昔、新人時代に教わったこと、今なら「パワハラ」になる教えとは

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基礎知識
2006年 セブ島
基礎知識

新人のときは不安ばかりです。どのように仕事を覚えれば良いのか、職場の「しきたり」が何なのか、どのように行動すれば良いのか、わからないことばかりです。昔、新人のときに教わったことを解説します。

 

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新人時代に教わったこと

 

最近(2020年7月)、「仕事が覚えられない」、「仕事がわからない」、という検索キーワードで訪れる人が増えてきました。おそらく、新型コロナウイルスによる「在宅勤務」などの影響もあるかと思います。

 

2020年7月現在、新型コロナウイルスによる感染は、いったん収束するかに見えましたが、非常事態宣言解除(5月25日)後、7月から再び増えてきました。現在も感染の勢いが増しています。有効な治療薬やワクチンがないため、仕方なく、新型コロナウイルスと共存する社会を目指して「三密を防ぐ」方策が模索されています。

 

今年4月に入社した新人たちは、職場の研修会が開催されず、仕事を覚える機会が少なくなりました。

 

職場の研修会や、先輩たちに教えてもらう機会が減ってしまうと、仕事が覚えられなくなり、かなり不安になります。

 

そこで、私が新人時代に、先輩たちから教わったことを、参考に解説します。

 

(昔は、ハラスメントという言葉さえない時代です。現在ではパワハラに該当する部分も含まれています。)

 

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昔と現在の「新人教育」の違い

 

昔(1979年)と現在(2020年)の、「新人教育」の違いを解説します。新人のときに、実際に先輩たちから教わっていたことと、自分が年齢を重ね、新人たちを教える立場になったときの比較です。昔と今の「新人教育」の違いです。

 

1979(昭和54)年に、私は東京大学へ事務職員として就職しました。当時の東京大学は、「人を育てる」ことに重点を置いてました。当時は、東京大学だけでなく、公務員すべて、いや日本社会すべての共通した認識でした。1986年からのバブル期へ突入する前です。社会全体が右肩上がりに堅実に成長し、人も金も余裕があった時代でした。

 

組織では「人が一番大切」、「人を育てることで、会社や社会が発展する」と考えられていました。リストラは、ほとんどなく、誰も考えませんでした。この時代の「人を育てる」という概念は、「厳しく育てる」ことを意味します。忍耐強く先輩たちに「ついていく」ための教育です。社会人は耐えて一人前、「我慢こそが美徳」という風潮でした。新人教育は、単純に精神面を「鍛える」ことでした。

 

これらの新人教育の概念が崩れたのは、1989年頃に「ハラスメント」という言葉が出現してからです。2020年現在は、新人に対する強い指導は、「パワーハラスメント」になり、許されない社会になっています。2020年6月からパワハラ防止法が施行されました。昔ながらの「新人を鍛える」という考え方は、通用しなくなっています。

 

おそらく昔よりも、新人にとっては、仕事が覚えづらい環境になっています。その分、プライベートがしっかり守られ、生活がしやすい環境にもなっています。

 

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新人の基本姿勢

 

私が新人時代(1979年)に、先輩から教わったことは次の通りです。

最初に「周りの人の名前」を覚える

 

先輩たちよりも30分早く出勤し、先輩達全員の机の上を拭いておく

 

お茶入れを率先して行う

 

仕事教えてもらう時には必ずノートとペンでメモする

 

先輩からの誘いは、絶対に断らない

 

これらの教えは、(今ではパワハラになる部分もありますが)ひとつひとつに意味がありました。しばらくしてから、本当の意味を理解できるようになりました。くわしく解説します。

 

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最初に「周りの人の名前」を覚える

 

人の名前を覚えるのは、得意な人と、得意でない人がいます。私は名前を覚えるのが苦手でした。それ以前から、他人に対してあまり興味がなかったのかもしれません。

 

新人として配属されたときは、最初に、周りの人の名前を覚えることが大切です。名前を覚えることで、「わからないことを聞く」ことができます。座席表などがあれば、時間があるときに、座席表を見ながら確認します。名前を覚える方法は、繰り返し努力するしかありません。顔を思い出しながら、心の中で名前を呼ぶのです。

