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随意契約

直接販売証明書では随意契約できない!競争性の有無が判断できない!

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随意契約
2014年 奈良
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直接販売証明書に基づく随意契約の可否についての解説です。官公庁がメーカーや開発元と契約するときに、直接販売証明書を発行してもらい、「競争性のない随意契約」と判断する事例が増えています。しかし直接契約することと、競争性の有無は、全く関係がありません。つまり直接販売証明書に基づいて、随意契約するという判断は適正ではないです。

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直接販売証明書は「随意契約の理由」にならない

 

2013年頃から、WEB上の官公庁向け営業案内で、「直接販売証明書の発行が可能です」と宣伝している民間企業が増えています。どうやら、「簡単に随意契約できますよ」という趣旨で直接販売証明書をアピールしているようです。

 

直接販売証明書とは、官公庁との契約を希望する会社が、官公庁の契約担当者へ提出する書類です。代理店などの仲介業者を介さずに、直接契約しますという証明書です。直接販売することで、「競争入札や見積もり合わせを行わずに随意契約できますよ」という宣伝のようです。

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直接販売証明書の目的

 

直接販売証明書は、契約した事実を証明しているだけの書類です。官公庁が契約した相手方から提出される書類ですから、当然のことながら仲介業者は存在しません。官公庁と直接契約しているので、直接販売証明書が発行されているだけです。

 

つまり、官公庁が誰とどのように契約しても、それは直接販売になります。例えば、販売店が多数あり、競争入札できる状態であっても、契約の相手方から見れば直接販売しているので、直接販売証明書を発行できるわけです。

 

直接販売証明書は、競争性の有無を証明する書類にはならないのです。

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「競争性のない随意契約」の根拠法令

 

官公庁が物品などを購入する場合は、一般競争入札が原則です。例外として指名競争入札、少額随意契約、「競争性のない随意契約」を認めています。国は会計法、地方自治体は地方自治法で定められています。

 

会計法

第二十九条の三 第一項
契約担当官等は、売買、貸借、請負その他の契約を締結する場合においては、第三項及び第四項に規定する場合を除き、公告して申込みをさせることにより競争に付さなければならない。

 

地方自治法

第二百三十四条 売買、貸借、請負その他の契約は、一般競争入札、指名競争入札、随意契約又はせり売りの方法により締結するものとする。

2 前項の指名競争入札、随意契約又はせり売りは、政令で定める場合に該当するときに限り、これによることができる。

 

これらの会計法令では、一般競争入札を原則とし、その例外として、指名競争入札、競争性のない随意契約、少額随意契約を認めています。

 

 直接販売証明書は、これらの契約方式のうち、「競争性のない随意契約」の証明書類と考えてしまっているようです。「競争性のない随意契約」の根拠法令を確認します。国は予算決算及び会計令、地方自治体は地方自治法施行令です。

 

予算決算及び会計令

第百二条の四 各省各庁の長は、契約担当官等が(略)随意契約によろうとする場合においては、あらかじめ、財務大臣に協議しなければならない。ただし、次に掲げる場合は、この限りでない。

三 契約の性質若しくは目的が競争を許さない場合(略)において、随意契約によろうとするとき。

 

地方自治法施行令

第百六十七条の二 (略)随意契約によることができる場合は、次に掲げる場合とする。

二 (略)その他の契約でその性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき。

 

予算決算及び会計令の「・・性質若しくは目的・・」は、「契約の内容」という意味です。つまり契約の内容が競争を許さなければ随意契約できるという規定です。地方自治体も同様の考え方です。

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「競争を許さない場合」の具体例

 

それでは、「競争を許さない場合」とは具体的にどのような状況を指すのでしょうか?

 

理解しやすいように具体例で解説します。あるメーカーが、特殊な技術を用いた製品を完成させ、日本だけでなく世界中で特許を得たとします。そして、その特殊な特許製品を自社で生産し、代理店や販売店を設けずに直接販売するとします。この状況下では、官公庁が契約できる相手方は、世界中で1社しか存在しません。特許法という法律によって市場での独占販売が許されているからです。これが「競争を許さない場合」の典型例です。(外国の場合は国際特許の申請になります。)

 

特許法

第二条 この法律で「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。
(略)

 

3 この法律で発明について「実施」とは、次に掲げる行為をいう。
一 物(略)の発明にあつては、その物の生産、使用、譲渡等(略)、輸出若しくは輸入又は譲渡等の申出(略)をする行為

 

第六十七条 特許権の存続期間は、特許出願の日から二十年をもつて終了する。

 

第六十八条 特許権者は、業として特許発明の実施をする権利を専有する。(略)

 

独占的な販売(特許法では「譲渡」になります。)が法律で認められているので、「競争を許さない場合」に該当します。随意契約を締結するのに必要な書類として、特許権を証明する資料や、生産・販売体制を確認する資料などを取り寄せ、随意契約理由書と一緒に契約関係資料として保存しておきます。

 

また他に良くある例としては、プログラム開発や映像などにおける著作権です。著作権も特許権と同じように保護されています。メーカーなどの開発会社が著作権を有していて、他の者が手を加えられない状態のときです。プログラムの改良や修正、過去の映像を使うときなどに、著作権に基づく「競争性のない随意契約」を締結することが多いです。

