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契約手続き

契約書を作成する手順、正しい契約書の取り交わし方法

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モナコで契約書を取り交わし 契約手続き
モナコで契約書を取り交わし
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官公庁が民間企業と取り交わす契約書を作成する方法です。初めて契約書を作成するときは、実際の作り方がわかりません。過去の契約書を見ても、完成した取り交わし後の契約書が保存してあるだけです。実際にどのように作ったのかわからないのです。そこで契約書の作り方、契約書の正しい取り交わし手順をわかりやすく解説します。

 

売買契約や共同研究契約など、契約当事者が二者(官公庁側と相手企業側)のケースで説明します。(契約当事者が三者以上になっても、基本的な考え方は同じです。)

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契約書の案文を作成

 

多くの契約は、過去に同様のものがあったり、また「契約書のひな形」があります。ここでの解説は、過去に同様の契約がない、全く新しい契約書を作成するケースです。作成手順は主に次の流れになります。

 

契約書の作成手順

1.契約書の案文(たたき台)を作成する

2.条文の修正協議(担当者間で条文を相互に確認し修正する)

3.修正協議を終えたら、それぞれで決裁を受ける

4.決裁が完了したら、契約書を印刷し、袋とじなどを行う

5.押印は民間企業側から先に行う

それでは、順番に解説します。

 

最初に、契約書の案文を作成します。たたき台を作り、相互に修正していきます。契約書の案文は、官公庁側でも民間企業側でも、どちらが作成しても問題ありません。過去に契約経験のある側が案文を作成した方が効率的です。もし、どちらも初めてであれば、官公庁側が契約書の案文を作成した方が安全です。契約書の案文が作成できたら、個々の条文を確認していきます。条文の意味について、同じように理解しているか「すりあわせ」します。

 

案文を初めて作成するときは、契約の種類(売買契約、製造契約、役務契約)それぞれの類型のうち、どれが一番近いかを判断し、その過去の契約書をベースにたたき台を作っていきます。

 

契約書の条文は、当事者にわかりやすい表現であることが最重要です。法律の条文のような難解な表現を用いる必要はありません。万が一、相手方とトラブルになったときに、裁判官が契約書の条文を読んで判断するので、法律と同じような表現を使うことが多いわけですが、トラブルになるのは感情的な問題がほとんどです。契約書を締結した後のトラブルは、起こるときには必ず起きます。起こらないときには、どんなにいいかげんな契約書でもトラブルは起こりません。契約は、相手方を信頼して締結するものです。相手方を信頼できていれば、契約書の内容が不十分であってもトラブルは起きないものです。つまり、それほど神経質になって契約書の条文を考える必要はありません。

 

一般競争入札では、入札参加条件として、事前に契約書の様式を提示しています。契約を締結するときに、双方で契約の条文を確認し修正するようなケースはないです。しかし、双方が対等な立場で交渉する随意契約や共同研究契約などでは、契約書の個々の条文について、お互いに納得しなくてはいけません。相手方から、「この条文では合意できないので修正して欲しい」と要望があります。その場合は、双方で一字一句を確認しながら修正していきます。特に契約内容に大きな影響を与える修正箇所(費用や責任の負担など、大きな義務が生じる部分)であれば、双方の担当者が、それぞれの上司へ説明し、了解を得ながら進めることになります。

 

契約書の案文は、どちらかの担当者がたたき台を作成します。そして相手方へ契約書案として提示します。相手方から修正要望があれば内部で検討します。双方が合意できるまで、契約書の案文を担当者レベルで作成します。この案文作成の段階では、まだ押印はせず、契約年月日も空欄か仮の日付のままです。

 

契約書の案文を作成するのは、官公庁側の契約担当者であることが多いです。官公庁側で案文を作成し、民間企業側へ内容確認を依頼します。官公庁側の方が、過去の契約実例を多く持っていたり、契約書の雛形があるためです。しかし、もし民間企業側の方が契約実例を多く有しているなら、民間企業側が案文を作成した方が効率的です。たたき台としての契約書案文は、どちらが作成しても問題はありません。

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メールで契約書案文の確認を依頼する文例

 