 

自分が新人のときには気付きませんが、年齢を重ねてくると、新人から名前で呼ばれることは、とても心地良いものです。先輩の立場からすると「丁寧に教えてあげよう」と思います。

 

逆に、名前を間違えられたり、「あのうー」と呼びかけてくるような新人は、言葉では言いませんが「何て無礼な奴」、「失礼な奴」と思います。何かわからなくて困っている時にも、「教えてあげよう」と思わなくなります。潤滑なコミュニケーションのためにも、仕事を早く覚えるためにも、周りの人たちの名前を覚えることが大切です。

 

先輩や上司に対しては、敬語を使うことはもちろん必要ですが、その他にも名前で呼ぶことが大切です。「〇〇さん、お忙しいところ、すみません。教えて下さい。」と聞きましょう。そして教えてもらうときは、自分の直属の先輩にあたる人へ聞きます。先輩を飛び越えて、いきなり上司へ聞くのは、先輩に対して失礼になります。自分のすぐ上の先輩へ聞くのが礼儀です。

 

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先輩たちよりも30分早く出勤

 

もしかすると、これは2020年7月現在、パワハラに該当するかもしれません。いわゆるサービス残業のように理解されてしまうかもしれません。しかし私にとっては、勉強になったことなので解説します。

 

私が就職した東京大学農学部では、事務長から辞令を受けた後に、次のように指導されました。新人のとき(1979年)です。

 

「私たちも、みんな経験してきたことですが、最初の1年間は、誰よりも早く30分前には出勤して、先輩たちの机の上を拭いてください。それが礼儀というものです。」

 

このように教わりました。最初に聞いたときは、内心「ひょえー!」と驚きました。「厳しい職場に入ってしまった」と後悔しました。

 

新人の頃に、朝早く出勤するというのは、かなりきついです。特に若いときは、朝が苦手です。早く起きられません。朝の30分は、非常に大変なのです。それでも私は、事務長から言われたとおり、1年間は実践しました。

 

最初は、「何でこんなことする必要があるのか、机の上を拭くのは、仕事とは関係ない」と疑問に思いました。不満がたまりました。

 

ところが、朝出勤して、先輩たちの机の上を拭いている間に、少しずつ自分の視野が広がっていくことに気付き始めました。先輩たちが、どのような仕事をしているか、把握できるようになっていったのです。そして先輩や上司から指示を受けた時に、意図を十分に理解することができ、動きやすくなったのです。

 

机を拭いていると、先輩たちの今作成している書類が、自然に目に入ります。そうすると、今日、何をするつもりなのか、これからどういう書類を作成するのか、徐々にわかるようになってきたのです。仕事を覚えるのが効率的になっていったのです。

 

しばらくして半年ぐらい経った頃、飲み会の席で先輩から、次のように教わりました。「私たちの時代(先輩が新人の1970年頃)は、朝早く出勤して、先輩たちの机を拭く時には「仕事を盗む」という気持ちだった。」そして、先輩や上司からコピーを取るように指示された時には、勉強になりそうな資料があれば、部数を一部余分にコピーして、自分の勉強用にしていたそうです。「仕事を盗む」ほど貪欲に勉強し、いろいろな情報を入手していたそうです。(1970年当時は、インターネットもパソコンもない時代です。)

 

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お茶入れを率先して行う

 

2020年7月現在は、お茶入れを命令すると、パワハラになります。特に女性に対してお茶入れを強要すると、男女差別にもなってしまいます。しかし私が新人として働いていた頃は、新人あるいは、その職場(事務室内)で一番若い人が、「お茶入れ当番」でした。新人が入るまでの期間、ずっと「お茶入れ当番」なので、人事異動の少ない職場では、5年くらい我慢している人も多かったです。他の官公庁では、女性がお茶入れしているところもありましたが、私が勤めていた東京大学では、「若い人がお茶入れをする」するのがマナーでした。

 

