官公庁の契約手続きにおける請書(うけしょ)の正しい取り扱いと契約書との違い

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請書(うけしょ)の正しい取り扱いと契約書との違い 契約手続き
請書(うけしょ)の正しい取り扱いと契約書との違い
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官公庁の契約実務で日常的に取り扱う書類のひとつに「請書(うけしょ)」があります。

しかし、請書がどのような法的な性質を持ち、契約書とどう違うのか、正確に理解している方は意外と少ないのではないでしょうか。

特に新しく契約担当になった方にとって、「どの金額までなら請書で対応できるのか」「メールで受け取った請書に収入印紙は必要なのか」といった疑問は尽きないはずです。請書は契約手続きを簡略化できる便利な書類ですが、取り扱いを間違えると、納品遅延時のトラブルや印紙税の処理ミスにつながるリスクも潜んでいます。

この記事では、官公庁の会計実務担当者に向けて、請書の基礎知識から根拠法令、契約書との違い、電子メール提出時の印紙の扱いや契約変更の方法まで、具体的な実務に即してわかりやすく解説します。毎日の契約事務をより正確に、そしてスムーズに進めるための参考にしてください。

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官公庁の会計実務における「請書」の基本と正しい取り扱い方

官公庁の会計実務において、民間企業と物品の購入や役務の依頼といった取引を行う際、さまざまな書類を取り扱います。

その中で、少額の契約の際によく用いられるのが「請書」です。

しかし、日常的に処理している書類であっても、その法的な位置づけや契約書との明確な違い、取り扱い上の注意点を正確に把握しておくことは、適正な予算執行のために欠かせません。

請書という書類の基本性質から、関連する会計法令、実務上でトラブルになりやすい法的強制力の問題、そして近年増えている電子メールによる提出と収入印紙の関係について、具体的に解説していきます。

官公庁の契約手続きが厳格である理由と請書の位置づけ

請書の詳細に触れる前に、前提となる官公庁の契約の性質に触れておきます。

官公庁は民間企業とは異なり、自らの自由な判断で利益を追求する組織ではありません。

その運営財源は国民や住民から強制的に徴収された税金によって賄われています。

そのため、税金を使用する事業や契約の手続きは、国会や議会で定められた法令や規則に基づき、極めて厳格かつ透明に行われなければなりません。

特定の企業を不当に優遇することは「全体の奉仕者」としての義務に反するため、官公庁の契約方式は、広く不特定多数の参加を募る「一般競争入札」が原則とされています。

しかし、日用品の購入など少額な契約まで数か月を要する入札手続きを実施していては、行政運営に多大な支障をきたします。

そこで、業務の効率化を目的に、事務簡素化を図るために例外として認められているのが「随意契約」であり、その手続きの負担をさらに軽くするために、双方が署名する契約書の代わりに用いられるのが「請書」という書類なのです。

請書(うけしょ)とは何か?契約書との決定的な違い

まず、基本的な読み方ですが「せいしょ」ではなく「うけしょ」と読みます。

実務の打ち合わせなどの会話の中で読み間違えると少し気まずい思いをすることがあるため、しっかりと覚えておく必要があります。

請書とは、民間企業などの契約の相手方が官公庁に対して「提示された条件で契約をお請けします」という意思を示すための誓約書です。

契約を締結する際、発注者である官公庁側から相手方に対して一方的に提出を求める形式をとります。

これに対して「契約書」は、契約の当事者双方が契約内容を文書で取り決め、お互いの権利(何を求めることができるか)と義務(何をしなければならないか)を約束するものです。

双方が記名押印して取り交わすことで契約内容の遵守を証明し、万が一約束が破られた場合には違約金や損害賠償の対象となる法的な強制力を持ちます。

つまり、契約書が当事者間の合意を双方で証明する重みのある書類であるのに対し、請書は相手方が一方的に差し入れる簡略化された書類であるという点が最も大きな違いです。

そのため、請書は契約書を作成するほど複雑ではない、日常的で簡易な契約において事務負担を軽減するために用いられます。

請書を必要とする根拠法令と契約書の省略条件

官公庁の契約手続きにおいて請書が必要となる基準は、国の会計法令や各地方自治体の財務規則などによって明確に定められています。

国の機関の場合、契約事務取扱規則第15条において「契約担当官等は、契約書の作成を省略する場合においても、特に軽微な契約を除き、契約の適正な履行を確保するため請書その他これに準ずる書面を徴するものとする」と規定されています。

