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契約手続き

再委託が問題になる理由、再委託が認められるケース

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再委託先がわからない! 契約手続き
再委託先がわからない!
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2020年6月、新型コロナウイルス感染症対策として実施された持続化給付金事業の再委託が問題になっています。経済産業省が委託した一般社団法人サービスデザイン推進協議会が、業務のほとんどを電通へ再委託し、丸投げ状態だと批判されています。再委託の問題をわかりやすく解説します。

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なぜ再委託が問題なのか?

 

新型コロナウイルス感染の影響によって売上が激減した事業主に対して、国が支給する持続化給付金事業の再委託について、国会やマスコミが問題視しています。

 

報道によれば、経済産業省が一般社団法人サービスデザイン推進協議会へ、769億円で事業を委託しました。ところが、ほとんどの業務を大手広告代理店の電通へ749億円で再委託していたのです。「業務を丸投げ」したと批判されています。そして再委託を受けた電通では、さらに子会社へ645億円で外注(再々委託)しています。これらが「中抜き」ではないかと問題になっているのです。(中抜きの意味が良くわかりませんが、おそらく不要な中間マージンが発生している、ということでしょう。)

 

問題になっているのは、自分で業務を実施できない一般社団法人サービスデザイン推進協議会へ委託したこと、そもそも再委託は問題ないのかという点です。

 

官公庁の契約手続きが、国会やマスコミなどで問題になるときは、不謹慎かもしれませんが、良い勉強にもなります。多くの人たちがどのように思うのか、まさに「公正性」を考える機会になります。公正性とは、多くの人が正しいと感じることです。

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再委託が禁止されている理由

 

最初に、業務委託契約における再委託が、なぜ禁止されているのか確認します。

 

業務委託契約で再委託を禁止している理由は、いわゆる「丸投げ」を防止するためです。何もせずに名前だけ貸すような不良業者を排除するためです。極端な例えになりますが、暴力団のみかじめ料や場所代などと同じようになってしまうからです。また業務を実施する上で、責任の所在が曖昧になるからです。再委託を無制限に認めてしまうと、統制が取れなくなりコントロール不能になります。特に官公庁の契約では、国民の個人情報を扱うことも多いです。コントロールできない再委託では、個人情報が漏れまくってしまいます。契約内容をキチンと守れなくなるのです。

 

そもそも業務委託の入札では、業務が実施できるという前提で入札へ参加しています。これは参加資格を入札条件としていることからもわかります。入札へ参加するには、業務内容に合った資格が必要です。業務が実施できることを事前に審査し、客観的に証明するために「全省庁統一資格」が存在しています。業務を実施できる能力があるからこそ、入札へ参加でき、そして落札すれば、契約の相手方として委託するのです。

 

つまり、ほとんどの業務を実施できないのであれば、入札へ参加してもらっても困るわけです。ただ、(今回の持続化給付金事業のように)全国的な大規模事業になると、いくつかの会社で分担して業務を実施することになります。どのように分担して業務を実施するのか、入札前に「業務提案書」を提出して技術審査を行うのが通常です。再委託が問題ないのか、契約実務に関係ない、第三者的な立場の委員が技術審査を行います。競争入札における技術審査は、業者との癒着を防ぐ意味でも重要です。

 

業務提案書は、技術審査委員会で審査します。契約事務に関係ない第三者へ審査委員を委嘱し、委員会の中で再委託や外注先について公平・公正に審議します。委員会で再委託や外注を認めているのであれば、議事録も残りますし、認めた理由も明らかなはずです。対外的な説明を行うためにも、委員会での審議が必須です。もし審査してないなら、かなり怪しい(癒着や官製談合に近い)契約手続きになってしまいます。

 

もし入札前に提出する業務提案書では、自社で業務を実施できるように記載し、実際は丸投げするのであれば虚偽記載です。詐欺に近い行為といえます。そうなれば当然ながら、入札は無効になり、入札参加資格も取り消されます。当分の間、官公庁との取引停止処分にもなるでしょう。

 

つまり再委託を認めたのであれば、技術審査委員会で審議されているはずです。そして議事録も公開しなくてはなりません。(この部分の報道が聞こえないのが不思議です。)

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業務委託契約で認められる再委託

そもそも業務委託契約とは、どのような契約なのか確認します。

 

業務委託契約は、民法上の「準委任契約」です。法律行為でない事務(業務)を委託するものです。本来、官公庁の職員が自ら行うべき業務について、人手が不足するなど、さまざまな理由で実施できない場合に、専門会社などへ委託します。

 

では最初に、再委託が問題ないケースを考えてみましょう。当然ながら契約上の義務は、再委託先へも適用されます。その旨を委託先と再委託先が契約等で取り決めているという前提です。

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業務の一部だけの再委託は問題なし

 

例えば、業務全体のうち3割程度を、外部の会社へ再委託(外注)するのであれば問題ありません。よくあるケースとしては、専門会社へ依頼した方が、効率的で経費も安くなる場合です。契約内容の一部にあるデータ入力業務を、コンピューター専門会社へ依頼する例です。キーボードを使うタイピングは、熟練者ほどスピードも速く、効率的になります。

 