お茶入れで大変だったのは、まず湯吞茶碗を覚えることでした。湯呑み茶碗の色や形が特徴的であれば、すぐに覚えられるのですが、似ている茶碗だと覚えられません。物覚えの悪い私は、湯呑み茶碗の底へ、こっそりとボールペンで印をつけていました。

 

お茶入れの意味は、コミュニケーションです。朝、みんなが出勤してきた時にタイミングを見計らってお茶を出します。すると必ず、世間話をします。先輩たちが話しかけてくれます。テレビ番組やスポーツの話、通勤時の面白い話など、いろいろなことについて、先輩方が話しかけてくれます。当時は「うざい」「面倒」と思いましたが、いつも先輩たちから声をかけてもらうと、「声をかけやすい後輩」、「声をかけやすい新人」になります。仕事だけでなく、さまざまな場面で教えてもらうことができます。

 

仕事中、常に先輩たちが声をかけてくれるようになります。つまり、悩み事や、少しでも不安になるようなことがあれば、「あれ、元気ないな?どうした?」と気にかけてくれるようになります。周りの先輩たちが、自分を常に見てくれるようになります。お茶入れは大変ですが、先輩方がいつも近くにいるので、職場での悩みや心配事は皆無になります。これがお茶入れのメリットです。たしかに仕事とは関係ないですが、得るものは大きいです。

 

2020年現在は、職場の中で、若い人がお茶入れをする習慣が、ほぼなくなってしまいました。新人たちは、悩みや不安が増えているのではないかと思います。

 

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ノートとペンでメモする

 

仕事を教わるときは、必ずノートでメモを取ります。ノートは、コンパクトな手帳型でも、大きなA4サイズでも良いです。「教わったことをメモする」という姿勢は、教える人に対する礼儀でもあります。

 

現在2020年7月は、スマホやノートパソコン、ICレコーダーでもメモが取れます。しかし、新人のときは、紙のノート以外は使うべきではありません。新人が、スマホなどでメモを取る行為は、教える人から見ると「ふざけている」「バカにしている」と映ります。「楽をしている」と思われてしまうのです。本人は「効率的に仕事をしている」つもりでも、先輩から見れば、「ふざけた態度」に映ってしまうのです。

 

先輩や上司に教えてもらいメモをするときに注意したい点は、話している人の腰を折らないことです。わかりやすく教えようとして、順序を考えながら話しているときに、余計な質問でリズムを止められてしまうと、話したいことも話せなくなってしまいます。次に何を説明しようとしたか忘れてしまうこともあります。

 

また話を聞くときは、相手の目を見ます。スマホなどでメモされると、スマホばかり見ていて視線が合わず、「無視されている」ようにさえ感じてしまいます。メモを取るときは、相手の目をしっかり見ることが大切です。

 

スマホやノートパソコンを使ってメモをとるのは、最低でも2年目以降です。ある程度ベテランになってからは許される行為です。しかし新人時代(最初の1年間)は、先輩に対して失礼になるようなことは、やめましょう。

 

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先輩からの誘いは、絶対に断らない

 

2020年7月現在、「先輩からの誘いは、絶対に断らない」という教えは、完全にハラスメントになります。あくまで参考として解説します。現在は「通用しない教え」です。昔の「耐えることが美しい」時代のことです。昔は「くだらないと思える教え」にもメリットがありました。

 

私が社会人になった頃(1979年)は、まだ「気合いで仕事をする」という風潮でした。先輩や上司に「ついていく」という従順な姿勢が求められていました。特に最初の1年間は、「自分にはプライベートはない」と思わないと、辛くてやっていけないと教えられました。24時間365日すべてが社会勉強と教えられました。(今考えると、暗黒時代かもしれません、でも辛いほど、大きなメリットもありました。先輩になんでも相談できるわけですから。)

 

先輩や上司は、「新人を鍛えよう」「育てよう」と思っています。仕事中はもちろんのこと、勤務時間が終わった後も、公私にわたり様々な話をしてくれました。

 

昔は、職場の中で野球をするのが一般的でした。私が勤務していた東京大学の事務部門でも、学部ごとに野球チームがありました。学内では野球大会もありました。いわゆる「職場野球」です。仕事以外でもスポーツを行い、協調性やチームワークを大事にする時代でした。官公庁だけでなく民間企業でも盛んでした。良く練習試合も行いました。

