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決裁文書に添付する理由書の役割、決裁を完了した後の説明責任

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官公庁における決裁手続き その他
官公庁における決裁手続き
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そもそも決裁文書には、どのような役割があるのでしょうか?

官公庁では様々な場面で決裁手続きが必要になります。むずかしい案件になると、補足説明のためにさまざまな理由書を添付します。理由書の目的や、決裁を完了した後の説明責任についての解説です。

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官公庁における決裁手続き

 

今回の解説は、当サイトで扱っている会計実務だけでなく、官公庁における一般的な決裁手続きを対象としています。特に官公庁は、国民の貴重な税金を使うために、決裁手続きが必要になる場面が多いです。

 

そもそも決裁文書には、どのような役割があるのでしょうか?

 

なぜ決裁手続きが必要になるのでしょうか?

 

官公庁における決裁手続きとは、担当者が起案文書(原議書)を作成し、上司の決裁(承認印)を受けることです。A4の起案用紙に「◯◯を実施してよろしいか伺います。」と記載し、上層部の承認印を押す決裁欄を設け、関係書類を添付して上司へ渡します。

 

定型的な文書であれば、上司の机の上に置いてある決裁箱へ入れておきます。上司は時間のあるときに書類をチェックして承認印を押し、決裁します。決裁を終えたら、さらに上の上司へ書類を渡します。重要案件になると、手持ちで説明しながら決裁を受けます。

 

決裁文書(原議書の表紙)に承認印を受けるのが決裁です。大きい組織になると、ひとりの上司が担当する決裁書類だけで毎日300件くらいあります。年休を取得した後に出勤すると、決裁箱に入りきらない未決裁の決裁文書が、机の周りにダンボール箱いっぱいに置いてあるほどです。

 

決裁を行う上司にも様々な役職クラスがあります。係長、課長補佐、課長、部長などの役職があり、内容の重要度に応じて最終決裁者を内部規則で定めています。上司から決裁権限が委任され、この決裁は課長まで、この決裁は部長までなどと決められています。

 

決裁は、これら上司の人たちの承認印を受けて、組織として公式に認めることを意味します。重要な決裁文書になると、直属の上司だけでなく、影響を受ける他の部署の人たちへ合議(あいぎ)を回すこともあります。多くの人に影響を与えるような重要な内容になると、承認印を受けるのに半年以上かかることも珍しくありません。修正意見などが入ると、内容がリセットされてしまい、最初から決裁をやり直すこともあります。

 

外部に発信する公文書であれば、決裁手続きを完了することで公印を押すことができます。公印は、決裁文書がなければ押印できません。

 

「決裁する」という意味は、組織として認めて公式なものにすることです。担当職員個人が判断したものではなく、ルールに基づいた適正な手続きを経て、組織として認めているわけです。総合的な判断として(上からも、下からも、左右からも、あらゆる角度で問題ないと判断しているわけです。)

 

役職に応じて、それぞれの上司が持っている情報が異なります。役職の高いポストほど幅広い情報を持っています。国の政策から地方自治体の政策まで、全体を見渡す視点で可否を判断できる情報を持っています。逆に役職が下がるほど細かい部分をチェックすることができます。現場の意向を把握した判断ができるのは役職の下のクラスになります。組織の中における部下と上司の決定的な違いは、情報量の範囲の違いです。幅広い情報は上司が持っています。しかし、細かい情報は部下が持っています。部下と上司が両方でチェックすることで、お互いに補完しあい、より適正な判断が可能になるわけです。上司だけが判断しても、必ず細かい部分が不足して結果的に失敗します。

 

それぞれの役職に応じて、狭く深くチェックしたり、幅広く総合的にチェックできるわけです。より深く、より広く確認することが決裁手続きには必要です。

 

決裁手続きを完了した後は、組織として責任を負うことになります。

 

