「天下り」問題を正しく理解する、再就職との違い、上司の命令

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「天下り」問題についての解説です。文科省が組織的に天下りをあっせんし、国家公務員法に違反しました。中央省庁の官僚は、上司の命令に従う義務を忠実に守ります。上司や元上司からの依頼は断われません。人事権を持つ上司の影響力は強大です。

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天下りあっせん問題

 

2017(平成29)年1月、文部科学省の天下りあっせん問題のニュースが流れました。政府の再就職等監視委員会は、2013~2016年の文科省職員の再就職について調査しました。前高等教育局長の早稲田大学への天下りのほか9件を違法と認定しました。他28件に違法の疑いがあるとのことです。さらに、再就職のあっせんが禁止された2009年以降に調査範囲を広げて調べる方針です。

 

文科省人事課は、2008(平成20)年12月の改正国家公務員法で天下り規制が強化された直後に、人事課OBを介する「OBルート」によって規制を事実上骨抜きにしました。

 

今回の問題が発覚したのは、2016(平成28)年に内閣人事局がとりまとめた再就職届です。元高等教育局長が早稲田大学の教授に再就職したことが判明し、採用面接が文科省退職のわずか2日後だったことから、在職中のあっせんを疑い調査に着手したものです。調査の結果、文科省在職中に、人事課が早稲田大へ打診し、履歴書や研究業績に関する資料を作成しました。面接の日程調整も行なっていました。

 

今回の天下りあっせん問題では、文科省が違法行為を隠蔽しようと「偽装工作」を行なっていました。文科省人事課の「偽装・隠蔽工作」は徹底してました。元高等教育局長の文科省時代の3年先輩で、早稲田大学に再就職したOBが仲介した、という虚構を作り上げ、本人や早稲田大の人事担当者へ口裏合わせを依頼しました。想定問答集まで用意しました。再就職等監視委員会の調査に対して、数ヶ月にわたり虚偽の説明を続け、監視委は、「組織的な天下りとその悪質さに驚いた」とのことです。

 

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再就職等監視委員会とは

 

2007年の国家公務員法改正により設置

 

国会で承認された委員長1人と委員4人で構成

 

国家公務員の再就職について、「あっせん、口利き」などの違法行為がないかチェックする国の第三者機関です。違法行為があれば各省庁などへ勧告します。

 

今回の問題が発覚したのは、再就職までの期間が短かく、不審に思った委員会が、早稲田大学に対してメールを提出させて調べ判明したものです。文科省人事課が、退職予定の局長の履歴書を送るなど組織的に関与した疑いが強まったものです。

 

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新聞各紙の報道

 

1月20日

毎日新聞 文科省、三十数件を調査 給料返納元次官に要求

産経新聞は、天下り斡旋 氷山の一角

ある関係職員によれば、「あうんの呼吸」で通じる団体や企業を選び、歴代のOBによって引き継がれているポストも少なくないとのことです。

 

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文科省と早稲田大学

2017(平成29)年1月20日の早稲田大学の記者会見では、早稲田大学の総長が陳謝し「2008年の改正国家公務員法施行後に文科省出身者を専任の教授として採用したのは初めてで、不当な癒着はない。不適切な利益供与を求めたことも、受けたこともない」と釈明しました。また、教授に再就職した元局長が辞職したことを明らかにしました。

 

文科省から早稲田大学への「私学助成金」は年間91億円です。担当者は、「当然、利害関係があると分かっていたが認識が甘かった」と述べていました。文科省の幹部は、「法律に関する認識が、文部科学省全体で甘かったことは否定出来ない」とのことです。

 

私学助成のほかにも、設置認可の権限を文科省は持っています。学部の再編など教育運営に直接影響します。

 

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違反行為

 

再就職等監視委員会が認定した違反行為

あっせん行為

国家公務員法第106条の2第1項

(他の役職員についての依頼等の規制)

