労働契約法と無期転換ルールを正しく理解する、雇止め法理との矛盾

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改正労働契約法による無期転換ルールの解説です。有期雇用を更新するときに無期雇用になる無期転換ルールを詳しく説明します。無期転換ルールが適用される期間は原則5年ですが、研究職などは例外として10年間です。労働基準法との違いなどの解説です。

改正労働契約法による無期転換ルール

 

改正労働契約法が2013(平成25)年4月1日から施行されました。公布は2012(平成24)年8月10日でした。有期労働契約が、反復更新されて通算5年を超えたときに、労働者の申込みによって、使用者が無期労働契約に転換しなければならないルールです。「無期転換ルール」と呼ばれます。いろいろなケースがありますが、簡単に言うと、有期雇用を更新継続している人は、2018(平成30)年3月31日以降の任用更新によって、無期転換ルールが適用されます。

 

通算期間のカウントは、平成25年4月1日以後に開始する有期労働契約が対象です。新規雇用だけでなく更新も対象です。平成25年3月31日以前に開始した有期労働契約は、通算契約期間にカウントされません。また、有期労働契約は「同一の使用者」の下で働く労働契約全てが対象です。法人単位です。本店、支店、大学の各学部なども全て同一の使用者です。

 

法律が改正された趣旨は、厚生労働省労働基準局の報道発表資料によると、有期労働契約で働く人の約3割が、通算5年を超えて有期労働契約を繰り返し更新している実態にあり、その下で生じる雇止めの不安を解消することです。無期転換ルールは、働く人が安心して働き続けることができる社会を実現するための制度です。

 

しかし、普通に考えれば、民間企業にとって人件費コストの節減は永遠の課題です。理想は正社員として無期雇用したいけれど、人件費を抑えるために有期雇用としているのです。雇止めが増えるだけの法改正になってしまう可能性もあり、そうなれば本末転倒です。

 

研究者等特例は10年で無期転換

研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律

第十五条の二 次の各号に掲げる者の当該各号の労働契約に係る労働契約法(平成十九年法律第百二十八号)第十八条第一項の規定の適用については、同項中「五年」とあるのは、「十年」とする。

一 科学技術に関する研究者又は技術者(・・補助を行う人材を含む。・・)であって研究開発法人又は大学等を設置する者との間で期間の定めのある労働契約(以下この条において「有期労働契約」という。)を締結したもの

二号から四号は省略

 

TA(ティーチング・アシスタント)、RA(リサーチ・アシスタント)として学生の身分で働いていたものは通算契約期間から除外

 

特例の対象者
研究者又は技術者で、大学や研究組織で勤務していた人

研究開発等に係る企画立案、資金の確保並びに知的財産権の取得及び活用その他の研究開発等に係る運営及び管理に係る業務(専?的な知識及び能?を必要とするものに限る。)

 

共同研究の相手方(共同研究に専任が条件)も対象

 

任期付教員

 

大学や研究組織は範囲が明示されている。大学、大学共同利用機関、研究開発法人、試験研究機関(各府省の研究所など)

高度専門職特例は10年で無期転換

専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法
平成26年法律第137号 平成27年4月1日に施行、平成26年11月28日に公布

第八条 (略)有期労働契約に係る労働契約法第十八条第一項の規定の適用については、同項中「五年」とあるのは、(略)特定有期業務の開始の日から完了の日までの期間(当該期間が十年を超える場合にあっては、十年)」とする。

 

① 専門的知識等を有する有期雇用労働者(以下「高度専門職」といいます。年収1075万円以上、博士、医師、弁護士など)と、

 

② 定年に達した後引き続いて雇用される有期雇用労働者(以下「継続雇用の高齢者」といいます。)

 

この特例を受けるためには、都道府県労働局に申請し、認定を受けなければなりません。また認定を受けた仕事に就く人へは、労働条件通知書等に明示(記載)が必要です。

無期転換ルールのクーリング期間

 

契約がない期間が6か月以上あるときは、その空白期間より前の有期労働契約は通算契約期間に含めません。これをクーリング期間といいます。また、クーリング期間を確保するための偽装行為は認められません。

 

「労働契約法の施行について」平成24年8月10日付け基発0810第2号(厚生労働省労働基準局長発 都道府県労働局長あて)

 

使用者が、就業実態が変わらないにもかかわらず、有期契約労働者が無期労働契約への転換を申し込むことができる権利の発生を免れる意図をもって、派遣形態や請負形態を偽装して、労働契約の当事者を形式的に他の使用者に切り替えた場合は、法を潜脱するものとして、同項の通算契約期間の計算上「同一の使用者」との労働契約が継続していると解されるものであること。

 

雇止め法理とは

(厚生労働省のHPから抜粋)
無期転換ルールを避けることを目的として、無期転換申込権が発生する前に雇止めをすることは、労働契約法の趣旨に照らして望ましいものではありません。

 

労働契約法第19条で定められています。労働契約の更新を拒絶する理由が、次のときは拒絶できないという法律です。

 

客観的に合理的な理由がない

社会通念上相当であると認められない

期間の定めのない正社員の解雇と同程度のもの

労働者にとって、更新を期待する合理的理由があるとき

 

有期雇用と無期雇用

 

有期雇用は、3年とか5年とか、雇用契約の終期が定められている雇用形態です。無期雇用は、期間の定めのない雇用契約です。一般的に「正社員」と呼ばれています。

 

労働基準法
第二章 労働契約
第十四条 労働契約は、期間の定めのないものを除き、一定の事業の完了に必要な期間を定めるもののほかは、三年(専門的知識等を有する労働者、満六十歳以上の労働者にあつては、五年)を超える期間について締結してはならない。

 

労働契約法と労働基準法の関係

 

労働契約法は、任意法規(当事者間で内容を決められる法律)として2008(平成20)年3月から施行された法律です。過去の労使間のトラブルについて、民事的なルールを明確に定めたものです。使用者と労働者がお互いに守るべき契約の内容をハッキリさせるためのもので罰則規定はありません。

 

一方、労働基準法は、強行法規(法律に抵触すれば当事者間の合意は無視され強制的に適用される法律)として、国が使用者を取り締まるための法律です。罰則が規定されています。労働条件の最低基準を定めるものとして1947(昭和22)年に制定されました。

 

主な違い

労働者
請負や委任の労務提供は、労働基準法では労働者に含まれません。労働契約法では労働者に含まれます。

使用者
労働基準法では、人事部長などの管理監督者を含む広い概念です。
労働契約法では、労働者と労働契約を締結する者に限られます。

 

雇用契約と労働契約の違い

この2つは、とてもわかりにくいです。労働トラブルの判例などでは区別してない方が多いです。明確な違いは根拠法令が異なることです。雇用契約は民法に基づきます。労働契約は労働基準法を根拠とします。

 

民法
第八節 雇用
第六百二十三条 雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる。

 

労働基準法
第十三条 この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において、無効となつた部分は、この法律で定める基準による。

実態としては同じ意味で使われます。会話の中で両方が入ると非常にわかりにくいです。

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