官公庁は、国民生活に必要な事業を実施しています。事業を実施するために国民の税金を使っています。税金を使うためには、法令と、国会や議会で承認した予算に基づかなければなりません。これらの判断を、あらゆる角度からチェックするために決裁手続きが必要なのです。

 

また別の見方をすれば、職員個人の不正を許さない、個人の独断を許さないためにも決裁手続きが重要になっています。決裁手続きを厳格に行う組織では、不正は起こりません。

 

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法令に当てはまるのか疑義があるとき

 

決裁書類を作成している途中で、内容に疑問を持ってしまうこともあります。法令に抵触しないだろうか、予算の目的に合っているのだろうか、ほんとに国民に役立つのかなど、ふと素朴な疑問を持ってしまうことがあるのです。

 

何かを行うために決裁手続きを必要とします。決裁を完了すれば、組織として正式に認めたことになります。自分で自信を持って進められるときには、決裁書類について質問を受けても、すぐに明確に答えることができます。上司の立場からしても、「確認のために質問する」場合と、「内容に疑義を持ち、不安があり本当に大丈夫なのか」と質問する場合があります。 担当者が、自身を持って速やかに答えられるようであれば、「十分に細かい検討をしている」と判断し、安心して承認します。

 

つまり決裁は、担当者や部下が「自信を持って説明できるか」で判断することが多いのです。 「自信がある」ということは、細部まで十分に検討してあることを意味します。

 

しかし稀なケースですが、他の部署からの申し入れや要望などがあり、決裁文書を起案する際に、起案担当者が自信を持てないことがあります。内容に疑義があったり、他の部署からの申し入れに対して、完全に納得できない場合などです。起案担当者が十分に納得できない場合には、申し入れや要望する人から、理由書を提出してもらい、決裁文書へ添付して上司の判断に委ねることになります。

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決裁文書に必要な「理由書」の役割

 

決裁文書に添付する理由書には、いくつかの種類があります。経緯や背景を詳しく説明する場合、法令や予算の目的に合致していると判断した理由や経緯を記録として残す場合などです。

 

多くの場合、決裁文書の中で理由書を必要とするのは「細かい説明を聞かないと、書類を見ただけでは判断ができない場合」です。理想的な決裁文書は、理由書がなくても、添付されている書類を見ただけで判断できるものです。

 

ときどき勘違いしている人がいるのですが、決裁を完了したとしても、決裁者が全責任を負うわけではないという点です。決裁を終えた後、責任は組織が負うものであり、説明責任は関係者全員が負うものです。決裁者へ責任を押し付ける(責任逃れをする)ような内容であれば、そもそも上司は決裁しません。そんな無責任な内容であれば、怖くて決裁できません。

 

決裁文書を判断するときには、それぞれの立場で、役職に応じて異なる視点から判断します。決裁を行う人全員が、内容をすべて把握して確認しているわけではありません。役職が上になるほど毎日多数の決裁を行っています。物理的にも部分的にしか確認できません。疑問に感じた部分は担当者へ確認しますが、担当者が明快に答えられる状況であれば、その時点で担当者を信頼して承認することがほとんどです。決裁文書の多くは信頼に基づいて承認しています。そして信頼というのは、責任を負うということ、つまり「説明を十分に行える状況である」ことです。

 

特に理由書を添付するような決裁書類では、理由書を書いた本人が説明責任を負うという前提で決裁をします。ここが重要なのですが、理由書を提出したからといって、その理由書を正当なものとして扱うという意味ではありません。理由書を書いた本人が責任を持てる、本人がいつでも説明できる、と判断して承認するわけです。決裁文書に添付する理由書を提出した人は、常に説明責任があるわけです。

 

なぜこのような、ややこしいことを解説するかというと、決裁文書へ理由書を添付していた場合に問題になることがあるのです。

 

決裁を完了した後に、会計検査や外部の検査などで疑義を持たれ指摘があった場合です。理由書を提出した本人から説明を聞こうとしたときに、次のような応対をする人がいるのです。

