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契約手続き

納品が遅れるときの対応方法、契約書の納入期限に間に合わないとき

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納品日が遅れる理由を聞いている 契約手続き
納品日が遅れる理由を聞いている
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 契約実務を担当していると、まれに営業担当者から「納品が遅れそう」と連絡を受けることがあります。すでに契約書を取り交わしている場合、納入期限に遅れて良いのか、変更契約できるのか、あるいは契約解除や違約金になるのか、など判断に迷います。納品が遅れるときの対応方法です。

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納品が遅れるときの対応方法

 

正式な契約書を取り交わした後で、「納品が遅れる」、「完成期限に間に合わない」などの連絡を受けたときの対応方法です。契約書の履行期限に遅れると、民法上の履行遅滞(りこうちたい・・債務不履行)になるので、次の手順で進めることになります。

 

納入期限に遅れる場合の対応方法

 

1.納期が遅れる原因を聞き取り調査する。

 

2.原因が不可抗力によるものか、相手方の責任によるものか、責任の所在を判断する。

 

3.不可抗力によるときは、納期の遅れによって支障があるか調査する。

 

4.相手方の責任による遅れなら契約解除や違約金なども検討する。

 

まず最初に行うことは、遅れる原因をくわしく聞くことです。遅くなってしまう原因を正確に把握します。契約の相手方の責任によるものか、あるいは相手方の責任ではなく、不可抗力によるものか判断しなければなりません。

 

納入期限までに余裕がある時期なら、聞き取り調査を行うときに、遅れる原因となった関係資料を一緒に持参してもらいます。関係資料は、納品が遅れる原因を詳細に記した「納入期限延長願い」と、その原因を客観的に証明できる新聞記事などの資料です。客観的に証明できる資料とは、契約の相手方でない第三者の資料になります。マスコミや公的機関が発表している内容が望ましいです。

 

しかし納品の遅れが判明する時期は、通常、納入期限近くです。ギリギリのタイミングで「納品が遅れる」と連絡があります。期限ギリギリなので、検討するのに余裕がないことが多いです。契約の相手方へ聞き取り調査を行うときは、可能な限り官公庁側の関係者(契約担当者や上司、使用部署の人など)を集めて行います。担当者ひとりで聞き取り調査するのは危険です。後日、「言った、言わない」などの大きなトラブルになることがあります。契約担当者の他に上司にも入ってもらい、聞き取り調査を行います。納品の遅れは異常事態なので、電話で済ませるような軽い内容ではありません。必ず、民間企業側の担当者へも上司に同席してもらうよう依頼します。

 

聞き取り調査までに契約担当者が行うべきことは、契約書の条文の確認です。債務不履行(履行遅滞)や、契約解除などの該当条文を黄色のマーカーなどでマークした契約書のコピーを用意します。また納品が遅れたときに、どのような業務に支障があるか関係者から聞いておきます。

 

官公庁側と民間企業側で打合せするときは、双方とも担当者のみでなく、意思決定できる立場の上司も同席します。これは打合せのときに、「持ち帰って上司と相談します」ということにならないようにするためです。納入期限までに余裕がないときは、打ち合わせの場で、今後の進め方を決定しなくてはなりません。そのためには、契約についての決定権のある立場の人に参加してもらいます。また、もし相手方の弁護士が同席するようであれば、かなりまずい事態が想定されるので、官公庁側も弁護士へ依頼し立ち会ってもらいます。(打ち合わせの日程調整するときに、出席予定者を聞いておきます。)

 

 

そして打合せでは、遅れる原因が不可抗力なのかを双方で確認します。

 

納入の遅れが不可抗力の場合

 

〇 自然災害
地震、津波、大雪、大雨、台風、火災等・・2020年に発生した新型コロナウイルスも該当します。

 

 

〇 公共交通機関や道路の影響
交通ストライキ、停電、電車の故障、道路の通行不可、飛行機の遅れなど

 

契約の相手方が代理店のときは、メーカー側の理由(出荷の遅れ、製造の遅れ、輸入の遅れなど)も確認します。打ち合わせ時には同席してもらったり、メーカーから遅れる理由を書面で提出してもらいます。

 

契約の相手方としては、自分たちで努力しても原因を避けられない事情であること、誰が考えても原因を回避できず、無理と思える状況であれば不可抗力です。不可抗力なら、ペナルティなしで納入期限を延長することが可能です。不可抗力ということを双方で確認した後に、納品が遅れる期間を確認し、官公庁側の業務に支障がなければ契約を変更します。変更契約書を作成して、納入期限を正式に延長します。変更契約書には次の書類を添付します。

 

〇 変更理由書
官公庁側で、不可効力と判断した経緯を記載します。

 

〇 契約の相手方からの「納入期限延長願い」

 

〇 変更せざるを得ないことを示す根拠資料
事実を証明する書類(新聞記事や公的組織などの公表資料)

 

変更理由書と根拠資料は、契約を変更するときに必ず作成する書類です。変更理由書を作成しないと、特定企業との癒着などを疑われてしまいます。理由もなく納入期限を延長してしまうと、「相手方へ便宜を図った」、「相手方を有利に扱った」などの疑義を招くのです。

 

納入期限延長願い

 

契約の相手方から、納品が遅れることになった経緯と、その原因を詳細に書いてもらいます。当初の納入期限を、いつまで延期するかも明記してもらいます。変更する納入期限は余裕を持って設定します。「納入期限延長願い」には、契約書の名義人と同じ代表者の押印が必要です。

 

変更せざるを得ないことを示す根拠資料

 

