官公庁の契約は、契約内容を変更できない場合があります。契約が変更できるのか検討するときは、変更理由だけでなく、最初の契約方式によって判断します。また変更契約書は事例が少ないために作成方法がわかりにくいです。具体例で変更契約書を解説します。
官公庁の契約は自由に変更できない
本来、契約は自由のはずです。民法でも次のように定めてあり、「契約自由の原則」といわれています。
民法
第五百二十一条
2 契約の当事者は、法令の制限内において、契約の内容を自由に決定することができる。
民間企業同士の契約であれば、この「契約自由の原則」によって、どのように変更しても問題にはなりません。しかし官公庁の契約では、変更契約自体に疑義を持たれ、「特定の企業を有利に扱っている」などと問題になってしまうことがあるので注意が必要です。
すでに契約を締結した後になって、「仕様を変えたい」、「履行期限を延長したい」、「契約金額を変更したい」などの申し入れを受けることがあります。また、官公庁側の都合で契約内容を変更したいときもあります。しかし官公庁の契約では、すべての契約で自由に変更できるわけではなく、変更できない場合があります。
変更契約を認めて良いか検討するときは、変更理由に加えて、最初に契約したときの契約方式によって判断します。
変更契約が可能な場合
変更契約が可能なのは、次の理由に基づく場合です。変更契約の可否について検討するときの必須条件です。
変更契約の必須条件
〇 官公庁側が有利になる場合(不利にならない場合)
〇 自然災害などの不可抗力で止むを得ない場合(契約の相手方に責任がない場合)
さらに上記の理由に加えて、最初に締結したときの契約方式(競争入札や随意契約)によって判断が変わります。
最初の契約方式が、「競争性のない随意契約」(予算決算及び会計令102-4-3、地方自治法施行令167の2-2)の場合は、変更契約が可能です。
一般競争入札や少額随意契約で締結した契約は、契約金額が変わらない、あるいは減額する変更のみ可能です。契約金額を増額する場合は、当初の契約方式に影響しない範囲でしか変更できません。契約金額を増額することで、国際入札の対象金額になる場合や、少額随意契約の範囲を超えてしまい、入札対象金額になる場合など、当初の契約方式が変わってしまう場合は、変更契約できないのです。
例えば、台風などの自然災害で商品や材料が滅失し、納品数量を減らさなければならないときや、契約金額を変更せずに、納入期限のみを延長する場合は変更契約が可能です。
変更契約が不可能な場合
民間企業同士の契約であれば、当事者の合意があれば自由に契約を変更できます。しかし官公庁の契約は、法令により手続きが定められているために制約があります。法令に縛られるところが民間企業と大きく異なるところです。原則として、契約方式が変わるような変更は不可能です。
当初の契約が少額随意契約のとき、契約金額を増額することで入札対象金額になるときは変更契約できません。増額部分を新たに競争入札で契約することになります。変更できない理由は、結果的に見ると、入札手続きを回避するために少額随意契約を締結したと看做されてしまうからです。競争入札を逃れるために分割発注した「不適切な契約手続き」になってしまうのです。会計検査や外部の監査などで指摘されます。業者との癒着などの不正を疑われるよりは、次年度で新規に契約し直す方が安全です。
もし増額する可能性があるなら、金額が小さくても、最初から一般競争入札すべきです。「少額随意契約は増額できない」と理解しておきましょう。
例えば次のケース(売買契約)です。
当初は少額随意契約(160万円以下)と判断し、その後に増額
当初の契約金額 140万円 ➡ 数量を増額し30万円増額したい ➡ 契約金額が160万円を超えるので変更契約不可
30万円分を増額すると、当初の契約方式(少額随意契約)が競争入札対象になります。契約方式に影響を与える変更になるので不可能です。
それでも追加契約が必要であれば、30万円のみであっても一般競争入札を実施しなければなりません。当初の少額随意契約と判断したときには、入札を避ける意図がなかったことを明確に証明する必要があるからです。手続きが面倒だからと、故意に分割して少額随意契約したのではないことを証明するために、わずか30万円の契約でも一般競争入札することになります。これは、官公庁側、民間企業側双方にとって、かなり面倒な手続きになってしまうのです。このようなことのないよう調達計画は慎重に決定しなければなりません。
