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基礎知識

下見積書は官公庁では使えない、見積書、参考見積書、下見積書の違い

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下見積書をゴミ箱へ捨てている 基礎知識
下見積書をゴミ箱へ捨てている
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最近(2020年7月)、「下見積書」という言葉を、ネットで見かけるようになりました。官公庁の入札手続きなどで提出書類になっています。しかし聞きなれない用語です。見積書や参考見積書との違いについて、わかりやすく解説します。

 

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下見積書?それとも参考見積書?

 

官公庁の入札公告などを見ると、下見積書は、参考見積書と同じ意味で使われているようです。

 

下調べ、下見、下資料などは、いずれも「正式でない」という意味で使われます。事前準備や本番前ということです。官公庁側としては、正式な金額を算出する前段階の概算金額として使っているようです。

 

しかし注意したい点があります。そもそも公正でなければならない官公庁の契約手続きの中で、正式でない資料を使うのは、いかがなものでしょうか?

 

本来、金額を見積もるために行う積算は、すべてが正式なものでないと困ります。根拠のない「でたらめな数字」が入り込むと、すべてが「でたらめ」になってしまいます。特に予定価格などの金額を積算するときは、根拠のない金額は使えないはずです。もし、いいかげんな金額を含めて予定価格としているなら、「適正な予定価格」とは言えません。

 

普通に考えて、民間企業側としても、正式な見積金額を算出しようとするはずです。むしろ「正式でない金額で提出してくれ」と言われれば、意味不明で混乱してしまいます。

 

競争入札を実施するときに、通常の取引金額よりも高い金額で下見積書を提出するよう指示すれば、大問題です。下見積書は正式な見積書ではないから、官公庁側の都合が良いように指示できると思っているなら大間違いです。特に落札率が高いという批判を避けるために、下見積書の金額を高くするよう指示するのは、官製談合と同じ行為です。

 

つまり下見積書は、正式でない金額なので適切ではありません。下見積書ではなく、参考見積書を使うべきです。下見積書は、あまりに怪しすぎる言葉です。参考見積書は、通常の取引価格として作成される正式な書類です。契約を前提としていないという意味で、参考としているだけです。

 

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下見積書と参考見積書の違い

 

そもそも見積書は、民法で定めている「契約の申し込み」という法的な役割があります。(入札書も同じです。)

民法
第五百二十二条 契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。

 

売買契約であれば、「この金額なら売ることができます」という意思表示が見積書です。見積書を提出することが契約の申込みです。見積書を受け取った側は、金額や内容を確認して、正式発注したいと判断すれば、「この見積書でお願いします」と承諾し、契約が成立するわけです。提出された見積書に対して正式発注した時点が契約の成立です。この「契約の申込み」が見積書の役割です。

 

参考見積書は、契約を前提とせずに、通常の取引金額を示す正式な書類です。契約締結を前提としないので、思い切った値引きをしません。正式契約を期待せずに提出する書類です。一般的な(誰に対しても提示できる)値引率(通常の取引価格)で見積もった金額になります。

 

競争入札を実施する際、入札前に参考見積書の提出を求めることがあります。これは直近の取引価格を調べるため、通常の取引価格で提出してもらいます。契約を前提としていないだけで、正式な取引価格を示す書類です。見積金額は正式なもので、概算ではありません。

 

ここで注意したいのは、参考見積書も正式な書類という点です。ただ契約の締結を前提としてないだけです。

 

つまり参考見積書は、民法上の「契約の申込み」という役割を持たない書類です。しかし見積金額自体は、実際に取引可能な正式な金額です。架空の金額や、概算金額を示す下見積書とは違います。参考見積書は、正式な取引金額を知るためのものです。

 

一方、下見積書は、正式でないという意味が含まれています。下調べ、という言葉に代表されるように、おおまかな、ざっくりとした金額という意味です。通常の取引価格とは言えない金額なわけです。つまり下見積書は正式な金額ではなく、官公庁が契約手続きで利用するには、疑義を持たれる書類になってしまうわけです。

 

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下見積書は官製談合に間違われる?

