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会計法令の解説

指名競争入札よりも一般競争入札の方が安全!指名基準の具体例

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一般競争入札が安全 会計法令の解説
一般競争入札が安全
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指名競争入札を実施するときの注意点です。一般競争入札と異なり、あらかじめ数社を選んで指名通知を送付します。しかし指名する会社を選んだ理由について、後日問題になることがあります。もし選ぶ理由が明確でないなら、一般競争入札の方が安全です。

 

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指名競争入札とは

 

指名競争入札と一般競争入札の違いは、発注情報を公開するかどうかです。一般競争入札は、入札公告をインターネット上や、職場の掲示板へ公開し、誰もが見られる状態にして不特定多数の参加者で競争します。一方、指名競争入札は、発注者の官公庁側が、事前に選んだ会社のみで入札します。指名通知を受け取った会社のみが、発注情報を知ることができ入札へ参加できます。指名競争入札は、事前に参加者を制限してしまいます。

 

なお2022年現在は、電子調達や電子入札が普及し、発注情報を公開して自由に参加できる指名競争入札もあるようです。多様な(わけのわからない)入札方法が広まっています。本来、誰でも参加できるなら一般競争入札にすべきです。

 

「指名競争入札」という呼び方以外にも、指名入札、指名競争契約と呼ぶことがあります。いずれも契約の相手方を選ぶ契約方式で、同じ意味です。「指名競争入札」と、「指名競争契約」という呼び方がありますが、入札の後に契約を締結するので、両者の違いは手続きの段階だけです。つまり結果的には、指名業者による競争で同じです。契約手続きの流れは次のようになります。

 

入札 ⇒ 開札 ⇒ 落札、契約締結

 

官公庁の契約方式は、一般競争入札が原則です。国民の税金を使って契約するので、誰でも参加できる一般競争入札が原則になっています。指名競争入札は、契約方式の例外的な手続きのため、会計法令で指名会社を選ぶ方法が定められています。予算決算及び会計令(予決令)第九十七条は、指名人数を10人以上とすること、また第九十六条では、指名基準を定めることにしています。

予算決算及び会計令

第九十七条  契約担当官等は、指名競争に付するときは、第九十五条の資格を有する者のうちから、前条第一項の基準により、競争に参加する者をなるべく十人以上指名しなければならない。

 

「・・前条第一項の基準・・」が指名基準です。「・・なるべく十人以上・・」なので、契約を履行できる会社が少なければ10社以下でも問題ありません。ただ通常は10社指名します。

 

予算決算及び会計令

第九十六条  各省各庁の長又はその委任を受けた職員は、契約担当官等が前条の資格を有する者のうちから競争に参加する者を指名する場合の基準を定めなければならない。

 

上記第九十六条の指名基準の例として、厚生労働省と環境省を参考に掲載します。いずれも、契約の相手方として問題がないかという視点で基準を定めています。過去に不祥事を起こした会社(不正事件や取引停止事例)を排除するものです。逆に言えば、危ない会社でなければ指名の対象になります。

 

厚生労働省の指名基準(抜粋)

3 物品製造等

(1)当該物品の製造等に関して相当な経験を有し、かつ、納入成績(納入期限、検収結果等)が良好であること。

(2)当該物件の納入、保守又は部品等の補給を迅速、適切に行うことのできること。

(3)経営規模、取引先その他の状況より、当該契約の履行が確実であること。

(4)財務諸表類その他により、経営が信頼できること。

(5)特殊技術者及び特殊設備等を必要とする場合にそれらを保有する業者であること。

(6)地理的条件に恵まれている業者であること。

 

 

この他に、建設工事では、契約の規模に応じて、等級の上位や下位を含める基準です。

 

環境省では次のようになっています。ほぼ同じです。

 

環境省所管契約事務取扱要領(抜粋)
(指名基準)
3.令第96条第1項に規定する競争に参加する者を指名する場合の基準は、指名競争に参加する資格を有する者のうちから、次の各号に掲げる契約の種類ごとに当該各号に規定する事項を総合勘案して指名するものとする。

イ 不誠実な行為の有無

ロ 経営状況

ハ 契約履行能力及び技術的適性

ニ 受注意欲

ホ 地域性及び地元業者への配慮

へ 指名及び受注の状況

 

指名競争入札は、官公庁側の契約担当者が、入札参加資格(全省庁統一資格)を有する会社の中から、任意に選んだ会社のみによって入札を行います。選ぶ基準は、過去の契約実績や契約金額の予定額を考慮します。問題のある会社を除外し、指名通知を送る会社を決定します。

 

当然のことながら、多数ある会社の中から指名するわけですから、契約担当者の恣意的な判断も入ります。信頼のおける会社という視点から、過去の契約実績を考えて安心できる会社を選びます。

 

契約担当者としては、入札などの契約手続きによるトラブルは極力避けたいものです。官公庁側の要望に対して、丁寧に応えてくれる会社を選びます。しかし、ここは癒着が生じやすい部分でもあります。また指名競争入札の場合には談合も生じやすいというリスクがあります。

 

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指名競争入札よりも一般競争入札が安全

 

インターネットや電子メールのなかった時代は、競争入札の有資格者名簿も、限られた人しか見ることができませんでした。現在(2022年)とは比較にならないほど少ない情報の中で、契約事務をこなしていたわけです。今はインターネットが普及し、情報公開も進んでいます。競争入札の参加資格についても、全省庁統一資格のサイトが構築されています。インターネットによる資格申請も可能です。競争参加資格のある会社の所在地や電話番号が一般公開されています。誰でも簡単に競争参加資格を持つ会社を調べることができます。

 

しかし実務上は、指名競争入札を行うよりも、一般競争入札で広く競争参加者を集め、競争性を最大限確保する方が安全です。指名競争入札も一般競争入札も、事務手続きの労力に大きな差はありません。

 

指名競争入札を実施するなら、多数の会社の中から選んだ理由を明確にし、書類として保存しなければなりません。対外的に説明できる客観的な資料を、指名理由書として保存します。もし明確で合理的な指名理由がないなら一般競争入札とすべきです。合理的な理由とは、誰が考えても同じ判断(結果)になる理由です。誰かが疑義を持つようであれば、合理的な理由ではありません。

 

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地方自治体の指名基準

 

上記の予決令は国のルールです。地方自治体のルールを参考に抜粋します。国のルールよりも地方自治体の方の指名人数は少ないです。東京都も大阪府も5人以上指名しなければなりません。

 

東京都契約事務規則

第二十九条 契約担当者等は、指名競争入札により契約を締結しようとするときは、当該入札に参加することができる資格を有する者のうちから、当該入札に参加させようとする者をなるべく五人以上指名しなければならない。

 

大阪府財務規則

第五十九条 契約担当者は、令第百六十七条の十二第一項の規定により入札に参加させようとする者を指名するときは、やむを得ない理由があるときを除き、五人以上を指名しなければならない。

 

地方自治法施行令

第百六十七条の十二 普通地方公共団体の長は、指名競争入札により契約を締結しようとするときは、当該入札に参加することができる資格を有する者のうちから、当該入札に参加させようとする者を指名しなければならない。

五人以上となっていますが、契約内容によっては、さらに少ない人数になることもあります。ただ絞り込むときは明確な理由が必要です。指名理由を文書として保存することになります。

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