初めて旅費担当になったとき、最初に知っておきたい基礎知識です。支給と支払いの違い、旅費の事務手続きの流れ、旅費請求に必要な書類、宿泊費、宿泊手当のわかりやすい解説です。
旅費の支給とは?初めて担当する人が知るべき基礎知識
初めて旅費担当になったときは、何を勉強したら良いのか全然わかりません。どの書類をどのように作るのか、どこから書類を取り寄せるのかなど全くわからず不安ばかりです。
そこで初めて旅費担当になったときに、知っておきたいことや勉強方法について解説します。
最初におおまかに旅費について理解しておきましょう。
旅費は、出張命令を受けて通常の勤務場所から離れた場所で仕事をするときに支給されます。出張者本人が必要書類を添えて旅費を請求します。旅費の主な内訳は、交通費と宿泊費です。
ここで支給という言葉に注意してください。旅費を支払うときは、支給という言葉を使います。物品を購入して代金を支払うときは、支出する、とか支払う、といいますが、旅費や給与の場合には支給する、といいます。この違いは意識しておきましょう。
また旅費の支給には二つの方法があります。概算払いと精算払いです。概算払い(がいさんばらい)は、出張へ行く前に旅費を受け取ります。精算払い(せいさんばらい)は、出張に必要な経費を自分のポケットマネーやクレジットカードで先に支払い、 出張から帰った後に請求して旅費を受け取るものです。新幹線のチケット代や宿泊料金などを自分で立て替えて支払うときは高額になるので、クレジットカードなどを使わないと厳しいです。
旅費支給手続きの流れを解説|概算払いと精算払いの違い
旅費の請求から支給までのおおまかな流れです。
出張旅費の事務手続きの流れ
1.旅費請求書類の作成と必要書類の添付(出張者本人が旅費事務担当者へ提出)
2.関係書類の確認(旅費事務担当者)
3.旅費支給(旅費事務担当者)
概算払いのときは、出張を終えた後に旅費の精算手続きが必要です。概算払いでは、同じような書類手続きを出張前と出張後に2回行うことになります。精算払いと比較すると概算払いの手続きは2倍になります。旅費事務担当者だけでなく、出張者本人の負担が大きくなります。
国家公務員等の旅費に関する法律(旅費法)では、支給方法の原則は概算払いです。昔はクレジットカードを持つ人は稀でした。クレジットカードが使えない交通機関も多かったです。そのため出張者の負担にならないように、電車や飛行機のチケットを購入する前に旅費を支給するのが原則でした。概算払いとして事前に旅費を支給し、出張から帰った後に精算手続きを行っていたのです。
しかし、旅費の精算手続きは、出張者本人にとっても旅費事務担当者にとっても2度手間になり、かなりの負担です。旅費の事務手続きを2回行うことになります。旅費の概算払いはかなり面倒です。そのため多くの組織では、概算払いではなく精算払いを原則として1回で支給する方が多いです。精算払いであれば、精算手続きは不要です。1回の旅費請求手続きですべて完了します。
旅費手続きの流れは、出張者本人から請求手続きがあり、旅費請求書と関係書類を事務担当者が確認し、事務担当者が支給手続きを行うことになります。通常、旅費の支給手続きには2週間ほどの期間が必要です。
旅費請求に必要な書類一覧と領収書の取り扱いポイント
2025(令和7)年4月1日から大きく改正された旅費法では、原則、実費精算になりました。旅費として支払った場合は、すべての領収書を保存する必要があります。
旅費を請求するときに必要な書類は、国家公務員等の旅費支給規程で定められています。
国家公務員等の旅費支給規程
第二十四条
2 法第七条第一項に規定する必要な資料の種類は、別表第六のとおりとする。ただし、旅行役務提供者が旅費に相当する金額を請求する場合には、第四項に規定する請求書に相当するものをもつて、同表に規定する額を証明するに足る資料又はその支払を証明するに足る資料に代えることができる。
国家公務員等の旅費に関する法律
第七条 旅費(略)の支給を受けようとする旅行者(略)は、所定の請求書(略)に必要な資料を添えて、これを当該旅費若しくは当該金額の支出をする(略)支出官(略)に提出しなければならない。
そして別表第六の一覧表では、添付する資料として次のように記載されています。
運賃の等級及び額を証明するに足る資料
その支払を証明するに足る資料
つまり、料金を支払った内容がわかれば問題ありません。
上記の「その支払を証明するに足る資料」については、次のように質疑応答で掲載されています。
国家公務員等の旅費制度 よくあるご質問 令和7年6月 ver.1-0