 

著作権法

第二十七条 著作者は、その著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利を専有する。

第五十一条 著作権の存続期間は、著作物の創作の時に始まる。
2 著作権は、この節に別段の定めがある場合を除き、著作者の死後(略)七十年を経過するまでの間、存続する。

 

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直接販売が安いとは限らない

 

メーカーから直接購入する場合、直接販売証明書があれば「安いので随意契約できる」のか考えてみます。

 

メーカーから直接購入するのですから、代理店や特約店などを経由しません。手数料などの中間マージンが発生しないので、契約金額が安くなると思うかもしれません。しかし官公庁の契約手続きでは、金額が大きく入札対象の場合、「安いから随意契約する」という考え方は間違っています。「本当に安い」かどうかは、一般競争入札を行った結果でしかわかりません。もし「他社より安い」という理由であれば、一般競争入札を実施しなければならないのです。「他社より」ということは、ライバル企業があるということです。競争性があると判断しているわけですから、「競争性のない随意契約」はできません。

 

つまりメーカーから直接購入するという理由は、「他に販売店がない」、「競争性がない」という理由とは全く別のものです。

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直接販売証明書が適正でない理由

 

官公庁が「競争性のない随意契約」を締結しようとするときに、なぜ「直接販売証明書」を必要としているのか、そして、それは適正な手続きなのか考えてみます。

 

直接販売証明書は、代理店などを経由せずに、直接契約するという証明書です。メーカーから見れば、官公庁と直接契約するわけですから、当然、事実どおりの証明書です。証明書の発行は全く問題ありません。メーカーでなくとも、多数ある代理店や販売店から恣意的に1社を選んだとしても、その販売会社は直接販売証明書を提出します。官公庁と契約する会社は、全て直接販売証明書を提出できるのです。官公庁と直接契約していることを証明しているだけです。

 

実際の社会では、メーカーが直接販売する場合でも、加えて代理店や販売店、小売店で販売しているケースが多いです。例えば、パソコンなどをイメージしてください。パソコンは、インターネットのWEB上でメーカーサイトが直接販売してます。メーカー以外に大手家電量販店でも購入できます。秋葉原へ行けば無数の店が販売しています。数え切れないほど多数の競合する販売店が実在するわけです。多数ある販売店を排除して、直接、メーカーと随意契約することは、「競争性を確保する」という契約方式の原則から逸脱した手続きです。メーカーからすれば、自社と随意契約してもらえるなら、直接販売証明書を提出します。実際に直接販売するわけですから。

 

 販売店が多数実在するのに、直接販売証明書を理由にして、随意契約を行うのは法令に違反しています。おそらく、「メーカーと直接契約すれば安い」という誤った考え方と、そもそも一般競争入札を原則としている目的を理解していません。現実にメーカー直販よりも、代理店や販売店の方が安価なケースは、数え切れないほどあります。もし仮に、メーカーと代理店が競争するなら、通常はメーカーが遠慮して辞退します。そうでなければ代理店が育たず、販路網を広げることができないからです。

 

直接販売証明書の中に、「他の代理店を通さず直接販売する」、あるいは「他に販売店等はなく」という文面が加えられていたとしても、競争性がないという証明にはなりません。なぜなら、今回の契約を直接行う時点で、事実として代理店などを経由していないからです。今回の契約は、代理店や販売店を経由せずに、官公庁と直接契約している事実を表しているだけで、競争性の有無とは関係ありません。「直接販売証明書」という書類は、発注者である官公庁側から見れば、あってもなくても、全く意味のない書類です。

 

特に注意したいのが、「競争性のない随意契約」を締結しようとして、官公庁側の契約担当者が直接販売証明書の提出を依頼し、「他の代理店を経由せず」という文面を加えるよう強制すれば悲惨なことになります。「代理店を排除する」ということは、独占禁止法に違反するような依頼を行っていることになり、大きな問題になってしまうのです。一般社会では、自社製品の販路を広げたいと考えるのが自然です。自由競争が日本の市場経済の大原則になっています。メーカーは販売店を拡大したいですし、それを阻害するような行為を公的組織が行うべきではありません。

 

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メーカーと代理店の競争

 

 

仮に一般競争入札で、メーカーと代理店が競争に参加したとしましょう。

 

 

入札結果はどうなるでしょうか?

 

 

メーカーが落札するとしたら、独占禁止法違反の可能性があります。自社が落札するために代理店への卸価格を制限している可能性があるからです。

 

稀なケースですが、メーカーと代理店が入札を行えば、代理店が落札するのが自然です。メーカーは、自社製品を売ってくれる代理店を育てるため、代理店よりも有利な金額を提示しないでしょう。そうでなければ代理店がつぶれてしまいます。自然とメーカーが身を引くのが一般社会です。

 

このように考えると、最初の方で解説した、「メーカーとの直接契約なら代理店の中間マージンが必要ないので安く契約できる」という考え方が間違っていることもわかります。一般的には、メーカーとの直接契約の方が高くなることの方が多いです。

 

直接販売証明書自体が意味のない不要な書類ですし、直接販売証明書を理由とした随意契約は、不適切な契約手続きの疑いが濃厚です。

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