契約書の案文は、Wordファイルで作成し、メール添付などで相手方へ確認することが多いです。Wordファイルは、修正履歴を残せるので、どういう理由で、どのように修正したかを記録に残すことができます。契約書の案文作成では修正履歴のわかるソフトが最適です。修正記録を残さない形式で契約書の案文を作ってしまうと、相手方とのトラブルにもなってしまいます。必ず修正履歴を残す形式で確認を依頼します。

 

Wordファイルであれば、メニューの「校閲」から「変更履歴の記録」をONにして保存します。内容を修正するときは、必ず「変更履歴の記録」がONになっていることを確認してから修正します。

 

相手方へ契約書案文の確認を依頼するときのメール文例です。

〇〇会社 〇〇様

お世話になります、◯◯省の◯◯です。契約書の案文を作成しましたので送付します。条文などの内容をご確認願います。

追加や修正箇所があれば、「変更履歴の記録」をONにして、修正願います。なお、コメント欄で修正理由を教えて頂けるとありがたいです。

契約書の案文について双方で事前承認が得られた段階で、契約年月日の打ち合わせをお願いします。その後、契約年月日を記入した正式な契約書へ押印する手順で進めたいと思います。よろしくお願いします。

〇〇省会計課 〇〇〇〇

 

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契約締結伺いの決裁、条文の修正協議

 

担当者間で事前合意し、契約書の案文が完成したら、次に正式な内部決裁手続きへ進みます。契約書の案文と関係書類を添えて、内部決裁(契約権限のある上司までの承認)を受けます。決裁途中でいろいろな上司から契約書の条文を修正するように求められた場合は、相手方の担当者へ修正内容と理由を説明し合意を得ます。すべての合意が得られるまで双方で協議しながら修正案を出しつつ詰めていきます。

 

決裁前の契約書の案文は、担当者レベルで合意しているだけです。そのため決裁途中では、上層部から修正要望が入ることがあるのです。案文の事前協議は、担当者レベルの非公式な文書ですが、案文の段階で担当者レベルで合意しておけば、決裁途中で修正要望が入る部分が少なくなります。逆に、決裁を受ける前に担当者レベルですり合わせしておかないと、案文の内容が上層部にすべて拒否され、全部が修正になってしまうことがあります。そうなるとゼロからのスタートになり収拾がつかなくなります。条文の修正が多数発生すると、もう暗礁に乗り上げた感じで暗くなります。

 

契約書の条文を協議するときのコツは、「この条文では合意できない」という否定的なスタンスではなく、「この条文を、このように修正してもらえば合意できる」という前向きな姿勢であることです。修正理由は、コメント欄やメールなどでわかりやすく説明してもらいます。修正の記録は、後日のトラブルに備えて決裁書類と共に残します。可能な限り、メールなどの書面に残る形式でやりとりし、交渉メモとして関係書類に添付しておきます。新しい契約書は、交渉経緯が重要です。

 

決裁途中は、契約書案文に赤ペンで修正し、その修正理由や相手方の了承日もメモします。決裁完了後は、赤字で修正された契約書案文になります。この修正した案文が、正式な決裁書類です。赤字で修正した契約書案文は、重要な決裁書類なので必ず保存しておきます。決裁書類を見れば、「なぜ、このような条文にしたのか」修正の経緯がわかるように関係資料を保存しておきます。

 

特に重要なポイントは、決裁途中に赤字で修正された契約書案文は、「正式な決裁書類」という点です。取り交わす契約書の前段階の資料だからといって、ゴミ箱へ捨ててはいけません。決裁の経緯を示す資料は、それぞれの役職がどう判断したかを記録した重要書類です。決裁の経緯を示す資料は、必ず保存しておきます。例えば、担当者が変わってしまい、考え方の相違によりトラブルになったときは、修正した理由や経緯が問題となるケースがあるからです。誰が、いつ、どのような判断・理由で修正したのか、決裁に使った赤字の案文で記録を残します。

 

稀なケースですが、契約書の条文について双方の意見が平行線となり、担当者間で合意を得るのが困難な状況になることがあります。交渉が進まなくなったときは、契約の締結権限のある双方の上司も打ち合わせに参加し、直接相手方と交渉し合意を得ます。このときも譲歩する姿勢が大切です。