また一般競争入札の契約を増額するときも、国際入札(政府調達に関する協定)に該当するようであれば同じ理由で変更できません。
変更契約書の記載例
物品の購入契約を例に、変更契約書の記載方法を解説します。2回変更する場合です。変更理由は次のとおりです。これは不運なケースです。
一般競争入札で、パソコンとモニター60セットを1,200万円で契約、1セット20万円。契約年月日は6月1日、納入期限は12月20日(参考・・国際入札対象は1,500万円以上のため、一般競争入札を実施)
1回目の変更
大型台風が発生し部品生産工場が被災、部品調達困難で10セット納品不可能となった。
2回目の変更
大きな地震が発生し、さらに5セットが生産できなくなった。道路が寸断され納期も延期。
当初の契約書(原契約書)
物品供給契約書
調達物品名 パソコン・モニター 一式
数量 60セット
契約金額 金12,000,000円也発注者 支出負担行為担当官〇〇省会計課長〇〇と供給者〇〇株式会社 代表取締役社長〇〇とは、上記「パソコン・モニター 一式」(以下「物品」という。)の供給について、上記契約金額をもって次の条項のとおり契約を締結するものとする。
第1条(略)
第4条 物品は、〇〇省〇〇課大会議室に納入するものとする。
第5条 物品の納入期限は、令和5年12月20日とする。
(略)
令和5年6月1日
発注者 支出負担行為担当官
〇〇省会計課長 〇〇〇〇 印
供給者 〇〇株式会社
代表取締役社長 〇〇〇〇 印
変更契約書(1回目)
(大型台風が発生し部品生産工場が被災、部品調達困難で10セット納品不可能となった。)
変更契約書
発注者 支出負担行為担当官〇〇省会計課長〇〇と供給者〇〇株式会社 代表取締役社長〇〇とは、令和5年6月1日付けで締結した「パソコン・モニター 一式」物品供給契約書(以下「原契約書」という。)について、次のとおり変更契約を締結する。
(数量の変更)
第1条 原契約書頭書の「数量 60セット」を「数量 50セット」に変更する。
(契約金額の変更)
第2条 原契約書頭書の契約金額「金12,000,000円也」を「金10,000,000円也」に変更する。
第3条 その他の条項については、原契約書のとおりとする。
上記変更契約の成立を証するため、本変更契約書を2通作成し、発注者、供給者それぞれ1通を所持するものとする。
令和5年8月18日
発注者 支出負担行為担当官
〇〇省会計課長 〇〇〇〇 印供給者 〇〇株式会社
代表取締役社長 〇〇〇〇 印
変更契約書第1条の「・・頭書・・」は、「とうしょ」や「かしらがき」が正しい読み方です。しかし実務上は「とうしょ」と読んでしまうと「当初」と勘違いしてしまうことがあるので、「あたまがき」と呼ぶことが多いです。「頭書き」という漢字を意識して「あたまがき」といいます。
頭書き(あたまがき)は、契約内容が簡単にわかるよう、前文の前に箇条書きで記載することが多いです。
変更契約書(2回目)
(地震が発生し、さらに5セットが生産できなくなった。道路が崩れ納期も1ヶ月遅れる。)
変更契約書(第2回)
発注者 支出負担行為担当官〇〇省会計課長〇〇と供給者〇〇株式会社 代表取締役社長〇〇とは、令和5年6月1日付けで締結した「パソコン・モニター 一式」物品供給契約書(以下「原契約書」という。)、令和5年8月18日付けで締結した変更契約書(以下「第1回変更契約書」という。)について、次のとおり変更契約を締結する。
(数量の変更)
第1条 第1回変更契約書第1条の「数量 50セット」を「数量 45セット」に変更する。
(契約金額の変更)
第2条 第1回変更契約書第2条の契約金額「金10,000,000円也」を「金9,000,000円也」に変更する。
第3条 原契約書第5条の納入期限「令和5年12月20日」を「令和6年1月19日」に変更する。
第4条 その他の条項については、原契約書および第1回変更契約書のとおりとする。
上記変更契約の成立を証するため、本変更契約書を2通作成し、発注者、供給者それぞれ1通を所持するものとする。
令和5年10月20日
発注者 支出負担行為担当官
〇〇省会計課長 〇〇〇〇 印
供給者 〇〇株式会社
代表取締役社長 〇〇〇〇 印
変更契約書は、どの部分を変更するのかわかりやすく記述します。特に2回以上変更するときは、過去の契約すべてを前文で定義し、どの部分を変更するのか明確にします。最後の条文「その他の条項については、原契約書および第1回変更契約書のとおりとする。」と定め、過去の契約、変更契約をすべて対象にしています。