第百六条の二  職員は、営利企業等(営利企業及び営利企業以外の法人(国、国際機関、地方公共団体、行政執行法人及び地方独立行政法人法 (平成十五年法律第百十八号)第二条第二項 に規定する特定地方独立行政法人を除く。)をいう。以下同じ。)に対し、他の職員若しくは行政執行法人の役員(以下「役職員」という。)をその離職後に、若しくは役職員であつた者を、当該営利企業等若しくはその子法人(当該営利企業等に財務及び営業又は事業の方針を決定する機関(株主総会その他これに準ずる機関をいう。)を支配されている法人として政令で定めるものをいう。以下同じ。)の地位に就かせることを目的として、当該役職員若しくは役職員であつた者に関する情報を提供し、若しくは当該地位に関する情報の提供を依頼し、又は当該役職員をその離職後に、若しくは役職員であつた者を、当該営利企業等若しくはその子法人の地位に就かせることを要求し、若しくは依頼してはならない。

求職行為

国家公務員法第106条の3第1項

(在職中の求職の規制)

第百六条の三  職員は、利害関係企業等(営利企業等のうち、職員の職務に利害関係を有するものとして政令で定めるものをいう。以下同じ。)に対し、離職後に当該利害関係企業等若しくはその子法人の地位に就くことを目的として、自己に関する情報を提供し、若しくは当該地位に関する情報の提供を依頼し、又は当該地位に就くことを要求し、若しくは約束してはならない。

 

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処分等

 

文部科学相 2017(平成29)年1月20日の記者会見で、自身の監督責任として、大臣報酬6ヶ月分を返納。

事務次官 辞任(依願退職 退職金は8000万円程度)

元事務次官 戒告と給与自主返納(20%×2ヶ月)

元人事課長 停職1ヶ月

その他7人について減給や停職処分

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経緯

 

2015(平成27)年8月4日 前高等教育局長 文科省退職

 

2015(平成27)年9月
早稲田大学内で、局長の採用について議論。大学を監督する立場の局長を受け入れることに疑問視する意見があったが、文科省人事課は「再就職の規制には抵触しない」「採用手続きが文科省退職後に開始されたのであれば問題ない」と説明

 

2015(平成27)年10月1日 早稲田大学 教授に就任。

 

2016(平成28)年8月
再就職等監視委員会が早稲田大学人事部に対してヒアリング(1回目)。

元局長の再就職が、「規制に抵触していないか」ヒアリングが実施された。文科省人事課からA4判4枚の想定問答集を渡され、「形式的なものだから」との説明を受けた。(文科省の口裏合わせに大学が加担)

 

想定問答(口裏合わせ)の主な内容

実際は、文科省が、局長の天下りの打診を早稲田大学へ行なっていた。しかし想定問答では、事実と異なり、「OBが仲介し早稲田大学側が受け入れを希望した」こととした。OBが面談を設定したなどの架空の内容となっていた。

 

2016(平成28)年11月
2回目のヒアリングを行なうとの通知が届き、内部調査で1回目のヒアリングで「うその説明」をしたことが判明。早稲田大学が口裏合わせの事実を認めた。

 

2017(平成29)年1月18日(水) NHKがニュースで報道

夜7時のNHKニュース7で、トップニュースとして報道。

文部科学省の局長から、早稲田大学の教授へ就任したのは、退職のわずか2ヶ月後でした。再就職について、官僚の天下りを監視する政府の委員会が調査していることが明らかになったと報道。

テロップには「人事課が関与、組織的あっせんの疑いも、数人の幹部が関与」

局長は、大学への助成金などを決める高等教育局の局長でした。

自民党の文部科学部会で、文部科学副大臣が、複数の幹部が「再就職等監視委員会」から事情を聞かれていると報告。

 

早稲田大学は、「事情聴取など詳しく承知していないので、コメントを出すことはできない。」

 

官房長官は18日の記者会見で「実際に行われていたとすれば極めて遺憾なことである。国民の疑念が生じることのないよう、しっかり対応するのは当然のこと、調査結果をまず見守りたい。」

 

2017(平成29)年1月20日
11:30 フジテレビFNNスピーク
午前10時すぎの再就職等監視委員会が公表した調査結果

当時の人事課職員2人が、課長に報告の上、元局長を再就職させるために履歴書を作成し、大学側と採用面談を設定した。監視委員会は、これらが組織的なあっせん行為だとして国家公務員法に違反すると認定した。