地方自治体においても、都道府県や市町村の契約事務規則などで同様の趣旨の定めが置かれています。

では、そもそも契約書の作成を省略できる基準はどのように決まっているのでしょうか。

国の予算決算及び会計令第100条の2により、契約金額が250万円(外国で契約するときは350万円)以下の場合、契約書の作成を省略できます。

日本国内では、250万円以下の契約であれば、契約書の代わりに請書を提出させることで手続きを進めることができます。

さらに、先ほどの契約事務取扱規則にあった「特に軽微な契約」に該当すれば、請書の提出さえも省略することが可能です。

この「特に軽微な契約」の基準額については、法律や政令で一律に決められているわけではなく、各省庁や地方自治体の予算規模、職員の配置状況に応じて、それぞれの運用通知や内部規則で個別に定められています。

たとえば、国の機関でも国土交通省の運用基準では100万円を超えない契約、環境省では50万円未満の契約を軽微な契約として扱う例があります。

地方自治体においても、30万円未満を軽微とする市や、10万円以下とする市など、組織によって運用が大きく異なります。

そのため、自身が所属する組織の規則や運用基準で、いくらから請書が必要になるのかをしっかりと確認することが大切です。

請書の法的な強制力と実務上の落とし穴

請書は契約の相手方から一方的に提出される誓約書であるため、契約書のような強い法的な強制力を持たないという点に注意が必要です。

官公庁との契約において、民間企業が請書を提出したからといって、それだけで相手方に契約の履行を強く強制することは困難な場合があります。

実務上で想定されるトラブルとして、納入期日が遅れて履行遅滞になるケースが挙げられます。

官公庁側が「請書を受け取っているのだから早く納品してほしい」と強く主張しても、民間企業側から「請書を提出する前も、提出した後も、官公庁側から正式な発注という連絡がなく、契約が成立しているのか不明だったため、手配を保留していた」と反論されてしまう可能性があります。

このように主張されると、当事者間で明確な契約の合意があったかどうかが曖昧になり、相手方に納入を強制できなくなってしまいます。

請書を受け取るだけでは、正式な契約の成立を証明する材料としては不十分になるリスクがあるのです。

この事態を防ぐためには、相手方から請書を受理した際に、必ず電話や電子メールなどで「正式に発注します」という意思を確実に相手方へ伝え、納入予定時期などを再確認するプロセスを挟むことが重要です。見積書の余白などへ、正式発注日をメモしておくと安心です。(例:6月23日、電話で営業の田中さんへ正式発注依頼済)

また、請書はあくまで少額で簡単な内容の契約に適した書類です。

もし契約内容が複雑であったり、ミスが許されず契約不履行時に業務に大きな支障が生じるような重要な契約(たとえば現金の収集運搬業務など)であれば、たとえ契約金額が少額であっても、請書で済ませるのではなく正式な契約書を取り交わすのが適切な判断となります。

電子メールで提出される請書の収入印紙の取り扱い

近年、事務手続きのデジタル化が進み、請書をPDFファイルなどに変換して電子メールに添付して提出してもらうケースが増えています。

ここで実務上の疑問となるのが、印紙税(収入印紙)の取り扱いです。

結論から言うと、官公庁側の依頼により請書を電磁的記録(PDFなど)に変換して電子メールで送信してもらった場合、その請書には収入印紙を貼付する必要はありません。

国税庁の見解によれば、請負契約に係る注文請書を電磁的記録に変換して電子メールで送信した場合、用紙などの現物が相手方に交付されていないため、「課税文書を作成したことにはならない」とされ、印紙税の課税原因は発生しないとされています。

官公庁側としては、電子メールで受信した請書のPDFファイルを印刷して決裁書類に添付することになりますが、相手方から紙の現物を直接交付されたわけではないため、印刷した書類に収入印紙がなくても問題ありません。

この場合、後日の検査などに備えて、請書が添付されていた電子メールの本文もあわせて印刷し、保存しておくことが推奨されます。

ただし、電子メールで送信したあとに、改めて紙に印刷し押印した請書の現物を郵送や持参などで官公庁側に交付した場合には、課税文書の作成に該当し、現物の請書には収入印紙が必要となります。

また、物品の売買契約に関してはもともと印紙税が非課税ですが、請負契約や一部の委託契約などの場合は印紙税の対象となるため、契約内容に応じた確認が必要です。

相手方企業から印紙税の要否について問い合わせを受けた場合は、最終的な判断は税務署の管轄となるため、国税庁のウェブサイトを参照するよう案内するか、直接管轄の税務署へ相談するよう促すのが安全です。