 

「私が理由書を書きましたが、その理由書は決裁によって認めてもらったわけです。決裁を完了しているのですから、理由については決裁をした人に聞いてください。私はどのような判断で承認したのかは知りません。私に聞かれてもわかりません。」

 

理由書は提出したけれども、自分は決裁者ではなく、判断していないのでわからない、という無責任な態度です。

 

決裁文書を承認するときに理由書が添付されている場合、決裁する方としては、「理由書を提出した人が説明責任を負う」という前提で承認しています。そのために理由書を提出してもらっているわけです。外部から指摘されたときに「説明しない」という無責任な態度がわかっているのであれば、最初から決裁を否決していたでしょう。

 

このような事態が起きるのは、次のような勘違いが原因です。

 

「理由書を提出して決裁を完了したのであれば、説明責任は決裁者が持つべき」という誤解です。決裁者としては、理由書を提出した本人が説明責任を果たさないのであれば、そもそも決裁を止めていたはずです。

 

最終的に誰が責任を持って説明するのか、責任は誰にあるのかを正しく理解することが必要です。

 

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決裁文書の責任は誰が負うのか

 

決裁文書が問題になるような場面は、外部から指摘を受けたときです。会計検査院による実地検査や内部監査、外部監査などで疑義を指摘された場合です。

 

外部の人が疑問を持ち、「なぜそのような判断になったのか理由を聞きたい」という場面です。

 

通常、決裁文書について外部に対して説明する際には、決裁印を押印した関係者が説明します。決裁印を押印した上司が説明することもありますが、多くの場合は起案者である担当者が説明します。なぜなら起案担当者が、一番細かい部分まで把握しているからです。担当者が細かい部分を説明し、上司が補足説明するというのが一般的です。

 

さらに決裁文書の中に、特定の人が作成した理由書があれば、その人が説明することになります。理由書が添付されていて、その理由書について疑義があるのであれば、当然ながら理由書を書いた人から説明を求めることになります。なぜそのような理由書を提出したのかは、理由書を書いた本人にしかわかりません。

 

つまり決裁文書は、特定の人だけが説明責任を負うものではなく、関係者全員が対応すべきものなのです。理由書を提出して決裁を完了したのだから、「その後は知らない」という無責任な態度は、官公庁では許されません。

 

そもそも責任を持てない内容のものは、官公庁として決裁を否決すべきものです。国民の貴重な税金を使っている以上、説明できないことを認めるわけにはいかないのです。

 

では決裁文書の最終決裁者には、どのような責任があるのでしょうか?

 

決裁者の責任が問題になるのは、懲戒処分に該当するような大きな事件の場合だけです。法令違反や、国民に対して損害を与えた場合など、責任者を罰するときに決裁者の責任が発生します。責任の度合いによって処分は変わります。軽い処分であれば最終決裁者だけが責任を負うこともあります。重大な処分であれば決裁者全員が責任を負うことになります。決裁者に責任が発生するのは、重大なトラブルが生じ処罰の対象となるときです。

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決裁文書に添付する理由書に必須の内容

 

決裁文書に添付する理由書には、次の内容を記載して提出してもらうと安心です。理由書の最後に次の文面を付け加えてもらいます。

 

「なお、上記の内容についてくわしい説明を求められた場合は、私が対応します。」

 

決裁文書の可否を判断するために必要な理由書には、誰が説明責任を負うのか明確にしておくことが大切です。理由書を提出しただけで、後は知らないという無責任な態度を認めてはいけません。官公庁が行う事業は、国民の税金を使います。説明責任を負えないような無責任な内容は、承認しないのが大原則です。

 

ただ理由書の中には、随意契約理由書のように、最終決裁者が作成すべき理由書もあります。当然ながら決裁者が作成すべき書類には、上記の説明責任を負いますという記載は不要です。そもそも決裁者は説明責任を負うものです。

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