会計検査院が実施する「会計実地検査」の解説です。国民の税金を運営財源とする公的組織は、会計検査院による会計実地検査を受検する義務があります。しかし、ごく一部の会計検査院の調査官は、上から目線で横柄な態度で質問してくることがあります。調査官の横柄な態度に我慢できない上司が、真剣に「会計検査を拒否できないか」調べていたので、参考にまとめました。
会計実地検査とは、官公庁の現場(実際に会計書類、契約書類を作成している部署)へ出向き、書類をチェックすることです。ひとつひとつの手続きについて、会計検査院の調査官が、現場の職員に対して、根拠としている法令について説明を求めるものです。説明がスムースにできないと、質問が雪だるま式に増えます。
会計検査院の実地検査を拒否?
国民の税金を使用する官公庁などの公的組織は、会計実地検査を受ける義務があります。そこで、あまり実益のないことですが、会計検査院の実地検査を拒否できるか調べてみました。(なぜ、こんなことを調べたか、その理由は最後に記載してます。)
すると、なんと、拒否すると懲戒処分にされてしまうのです。
会計検査院の調査官(検査員)は、強い権限を持つことがわかりました。
会計検査院法
第31条 会計検査院は、検査の結果国の会計事務を処理する職員が故意又は重大な過失により著しく国に損害を与えたと認めるときは、本属長官その他監督の責任に当る者に対し懲戒の処分を要求することができる。
○2 前項の規定は、国の会計事務を処理する職員が計算書及び証拠書類の提出を怠る等計算証明の規程を守らない場合又は第二十六条の規定による要求を受けこれに応じない場合に、これを準用する。
会計検査院は、国の収入支出の決算、政府関係機関・独立行政法人等の会計、国が補助金等の財政援助を与えているものの会計などの検査を行います。憲法上の独立した組織です。
憲法第90条
国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない。
2 会計検査院の組織及び権限は、法律でこれを定める。
法律で、独立の地位であることが、明記されています。
会計検査院法
第1条
会計検査院は、内閣に対し独立の地位を有する。第20条
会計検査院は、日本国憲法第90条の規定により国の収入支出の決算の検査を行う外、法律に定める会計の検査を行う。2 会計検査院は、常時会計検査を行い、会計経理を監督し、その適正を期し、且つ、是正を図る。
3 会計検査院は、正確性、合規性、経済性、効率性及び有効性の観点その他会計検査上必要な観点から検査を行うものとする。
会計検査院が必ず検査しなければならないもの(必要的検査対象)
国の毎月の収入支出
国が資本金の2分の1以上を出資している法人の会計
次のように、実地検査は「拒否できない」ことが明記されています。
会計検査院法
第25条
会計検査院は、常時又は臨時に職員を派遣して、実地の検査をすることができる。この場合において、実地の検査を受けるものは、これに応じなければならない。
第26条
会計検査院は、検査上の必要により検査を受けるものに帳簿、書類その他の資料若しくは報告の提出を求め、又は関係者に質問し若しくは出頭を求めることができる。この場合において、帳簿、書類その他の資料若しくは報告の提出の求めを受け、又は質問され若しくは出頭の求めを受けたものは、これに応じなければならない。
会計検査院の指摘事項とは
会計実地検査の結果、不適切な会計処理が判明すると、次の指摘事項となります。
損害額がおよそ100万円以上は「不当事項」になるらしいです。
(1)から(3)までが不適切な事態で、通常「指摘事項」と呼ばれているものです。
(1)不当事項
検査の結果、法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項
(2)意見を表示し又は処置を要求した事項
会計検査院法第34条又は第36条の規定により関係大臣等に対して意見を表示し又は処置を要求した事項
(3)本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項
本院が検査において指摘したところ当局において改善の処置を講じた事項
態度が気になる調査官、上司が我慢できない理由
なぜ調べたかというと、調査官の態度が気に入らないと上司がご立腹だったのです。一部の調査官が偉そうなことを言うので、その態度に我慢できないらしいのです。(まあ、私も仕事でなければ、意地の悪い一部の調査官とは、つきあう気はしません。言葉尻をとらえたり、揚げ足を取る質問ばかりする人がいます。質問を聞くだけでイラつくのです。まるで犯罪者のように扱われます。)
上司が、「正式に検査を拒否することはできないのか」と真剣に考えていたのです。
なにしろ上司は、「容疑者にだって、任意捜査があるじゃないか!」と言うわけです。任意なら受けたくない、らしいのです。(おいおい、自分たちは容疑者かよ!と突っ込みたくなる場面です。私たちは、悪いことしてないし容疑者ではありません。)
そこで私が「お気持ちは分かりますが、それは無理だと思います。念のため調べてみます。」となったわけです。そのときに調べたことをまとめました。おそらく、会計検査院の実地検査を楽しいと思う人はいないと思いましたので。
私の説明を受け、いつも気さくな上司は、とても悔しそうでした。私も、やはり同感でした。(その夜は二人で飲み明かしました。)
税金を使う以上、会計書類を検査する独立の機関が必要なのは理解できます。しかし犯罪者を追い詰めるような態度は、いかがなものかと思います。(ごく一部の調査官のことです。多くの調査官は、礼儀正しい人ばかりです。)
インターネットが普及した現代社会の中で、批判しかしない組織が必要なのかと思います。基準を示さずに批判するのは、いかがなものかと・・
コメント
コメントありがとうございます。
管理人です。
会計検査院への対応について、次の2点について回答します。ただし、内容によって責任問題に発展するリスクがあるので、必ず、上司に相談してから会計検査院の調査官へ回答してください。
1.求められた書類がない場合
書類がない場合のケースとして、当初は存在していたが途中で紛失した場合と当初から存在しなかった場合があります。会計検査院の調査官からの質問に対しては事実どおりに回答するのが良いです。
紛失した場合・・当初は作成したのですが保存時に他の書類に紛れ現在は見当たりません。
最初からない場合・・ご質問の書類はございません。
会計書類は、「計算証明規則」によって書類の保存が義務付けられています。重要書類が存在しない場合は「書類紛失理由書」などの経緯を記載した書類提出を求められることがあります。会計実務で担当者個人の責任問題になるケースは、悪質な事務処理で100万円以上の大きな国損を与えたような場合だけです。普通に真面目に事務処理していて、会計法令の理解不足やうっかりミスで書類を保存しなかったのであれば、注意を受けるだけです。
2.虚偽の資料を提示すること
気持ちは理解できますが虚偽の資料は提出しない方が良いです。
会計実地検査は、調査官の個性によって検査手法が異なります。意地の悪い調査官は、相手を追い詰めるように質問攻めにしてきます。売り言葉に買い言葉的になることもあります。しかし、国民の税金を使用している以上、その場しのぎで虚偽の回答をすると精神的に大きな負担になります。特に書類を書き換えたり、架空の書類を作成することは慎んだ方が安全です。ミスは素直に認め、将来改善する方向にするのが良いです。嘘は、どこかで必ずばれます。
会計検査院実地検査について教えてください。
会計検査院に求められた書類がない場合はその旨は伝えてよろしいのでしょうか。
また、虚偽の資料を提示し、それが発覚したらどうなるのでしょうか。
ご回答頂ければと思います。