 

私は以前、知的財産権に関連する契約書の条文で、6ヶ月ほど交渉したことがあります。双方とも交渉に疲れ果て、最後はお互いが譲り合い妥協しました。長期間にわたる交渉は、打ち合わせの日程調整だけでも相当な苦労が伴います。打ち合わせ場所も、相互に相手方の会場を使うなど、公平性に配慮しました。

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決裁完了後の契約書作成、押印の順番

 

決裁が完了した段階で、契約書案文の修正箇所(赤字で修正されている部分)を反映した契約書を作成します。そして相手方へ契約年月日の確認を行います。契約年月日の調整を終えたら、契約書(正本)を2通作成して相手方へメール送信あるいは郵送します。先に民間企業側へ押印を依頼します。押印した2通を返送してもらいます。

 

押印の順序は、先に民間企業側からです。官公庁側が最後に押印します。これは、より安全に国民の税金を使うために、最終判断を官公庁側とするためです。契約書への押印の順番は、契約事務取扱規則第14条第2項で定められています。

 

契約事務取扱規則

第十四条 契約担当官等は、契約の相手方を決定したときは、遅滞なく、契約書を作成しなければならない。

2 契約担当官等が前項の契約書を作成する場合において、必要があると認めるときは、まず、当該契約の相手方に契約書の案を送付して記名押印させ、さらに、当該契約書の案の送付を受けてこれに記名押印するものとする。

3 前項の場合において、契約担当官等が記名押印をしたときは、当該契約書の一通を当該契約の相手方に送付するものとする。

 

地方自治体も、同様の内容をそれぞれの規則で定めています。

 

東京都契約事務規則

第三十六条

2 契約担当者等は、前項の契約書を作成する場合において、当該契約の相手方が隔地にあるときは、まず、その者に契約書の案を送付して記名押印させ、さらに当該契約書の案の送付を受けてこれに記名押印するものとする。

3 前項の場合において、記名押印が完了したときは、当該契約書の一通を当該契約の相手方に送付するものとする。

契約年月日は、決裁完了後の日付が原則です。しかし相手方と合意済みなら、事務手続きが遅れたときに、実際に合意した日付へ遡及することが多いです。条文の交渉などで案文作成に日時を要し、決裁書類の起案が遅れたときなどは、契約年月日を遡及して(実際に合意した日に遡って)契約書を作成します。民法の原則で契約を締結します。

 

日付を遡及する際は、決裁文書の起案日や決裁承認日は、実際に合意した契約年月日以前に設定し、遡及する理由を口頭で説明し上司の了承を得ます。双方で実際に合意した日が契約成立日です。条文の表現の調整など細かい部分で時間がかかり、起案日が遅れてしまったときに契約年月日が遡及することは仕方ありません。むしろ事実どおりに書類を作成する方が正しいです。事務手続きの遅れを原因に、契約年月日を架空の日に設定するのは適正とはいえません。

 

契約年月日の設定例 (実際の処理日)

契約書案文の修正確認 (8月5日)

決裁前の事前合意 (8月10日)

字句修正、不足書類の修正など微調整

契約締結伺いの起案文書作成 (9月10日)

決裁完了 (9月17日)

 

この場合は、双方で合意できるなら、決裁書類の起案日と決裁完了日を8月5日に設定し、契約書の日付を8月10日とすることも可能です。(事実どおりの合意による契約締結です。)

 

このように、契約年月日を遡及するケースは、契約の開始時期を遅らせると、業務に支障が生じる場合です。契約内容の重要な部分(契約金額などの主な契約内容)が合意できていれば、契約を開始することがあります。細かな修正は後日完了させることを前提に契約を締結し、実際に契約書を取り交わす日は、遅れることがあります。契約当事者が事前に合意していれば可能です。

 

契約締結日(契約書の日付)確認の文例

 

「・・(挨拶文)・・こちらの内部決裁が完了し契約書の押印が可能となりました。契約年月日は◯◯年◯◯月◯◯日でよろしいでしょうか。あるいは別の日であれば連絡をお願いします。契約年月日の決定後、契約書(正本)2通を郵送しますので、社印と代表者印を押印して頂き2通の返送をお願いします。こちらで押印後1部を返送させて頂きます。」

