出張報告書に成果は書かない!出張の事実を記載するのが正しい書き方

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出張旅費
2005年 グアム

官公庁における出張報告書の書き方です。出張先で公務を終えた後、2 週間以内に出張報告書を提出しなければなりません。なぜ出張報告書が必要になるのか、どのように書くべきなのか解説します。出張前に知っておくと、出張報告書が書きやすくなります。

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帰ってからでは間に合わない出張報告書

 

初めての出張は余裕がありません。新幹線や飛行機の予約 、宿の手配などで大変です。出張先での仕事のことで頭がいっぱいになります。帰った後に作成する出張報告書のことまで考えられないでしょう。

 

(出張報告書なんて、後で考えればいい!)

 

こう考えていると後悔することになります。出張から帰って、しばらくしてから報告書の提出を催促され、どうやって書けばよいかわからなくて悩むことになります。

 

事前に出張報告書を書くときの注意点を知っておけば、出張中に注意したいポイントがわかってきます。出張後に報告書が書けなくて悩むこともありません。出張へ行く前から、出張報告書の書き方について理解しておきましょう。

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そもそも出張の目的とは

 

最初に公務出張の目的について確認しましょう。公務としての出張は、電話やFAX、メールなどの通信手段を利用しても、公務が遂行できない場合に認められています。現地へ行かないと仕事の目的が達成できないときに出張命令を受けることになります。つまり出張報告書には、現地での行動を記載することになるわけです。参考に根拠法令を確認します。

 

国家公務員等の旅費に関する法律(国)

第四条
2 旅行命令権者は、電信、電話、郵便等の通信による連絡手段によつては公務の円滑な遂行を図ることができない場合で、且つ、予算上旅費の支出が可能である場合に限り、旅行命令等を発することができる。

 

地方自治体は、それぞれの条例で定めています。国の上記旅費法と同じ内容です。

大阪府 職員の旅費に関する条例

第四条

2 旅行命令権者は、電信、電話、郵便等の通信による連絡手段によっては公務の円滑な遂行を図ることができない場合で、かつ、予算上旅費の支出が可能である場合に限り、旅行命令等を発することができる。

 

実際の出張目的も、現地の人と会って意見交換したり、現地で調査したり資料を集めることです。自分の目で実物を見ないと判断できないときに出張します。インターネットが普及してテレビ会議も可能ですが、やはり現地の環境の中で意見交換を行えば、見えてくるものが全然違います。自分の目で見て、耳で聞くことに意味があります。特に現地の雰囲気を感じ取ることが重要です。行政サービスは、みんなの声を聞くことが本務でもあります。

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出張報告書には「旅行の事実」を記載

 

民間企業は営利目的の組織なので、成果が重要視されます。利益にならないことをしていては会社が潰れてしまいます。民間企業の出張報告書では成果の記載が求められるのは当然です。ここが官公庁と大きく異なるところです。官公庁の出張報告書には、必ずしも成果は必要ありません。出張したことによって、これだけの成果が上がったという報告は必要ないのです。

 

むしろ、たった数日間の出張で成果がある方が不思議です。出張の成果を無理に書こうとすると、かなり嘘っぽい出張報告になってしまいます。物を探すような単純な出張なら、すぐに成果があるでしょう。しかし通常の公務出張の成果は、出張から帰った後に、さまざまな仕事を行う中で生まれるものです。

 

つまり官公庁における出張報告書は、成果を記載する必要はなく、出張先で実際にどのような行動をしたかを記載するだけで十分です。 どこで何を調べたのか、どこで誰に会ったのか、どのような意見交換を行ったのかなどの事実を記載するのが官公庁における出張報告書です。出張報告書は、成果報告書ではありません。成果がないと出張が無駄になったと勘違いしている人が多いです。無理やり成果を書かせている旅費担当者もいるようですが、根本的に出張に対する考え方が間違っています。

 

なぜなら成果ばかりを求めてしまうと、旅費の不正事件を誘発してしまうのです。成果を記載した出張報告書を提出するだけで(実際に出張へ行かなくても)旅費が請求できる、と勘違いするようになってしまうのです。過去にカラ出張の不正が多く発生しています。出張報告書は、出張の事実を記載するものという認識が最も重要になるのです。

 

出張報告書が必要な理由は、出張命令を受けたことに対する復命のためです。命令に対して実際に行った結果を報告するのが目的です。出張報告書という名称ではなく、復命書としている組織もあります。