さらに、これらの行為を隠蔽するため、文科省人事課の別の複数の職員が、「早稲田大学に再就職した経緯のある人物の仲介だった」という虚偽の話を作り上げた。大学側にも口裏合わせを依頼し、監視委員会に対して虚偽の回答をした。

事務次官は、監督責任があるとされ、今朝の閣議で辞任が決定した。
官房長官が会見「総理から国家公務員制度担当大臣に、他府省でも同様の事案がないか、調査するよう指示しました」

 

15:50 TBS Nスタ
文科省
公務員の組織において、このような事態が起きたことは誠に遺憾

 

1月20日(金)15:50 日本テレビ news every
文科省人事課が長年組織的にあっせんを続け、今日辞職した事務次官も直接あっせんしていたことがわかった。

監視委の調べに対し、現在の人事課長や別の職員が、ウソの説明をして違反行為を隠蔽した。

 

1月20日(金)15:50 日本テレビ news every
早稲田大学は、再就職等監視委員会の調査の際、文科省の作った想定問答に沿って、事実と異なる説明をしたことを明らかにした。

 

天下り先の早稲田大学総長の会見
「違法なあっせん行為を止められなかったことは反省している」と述べた。
また文科省から事前に想定問答を渡され、「形式的な調査のため、この通り答えてもらえれば調査は終わる」と説明されため、事実と異なる供述を行ったことを明らかにした。

 

1月20日(金)19:00 NHKニュース7
天下り先の早稲田大学総長の会見
「再就職等規制に関する本学の理解が不足していたことにより、文部科学省の違法なあっせん行為を止められなかったことを反省している。」

 

事務次官は責任を取り、依願退職。教授も、20日付けで早大教授を辞職

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メール誤送信トラブル

 

時期を同じくして、2017(平成29)年1月10日のニュースでは、1月4日、文科省人事課が人事異動案を全職員あてに誤送信した問題が報道されました。新しいメールシステム導入のため、設定を間違えたらしいです。誤送信した職員は、口頭で「厳重注意処分」です。その後に天下りあっせんのニュースが報道されました。「なにか関連しているのか」と思った人も多いでしょう。文科省人事課はあたふた状態です。

 

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中央省庁の役人

 

各省庁の本省で働く人たちは、大きく2つに分かれています。いわゆる「キャリア」と「ノンキャリア」です。採用時の試験自体が異なっています。上級職(Ⅰ種)試験に合格した人が「キャリア」と呼ばれ、東京大学を始めとする高学歴な人たちです。国立大学や有名私立大学の中でも、学業に優れた人たちしか試験に合格できません。政策を立案し日本を動かす天才集団です。「キャリア」以外の職員が「ノンキャリア」です。

 

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「天下り」と「再就職」の違いと問題点

 

明確な定義は存在しませんが、「天下り」とは、官僚(役職の高い公務員)が退職した後、現役時代に利害関係のあった民間会社、私立大学、公益法人などに就職することです。受入側は「強大な権限」による利益を得ることができます。助成金、補助金などの予算、許認可などの利益です。

 

「再就職」は、利害関係のない会社や組織へ就職することです。また権限を持ってない公務員が、退職後に就職することです。

 

天下りは形を変えた賄賂

 

官僚の天下りは、行政と民間業者との癒着を背景とした「談合事件」などによって規制が強化されてきました。天下りの問題点は、現役の公務員時代に、許認可や予算・補助金の配分権限を持っていた人が、利害関係にある組織へ再就職し、(本人が意識しなくても)国民の税金を有利に(歪めて)獲得してしまう点です。

 

中央省庁に勤務していた現役時代に、自分が予算(税金)を配分していた組織へ、役職員として再就職(天下り)すれば、予算を多く獲得するノウハウを熟知しています。予算配分の権限を持っている官僚は、現役時代に自分が面倒を見ていた後輩なので、ひと言依頼するだけで簡単に予算を獲得できます。(税金を恣意的に操作できてしまうのです。)

 

現在は法令で禁止されてますが、例えば、工事契約や物品購入契約、役務契約の取引関係があれば、入札による競争手続きをせずに、恣意的に随意契約を獲得し莫大な利益を得ることも可能です。

