随意契約は、競争性の有無により、2つに別れます。競争性のある随意契約は、「見積もり合わせ」を実施します。ここでは、もうひとつの「競争性がない随意契約」について解説します。
特に、代理店証明書に基づいて随意契約するときは、注意が必要です。代理店証明書は、「競争性がない」という証明にはなりません。販売店が複数存在するのであれば、一般競争入札あるいは見積り合わせが必要です。
代理店証明書による随意契約
随意契約は、官公庁における契約方式の例外です。契約方式の原則は一般競争入札です。競争性のない随意契約を締結しようとするときは、慎重に検討しなければなりません。
契約担当者が注意したい書類として「代理店証明書」があります。販売店証明書、特約店証明書、総代理店証明書などです。これらの代理店証明書は、「競争性がない」ことの証明にはなりません。
なお、ここでの解説は、説明をわかりやすくするために代理店証明書、販売店証明書、特約店証明書などを厳格に区別してません。実際の代理店契約は、仲介のみを行うものです。販売店契約は商品を買い取ってから売るなどの違いがあります。しかし官公庁との契約では、契約の相手方としてすべての責任を負うので同じ扱いになります。
最初に、「競争性がない随意契約」の根拠法令を確認します。
予算決算及び会計令
第百二条の四
三 契約の性質若しくは目的が競争を許さない場合において、随意契約によろうとするとき。
都道府県や市町村などの地方自治体は、地方自治法施行令です。
地方自治法施行令
第百六十七条の二 (略)随意契約によることができる場合は、次に掲げる場合とする。
二 (略)その他の契約でその性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき。
代理店証明書は、メーカーが小売店に対して、製品を正式に販売する会社であることを証明する書類です。市販製品の一般的な販売ルートは、メーカー → 卸問屋 → 小売店です。
正式な代理店は、修理の際に迅速に対応できるなど、アフターサービスが優先的になるメリットがあります。しかし代理店という証明だけでは、他に販売店が存在しない、つまり「競争性がない」という理由にはなりません。
代理店証明書と競争性の関係
官公庁の契約担当者は、国民の貴重な税金を使うことを常に意識し、競争の機会を十分に確保した手続きが必要です。複数の販売会社が存在するのであれば、一般競争入札あるいは見積り合わせが原則です。例えば、物品購入契約なら一定金額(国や都道府県は160万円、市町村は80万円)以上の場合には、一般競争入札、それ以下なら見積もり合わせを実施します。
メーカーは、代理店証明書を様々な販売店へ発行します。なぜなら代理店や販売店、特約店を多く持つ方が、販路を広くできるわけです。自社製品の販売範囲が広がるのでメリットになるのです。
代理店証明書が発行されていることを理由に随意契約を行うのではなく、例え手続きが大変でも、販売会社が複数存在するのであれば、一般競争入札や見積もり合わせを行うのが正しい判断です。
過去には、代理店証明書を悪用した事件も発生しています。2008年8月にニュースで報道されています。国立の医療機関が発注する医療機器納入に絡む汚職事件でした。「関東地区における唯一の代理店」という偽の説明を行い随意契約していたようです。メーカーは、販売会社に依頼されて、代理店証明書を便宜上作成したとのことでした。実態は独占的な代理店ではなかったのです。贈収賄事件を調べていくうちに、随意契約が問題視され、その根拠とした代理店証明が実態でないことが明らかになりました。契約担当者も書類を見て「販売店が一社しかない」と判断してしまった事例です。
総代理店証明書による随意契約
総代理店証明書も代理店証明書と同じで、「他に販売店が存在しない」という根拠資料にはなりません。海外からの輸入品などは、総代理店として国内の特定会社を指定することが多いです。総代理店の下に多数の代理店や特約店などを設けるのが通常の販売形態です。
代理店証明書や総代理店証明書は、契約方式を判断する際の競争性とは関係ないことがわかります。代理店証明書などは、正規のルートで仕入れている正規品であることを証明する書類です。製品の品質を保証し、修理などのアフターサービスの保守体制が構築されていることを証明する書類になるわけです。
では、「競争性がない随意契約」の具体例はどうでしょうか?
「競争性がない随意契約」が認められるのは、独占販売が法律で認められている特許製品や、著作権法で保護されているプログラム等に限られます。特にブログラムされたシステムでは、互換性が十分でないと、見えないエラーが生じます。正常に動いているように見えて、結果が間違えていると大きな問題になります。そのため、既存プログラムの改修を伴うシステムの構築などでは、著作権が影響して 「競争性がない随意契約」と判断することがあります。
ただ官公庁がプログラム開発を委託したときは、その後のプログラム改修のときに一般競争入札が可能となるように、官公庁側へ著作権を帰属させます。官公庁側が自由にプログラムを利用できるようにするのが一般的です。
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