変更契約を締結するときに、最新の契約書だけ、あるいは当初の契約書だけを対象に考えてしまうとミスします。必ず、過去の契約すべてを含めて変更部分を検討します。
「変更契約一覧表」で変更部分を整理する
変更契約は、2回くらいなら複雑ではありませんが、それ以上になると混乱します。変更回数が多くなると、過去にどの部分を変更したのかわからなくなるのです。変更契約を繰り返す場合は、次のように表形式で変更契約一覧表としてまとめておくと便利です。決裁書類の参考資料にもなります。
変更契約一覧表(例)
原契約(6月1日締結) | 第1回変更契約(8月18日) | 第2回変更契約(10月20日) |
頭書 数量 60セット | 第1条 数量 50セット | 第1条 数量 45セット |
頭書 契約金額 12,000,000円 | 第2条 契約金額 10,000,000円 | 第2条 契約金額 9,000,000円 |
第5条 納入期限
令和5年12月20日 |
━ | 第3条 納入期限
令和6年1月19日 |
また変更契約は、関係者間でどの部分を変更したのか確認しておくことも重要です。お互いに担当者が人事異動で変わることがあります。わかりやすく変更内容を整理しておくと良いです。
コメント
官公庁内の食堂業務を公募プロポーザルを経て、契約金額0円で契約締結しました。
契約当初は光熱水費は業者負担だったのですが、光熱費高騰により発注者負担とすることができるか検討中です。
もし発注者負担となった場合、当該経費の多寡に関係なく変更契約を通常のとおりしても問題ないのでしょうか?
なお、現状、光熱水費は一旦発注者側で支払い、その後業者に請求しております。
コメントありがとうございます。
契約の詳細がわからないため、一般的な回答になります。
今回は、公募プロポーザル時の条件と変わってしまっているので、再度、公募プロポーザルした方が良いと思います。
当初の業者負担という条件を、全額発注者負担へと切り替えるのは、無理だと思います。もし負担するとしても、光熱費高騰分だけを発注者負担とすべきです。プロポーザル時の電気料単価と高騰時の単価の差額だけを負担すべきです。
変更契約は、予想できずに、やむを得ない場合、誰が見ても納得できる状況のみに可能です。
光熱費の高騰は、すでに2年ほど前(2020年頃)から続いていることなので、今、(全額発注者負担などと)条件を変えるのは厳しいと思います。「前もって予想できたことではないか、業者へ有利な条件にしている」と指摘されてしまうでしょう。
光熱費などが異常に上下することを予想して、プロポーザル時の条件へ、精算条項などを入れると良いです。契約時の単価よりも10%以上高騰した場合、差額を補填するなどです。
また、食堂業務なので、電気料高騰分をメニュー料金の値上げでカバーする方が正当な気もします。
以上です。
分かりやすく回答していただきまして、ありがとうございました。
いつも参考にしております。自治体職員で同僚が担当しているお祭りイベントの契約事務で分からないことがありますので教えてください。
契約期間は4月1日から8月末まで、団体向けの祭り企画運営委託業務を競争入札で1000万円で入札した業者と契約したのですが、参加者(団体)数や規模も不明確なので、仕様書は曖昧に作成されており「発注者と協議の上で定める」との項目が多く、「協議によって仕様を変更する」となっています。
同僚によれば、入札時までに、実績のある業者にヒアリングを行い、できる限りの仕様書とはしたが、人事異動があるので4月1日以降でないと参加者数は決まらないので、入札時において仕様の確定はできない。業者との協議によって仕様書に記載のない追加分が生じれば増額の変更契約をすることになるが、参加者数や機材等は多めに積算した仕様としていたので、結果、増額分80万円より減額分100万円が上回り、8月下旬に△20万円減額の変更契約と仕様書の変更を行ったとのことでした。そこで質問なのですが、
①お祭りイベントのような業務委託では、仕様書は曖昧になりがちなのはある程度仕方のないこととも思うのです。その場合は、本件のように人数や規模を多めの仕様書としておき、減額の変更契約で対応することになる(増額の変更契約の場合は、落札状況が変わらないかを考慮しなければならなくなるため。)と思いますが、いかがでしょうか?
