社員の所得税を確定させる手続きです。ミスしてしまうと、実際に損をさせてしまうことになります。年末調整の理解不足により、計算方法を間違えてしまい、後になってから追徴する(所得税を多く払ってもらう)事態になると、トラブルになってしまいます。
組織で働く会社員は、自分で確定申告することが少ないので、年末調整でミスをしてしまうと、かなりパニックになります。トラブルにならないためにも、年末調整の正しい理解が必要です。
正しい「年末調整の勉強方法」
初めての仕事は、事前に勉強しておきたいものです。基本的なことを理解しているのと、理解していないのでは、仕事を覚えるのに大きな差になります。
年末調整は、複雑な事務手続きです。しかし幸いにも、市販の参考書籍がたくさんあります。年末調整手続きは、官公庁だけでなく民間会社でも必要な手続きです。会社員であれば、誰もが該当する手続きになります。
書店に行くと年末調整に関する書籍がたくさんあります。
しかし所得税の法律は、頻繁に改正されます。ほぼ毎年変わります。
つまり参考書籍を購入しても、すぐに内容が古くなってしまいます。1年後には、ほぼ使えないと思ってよいでしょう。もちろん基本的な考え方部分は変わりませんが、金額に影響する色々な改正があります。
そこで、私がオススメする勉強方法は次のとおりです。
お金はかけずに国税庁のテキストやサイトで勉強する。
年末調整は、国税庁が公開している次のテキストで行うのが、最も安全です。
「令和2年分 年末調整のしかた」(毎年、内容が改正されます。)
最初に読むと、何のことだか、さっぱりわからないと思います。しかし、繰り返し読んでいると、わかるようになります。
そして、不明な部分は、国税庁のサイトで調べたり、税務署へ電話で聞くのが一番良いです。特に税務署の人は、とても丁寧に教えてくれます。
国税庁のサイト「チャットボット(ふたば)に質問する」
年末調整(所得税)については、国税庁のテキスト、税務署への電話相談が、最良の勉強方法です。
国税庁 税についての相談窓口
年末調整の「基礎用語」
年末調整の正しい勉強方法は、上記のとおり、国税庁が作成している「〇〇年分 年末調整のしかた」です。繰り返し読んで理解することになります。
しかし、基礎用語が難解で、最初のうちは全く理解できないです。
少しでも早く理解できるように、基礎用語をわかりやすく解説します。
年末調整の勉強を行う前に理解しておきたいキーワードです。
「控除」の意味を知る、「〇〇控除」など
最初に、「控除」の意味を正しく理解しましょう。
年末調整で用いる「控除」は、所得税を減額するために使います。そして「控除」には、二種類の方法があります。
ひとつは、課税金額(税率をかける基礎金額)を減らすための控除です。そして、もうひとつは所得税そのものを減らすための「控除」です。
所得税を計算するためには、課税金額(税金をかける基になる金額)を算出しなければなりません。この課税金額が少なくなれば、税金も少なくなります。
課税金額 × 税率 = 所得税
「課税金額」とは、税率をかける基になる金額です。「年末調整のしかた」では、「課税給与所得金額」です。名称が長いので、この説明では「課税金額」としています。所得税法の「所得」と同じ意味です。
参考に、年末調整に限らず、一般的な所得税の計算は、次の算出方式になります。
収入 - 必要経費 = 所得(課税金額)
所得(課税金額) × 税率 = 所得税
そして「〇〇控除」というのは、国の政策によって設定された金額になります。例えば2020(令和2)年分の年末調整では、税制改正によって「ひとり親控除」が創設されました。ひとり親の税金負担を軽減するというために、35万円が「ひとり親控除」として所得(課税金額)から減額されます。
国の政策によって、所得税を減額(あるいは増額)させるため、〇〇控除が定められています。
控除金額の多くは、課税金額を減額して、税負担を少なくするものです。しかし、住宅ローン減税のように、課税金額を減らすのではなく、所得税をそのまま減らす控除金額もあります。両者の違いを確認しておきましょう。
例えば、税率10%の場合を想定します。
控除金額が20万円だとします。
課税金額300万円で、「控除なし」であれば、所得税は30万円です。
課税金額から、控除金額20万円を控除すると、280万円になります。所得税は28万円です。
一方、所得税から直接控除する方法であれば、次のようになります。
所得税30万円 - 控除金額20万円 = 所得税 10万円
つまり課税金額から控除する方法では、2万円(30-28)しか減税になりませんが、所得税から直接する控除する方法であれば、20万円(30ー10)も減税になります。
このように、控除金額ひとつとっても、ベースとなる金額がどれなのか、正確に理解しておくことが必要です。もし勘違いして10万円もミスすると、ものすごいトラブルになります。
給与所得者
会社で働く従業員、会社員のことです。
給与(サラリー)をもらい生活している人のことです。
年末調整は、基本的に会社員に対して行う「所得税を確定させる」手続きです。個人事業主などは「確定申告」で所得税を確定させます。
所得税は、憲法第30条により払う義務があります。
給与所得控除
確定申告では、収入から必要経費を除いたものが所得になります。この所得に対して税率をかけ所得税が計算されます。
収入 - 必要経費 = 所得(課税金額)
所得(課税金額) × 税率 = 所得税
(税率が10%を超えると、さらに所得税の控除額があります。)
必要経費については、次の記事でわかりやすく解説しています。

例えば、個人事業主が商品の販売をしていたとします。商品の仕入れ代金は、必要経費として収入から控除することができます。もちろん仕入れ代金を支払った領収書などの証明書類が必要です。証明書類に基づいて、明確に必要経費を算出できます。
ところが会社員の場合は、給与で生活するときに、必要経費がどれぐらいあるのか証明するのが困難です。そのため一定の金額を「必要経費」とみなして、給与収入から控除することにしています。この給与収入から必要経費を控除した金額が、給与所得控除になります。
「給与所得」あるいは「給与所得控除後の給与等の金額」が、必要経費相当額を控除した課税金額(所得)です。
基礎控除
所得金額から、一律に控除される金額です。改正後は、年間の所得金額によって基礎控除額が変わるようになりました。かなり複雑になってます。
改正前は、一律に38万円でしたが、改正後は、所得に応じて48万円から16万円と幅があります。普通の人(年間所得が2,500万円以下)は、基礎控除額48万円です。
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