一般競争入札へ参加して、ようやく落札できたのに無効と判断されてしまうと、会社の存続にかかわるほど大きな事態になります。そのため入札の無効については、事前に入札公告で公開しなければなりません。入札の無効について、記載が必要な理由です。
なぜ入札の無効を定めるのか
官公庁は国民の税金で運営しています。民間企業と契約し、代金を支払うときも税金を使います。そして契約の相手方は、公平・公正に一般競争入札で選びます。誰もが参加できる入札ですが、もし次のような事態になると官公庁に損害が発生します。官公庁の損害は、国民が負担することになってしまいます。
〇談合や贈収賄など法律に違反して入札に参加した。
〇落札したのに理由もなく契約を締結しない。
〇契約を締結したのに途中で解約されてしまった。
もし契約を途中でやめることになれば、それまでの契約手続きにかけた労力が無駄になってしまいます。一般競争入札では、およそ2ヶ月間手続きが必要です。その間の人件費が無駄になります。さらに契約手続きをやり直すとすれば、新たな費用が発生します。いずれも国民の税金を無駄に使うことになってしまうのです。
これらの不誠実な行為を未然に防ぎ、確実に契約が履行できるよう、入札を無効とする条件を定めています。契約を安全に行うために、危ない会社を排除しているのです。普通の真面目な会社なら無効にはなりません。
入札の無効は公告に掲載
官公庁が実施する一般競争入札は、契約金額が大きいものに限られています。入札を勝ち取ることができれば、売り上げもアップし、会社の信頼度を高めることができます。大規模な入札案件であれば、業界内でも噂になり、会社の将来に影響を与えるほど大きな効果があります。社運をかけて入札に参加することさえあります。
ところが入札へ参加した後に、理由がわからないまま入札無効と判断されたら、到底納得できません。特定の会社と癒着しているのではないかと疑い、入札手続きそのものに不信感を抱きます。もし落札決定後に入札無効になれば、社会的な信用も失ってしまいます。同じ入札に参加したライバル会社からすぐに情報が流れ、入札が無効になった危ない会社という烙印が押されることになるでしょう。入札を無効と判断されれば、会社にとって致命的です。
入札の無効は大きな影響を及ぼすため、入札公告に明記するよう法令で定めています。
予算決算及び会計令
第七十六条 契約担当官等は、第七十四条の公告において、当該公告に示した競争に参加する者に必要な資格のない者のした入札及び入札に関する条件に違反した入札は無効とする旨を明らかにしなければならない。
「・・第七十四条の公告・・」とは、入札公告のことです、
予算決算及び会計令
第七十四条 契約担当官等は、入札の方法により一般競争に付そうとするときは、その入札期日の前日から起算して少なくとも十日前に官報、新聞紙、掲示その他の方法により公告しなければならない。
地方自治体の入札の無効については次のとおりです。
地方自治法施行令
第百六十七条の六 普通地方公共団体の長は、一般競争入札により契約を締結しようとするときは、入札に参加する者に必要な資格、入札の場所及び日時その他入札について必要な事項を公告しなければならない。
2 普通地方公共団体の長は、前項の公告において、入札に参加する者に必要な資格のない者のした入札及び入札に関する条件に違反した入札は無効とする旨を明らかにしておかなければならない。
このように入札の無効は、入札公告へ記載することが法令で義務付けられています。また入札説明書へも、入札条件に違反した入札は無効とする旨を明記します。後日トラブルが生じないよう、関係資料へ記載した方が安全です。
無効になるケースは、参加資格がない場合、入札書に代表者印がなかったり、金額が不鮮明で判読できないときなどです。無効かどうか判断に迷うときは、入札を中止せざるを得なくなります。
稀なケースでは、落札した会社と契約書を取り交わした後に、マスコミ報道で契約の相手方が暴力団関係者であることが判明することもあります。警察の捜査などで判明する事実は、一般の人が事前に知ることは不可能です。このようなケースでも、入札の無効について明記していれば、契約を解除でき、トラブルを最小限にすることができます。
入札無効の記載例
入札公告へは次のように表示します。
競争参加資格
(1) 予算決算及び会計令第70条の規定に該当しない者であること。なお、未成年者、被保佐人又は被補助人であって、契約締結のために必要な同意を得ている者は、同条中、特別の理由がある場合に該当する。
(2) 予算決算及び会計令第71条の規定に該当しない者であること。
(略)
入札の無効
競争参加資格を有しない者のした入札及び入札の条件に違反した入札は無効とする。
記載方法は様々ですが、競争参加資格欄へ、入札へ参加できない条件を細かく記載し、入札の無効欄へ、参加資格を持たない者を無効とする旨を表示します。
参考に、入札へ参加させることができない条件です。
予算決算及び会計令
第七十条 契約担当官等は、売買、貸借、請負その他の契約につき会計法第二十九条の三第一項の競争(以下「一般競争」という。)に付するときは、特別の理由がある場合を除くほか、次の各号のいずれかに該当する者を参加させることができない。
一 当該契約を締結する能力を有しない者
二 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
三 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成三年法律第七十七号)第三十二条第一項各号に掲げる者
地方自治体の同様の法令です。
地方自治法施行令
第百六十七条の四 普通地方公共団体は、特別の理由がある場合を除くほか、一般競争入札に次の各号のいずれかに該当する者を参加させることができない。
一 当該入札に係る契約を締結する能力を有しない者
二 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
三 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成三年法律第七十七号)第三十二条第一項各号に掲げる者
予算決算及び会計令第七十一条では、談合や契約を履行しなかった場合などの条件を定めています。地方自治体の同様な法令は、地方自治法施行令第百六十七条の四第二項になります。
トラブルを防ぐには明確な根拠が必要
入札に関するトラブルを防ぐためには、事前に無効となる条件を公開しておくことが重要です。またトラブルが生じたときに、スムースに解決するためにも、入札の無効について記載しておきましょう。
不運にもトラブルが発生したときは、トラブルの内容が大きい小さいに関係なく、すぐに上司へ報告し相談するのが鉄則です。上司への報告は、組織で働く人の責務です。最初は小さなトラブルだったものが、担当者同士のコミュニケーション不足や誤解などから、大きなトラブルになることもあります。上司への相談を怠ると、契約担当者ひとりが責任を負うことにもなります。
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