②増額と減額の双方がある場合には、自治体都合による追加がいくらあったとしても、結果として減額の変更契約であれば問題ないということでしょうか?
例えば、本件で別業者が1050万円で入札していたとしたなら、増額分のみに着眼した場合は1080万円となるので落札状況が変わることとなりますが、減額分も考慮すると980万円となり落札状況は変わりません。
以上、この契約事務手続きに問題はないかご教示ください。よろしくお願いいたします。
コメントありがとうございます。
仕様書の中で、確定できない部分がある場合には、予定数量などの予測値で仕様書を作成することになります。ナッツ様のおっしゃる通り、見込み最大値で仕様書を作成し、入札する手法が最も良いと思います。私も同じように判断します。
もし少なく見積ってしまうと、契約を進めていく中で、大幅な増額契約となってしまい、予算が不足して事業を継続することが困難になってしまうリスクが発生します。それよりも計画段階では、最大値を予定するのが安全な契約です。①の判断は最良です。②も、おっしゃる通りです。総額で判断します。
なお、仕様書の中で確定できない部分がある場合は、数量等を精算することを明記しておく必要があります。「この数量は予定であり、実際の契約の履行状況によって精算する」などの記載をしておき、実際に、どのデータを用いて精算するのか明記しておきます。入札前に精算することを相手方へ知らせておくことが重要です。
また、精算する項目の金額を見積ることができるなら、例えば「1件当たりの金額で精算する」のように記載しておき、落札内訳書の中で単価を確定させ、その単価で精算する手法もあります。発注者、受注者、双方が簡単に精算できる方法が望ましいです。
以上です。
いつも参考にさせていただいております。
以下についてご教示ください。
①本ページにおいて、
「一般競争入札や少額随意契約で締結した契約は、契約金額が変わらない、あるいは減額する変更のみ可能です。契約金額を増額する場合は、当初の契約方式に影響しない範囲でしか変更できません。」
とあり、また、
②「入札の仕様書をゼロから作る方法、前例がない仕様書を作るときの手順」のページにおいて、
「例外的に契約金額を変更できるのは、発注者の都合で数量を減らして減額する場合と、当事者に責任のない不可抗力の場合のみです。契約金額を減らす変更契約は可能です。しかし契約金額を増加させる変更契約は、自然災害や国際情勢の変化(レートの変動)などで原料が値上がりしてしまった、などの不可抗力の場合のみです。」
と、書かれております。
このことについての私の整理は
「①でいう「契約金額を増額する場合」とは、②でいう「自然災害や国際情勢の変化(レートの変動)などで原料が値上がりしてしまった、などの不可抗力の場合のみ」である。契約当初に予期し得なかったことであっても、それは内的要因(官公庁の都合)と外的要因(不可抗力)に分けられ、外的要因でなければ契約金額の増額の変更契約はできない。」
というものです。
ここでいう内的要因(官公庁の都合)とは、例えば、イベントを開催する際、交通誘導員をA地点とB地点に配置することがイベント実行委員会で決まったが、契約締結後、万全を期すためC地点にも誘導員を配置することが当該委員会で改めて決定された場合、等を想定しています。
そうであれば、例えば、一般競争入札での契約締結後に、仕様変更により業務内容が増加した場合、契約金額の増額の変更契約するのではなく、仕様変更部分についてのみを別契約とし、その別契約は競争性のない1者随意契約とできる、と考えました。
つまり、この例でいうと「契約金額の増額の変更契約を結ぶことと、仕様変更部分を別契約とし1者随意契約を締結することは、同じ受注者に業務を行わせる点では同じだが、そこに至る理屈が違う。」という整理です。
一方で、
③「仕様書に書いてないことを依頼できる? 仕様書の記載もれなどへの対応」のページにおいて、
「一般競争入札によって契約の相手方を決定している場合は、仕様書の修正で契約金額が増額しても問題ありません。ただ変更理由は、当初の入札時には予期し得なかったなどの、止むを得ない理由に限られます。官公庁側で増額分の予算が確保できることを確認し、変更契約書を作成します。一般的に契約金額を増額できるのは、官公庁側の都合で仕様書を修正する場合だけです。(原油価格の上昇など世界情勢が影響する例外もあります。)」
