官公庁の旅費請求に必要な書類の解説です。国家公務員は旅費法、地方自治体はそれぞれの条例で旅費の請求手続きが定められています。また、飛行機を使う出張や、外国出張では必要書類が変わります。この記事は、出張者本人だけでなく、旅費担当者や旅行会社の営業担当者にも役立つ内容です。
公費による出張とは
公務員が出張するときは、国家公務員等の旅費に関する法律(旅費法)や各地方自治体が定めた条例に基づいて旅費を支給します。出張旅費は、出張命令に基づくものですが、本人からの請求手続きが必要です。給与のように仕事をしていれば、自動的に毎月もらえるものではありません。出張で使った旅費は、出張者本人しかわからないので、本人からの請求が必要になっています。
しかし旅費法は、抽象的な表現が多くてわかりにくいです。そこでわかりやすく旅費請求に必要な書類を解説します。
なお地方自治体は、旅費法に準じて、都道府県や市区町村で独自の条例を定めています。基本的な考え方は旅費法とほぼ同じです。例えば、東京都や大阪府などは、職員の旅費に関する条例を定めています。
参考に、出張の定義部分について、それぞれを比較します。
国家公務員等の旅費に関する法律 第二条第一項第四号
四 出張 職員が公務のため一時その在勤官署(略)を離れて旅行(略)することをいう。
東京都
職員の旅費に関する条例 第二条第一項第四号
四 出張 職員が公務のため一時その在勤庁(略)を離れて旅行することをいう。
大阪府
職員の旅費に関する条例 第二条第一項第三号
三 出張 職員が公務のため一時その在勤公署を離れて旅行することをいう。
旅費法と、東京都と大阪府の条例を比較すると、ほぼ同じ内容です。公務のために旅行することを出張と定義しています。(当たり前のことですが・・)
逆に言えば、旅行の中には公務でない、私用の旅行(プライベートな遊びの旅行・・私事旅行)もあるという意味です。簡単にいえば、出張は公務で旅行することです。
出張旅費の主な構成内訳
出張に必要な旅費の内訳は次のとおりです。
国の旅費法の場合
旅費 = 交通費 + 宿泊費 + 宿泊手当
交通費と宿泊費(素泊まり料金)は実費支給です。宿泊手当は、宿泊した場合の夕食代と朝食代相当額で定額で支給されます。地方自治体によっては、従来(2025年4月1日以前)のように、宿泊料を定額で支給しているところもあります。
旅費の請求手続きに必要な証明書類
2025(令和7)年4月1日から施行された改正旅費法では、実費弁償を原則としています。従来定額で支給されていた日当は廃止され、宿泊料も定額支給から実費支給へと変わり、宿泊費(素泊まり料金)になりました。
実費精算のため、証明書類は次のように定められました。
旅費の請求手続きに必要な証明書類
旅費請求手続きに必要な添付資料は、国家公務員等の旅費支給規程第二十四条の別表第六で一覧表になっています。
国家公務員等の旅費支給規程 第二十四条
2 (旅費請求書に)必要な資料の種類は、別表第六のとおりとする。(略)
別表第六で定めている、鉄道賃、船賃、航空賃、その他の交通費については、いずれも次のとおりです。
運賃の等級及び額を証明するに足る資料
その支払を証明するに足る資料
そして質疑応答に具体的な解説があります。
国家公務員等の旅費制度 よくあるご質問 令和7年6月 ver.1-0
1 「その支払を証明するに足る資料」には、具体的にどのような資料が該当するので
しょうか。A.領収書やレシートのほか、予約画面とクレジットカード明細のスクリーンショットなど、交通手段等の利用及びその支払が客観的に確認できる資料が該当します。
つまり、運賃の等級と金額が客観的にわかる資料であれば問題ありません。
航空機を使用するとき、旅費請求に必要な書類
航空機を使用するときは、航空賃の見積書、代金を支払ったときの領収書、搭乗券の半券(あるいは搭乗証明書)が必要です。外国出張では現地時間のわかる行程表も必要です。用務先(滞在地)によって宿泊手当の単価が変わるためです。
出張へ行く前に旅費を請求(概算払い)する場合は、航空賃と宿泊料金の見積書と行程表を先に提出します。出張が終わった後の精算手続きで、航空チケットの領収書と搭乗券の半券を提出します。搭乗券の半券は、実際に航空機に搭乗したことを証明するために必要です。これはカラ出張で旅費を不正請求することを防止するためです。
航空賃の見積書に必要な記載項目
航空賃を請求するときは、往復の航空便名と搭乗クラス、料金の明細が記載してある見積書(精算払いの場合は領収書)が必要です。
航空賃には搭乗クラス(エコノミー、ビジネス、プレミアムエコノミー、エコノミー等)があります。国家公務員等の旅費に関する法律施行令 第七条や各組織の内部規則で役職によって、搭乗できるクラスが決められています。また料金のわかる内訳では、旅客サービス施設使用料や税金なども全て記載した明細が必要です。旅費を計算するときに、課税や不課税など、消費税の区分計算を行わなくてはなりません。
航空賃の見積書に必要な記載項目
発着日時と便名、搭乗クラス
往復の航空賃
空港使用料(成田空港、関西空港、各国の空港)
各国空港税(出国税や入国税など)
航空保険特別料金(任意で入る海外旅行保険以外のもの)
燃油特別付加運賃(燃油サーチャージ)
旅行代理店の手数料と消費税
これらの明細は、旅行会社や旅行代理店でないと記載できない内容です。必ず記載して欲しい部分です。内訳がないと後日電話で照会しなくてはなりません。
海外出張のときは行程表が必要
日本から海外へ航空機で出張するときは、日付変更線を超えることがあります。日本時間と異なる現地時間になります。旅費のうち宿泊手当は、現地時間と到着地によって単価が変わります。出発の日時と到着の日時、それぞれの到着地を記載した旅行の行程表が必要です。
通常、海外旅行のときは、日本を出発してから日本へ帰るまでの詳細な行程表(スケジュール表)を旅行会社が作成してくれます。この行程表が旅費計算に必要です。
宿泊手当は、現地の場所によって単価が異なります。滞在地が不明な場合は旅費を計算できません。物価の高い国と、安い国では、単価が異なります。
航空機を使用しない出張
新幹線や特急電車、急行電車などの公共交通機関を利用する出張では、領収書や予約時などの料金がわかる資料が必要です。
ただし、パック旅行(電車や飛行機とホテル代のセット)を使用するときは、各組織によって必要となる書類が異なります。事前に旅費担当者へ確認することをお薦めします。国の旅費法上は、包括宿泊費として支給う可能ですが、厳格な運用をしているところでは、パック旅行を禁止していたり、旅行代金の明細が不明な部分が支給されないことがあります。パック旅行を使うと実際に必要な旅費が減額され、損してしまうこともあります。
まとめ 出張旅費を請求するときに必要な書類
航空機を使用する出張
見積書(請求書)
行程表
領収書
搭乗券の半券(搭乗証明書)
航空機を使わない出張
料金明細のわかる領収書(予約時の画面コピーなど)
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