 

特に2010年以降は、出張報告書の役割として事実確認の比重が大きくなりました。

 

かなり昔(2000年の頃)のことですか、官公庁における旅費の不正事件が、次々にマスコミで報道されたことがあります。ほとんどがカラ出張と呼ばれるものでした。2020年現在でも、研究費不正使用の典型例としてカラ出張が挙げられています。

 

カラ出張は、実際には出張していないのに、書類上だけ出張したように見せかけて旅費を受け取ってしまうものです 。予算を消化せざるを得ない背景から不正が頻発しました。昔は官公庁が予算を余らせると大問題になりました。予算権限のある上級官庁から厳しく叱られたのです。そのためカラ出張で予算をゼロにするしかなかったのです。成果を記載した出張報告書さえあれば、旅費を支給できるという誤った考え方によるものです。

 

カラ出張を防止するために、出張報告書への記載は具体性が求められるようになりました。出張報告書には成果を書く必要はないと述べましたが、これは無理に成果を作り上げる誤った考え方をなくすためです。書類上だけ成果を強調しておけば旅費を受け取れる、という考え方が蔓延し、カラ出張という重大な不正を招いてしまったからです。

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出張報告書の提出期限

 

出張報告書には提出期限があります。意外とみんな忘れてしまっています。旅費担当者から催促されて、慌てて出張報告書を提出する人が多いです。出張を終えた後は、ひと仕事終わったように感じてしまうのでしょう。

 

しかし出張報告書を提出して、精算手続きが完了しなければ、出張は終わりではありません。出張報告書の提出期限は、国家公務員の場合には 2 週間以内です。地方自治体はそれぞれの規則で定めています。

 

国家公務員等の旅費支給規程

第八条 法第十三条第二項に規定する期間は、やむを得ない事情のため旅行命令権者の承認を得た場合を除く外、旅行の完了した日の翌日から起算して二週間とする。

 

国家公務員等の旅費に関する法律
第十三条
2 概算払に係る旅費の支給を受けた旅行者は、当該旅行を完了した後所定の期間内に、当該旅行について前項の規定による旅費の精算をしなければならない。

 

上記は出張へ行く前に旅費の支給を受ける概算払の規定ですが、多くの官公庁では精算払いの場合も同じように提出期限を設けています。

 

地方自治体は、それぞれで定めています。参考に神奈川県の例です。

 

神奈川県
職員の旅費及び旅行に要する費用の弁償に関する条例施行規則
第10条 条例第12条第4項に規定する期間は、(略)旅行の完了した日の翌日から起算して2週間と(略)とする。

 

職員の旅費及び旅行に要する費用の弁償に関する条例

第12条
4 (略)請求書及び必要な添付書類の種類、記載事項及び様式並びに(略)規定する期間は、知事が規則で定める。

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出張中に注意したいこと

 

出張先で面会した人とは、可能な限り名刺交換を行いましょう。名刺をもらっておくと出張報告書の作成も楽になります。出張報告書へは現地で打ち合わせした人の氏名も記入した方が良いです。

 

また訪れた場所や、何かを見たりしたときは、なるべくスマホやデジカメで自分も入れて写真撮影しておきましょう。デジカメなら思い出にもなります。万が一カラ出張を疑われたとしても、写真があれば問題ありません。

 

宿泊先の旅館やホテルの名称、電話番号、室内の写真、宿泊代金を支払ったときは領収書も保存しておきます。訪れた場所の写真を可能な限り残しましょう。

 

旅費法では、宿泊代金を定額で支給します。役職に応じて単価が決まっているので、 領収書を提出する必要はありません。宿泊代の領収書を提出してしまうと、旅費事務担当者としては逆に困ってしまいます。宿泊代の定額よりも安かった場合に減額調整すべきか迷ってしまうのです。よけいな領収書を提出すると内容のチェックに時間がかかり、支給手続きも遅くなります。

 

宿泊代の領収書は自分で保管しておきましょう。カラ出張などが問題になるのは、2年とか3年先です。忘れた頃に宿泊を証明することになります。自宅のファイルなどに、出張関係の領収書をまとめて保存しておくと良いです。

 