請書の一般的な様式と記載すべき必須項目

請書の様式については、多くの官公庁が独自のフォーマットをWEB上で公開しています。

一般的な物品供給契約などを例に挙げると、請書には以下のような項目を網羅して記載し、提出してもらいます。

  • 件名(購入する物品や提供を受ける役務の名称、契約のタイトル)
  • 内訳(品名、メーカー名、型式、数量など詳細な仕様)
  • 契約金額(消費税および地方消費税相当額を含む総額、ならびに内訳としての消費税額)
  • 納入期限(あるいは業務の履行期限)
  • 納入場所(履行が行われる具体的な場所)
  • 検収確認の条件(発注者が物品の納品時等に検査確認を行う旨)
  • 契約代金の支払条件(検収完了後、適法な請求書を受理してから所定の日数以内に一回で支払う旨など)
  • 書類の提出場所(納品書や請求書の送付先)
  • 保証に関する事項(納品検査確認後一年間の無償保証期間など)
  • 契約の細目(組織が定めた物品供給契約基準などを適用する旨)
  • 作成年月日、宛名(官公庁の組織名)、および受注者の住所、会社名、代表者役職名、氏名の記載と押印(省略が認められる場合を除く)

これらの取引条件を明記したうえで、「上記の契約について、条件を了承し契約した証としてこの請書を提出します」という誓約の文言を添えてもらいます。

請書を提出した後に契約内容を変更する手順

正式に請書を提出してもらい契約が成立したあとに、予期せぬ事態などで契約内容を変更せざるを得ない状況が発生することがあります。

官公庁の契約において、合理的な理由もなく相手方に有利になるような変更(単なる契約金額の増額など)は原則として認められませんが、発注者に不利にならない契約金額の減額や、当初想定できなかった正当な理由(不可抗力など)による変更であれば対応が可能です。

契約書を取り交わしている場合は新たに「変更契約書」を作成して双方が押印しますが、請書による契約の場合は、請書が一方的に提出される誓約書であるという性質上、以下のような方法で変更手続きを行います。

第一の方法は、変更後の請書を新たな日付で再度作成し、提出し直してもらう方法です。

この場合、当初提出された請書と変更後の請書の両方を契約関係書類として一緒に保管します。

後から見て経緯がわかるように、当初の請書の余白に「〇〇年〇〇月〇〇日付け変更請書あり」と明記しておくことが重要です。

人事異動などで担当者が代わった際、これを忘れていると、どちらが有効な書類かわからなくなり混乱を招きます。

第二の方法は、当初の請書を相手方に一旦返送し、当初の請書と同じ日付で、内容を変更した請書を再提出してもらう差し替えの方法です。

この手続きをとる場合、返送する前に必ず当初の請書のコピーをとり、そのコピーに契約変更の処理経緯(なぜ差し替えたのか)をメモして残しておく必要があります。

第三の方法として、「変更契約書」の形式に似せた「変更請書」を提出してもらう方法もあります。

たとえば「令和〇〇年〇〇月〇〇日に提出した件名〇〇の請書について、当初の〇〇を〇〇に変更します。これ以外は当初の請書のとおりお請けします」といった文章を作成し、提出してもらいます。

この場合も、当初の請書の余白に変更請書を受理した旨のメモを残します。

いずれの方法をとる場合でも、相手方と変更内容についてしっかりと合意したうえで書類の再提出を依頼すること、そして変更に至った経緯について、事前に組織内で決裁手続きを踏むことが不可欠です。

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おわりに:請書の性質を正しく理解し適正な契約実務を

請書は、事務処理を効率化するために非常に役立つ書類ですが、その法的な性質を軽視すると、納品トラブルや不適切な会計処理を引き起こす原因となり得ます。

とくに「請書は契約書とは異なり、強制力が弱い」という点を常に意識し、相手方とのコミュニケーションを密に取ることで、認識のズレを防ぐことが大切です。

また、会計法令や所属する組織の規則は随時更新されるため、電子データによる書類提出の取り扱いや、契約書を省略できる基準額などについて、常に最新の情報を確認する姿勢が求められます。

日々の業務において、根拠となるルールを理解しながら手続きを進めることが、適正で公正な会計実務を実現するための第一歩となります。

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