と、書かれております。
③の考えでは、上記で整理した前提が覆ってしまい、どのように考えたら良いかわからなくなってしまいました。
長文となってしまい大変申し訳ありませんが、見解をお聞かせいただければと思います。
よろしくお願いします。
コメントありがとうございます。
おっしゃる通り、解説がわかりづらかったですね。
原則としての考え方は、次の「ぼむ様」の見解が正しいです。
「①でいう「契約金額を増額する場合」とは、②でいう「自然災害や国際情勢の変化(レートの変動)などで原料が値上がりしてしまった、などの不可抗力の場合のみ」である。契約当初に予期し得なかったことであっても、それは内的要因(官公庁の都合)と外的要因(不可抗力)に分けられ、外的要因でなければ契約金額の増額の変更契約はできない。」
ただし、次の場合は内的要因(官公庁側の都合)も含みます。
「増額しても、当初の契約方式と落札状況が変わらないと判断できる場合」
例えば、1社入札で落札しているのであれば、前提条件が多少変わっても、落札状況は変わりません。この場合は、官公庁側の都合だけでも増額の変更が可能です。
また、当初の契約が「競争性がない随意契約」の場合も、増額の変更契約は可能です。
いずれも、「入札逃れ(国際入札逃れ)ではない」状況なので問題ありません。
つまり、内的要因と外的要因を厳格に区別して判断するわけではありません。
次に、今回のような「交通誘導員を増やす」という契約ですが、その必要性は別にして、当初の落札結果に影響しないほど小さい増額(他社との落札金額との差よりも小さい)であれば、変更契約とすることも、「競争性がない随意契約」として別契約とすることも可能でしょう。(契約の詳細を知らないので明確な判断は困難ですが)両方あり得ると思います。
ただ別契約とした場合、「なぜ、当初の入札へ含めなかったのか」という疑問は残ってしまいます。あるいは「委員会の検討が不十分であった、なぜ委員会で最終決定する前に契約手続きを始めたのか」と指摘されてしまうかもしれません。
別契約とするのであれば、変更契約とは関係なくなるので「不可抗力」が理由でなくても問題ないです。
契約は、ケースバイケースで判断が変わります。本サイトの解説では、イメージしやすいように典型的な例を用いて解説していますが、契約内容によって具体的な判断は変わります。
補足説明ですが、③にある「一般的に契約金額を増額できるのは、官公庁側の都合で仕様書を修正する場合だけです。(原油価格の上昇など世界情勢が影響する例外もあります。)」の意味は、民間企業側からの契約金額増額の申し出は原則できない、不可抗力以外認められないという趣旨です。
以上になります。
よく理解できました。
丁寧なご回答ありがとうございました。
コメント失礼いたします。
大変お手数ですが、以下についてご教示ください。
SE担当者契約を一般競争入札で800万円で決定いたしました。
しかし、業務内容変更に伴い、業務時間が増えるため、金額が前回契約の800万から今回分を合算すると1,600万円程度に膨らむことが分かりました。
SE担当契約が政府調達内の「その他のサービス」に該当するならば、政府調達1,500万円に該当してしまいます。
(内容は資格さえあれば対応可能なため、競争性のない随意契約にするのは難しいです)
その場合は、増額分の800万円は、再度一般競争入札を行うのではなく、政府調達を行うことになってしまうのでしょうか。
また、政府調達になってしまう場合の根拠法等をご指導ください。
よろしくお願いいたします。
コメントありがとうございます。
当初の契約が800万円で、業務内容変更に伴い契約金額が倍になるとすると、事業計画そのものが批判されてしまいます。
業務内容の変更が、どれほど重要なのか不明ですが、契約手続きは、法令や規則の制約があることを理解してもらうことが必要です。