出張報告書を書くときは、宿泊先のホテル名称、電話番号、所在地、訪問先相手方の所属氏名、打ち合わせ地を記載します。現地での資料収集であれば、いつどこで、どのような資料を収集したか具体的に記載します。収集した資料をスマホで撮影し、写真として添付するのも良いです。事実どおりに記載しておけば、万が一数年後にカラ出張などの疑いを持たれてもすぐに立証できます。

 

数日間出張したときは、それぞれの日ごとに記載します。記載内容は簡潔で構いません、何月何日どこで何をした、どこで誰と会って〇〇の意見交換した、などの記載で十分です。

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出張の成果を無理に記載すると不正になる

 

まれに旅費担当者の中には、出張の成果を求める人がいます。しかし公務における出張では、成果は関係ありません。無理やり成果を記載してしまうと、むしろ「嘘の報告を書く」ことを推奨していることになってしまいます。嘘の出張報告さえ書ければ、旅費を受給できると勘違いするようになるのです。出張報告書は、実際に旅行した事実を報告するものです

 

くどいですが、出張の成果は、後日、日常の仕事をする中で自然と生まれるものです。例えば、たった3日間の出張だけで成果が上がるでしょうか? 落とし物を探すような単純な出張でない限り、そんなことはないでしょう。無理に成果が上がったように書いてしまうと、嘘の報告書になってしまいます。嘘を書いても良いという風潮は、カラ出張を推奨するようなものです。

 

官公庁における出張報告書は、いつどこへ行って、どのようなことをしたか、旅行先での行動を記載するものです。民間企業は利益を追求する組織なので、出張報告書へも成果を記載するのが当然です。公的組織とは考え方が根本的に異なります。

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出張報告書に成果を書く必要がない理由

 

最初に、官公庁と民間企業の根本的な違いを理解しましょう。誰もが知っているとおり、利益を追求するかどうかです。官公庁は営利企業ではありません。そもそもが成果や利益を追求しないのです。

 

官公庁の目的は、国民へのサービスです。人々が必要なものを提供するのが目的です。ただ、ここでの必要なものとは、利益にならない、民間企業が参入しないサービスです。

 

民間企業の商品やサービスは、消費者のニーズを想定して、利益が獲得できるものとして販売されています。消費者に購入してもらい利益を得るという、ひとつの目的のために作られているわけです。商品やサービスを顧客へ売って、利益を得るという明確な目的が存在します。売れなくて利益にならなければ、すぐに販売を中止し、別の商品へ切り替えて利益を追求します。

 

ところが官公庁のサービスは、そもそもが利益にならないものを提供しています。例えば一般家庭のゴミの収集などは、焼却炉の建設費用などを考えたら利益になりません。利益のみを考えるなら、誰もゴミの収集など実施しないでしょう。あるいは、利益にならないからと、もし警察や消防署が廃止されたらどうでしょう。

 

つまり官公庁は、そもそもが利益を追求してはいけないのです。

 

公務出張は、主に二つに区分できます。職員の行う出張と、研究者や技術職員が行う出張です。職員が行う出張は、行政サービスの実施を目的にしています。出張先の現場を見て、企画立案するための参考にします。現地へ行って意見交換したり、現地の住民へ口頭で説明する場合などです。職員自らが、自分の目で見て、耳で聞いて、口で話さないと目的が達成できないのです。現場の空気を五感で感じる必要があるのです。

 

研究者や技術者の出張は、調査目的のことが多いです。現地でデータを集めたり、資料を収集するような場合です。工事契約などでは現場監督を行うこともあります。いずれも現地に行くことで出張の目的が達成されます。

 

民間企業のように、新しい顧客を獲得したり、取引先を拡大したり、新製品のアイデアが湧くような事はありません。民間企業では、自社の利益に結びつくことを探すことが出張の目的です。しかし官公庁の出張用務は、担当職員が現場へ出向いて感じること自体が重要なのです。そのため成果までは要求していないのです。通常、出張命令の出張用務欄にも成果を求める内容は記載しません。

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今では信じられない旅費の不正事件

 

最近(2022年)は少なくなりましたが、2000年頃までは頻繁に旅費の不正事件がマスコミでも報道されていました。今でも検索サイトで「会計検査院 旅費 不正」で検索すると多数の事件が報告されています。

 