 

正式な野球の試合は、週末の土曜日か日曜日に開催されます。平日は昼休みに野球の練習を行い、月に1回程度、出勤前の朝練と、勤務時間終了後に1時間ほど練習試合を行なっていました。

 

私は学生時代から、スポーツが大好きでした。職場野球に参加することも、それほど嫌ではありませんでした。むしろ野球は好きでした。しかし週末の土日が、試合のために奪われてしまうことに、かなり抵抗感がありました。仕事とは違うとはいえ、週末の土日まで先輩や上司と一緒にいると、やはり常に緊張してしまい、身体が十分に休まらないのです。

 

また野球以外でも、毎日、お酒を飲むのが社会人としての常識でした。5時半に勤務が終わり、職場の中で夜8時ぐらいまで、乾き物でビールや焼酎、ウイスキーを飲みます。その後2次会へ出かけ、終電ぐらいまで飲みます。これが毎日続きました。

 

新人のときは、すべて奢ってくれました。上司や先輩たちが必ず奢ってくれるので、自分でお金を出すことはありません。経済的な負担は皆無です。むしろ夕食代が助かるので、経済的には良かったです。しかし毎日の飲み会です。この付き合いには、かなり悩みました。

 

週末の職場野球と同じように、平日もゆっくり休めないのです。家に帰った時は、もう「バタンキュー」で寝るだけです。自分の時間はありません。こんな生活が、今後40年間も続くのかと思うと、「辞めたい」という気持ちにもなりました。実際に何度も「退職願い書こう」と思いました。

 

しかし上司や先輩たちは、新人のことを気にかけて誘ってくれています。新人を鍛えようとして、誘ってくれています。

 

勤務時間が終わった後の飲み会では、仕事の話はほとんどありません。それぞれの趣味の話や、いわゆる世間話、職場の噂などです。楽しい話ばかりで、大笑いしながら飲むことが多かったです。付き合いは大変ですが、実際に楽しいのも事実でした。また、昔の先輩はよく自宅にも招いてくれました。職場で飲んで、職場の近くで二次会で飲んで、さらにその後に先輩や上司たちの家で飲むこともしばしばありました。

 

本当は一人で食事をして、一人でゆっくり寝たいわけです。しかし、そんな贅沢は一切許されませんでした。先輩についていく、「先輩や上司から誘われれば、絶対に断らない」という教えは、当時、誰もが守っていました。どんなに仕事が忙しくても、飲みに誘われれば、ついていくのが礼儀でした。身内に不幸があったときを除き、先輩からの誘いを断るような人は誰もいませんでした。

 

その分、先輩や上司たちは、部下を大切にしていたように思います。仕事面でもプライベート面でも、悩みを早い段階で気付き、不安やストレスが溜まっているようであれば、飲みに連れて行ってくれたり、遊びに連れて行ってくれました。現在と比較すると、付き合いが濃かったです。1979年当時は、先輩たちに「ついていく」のに一生懸命で、「うつ病」になる人はいなかったです。そんな余裕すらありませんでした。考える時間さえないわけですから。

 

新人のときは、「付き合い」が大変で、はっきり言って嫌でした。辛かった思い出の方が多いです。しかし当時思っていたことは、「先輩たちも同じように苦労してきた」と感じたことでした。同じように鍛えられ、その道こそが「社会人として正しい」と思っていました。

 

現在は、完全にハラスメントになってしまいますが、今思うと懐かしいです。昔と同じようにとまでは言いませんが、少なくとも仕事面においては、ハラスメントという言葉は無くしたほうがいいと思います。厳しい指導も良い面があります。

 

職場でハラスメントが問題になるのは、ほとんどが「人間関係」です。自分の周りに、仲の良い気が許せる友人がいれば、どんなに辛い仕事も、楽しい仕事へ変わります。人間関係によって、精神的な強さが補強されるのです。そういった意味では、昔の「しつこいぐらいの人間関係」は、強い精神状態を保つために効果があったのかもしれません。


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