国立大学の研究者が出張するときに、民間企業が旅費を負担する可否

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民間企業との共同研究で、出張旅費を負担するときの注意点です。産学連携が推進され、国立大学と民間企業の研究者が一緒に出張することが多くなりました。「業者との癒着」や「利益相反」を防止するために正式な共同研究契約書の取り交わしが必要です。

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国立大学研究者の出張旅費を民間企業が負担

 

国立大学の研究者が、民間企業と共同研究を実施することが多くなりました。産学連携は、1999年に制定された日本版バイ・ドール法(産業活力再生特別措置法第30条)以降、政府が推進してきました。また、民間会社から依頼を受けて調査研究を行うこともあります。国立大学の用務だけでなく、民間企業の用務で出張することがあります。この出張旅費を、民間企業が負担することの是非について解説します。

 

通常は、国立大学の研究者が出張するときの旅費は、国民の税金である国の予算を財源とします。給料も税金が使われています。国立大学の運営経費は、学生の授業料で賄っていると思っている人も多いと思います。しかし、授業料などの自己収入は、微々たるものです。国立大学の運営経費の半分近くは、運営費交付金や科研費と呼ばれる税金で賄われています。

 

(参考 平成30年度収入予算のうち税金の割合)
東京大学  49%
京都大学  38%

 

(参考 平成30年度収入予算のうち授業料の割合)
東京大学  7%
京都大学  7%

 

研究者の出張旅費を、民間企業が負担するケースでは、次のメリットがあります。

 

民間企業の研究者との情報交換によって、実社会の様々な情報や知見が得られる。

 

未知なる課題を解決したり創造したりすることが可能にる。

 

これらは国立大学側の研究者にとって、自身の研究を進展させるために必要なことなので、民間企業が負担してくれるなら、税金の節約になり助かると考えます。また、国立大学組織としても、同様に考えます。民間企業が出張経費を負担してくれるなら、税金を原資とする研究費の節約になり、良いことではないかと考えます。

 

たしかに、国立大学の研究者の旅費を民間企業が負担してくれるなら、その分の大学経費や税金の節約になります。旅費法等でも明確に経費負担を禁止する条文はありません。

 

「業者との癒着」と「利益相反」

 

国立大学と民間企業の研究者が共同研究を実施するときに、契約書を正式に取り交わし、研究内容や事業化(研究成果の商品化等)について詳細に合意していれば、利益相反も業者との癒着も払拭されているので問題ありません。知的財産の帰属や利益の配分方法などを、契約書として正式に取り交わすことが必要です。しかし、正式な契約手続きを経ずに、国立大学の研究者が、民間企業に旅費を負担してもらう行為は、次のような疑惑が生じます。

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疑惑をもたれる行為

 

国立大学の研究者が、出張旅費を民間企業に負担してもらうときに、留意したいポイントです。共同研究契約書を取り交わしてないケースです。

 

  • その出張用務は、民間企業のためではないか。(そもそも研究は、内容が複雑で広範囲です。大学の用務と民間企業の用務を区分することは不可能です。)
  • 特定の企業と癒着しているのではないか
  • 特定の企業へ便宜供与を行い、見返りを求めているのではないか

 

民間企業は営利企業です。民間企業の社員でもある研究者の行動は、常に自社の利益に繋がらなければなりません。そうでなければ会社に対する背任行為になってしまいます。

 

つまり、国立大学に所属する研究者の旅費を民間企業が負担することは、癒着を疑われ、特定の企業の利益のために行動している(利益相反・責務相反)と看做されてしまうのです。

 

国立大学の研究者から見れば、民間企業の研究者と一緒に研究することは、国の政策でもある産学連携の推進、研究成果の社会還元に資するものです。どこがいけないのかと疑問になると思います。しかし、その考え方自体が、公私混同であり、国が推進する産学連携制度を正しく理解していないのです。

 

国民の税金から給料や研究費をもらっている研究者が、共同研究契約書の取り交わし等の正式な手続きを経ずに、特定の企業のために働くことは許されません。この考え方は、昔も今も、日本では変わりません。日本社会は「業者との癒着」を許さない「公正性」を重んじる伝統と習慣があります。

 

「産学連携」と「業者との癒着」

 

2004年頃から産学連携が推進されています。それ以前は、国立大学の研究者が民間企業と一緒に研究することは、卑しい考えに基づく「業者との癒着」でした。これを回避する公正な手段として、共同研究契約書の締結という制度が構築されたのです。共同研究契約を締結せずに、国立大学の研究者が自分の独断で民間企業と共同研究を行えば、それは「業者との癒着」と看做され、現在でも「不正」です。

 

正式な手続きを経ずに、民間企業に旅費を負担させる行為は、国立大学の研究者にとって自殺行為です。民間企業に経費を負担してもらってはいけません。部分的な負担も同様です。便宜を図るために企業から接待を受けていると思われてしまいます。

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