1 「その支払を証明するに足る資料」には、具体的にどのような資料が該当するので
しょうか。A.領収書やレシートのほか、予約画面とクレジットカード明細のスクリーンショットなど、交通手段等の利用及びその支払が客観的に確認できる資料が該当します。
飛行機利用時の旅費請求に必要な書類|搭乗券・搭乗証明書の重要性
特に注意したいことは飛行機を利用したときです。搭乗券の半券、あるいは搭乗証明書が必要です。 これは過去(2000年の頃)に、旅費の不正請求が横行したためです。正規料金で飛行機のチケットを購入し、領収書を受け取った後にキャンセルして格安の飛行機へ変更する不正が頻発したのです。正規料金をキャンセルするときには、旅行代理店へ領収書は紛失したと嘘を言う手法でした。 正規料金と格安料金の差は、路線にもよりますが、往復で2万円から3万円ありました。贅沢な食事と家族へのお土産が買える金額です。これらの不正が横行したため、飛行機を利用したときは実際に乗ったことを証明する半券や搭乗証明書が必要になったのです。
飛行機を利用するときは、領収書と搭乗券の半券または搭乗証明書が必須です。
また海外出張のときは、旅行代理店が作成した日程表が必要です。空港を出発する日時、現地に到着する日時、日付変更線を超えるかなどを日程表で確認します。旅行の日程表は、出張者本人が作成するものではなく旅行代理店が作成するものです。実際のフライトスケジュールは出張者本人にはわかりません。日程表は旅行代理店しか作成できない書類です。旅行代理店が作成した日程表に基づいて宿泊費などを支給します。
旅費法改正後の宿泊費と宿泊手当の考え方|2025年4月施行内容
2025(令和7)年4月1日から施行された旅費法の改正によって、従来の定額支給から実費精算へと大きく変わりました。名称も宿泊料から、宿泊費、宿泊手当と変わっています。
新しい旅費法での宿泊費は、食事代を含まない素泊まり料金のことです。そして宿泊した場合の夕食代と朝食代は、宿泊手当として支給されます。宿泊費部分は実費精算、宿泊手当部分は定額支給になっています。
また、知人や友人宅、実家や親戚の家に泊まるなど、宿泊代が必要ないときには支給されません。
国家公務員等の旅費支給規程
第十四条
4 旅行者が、旅行中自宅(住所又は居所若しくはこれに相当する場所をいう。)に宿泊する場合には、(略)宿泊手当は支給しない。
国家公務員等の旅費制度 よくあるご質問 令和7年6月 ver.1-0
5 旅費法省令第 14 条第4項の「これに相当する場所」とは、具体的にどういった場所を指すのでしょうか。
A.旅費法省令第 14 条第4項の「これに相当する場所」とは、自宅や居所のように夕朝食代の掛かり増しを含む諸雑費が発生しないと考えられる場所を想定しており、例えば、旅行者の実家や親戚宅等が該当すると考えられます。
よくある話ですが、知人宅で泊めてもらうときに、手ぶらではいけないし、普通は手土産を買っていくのだから、宿泊料の一部は必要と思うかも知れません。でも無理です。手土産は認められません。常識的に考えて、知人や友人宅などであれば宿泊料は支払いません。また手土産が必要なようであれば、自腹で購入することになります。もし自腹で払いたくないのであれば、安いホテルを探して宿泊するべきです。自腹でお土産を買えないなら、知人宅や友人宅に宿泊するべきではありません。相手も迷惑です。
旅費担当者の効率的な勉強方法|法律・規程・条例の読み方
初めて旅費を担当するときは、時間のあるときに法律や条例、各種の通知やマニュアルなどに目を通すと良いです。 目を通す方法は、さっと見るだけです。 覚える必要はありません。さっと見ておくだけで、どの場所にどのようなことが書かれているか、次第にわかるようになります。映像で捉える速読法に近い読み方かもしれません。
具体的に該当する法令等があったときに、じっくりと理解しながら読みます。旅費事務に必要な法令等は次のとおりです。
旅費法改正後(2025年4月1日以後)
国家公務員等の旅費に関する法律・・法律
国家公務員等の旅費に関する法律施⾏令(新設)・・政令
国家公務員等の旅費⽀給規程・・省令
地方自治体は、それぞれ条例などで定めています。 探すときは次のようなキーワードです。
「東京都 旅費 条例 」
参考に、東京都の例です。
職員の旅費に関する条例(国の旅費法に該当する条例です。)
職員の旅費に関する条例の運用方針等について
職員の旅費支給規程
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