 

実際の入札公告などを見てみましょう。下記はWEB上で実際に公開されていた入札公告などの抜粋です。

A省 「入札公告」の抜粋

 

入札者に求められる義務等

入札に参加を希望する者は、次の書類を平成15年3月12日(水)12時までに、〇〇〇に提出すること。

(2)下見積書
入札金額は下見積書の金額を超えないこと。

 

B省 「下見積書・見積書提出依頼書」の抜粋

6 下見積書提出の締切
平成26年12月12日(金曜日)17時まで(郵送またはFAXでの提出も可)

7 見積書提出の締切
平成26年12月18日(木曜日)12時まで(下記9にある入札箱に投函)
なお、郵送の場合は締切期日必着

下記の下見積書及び見積書は無効とします。

提出した下見積書の金額を超えた金額の見積書

 

A省の入札公告では、入札金額は下見積書の金額を超えないことと条件が付されています。つまり事前に提出した下見積書の金額を見れば、入札金額の上限価格を知ることができます。

 

次に B 省の下見積書です。B 省は、入札書ではなく見積書を提出してもらう契約です。つまり競争入札ではなく随意契約です。そしてA省と同じく、提出した下見積書の金額を超えた金額の見積書は無効という条件を付しています。つまり事前に見積書の上限額を把握できてしまいます。

 

官公庁側が、開札前に入札金額を指示するのは好ましくありません。なぜこのように官製談合まがいの金額指示をするのでしょうか?これでは、官公庁側に都合のよい書類を作るために、金額を指示しているように思えます。

 

入札手続きの中で、入札前に、入札金額を指示するような行為は、不信を招くので慎むべきです。不正を疑われかねない行為です。

 

また、すでに解説しましたが、下見積書の金額は、正式なものではありません。そのような金額を何に使うのでしょうか?おそらく下見積書を予定価格の参考にするのでしょう。しかし正式でない金額を使っても意味がないのです。正式でない金額を使えば、予定価格自体の信憑性が低くなるだけです。

 

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下見積書ではなく、参考見積書を使おう

 

下見積書は、正式な見積書ではなく概算金額の見積書です。予定価格を作成するための参考資料として使うには無理があります。そもそも正式な金額ではないのです。意図的に価格調整されている(上記の価格を指示するような)金額かもしれません。

競争入札を実施するときに作成する予定価格は、予決令で定めているように、取引の実例価格に基づいて算出するものです。実際の取引価格でない、概算金額で作成すべきものではありません。

予算決算及び会計令

第八十条
2 予定価格は、契約の目的となる物件又は役務について、取引の実例価格、需給の状況、履行の難易、数量の多寡、履行期間の長短等を考慮して適正に定めなければならない。

 

また、そもそも「概算の見積書」というのも変なものです。見積書を作成するときには、実際にいくらで売れるかを確認して算出します。下見積書とか概算見積書という概念自体が、意味がない、変なものです。

 

本来、官公庁が扱う見積書は、架空の金額であってはなりません。発注者である官公庁が価格を指示するのも不正を疑われます。思い切った値引きまで含めない、通常の取引金額という意味で使うのであれば、「参考見積書」が正しい表現です。参考見積書は、契約を前提としていませんが、見積金額は正式なものです。

 

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見積書、参考見積書、下見積書の違い

 

簡単にまとめると、次のとおりです。

 

見積書

契約の申込み書類です。民法で定められている契約締結のための書類です。

 

参考見積書

契約を前提としない書類です。通常の取引価格を示す正式な書類です。

 

下見積書

正式な書類ではありません。金額も概算です。契約手続きで使うには信頼性の低い、リスクのある書類です。正式でないために価格調整した架空の金額かもしれません。

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