納品が遅れることになった原因(自然災害や交通機関の遅れなど)を示す新聞記事や、WEB上のニュース記事などの写しを添付します。交通機関に関係するものは、遅延証明書などがあれば添付します。新型コロナウイルスなどの感染症では、各省庁から自然災害と同じく不可抗力とみなすよう通知されています。必ず、通知もコピーし変更契約書の関係書類と一緒に保存しておきます。

 

施工中の工事における新型コロナウイルス感染症の罹患に伴う対応について (抜粋)
令和2(2020)年2月25日国土入企第52号

 

国土交通省土地・建設産業局建設業課長から各都道府県あて

 

・・・受注者から工期の見直し等の申し出があった場合には、必要に応じ、工期の見直しやこれに伴い必要となる請負代金額の変更等、適切な対応を講じていただくようお願いします。なお、この場合においては、特段の事情がない限り、受注者の責によらない事由によるものとして取り扱われるべきものと解されますので、よろしくお取り計らいください。・・・

 

地方公共団体の調達における新型コロナウイルス感染症への対応について(抜粋)
令和2(2020)年3月3日総行行第6 1 号

 

総務省自治行政局行政課長から各都道府県への通知

 

1.工期・納期の見直し、契約金額の変更及び迅速な支払い
新型コロナウイルス感染症の影響に伴い、受注者から工期又は納期の見直し等の申し出があった場合には、必要に応じ、工期又は納期の見直しやこれに伴い必要となる契約金額の変更等、適切な対応を講じるよう努めること。

 

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納品が遅れる原因が、不可抗力でない場合

 

納品遅れの原因が次のケースは、不可抗力とは考えられません。納入期限を遵守するよう毅然と交渉します。

 

納入の遅れが不可抗力でない場合

 

〇 他の大口契約が入り、そちらの契約の方が利益が大きいので、他の顧客を優先したい。
(会社としての営業判断)

 

〇 営業担当者あるいは社員のミスにより納品準備が遅れた。

 

これらの会社側の判断やミスであれば、明らかに責任があるので、納品の遅れは認めません。納入期限は絶対に守らせなければなりません。工程管理等の計画がずさんであれば、休日もシフトを組んで24時間体制で納期に間に合わせるよう指示します。もし納入期限に遅れたときは、契約書の該当条文を見せてペナルティを課すことも詳しく説明します。

 

また官公庁の契約では、違反事実があれば、ペナルティとして取引停止措置になり上級官庁へ報告することになります。もし取引停止になれば、上級官庁から全省庁へ連絡がなされ、日本全国の官公庁から取引停止措置を受けることになります。会社の信頼が失われ、莫大な損害を被る恐れがあることも説明します。

 

契約違反等の報告は、予算決算及び会計令第百二条で義務になっています。各官公庁 → 財務大臣 → 各省庁へ報告がなされます。約束を守らない不良業者を官公庁から排除するための制度です。地方自治体もそれぞれで指名停止の基準などを定めています。

 

予算決算及び会計令

二条 契約担当官等は、その取扱いに係る契約に関し、第七十一条の規定に該当すると認められる者があつたときは、財務大臣の定めるところにより、その事実を詳細に記載し、又は記録した書面により当該各省各庁の長に報告しなければならない。

 

七十一条 契約担当官等は、一般競争に参加しようとする者が次の各号のいずれかに該当すると認められるときは、その者について三年以内の期間を定めて一般競争に参加させないことができる。その者を代理人、支配人その他の使用人として使用する者についても、また同様とする。

五 正当な理由がなくて契約を履行しなかつたとき。

 

納品が遅れるときに、その責任が民間企業側にあれば、契約書に基づくペナルティ(履行遅滞)と民法に基づく損害賠償を検討することになります。通常は契約書の中で、履行遅滞の場合の損害金計算方法を定めています。遅延日数に応じて損害金を請求します。

 

損害金 = 納期が遅れた契約代金額 × 遅延日数 × 遅延利息の率

 

遅延利息の率は、官公庁側の代金支払いが遅れたときの「政府契約の支払遅延防止等に関する法律」第八条と同じ率を定めていることが多いです。(率は頻繁に改正されます。最新のものを確認しましょう。)

 

政府契約の支払遅延に対する遅延利息の率
令和3年3月9日財務省告示第49号

年二・五パーセント

 

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契約解除と損害賠償(違約金)

 

納品が遅れることで、重大な支障が生じるときは、契約解除と損害賠償を検討します。しかし双方の主張が争いになる可能性が高いので、法務専門部署や弁護士に事前相談することになります。契約解除や損害賠償を行うときは、話がこじれると訴訟になります。この段階では、すでに担当者レベルの判断は超えています。必ず弁護士や法務部門の指示に基づいて動きます。

 

契約解除の判断は、納品の遅れが業務に重大な支障を来たし、すぐに他の会社と契約し直す必要があるときです。民間企業側のミスを原因とする契約解除であれば、違約金を請求することになります。

 

契約書の条文の中に、「契約解除の場合は、違約金として契約金額の10%に相当する額を支払わなければならない」と定めておくと安全です。契約を解除するときは、弁護士に相談して、内容証明郵便で相手方へ、契約の解除を通知することになります。

 

違約金だけでなく、損害賠償するときはかなり大変な事態になります。損害額を具体的に証明しなければなりません。そして相手方が納得しなければ訴訟です。損害賠償金額は、「契約違反がなければ必要なかった経費」を積算することになります。この段階も弁護士へ相談しながら進めます。

 

契約違反は、訴訟などのリスクが生じます。法務部門や弁護士によるアドバイスに基づいて事務処理を進めることになります。

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