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概算要求の方法がわからないとき、夢のある基礎研究こそ国立大学で

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国立競技場
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国立大学を例にした概算要求の方法です。基礎研究の意味を再確認して、キーワードを設定して要求資料を作成します。文部科学省への概算要求では、大学からの要求順位が大きく影響します。大学からの要求順位が高ければ間違いなく予算を獲得できます。

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削減される運営費交付金

 

国立大学や政府系の研究組織は、国から運営予算の配分を受けてます。運営予算のほとんどを国民の税金に頼っています。例えば国立大学では、文部科学省から運営費交付金が配分されます。しかし運営費交付金は平成16年度の国立大学法人化以降、毎年1%ずつ効率化係数という名目で減額されてきました。1%というと微々たる金額のように感じるかもしれませんが、国立大学全体では年間100億円近く減額されています。

 

第1期中期目標期間(平成16~21年度)の効率化係数 △ 1 %は、第二期中期目標期間(平成22~27年度)では、大学改革促進係数として△ 1.0 %から△ 1.6 %になりました。

 

国立大学の運営費交付金は、教員や職員の人件費などの管理経費に充てられます。そのため研究に使える運営費交付金は、本当に微々たる金額です。運営費交付金の配分方法は、各大学や学部で決めます。ほとんどが研究者1人あたり年間50万円以下です。研究室にとっては最低限の生活費でしかありません。文房具などの消耗品や通信費、学会の年会費などで消えてしまいます。新たな研究活動を行うことはできません。

 

そのため研究費は、研究者が申請して獲得する競争的資金に頼らざるを得ません。競争的資金の代表例は科研費ですが、5年間しか認められず、極めて不安定な研究費です。また競争的資金を獲得できない若い研究者が多いのも現実です。科研費の採択率は、応募件数の一番多い基盤研究(C)で 28.2 %です。(令和元年5月現在、学振HPの速報値参照)

 

毎年、運営費交付金が自動的に減額される中で、研究室を維持していく、あるいは新しい研究を実施するためには、概算要求という制度を利用して予算を獲得しなければなりません。

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文部科学省への概算要求のコツ

 

文部科学省への概算要求はハードルが高く、ほとんど期待が持てないと思っている研究者が多いです。しかしポイントさえ押さえれば、概算要求は実現します。

 

実際に、概算要求を行うときのコツを解説します。

 

国立大学の概算要求を例とします。

 

まず概算要求の仕組みを簡単に理解することが大切です。細かい部分は各大学により手続きが異なりますが、概略は同じです。

 

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時系列的な概算要求の流れ

 

1 研究室で研究計画を検討

2 各学部等で概算要求事項の検討 順位付け

3 大学本部で概算要求事項の検討 順位付け

4 文部科学省への事前ヒアリング

5 文部科学省へ概算要求

6 文部科学省内で概算要求事項の検討 順位付け

7 財務省へ概算要求

8 国会で議決

 

これが概算要求の主な流れです。

 

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概算要求は要求順位が重要

 

現場の研究者が一番力を入れたいところは、学内の順位付けです。上記の2と3です。まず自分の所属する学部内の順位付け、そして次に大学内での順位付けが重要なポイントになります。

 

注意したい点は、一般的に概算要求の要求順位は公表しないところです。要求順位を公表すると、研究者間の派閥争いなど余計なトラブルが生じます。不公平感が渦巻いてしまうのです。そのためほとんどの大学では、大学本部の役員と予算担当者などの大学執行部の限られた人たちしか要求順位を知りません。

 

大学から文部科学省へ要求する段階で要求順位が高ければ、ほぼ間違いなく概算要求として認められます。

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夢のある基礎研究とは

 

そもそも国立大学が行なう教育研究事業はすべてが重要です。要求内容や研究内容を客観的に順位付けして優劣を判断することは不可能です。一般的な官公庁が実施している行政サービスのように、国民が今求めていること、今必要としているサービスを順位付けするのとは全く違うからです。教育研究事業は未来に必要なことです。現時点では評価できないのです。

 

近頃(2019年)は、競争的資金という研究費を獲得する条件として、3年~5年先の研究成果が求められてます。また実用化が見込まれる研究に対して、研究費が集中的に配分される傾向があります。しかし本来、国立大学が行なう研究は、基礎研究であるべきです。数年先に実用化が期待される研究は、基礎研究ではありません。

