契約書に記載する当事者名の解説です。一般的な契約書は2者で契約を締結します。2者間であれば甲・乙(こう・おつ)を使います。まれに3者間として甲・乙・丙(こう・おつ・へい)を使うこともあります。それ以上の契約当事者になることは珍しいですが、興味があり調べました。甲・乙の呼び方は、十干(じっかん)表で定められています。ただ無理に十干を使う必要はありません。
契約当事者の呼び方のきまり
契約実務を担当していると、契約書を作成することがあります。一般的な契約書の当事者は2人なので、甲・乙を使います。3者になっても甲・乙・丙までは悩むことなく記載できます。
ところが、ごくまれに契約当事者が5人とか6人になることがあります。そうなると甲・乙・丙の次がどうなるのか気になってしまいます。
契約書の作成方法については、会計法令で定めているものはありません。契約内容は、様々な種類があり、一律に規定できないためです。契約当事者の呼び方も自由です。契約書の条文の中で明確に定義すれば、どのように定めても問題ありません。ただ、相手のあることなので、当事者同士が気持ちよく使える名称であることが重要です。
十干による契約当事者の名前
甲乙丙について調べると、十干(じっかん)という表で定められていました。(私は初めて知りました。生まれてから50年以上知らなかったです。)
十干は甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸の10種類です。
古代中国で生まれた数字のようなもので、暦の表記などに使われていたようです。つまり昔からある古い言葉でした。風水などにも使われているようです。私は、甲・乙と聞くと、契約書しか思い浮かびませんでした。
十干(じっかん)はむずかしい読み方です。
十干(じっかん)の音読み
甲 こう
乙 おつ
丙 へい
丁 てい
戊 ぼ
己 き
庚 こう
辛 しん
壬 じん
癸 き
この10種類です。これ以上はありません。
契約当事者が多いときの記載方法
契約当事者が3者くらいの契約は、それほどむずかしくありません。しかし契約当事者が5者以上で、それぞれの当事者同士の取り決め内容が異なる場合は、かなり複雑な契約書になります。契約当事者が多いときは、無理にひとつの契約書でまとめようとせず、内容を切り離して複数の契約書とした方がわかりやすいこともあります。
例えば、Aを中心にしてB、C、D、E、F、G 7者に関係する契約があったとします。(共同研究や特許発明などに関係する契約は、当事者が多いことがあります。)ひとつの契約では、それぞれの義務と権利を網羅するのは、かなりややこしくなります。
契約当事者が多い場合には、それぞれの関係性に着目して、切り離せるところを切り離してしまうのです。上記の例では、Aはすべてに関わっているけれども、B、C とD、E、F、Gは直接関係してなければ、次のように切り離してしまうのです。
A、B、C の契約
A、D、E、F、G の契約
7者間の契約を、ふたつに分けるだけでも、だいぶわかりやすい契約になります。契約当事者それぞれの関係性に着目して契約を分離した方が簡単になることが多いです。特に条文を修正するときなどは、契約当事者が多いと、確認するだけで数か月かかってしまいます。
契約書は、当事者同士が、お互いに守るべき内容を記述するものです。誰もが理解しやすい契約内容にすることが最重要です。よくわからない内容の契約は、締結しない方が安全です。トラブルの元になります。
官公庁で契約書の作成を担当するときは、一字一句確認しなければなりません。そのため、官公庁側で作成してある「契約書のひな形」を使うことが多いです。すでに契約書のひな形がある場合は、一字一句チェックする必要がないので効率的になります。
契約書の甲乙丙以外の呼び方
契約書の多くは、契約当事者として甲・乙・丙を使います。しかし別の名称でも差し支えありません。例えば「契約者1」・「契約者2」とか、あるいは会社の省略名でも問題ありません。契約書の表記方法は自由なので、関係者が理解しやすいようにしましょう。当事者名は、契約書の前文で定義するだけです。
ただ契約書は、相手方と一緒に守る内容なので、十干を使用しないときは、事前に相手方の了承を得てから呼び方を定義しましょう。契約当事者名を変に省略してしまい、ライバル会社と似ている名前にすると、相手方が怒ることもあります。また契約書の中に出てくる語句と間違わないようにしましょう。数字や記号などを単独で使うと、他の条文に影響してしまうことがあります。
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