 

また、お金(予算や補助金などの税金)だけでなく、人事面でも天下りには問題があります。

 

数年前に社会問題にもなりました。中央省庁の官僚が、財団法人の役員へ天下りし、2~3年の勤務で莫大(3千万円くらい)な退職金を受け取ります。それを繰り返す「わたり」問題です。天下りを受け入れる組織としては、中央省庁へ顔が利くOBの役職員が在籍していれば、予算も自動的に獲得できます。通常では得られない有利な情報も簡単に入手できます。「できるだけ中央省庁とのパイプを作ったほうがいいだろう」という天下り先の思惑があります。

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国家公務員法の改正

 

日本道路公団の「官製談合事件」で天下りが批判されました。

 

2007年 国家公務員法改正で「天下りのあっせんが禁止」されました。

国家公務員法で禁止されていること

  • 各省庁が、職員・OBの再就職をあっせんすること
  • 利害関係のある会社・団体に在職中に求職すること

 

法律の改正によって、役所が窓口になって口利きすることはなくなったと思われていました。

 

制度上は、天下りそのものを禁止していない。役所が利害関係のある職場に転職のあっせんをすること、現職のうちに自らを売り込むことを禁止しているだけで、さらに例外規定であいまいさを残していた。

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官僚の体質

天下り問題は、「強大な権限を持つ官僚」という立場が、その原因になっています。

「官僚」とは、どのような人たちなのでしょうか。

 

ウィキペディアによれば、官僚とは「一般的に、国家の政策決定に大きな影響力をもつ公務員をいう。」と説明されています。 役人と同じ意味で使用されますが、中央省庁などで役職が高く強い権限を持つ者です。政策の決定権を持つ人です。各省庁の本省に勤務する「キャリア官僚」が典型的です。

 

公務員のキャリアとは、多くの公務員とは採用時の面接試験が明確に区分(総合職やⅠ種、上級職など)され、東京大学卒や有名私立大学卒の人たちです。博士学位を持つ教授相当の人もいます。

 

ほとんどのキャリアの人たちは、真面目で、常に国民へ目を向けて、日本を良い国にしようと滅私奉公の気概で日夜働く人々です。しかし時々、勘違いした人たちも出現します。

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上司の命令とは

公務員の能力や実績については、民間企業の売上額などのように客観的に比較できる数値がありません。公平な人事評価ができません。評価のポイントは、「上司の命令に対して、いかに忠実に行動するか」です。昇進の判断基準となる評価そのものが歪んでいます。

 

30年ほど前に、中央省庁で明け方まで勤務していた友人の話を思い出します。中央省庁では、上司の命令が絶対で、上司に対して反対意見を述べることなど許されません。例え、上司の命令が法律に違反しているとしても、違法なものを合法的に見せて、上司の意向に沿った仕事を行うのが「優秀な公務員」だと話してました。28年前に起きたリクリート事件では、事務次官の逮捕、幹部の更迭という事態に、誰が幹部をチクッたのかという余計なうわさが先行して、襟を正すまでに時間が必要でした。

 

1月20日 テレビ朝日のグッドモーニング
他省庁の幹部官僚の話
「文部科学省は、日本の大学を家来のように考えていて、再就職を断ったら補助金を止める、ぐらいの勢いでやっていたと聞いている。」

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「優秀な官僚」とは

 

今回の文科省による天下りあっせん問題について、あるテレビ番組で、「優秀な官僚には天下りを認めても良いのではないか、国民にとって貴重な財産である」との発言がありました。

 

しかし、ほんとに優秀な公務員は、「国民にとって何が重要か」常に考えています。行政が歪む天下りは選択しません。中央省庁で働いていた権限のある身分のものが、利害関係にある民間企業や私立大学などへ再就職すれば、悪影響があることは目に見えています。そんなことは十分自覚しています。

 

中央省庁で役職の高い地位にあった官僚は、利害関係のある団体へ再就職すべきではありません。莫大な退職金(事務次官は8000万円くらいです。)を税金から得るのです。静かに身を引くべきです。

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