 

国立大学や政府系の研究組織が行なう研究は、基礎研究であるべきです。実用化が見えているような開発研究・応用研究であれば、民間会社が実施するべきです。国民の税金を使用する公的な研究は、商業化して特定の会社が利益を得る研究ではいけないのです。

 

国民の税金を使用した研究成果が、特定の会社の利益のために使われるとしたら問題です。一部の民間会社のために国立大学の研究成果が利用されてしまうのです。国民全体の資産が特定の営利企業へ流れてしまうことになります。

 

基礎研究は、成果の見えない研究、結果のわからない研究だからこそ、国立大学で行なう意味があるのです。具体的な成果の見えない研究が、夢のある基礎研究です。

 

しかし実際には、平成16年からの国立大学法人化によって、夢のある基礎研究を計画しても研究費が獲得できない状況になりました。すぐに実用化が可能で、特定の企業の利益に結びつくような研究に対してのみ、研究費が配分される時代へと変化してしまいました。

 

1985年くらいまでは、大蔵省の予算担当者も、常に日本の将来を見据えていました。昔の大蔵省の予算担当者は次のように考えていたのです。

 

数年後に成果の見える研究なら、民間会社が営利目的で行うはずだから、国民の貴重な税金を使う必要はない。もっと未来を見て、今は利益にならない基礎研究にこそ税金を使うべきだ。

 

今思うと、昔の人たちは本当に日本の未来を深く考えていました。だから日本は発展してきたのです。

 

民間会社が踏み込めないような領域の研究、すぐに商業化できず利益に結びつかないような研究を国が積極的に行うべきと考えていました。基礎研究の裾野を広げ、将来的に役立つかどうかわからないリスクのある基礎研究に対して国民の税金を投入していたのです。実際にノーベル賞を受賞した多くの研究が、国立大学での基礎研究であることからもわかります。

 

話しを戻しますが基礎研究にこそ、国民の税金を投入する意味があるのです。基礎研究は、応用研究の前段階という意味ではありません。基礎研究とは実用化に結びつくかわからない研究という意味です。研究成果がすぐに役立つとはいえない研究です。民間会社から見れば、リスクのある研究が基礎研究です。

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概算要求の要求順位を上げる方法

 

概算要求の順位を上げるには、どのような手法があるでしょうか。

 

各大学によって事情が異なりますが、おおまかに次の要素が関係してきます。

 

文系、理系、あるいは部局間のバランスを考慮して公平に順位付けを行う場合と、概算要求の内容、研究の独自性で順位付けを行う場合です。

 

バランスを考慮する伝統がある場合は、極端に軽薄な研究内容でない限り、自分たちの順番のときには高い順位が約束されます。各学部ごとに順番で優先順位をつけることもあります。

 

研究内容で順位付けする場合を少し詳しく解説します。

 

まず学部内での順位を上げる方法です。

 

研究内容について優劣を決めることは、派閥争いの原因にもなり、将来的に禍根を残すので好ましくありません。

 

こういうことを書くと、必ず、競争原理を導入すべきであり、そのためには研究内容を精査して、真に必要な研究プロジェクトを要求すべきだ、と正論を主張する研究者がいます。しかし本当にそうでしょうか。

 

研究は、真理の探究こそが唯一の正論です。多数決や一部の発言力の強い研究者の意思に左右されるべきではありません。公平な順位付けは、研究者や研究室からの要望に基づき、輪番制にすることです。研究室単位あるいは研究者ごとに、輪番制で順位付けすることを事前に合意しておくのです。派閥争いが心配なら、関係者間で覚書を交わしておくのも効果的です。

 

しかし、もっと公平な方法、コツがあります。

 

概算要求の内容を、特定の専門分野だけでなく、広い研究分野にするのです。基盤的な研究体制を構築する研究内容として、学部内の広い分野の研究を広くカバーする方法です。つまり学部全体としての研究を、今まで以上に深く掘り下げて行う研究内容とします。大きなくくりでの要求になるので、取りまとめ責任者を決め、2人から3人ほどで要求書の原案を作ります。関係者間で内容を検討し最終的に教授会で決定します。

 