 

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契約書への押印順序の説明

 

時々、契約の相手方が大企業のときなどに起きる事例ですが、相手方企業によっては「先に契約書へ押印することはできないので、そちらで先に押印して欲しい」との要望があります。そのときは、上記の契約事務取扱規則第14条第2項について説明し、相手方へ理解を求めます。

 

官公庁側が最後に押印する理由は、契約書の最終確認を官公庁側が行うためです。もし最初に官公庁側が押印してしまうと、その後、悪意のある会社が条文を書き換えてしまうことが可能になってしまいます。官公庁側に不利な契約が確定してしまうのを防止する目的があります。国民の税金を使う契約なので、より安全に契約を締結するためです。

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契約書の正しい取り交わし

 

契約締結伺いの決裁を完了し、相手方と契約年月日を調整した後、契約書を2通作成します。(ここで、もう一度、契約書案文と修正箇所の再確認を行います。)袋とじなどで必要書類を綴じ込み、契約の相手方へ簡易書留で2通郵送します。(袋とじを相手方が行うときは、電子ファイルをメール添付します。)

 

郵送後は、メールあるいは電話で送付したことを連絡しておくと安全です。(相手方の担当者が近くなら、郵送でなく取りに来てもらい手渡しする方が確実です。)

 

相手方から押印された契約書(正本2通)を受領したら、公印を管理する担当者へ決裁文書(契約書案文)を提示し、承認を得てから契約書に公印を押します。正本2通の押印を終えたら、相手方へ返送する方の契約書のコピーを取り、相手方へ簡易書留で郵送します。コピーした契約書には、相手方へ郵送した日付をメモして決裁書類と一緒に保存します。

 

以上が、正しい契約書の作成方法と、取り交わし方法です。

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コメント

  1. ◯吉 清正 より:

    官公庁の内部決済(契約起案時)の押印について質問させていただきます。内部決済に添付する「契約書」で先に受注者(民間企業)のみの記名押印及び印紙を貼った契約書と「契約書(案)」として押印や印紙のない状態のどれを添付するのが正解でしょうか。管理者様の上記説明では「契約書(案)」で双方決済後に先に受注者から記名押印し官公庁が最後に押印するとありますが、官公庁より「内部決済時には受注者が契約書に記名押印と印紙貼り付けが必要で、それは受注者が契約を確実に行う意思があるのを確約するため」とのことです。私としては押印の順番は法令等にあるようなので仕方ありませんが、基本的に管理者様の順番がしっくりきます。この件についていろいろ資料を探しておりますが、なかなか見つかりません。アドバイス等(法令等の根拠の紹介)いただけたらと思います。

    • 矢野雅彦 管理人 より:

      コメントありがとうございます。

      官公庁の内部決裁で使用する契約書は、押印してない「契約書案」です。内部決裁で使う書類は、組織として正式に承認する前、つまり案の段階の書類です。通常、決裁途中にさまざまな修正が入ります。

      もし片方が押印してある契約書を決裁書類に添付してしまうと、「先方がすでに承認済みで正式に押印してあるので内容は修正できない」ことを意味します。つまり内部決裁が、ないがしろにされてしまうのです。修正できない決裁書類では、上司は承認もできません。厳しい上司なら、決裁不可として決裁書類を投げ返すでしょう。上司を馬鹿にしていると怒鳴られるかもしれません。

      また、官公庁より「内部決裁時には受注者が契約書に記名押印と印紙貼り付けが必要で、それは受注者が契約を確実に行う意思があるのを確約するため」との説明があったようですが、完全に間違った考え方です。契約を確実に行う意思を確認するのは、「契約の申し込み」書類になります。民法第522条でも明確に定められています。見積書や入札書が、契約を締結する意思を確認する書類です。

      • ◯吉 清正 より:

        早速の返信ありがとうございました。分かりやすい内容で助かりました。たしかに内部決済の添付資料(契約書)がすでに先方の押印済みで内容の修正できない状態では、上司の印鑑だけ下さいとなってしまいますね。現在部署ごとで考え方が違うため統一できればと考えています。今回管理者様のサイトに出会えて感謝です。ありがとうございました。

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