指名競争入札は、一般競争入札と同じような手続きが必要です。入札公告を公開しないだけで、手間はほとんど変わりません。あらかじめ入札へ参加する者を選んでしまう指名競争入札では、常に指名基準が問題になります。可能な限り一般競争入札すべきです。
事務簡素化を目的にした指名競争入札
官公庁が締結する契約の相手方は、公平・公正に選ばなければなりません。相手方を選ぶための契約方式は、一般競争入札が原則です。例外として指名競争入札と随意契約が認められています。
国の場合は、競争に加わる者が少数になる場合、一般競争入札の方が不利になる場合、予定価格が少額な場合に指名競争入札が認められています。このうち予定価格が少額な場合の根拠法令は次のとおりです。
予算決算及び会計令
第九十四条
(略)指名競争に付することができる場合は、次に掲げる場合とする。一 予定価格が五百万円を超えない工事又は製造をさせるとき。
二 予定価格が三百万円を超えない財産を買い入れるとき。
一方、地方自治体は、国の予算決算及び会計令のように一定金額以下の契約で指名競争を認める定めはありません。競争参加者が少ないなど、一般競争入札できない場合に限られます。
地方自治法施行令
第百六十七条
(略)指名競争入札によることができる場合は、次の各号に掲げる場合とする。一 工事又は製造の請負、物件の売買その他の契約でその性質又は目的が一般競争入札に適しないものをするとき。
二 その性質又は目的により競争に加わるべき者の数が一般競争入札に付する必要がないと認められる程度に少数である契約をするとき。
三 一般競争入札に付することが不利と認められるとき。
指名競争入札の事務負担
指名競争入札は、入札公告を公開しないので、一般競争入札に比べて事務負担が軽減されるように思えます。しかし、実際の事務負担は変わりません。
契約手続きの中で、一番労力のかかる大変なところは、仕様書と予定価格の作成です。少額な随意契約であれば省略可能ですが、指名競争入札では省略できません。一般競争入札と指名競争入札の大きな違いは、入札公告と指名通知の部分だけです。
入札公告は、契約したい内容をWEB上へ公開する手続きです。指名通知は、郵送で送る手続きです。内容はほぼ同じです。つまりWEBへの公開手続きと、郵送で送る作業の違いだけです。この事務負担は、ほとんど同じなのです。両方とも、ゆっくり作業して1時間程度です。
指名競争入札よりも一般競争入札とすべき
官公庁側の契約担当者が、あらかじめ特定の会社を10社ほど選び、指名通知に基づいて実施するのが指名競争入札です。一般競争入札との違いは、入札公告を公開しないことだけです。指名通知が入札公告の代わりです。
指名通知を受け取った会社以外は、入札自体を知ることができません。(2002年くらいから公募型指名競争入札も始まりましたが、手続きを複雑にしただけで、目的が良くわかりません。)契約担当者が指名会社を選ぶので、どうしても恣意的にならざるを得ません。多数ある会社の中から、「なぜ、その会社を選んだのか」という指名基準の対外的説明が苦しいのです。
事務負担が軽減されず、事務簡素化のメリットがないなら、癒着などの批判リスクのある指名競争入札よりも、一般競争入札として広く公開した方が安全です。誰もが参加できる機会を確保した一般競争入札を実施すべきです。もし信頼度に不安があるなら、例えば過去に類似の契約実績を有することを入札条件とすれば良いのです。
インターネットが普及し情報公開も進んでいます。公務員に対して、昔より国民の目も厳しいです。癒着を疑われるような契約方法は避けるべきです。
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