原案作りの前段階では、たたき台を作成するときに、キーワードを最初に検討します。キーワードは、マスコミ報道や新聞記事などで話題になっていること、解決されていない課題をキーワードとして設定します。学会などで議論されていること、新聞などで繰り返し取り上げられる課題です。そのキーワードを用いて、広く多数の研究室や研究者が参加できる研究内容を洗い出します。

 

ここで研究者が陥りやすい落とし穴があります。

 

要求内容を論文形式で記述してしまうと、内容は正確ですが読みにくい内容になってしまいます。学会での論文発表であれば、読む人全員が専門家なので、専門用語や略称などを用いて問題ありません。しかし概算要求は全く違います。

 

概算要求書は、専門外の研究者や事務職員が読むことを念頭に作成します。専門家でない素人が理解しやすい表現で記述することが重要です。専門的な内容で記述した部分は、抽象的な表現だけでなく、簡単な例を挙げて誰もがイメージしやすいように表現するのがコツです。概算要求書と一緒に提出する書類としてポンチ絵があります。2020年現在のポンチ絵は図表を意味しています。PowerPoint などでわかりやすく図や表を作成しています。しかし本来、概算要求で必要なポンチ絵とは、漫画のようなわかりやすい絵をイメージしていました。ポンチ絵とは小学生でもわかるような漫画を意味していたのです。

 

あまり知られていませんが、概算要求は、事務職員同士の打ち合わせで要求事項が決定します。事務職員同士とは、本省の予算担当者と財務省の担当者です。本省の係長や主査が、財務省の担当職員と一緒に概算要求書を作り上げます。その時代に、社会から求められている課題を取り上げて要求資料を作成します。研究内容も事務職員が容易にイメージできる方が効果的なのです。

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概算要求の心構え

 

概算要求するときの心構えです。

 

概算要求は、水物(みずもの)です。

 

その時代の社会情勢や政権、財務省担当者、関係する国会議員の考え方などによって、概算要求の判断基準がコロコロと変わります。どんなにすばらしい要求内容でも認めてもらえないことがありますし、逆に、ダメもとくらいの軽い気持ちで適当に要求したものが認められてしまうこともあります。少額の宝くじに当たるような感覚です。

 

1980年頃は概算要求の時期になると、文部省の廊下が陳情する人たちで溢れていました。要求内容について、予算担当職員の理解が得られるよう補足説明していました。日本全国から関係者が霞ヶ関に集まりました。熱意を伝えるため毎日のように通う人が多かったです。熱意だけで概算要求が認められることもあった時代でした。

 

貴重な予算を配分する側から見れば、真剣に真面目に取り組んでいる信頼できる相手へ予算を配分したいのです。自分の研究を売り込もうと他の研究者を批判するような人は、無責任で信用できませんから予算は配分しません。

 

予算要求で、本省職員と財務省職員の理解を得るためには、次のように進めると効果があります。

 

他大学で行われている類似の研究をどれだけ把握しているか。そして、それらの研究とは異なる手法などアプローチの独創性を持っているか。他大学の研究より、うちの大学の研究が優れている、などのエゴ丸出しの説明はいけません。他大学を批判するような身勝手で無責任な人の要求は信頼されません。

 

社会的な意義や社会が求めていることを、どれだけ把握しているか。マスコミ報道、特に新聞記事の切り抜きなどを集めて説明するのが効率的です。新聞記事は、素人が理解しやすいように記述されています。研究者は、日常的に自分の研究と関連しそうな社会問題の記事などを集めておくことも大切です。

 

海外の研究の状況、その分野の研究が海外でどれだけ競われているか。例えば、この研究はノーベル賞に近い研究となれば予算が認められる可能性は極めて高くなります。

 

ノーベル賞は世界的に認められています。ノーベル賞が獲れそうな研究者に対して国民の税金を投入することは、本省の予算担当や財務省にとっても一番理想的です。あまり言いたくありませんが、要求内容を説明した後に、この先生はノーベル賞もあり得るので、是非、お願いしますとさらりと言えば、かなり効果があります。もちろん実際に国際学会などで認められていて、論文の引用数が多いなどの事実は必要です。

 

本省の予算担当者としては、ノーベル賞級の研究に対して予算を認めなかったとなれば、それこそ恥になります。研究の重要性を理解していないと周りから見られ、プライドを傷つけられるのです。ノーベル賞候補は、かなり有効な手法です。

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