契約担当者としては、会計年度内における急な(杜撰な)計画変更は認めないことを伝え、次年度に計画を再検討してから、増額分の契約を行うべきです。単年度予算であれば、増額分の800万円を次年度の契約とするなら、別契約になるので一般競争入札になります。
それでも、どうしてもすぐに変更契約が必要ということであれば、各省庁の政府調達担当者から了解を得なければなりません。政府調達は、各省庁によって運用の基準が大きく変わります。「政府調達に関する協定」自体が国際条約のため、そのときどきの政策判断になってしまうのです。
契約変更を必要とする者から、各省庁の政府調達担当者へ直接説明してもらい、どのような契約手続きが適正か、判断を仰ぐしかありません。
今回のようなケースは、通常の会計法令を超えた政策的な判断になります。契約担当者が判断しない方が良いです。
丁寧なご回答ありがとうございます。
大変助かりました。
機械警備委託業務で、宿舎の部屋ごとに同じ種類の警備用機械を取り付ける仕様で入札を行い長期継続契約を締結しました。
しばらくして、上記契約期間中に、状況が変わり、別の部屋を追加整備することになり、新たに当該部屋に警備用機械を取り付ける方針となりました。
保安上、別の業者と新たに機械警備委託業務を締結するのは望ましくないことや追加の契約金額が入札金額未満であることから、原契約期間満了までで現業者に一者随契による追加契約にできないかと考えております。
難しいでしょうか?
コメントありがとうございます、管理人です。
変更前の契約方式が入札であれば、追加部分を随意契約としても問題ありません。
おっしゃる通り、別の会社と新たに機械警備委託業務を締結する方が怖いです。
特に機械警備の追加であれば、当然ながら既存の警備設備との接続が最重要です。万が一、追加部分の契約が別会社になり、複数の会社との機械警備委託契約になれば、次のような問題が生じます。
◯緊急時の対応が取れない。それぞれの会社へ連絡しなければならない。
◯追加設備との配線が複雑になってしまうため、設備の不具合などがあったときに、責任の所在が曖昧になる。
つまり、選定理由書を作成し、競争性のない随意契約とするのが最も安全です。機械警備は、全体を統括できる体制が必須です。
分かりやすくご解説くださり、ありがとうございます。いつも参考にさせていただいております。
官公庁との契約において、官公庁側が有利になる場合(不利にならない場合)に変更契約が可能とご記載いただいておりますが、どの法令のどの条項が根拠となっておりますでしょうか。
不勉強で恐れ入りますがご回答いただけますと幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。
コメントありがとうございます、管理人です。
変更契約についての根拠法令はありません。
官公庁が民間企業と締結する契約は、私法上(対等な立場という意味)の契約です。基本は民法が適用されます。強いて根拠を求めるなら、次の民法における「契約自由の原則」になるでしょう。ただ厳密にいえば「事情変更の原則」ですが、明文化していない「法理」で、とてもややこしいです。
民法
第五百二十一条 何人も、法令に特別の定めがある場合を除き、契約をするかどうかを自由に決定することができる。
2 契約の当事者は、法令の制限内において、契約の内容を自由に決定することができる。
また最近のことですが、新型コロナの感染対策として、令和2年3月3日に総務省から各地方公共団体へ向けて、次のように変更契約するように通知が発出されています。工期や納期の延長は、通常、官公庁側が不利になるので認められないのですが、例外として変更契約するように指導がなされています。
「地方公共団体の調達における新型コロナウイルス感染症への対応について」
「1.工期・納期の見直し、契約金額の変更及び迅速な支払い 新型コロナウイルス感染症の影響に伴い、受注者から工期又は納期の見直し等の申し出があった場合には、必要に応じ、工期又は納期の見直しやこれに伴い必要となる契約金額の変更等、適切な対応を講じるよう努めること。」
なお本サイトでは、可能な限り根拠法令を示して解説しているので、「法令が書いてない解説は、逆に会計法令に基づく根拠法令がない」ことの方が多いです。