官公庁における旅費の不正経理の主なものは、カラ出張でした。地方自治体よりも国の方が圧倒的に不正が多かったです。カラ出張などの旅費の不正事件が起きる背景には、硬直した予算制度がありました。職員旅費として官公庁へ配分される予算は、3月31日までに使い切る必要があったのです。昔は、予算を残すことは許されませんでした。

 

いわゆる単年度予算の弊害です。予算をゼロにしないと、翌年度の予算が減らされてしまうので、やむを得ないと考えられていたのです。職員旅費として予算措置された場合には、無理やりにでも出張へ行き、予算をゼロにしなければならなかったのです。(昔の話です。現在はこのような考え方はありません。)

 

年度の最初に配分される旅費予算であれば、計画的に出張することができます。無理なく予算を消化することができるわけです。ところが12月や1月頃になって、急に旅費予算が追加で配分されてしまうことがあります。

 

多くの官公庁では、1月から3月にかけては繁忙期です。旅費の追加配分を受けても、忙しくて出張へ行く余裕がないのです。しかし上級官庁からは、何としても予算を消化しろと命令されてしまいます。そうなるとカラ出張しか手法がないのです。実際には出張していないのに、架空の出張報告書を作成して旅費を受領してしまうわけです。予算消化を目的としたカラ出張が、かなり問題になりました。

 

なお、予算消化については、次の困った考え方が根底にありました。一部の執行現場を無視した予算担当者の考え方です。(昔のことで、現在はありません。)

 

「絶対に必要という理由で、必死の思いで獲得した予算なのだから、余らせるなど常識として考えられない。何がなんでも予算はゼロにしなければならない。」

 

話を戻しますが、当時の会計検査院は、カラ出張問題をまるで喜んでいるかのようでした。会計検査院としては、カラ出張でマスコミが騒げば、自分たちの出番になると思っていたのでしょう。調査官たちは目を輝かせて会計実地検査を行っていました。私も実際に経験しましたが、当時の会計実地検査は次のように行われたのです。

 

事前に何人かの出張者をリストアップし、その出張者がどのホテルに宿泊したのか、ホテルの住所と電話番号を提出するよう指示されました。また出張で訪問先の官公庁がある場合には、訪問した日時、相手方の氏名、相手方の電話番号を全て提出するように指示があったのです。まるで容疑者のアリバイを調べるような扱いです。

 

そして会計実地検査当日は、信じられないような検査が行われました。会計検査院の調査官から、電話がかけられる個室を準備するよう依頼があったのです。その個室で、会計検査院の調査官は、出張者が実際に泊まったホテルへ電話したり、訪問先の相手に電話して、実際に会っているか確認したのです。しかも誰もいない個室でひっそりと。

 

もちろん会計検査院の調査官がひとりで行った検査なので、どのように検査したのかわかりません。しかしはっきり言えることは、まるで犯人を見つけるように、容疑者の裏付け調査を行ったのです。

 

宿泊先のホテルも迷惑だったでしょう。いきなり会計検査院と名乗る人から、宿泊者名簿の開示を求められるのです。ホテルや旅館は個人情報の守秘義務があります。客の個人情報を勝手には明らかにできないでしょう。まったく非常識で迷惑な行為だったと思います。

 

また出張先の相手も困っていました。会計検査院から電話があり、いきなり「この人と会っているか」と聞かれるわけです。電話を受けた方としては、出張者が何か悪いことをしたと感じるでしょう。会計検査院の調査官が直接電話してきているのです。よほど大きな不正事件を起こしたと思ってしまいます。電話した相手からは、何が起こったのか、後日確認の電話があり、不正事件が起きてないことを説明するのが大変でした。

 

特に研究者は、不正事件などに巻き込まれてしまえば、自分自身が今まで誠実に行ってきた過去の研究成果が全て台無しになってしまいます。不正を疑われるような危ない研究者とは、誰も共同研究したくないと思います。まるで犯人のように扱われ、相手方にも不快な思いをさせる実地検査を、会計検査院は平気で実施していました。

 

出張者を犯罪者のように扱う調査手法は、許されるべきものではないでしょう。そもそもカラ出張の多くの原因は、予算制度そのものにあるのです。予算を余らせてはいけない、という本質的な間違った考え方をなくさない限り、解決しないのです。

 

もっとも、会計検査院の過去の指摘事項を見ればわかるのですが、本質的な問題を解決せずに、同じ指摘事項を繰り返すことで、検査していることをアピールするだけの批判組織が必要なのか疑問にもなります。

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