請求書の金額は、訂正印で修正可能でしょうか?単純な計算ミスや記載ミスを見つけたときに、請求書の金額を訂正することは問題ないのか、会計担当者の訂正印で処理できるのか解説します。訂正が認められない理由と、根拠法令も理解しておきましょう。
書類の金額訂正
会計書類の金額訂正は認められるのでしょうか?請求書の合計金額が間違っていたときの処理方法です。
官公庁で会計実務を担当していると、支払処理を行うときに、請求書の金額ミスに気付くことがあります。稀にですが、民間企業から提出してもらった請求書の合計金額が間違っていることがあるのです。年度末などで処理期限が迫っていて、時間的に余裕がないと、相手方へ書類の再作成を依頼するのが面倒になります。
正しい金額を確認するため、営業担当者へ電話すると、単純な記載ミスや計算ミスの場合がほとんどです。営業担当者から、「すみません、そちらで請求書を訂正して処理してもらえませんか?」などと依頼されてしまいます。
しかし当然ながら、請求書の金額訂正は、作成した民間企業側が行うべきものです。官公庁側の会計担当者が訂正できるものではありません。常識的に考えても、第三者が作成した金額を書き換えれば不正を疑われてしまいます。
では、営業担当者が近くにいて、立ち寄って訂正してもらうことは可能でしょうか?
請求書の合計金額を手書きで訂正し、営業担当者が訂正箇所にサインあるいは押印することは可能でしょうか?
金額の訂正を認めると、不正の温床に
請求書などの金額部分の訂正について、合計金額の訂正が可能か解説します。
決裁書類などの字句を訂正するときは、間違えた部分に二重線を引き、その上部や右側に正しい字句を記入し、二重線に重ねて担当者の訂正印を押します。
しかし請求書の合計金額について、この訂正方法を認めてしまうと、会計担当者による不正行為が可能になってしまいます。訂正を認めることで内部牽制が機能しなくなり、コンプライアンス上も問題となります。訂正した金額について、ほんとに正しい金額なのか、誰も判断できなくなってしまうのです。訂正した担当者以外は、正当性を判断できません。
合計金額を訂正する事務処理方法を認めると、横領や贈収賄などの不正目的で、会計担当者が支払金額を意図的に操作できてしまうのです。
請求書の金額訂正はできない
金額訂正の可否について、国の会計法令では、古い大蔵省令で次のように明確に定めています。
会計法規ニ基ク出納計算ノ数字及記載事項ノ訂正ニ関スル件
(大正十一年五月三十日大蔵省令第四十三号)
第二条 会計法規ニ基ク出納計算ニ関スル諸書類帳簿ノ記載事項ハ之ヲ改竄スルコトヲ得ス
2 前項ニ規定スル諸書類帳簿ノ記載事項ニ付訂正、挿入又ハ削除ヲ為サムトスルトキハ二線ヲ画シテ其ノ右側又ハ上位ニ正書シ其ノ削除ニ係ル文字ハ仍明ニ読得ヘキ為字体ヲ存スルコトヲ要ス
但シ金銭又ハ物品ノ受授ニ関スル諸証書ノ数字ハ之カ訂正ヲ為スコトヲ得ス
数字以外ノ事項ニ付訂正、挿入又ハ削除ヲ為シタルトキハ其ノ字数ヲ欄外ニ記載シ作製者之ニ認印スルコトヲ要ス
上記の第二項の但し書きに注目しましょう。「但シ金銭又ハ物品ノ受授ニ関スル諸証書ノ数字ハ之カ訂正ヲ為スコトヲ得ス」と記載されています。金銭の授受に関する書類としては、請求書と領収書が該当します。つまり請求書の金額訂正はできないと定められています。
請求書の合計金額の訂正は、上述のように法令で禁止されています。金額を訂正する必要があれば、面倒でも、書類を作り直してもらうのが適正な会計処理です。不正防止のためにも、請求書の金額訂正は認めない方が安全です。
内訳部分の金額訂正は可能
合計金額ではなく、内訳の金額や、数量・文字については、訂正は可能です。合計金額の訂正でなければ、請求書の発行者(会社であれば社長などの代表者)の訂正印により修正できます。実務上は、社長の訂正印が必要になりますので、それなら、全て作り直してもらった方が(手間も同じなので)良いです。
営業担当者の訂正印は、認めない方が安全です。通常、営業担当者は、会社としての請求権限を有していません。請求書の整理番号などの請求金額に影響しない部分であれば、営業担当者の訂正印で問題ありません。
なお、入札書や見積書は金額訂正が可能です。契約の申し込み書類であり、金銭の授受を行うための書類ではありません。ただ見積書の訂正は、少しかっこ悪いです。やはり再作成してもらった方が良いです。
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