再委託を必要とする業務は、事前の市場調査で容易に判明します。仕様書を作成する段階で、ひとつひとつの業務を、誰が、どこで、どのように実施するか確認するからです。業務内容の詳細がわからなければ、仕様書が完成しません。つまり事前に調査すれば、入札公告を公開する前に再委託が必要なのか明らかになります。再委託(や再々委託)の可能性があれば、入札前に業務提案書を提出してもらい、技術審査委員会で審査することも義務付けなければなりません。仕様書の中でも、審査を明記することになるのです。

 

提出する業務提案書の中では、どの部分を外部へ再委託するのか、なぜ再委託するのか記載しておかなければなりません。重要事項なので、再委託を承認するときは、必ず書面です。口頭で行うような軽微なものではありません。国民の税金を使うわけですから、責任体制が明確でないと再委託できないのです。

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商事会社の再委託は問題なし

 

総合商社等で、ほとんどの業務を下請け会社や、関連会社へ再委託し、全体的な管理(業務の分担や進捗状況をコントロールしたり、技術的なノウハウを提供)を主業務としている会社も問題ありません。今回の電通に近いかもしれません。(電通が委託先として、経済産業省と直接契約するのであれば問題ないでしょう。)

 

よくある例は、商社や商事会社との契約です。いろいろな商品やサービスを取り扱う会社です。契約目的を達成するために、一番効率的な方法を探し出せるノウハウを持つ会社です。技術的に得意とする会社を探したり、より安い商品やサービスの専門会社を探して外注できる総合的な会社です。一般的に、委託元の商事会社等は、契約内容に応じて業務を分担するなどの履行方法を企画し、全体的な進捗状況をコントロールしながら、契約内容の全責任を負います。

 

 業務全体を管理監督している商事会社であれば、業務全体を再委託しても問題ありません。会社自身が、そもそも子会社や関連会社へ再委託(外注)することを目的としており、長年にわたる関連会社との関係性(信頼関係)が確立しているからです。お互いに守るべきこと(個人情報などの秘密情報)がわかっているのです。

 

商事会社が入札へ参加する際には、事前に関連会社との業務分担や、緊急時の連絡先などの一覧表を業務提案書の中へ記載し、技術審査員会で審査します。業務の再委託先一覧、責任者一覧、管理監督の具体的な方法、緊急時の対応などを明確にした業務提案書を提出してもらいます。

 

技術審査委員会で業務提案書の内容を審査し、再委託が問題ないことを確認してから入札への参加を認めます。事前に業務の大部分を再委託することについて問題ないことを、書面で通知した場合のみ、入札への参加が認められます。

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再委託が問題になるケース

 

再委託が問題になるケースは、上述した内容を逆に考えるとわかります。つまり、契約を締結した委託先が、業務のほとんどを第三者へ再委託するときに問題になるのは、次のとおりです。

 

再委託先や再々委託先について、業務のコントロール(管理・監督)ができないときです。業務の進捗状況を管理したり、現場を視察して、業務がきちんと遂行できているか確認できない場合です。どこで、だれが業務を実施しているかわからない、野放し状態になっていることです。契約内容に責任を持つことができず、どのように業務が実施されるのか把握できない場合は、再委託が認められません。

 

入札前の業務提案書を審査するときには、過去の契約実績が重要になります。今回の契約と同じような履行実績があり、再委託先に対して十分に管理できる状況であるかをチェックすることになります。様々な専門会社と長い間契約を継続している商事会社であれば、会社同士の信頼関係が十分に構築されていて、相互に責任が持てるので問題ありません。

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今回の再委託が問題になっている理由

 

今回問題になっているのは、契約先の一般社団法人サービスデザイン推進協議会が、そもそも幽霊会社で実態のない会社と疑われていることと、業務を再委託先へ丸投げしていることです。一般社団法人を通さずに直接契約すれば、必要のない再委託だったのではないかと疑われています。

 

マスコミ報道では、一般社団法人を契約の相手方とした理由について、持続化給付金の振込時に、電通の名前で振り込むことができないという説明がありました。しかし銀行振込なら、振込名を簡単に変えられます。今までも、政府が実施している大規模なアンケート調査契約などでは、業務委託契約先として民間の企業名が記載されてます。もし特定の企業名での振込がまずいのであれば、銀行に対して、振込名を「経済産業省」と統一するよう指示するだけで済むはずです。給付金の振込名を変える目的だけで再委託したという理由は、誰も納得できないでしょう。

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再委託問題を解決する方法

 

今回の契約については、実際の入札公告や入札説明書、仕様書等を確認していないので、正確ではないかもしれませんが、次のような確認方法が考えられます。

 

再委託は問題ない、と判断した審査委員会などの関係資料の公開です。再委託を承認したのであれば、再委託を明記した業務提案書、あるいは許諾文書が存在しているはずです。また、審査委員会あるいは支出負担行為担当官などが、入札へ参加しても問題ないと判断した関係資料が存在するはずです。それらについて確認するのです。

 

次に、一般財団法人が幽霊会社でないとすれば、実際にどのように業務について管理監督を行うのか、それを証明するための書類も、入札前に提出しているはずです。それらの書類を見れば、丸投げしても問題ないことが証明できるでしょう。もし仮に、これらの資料が存在しないのであれば、かなり怪しく、癒着も考えられます。通常、官公庁の契約手続きは、癒着を疑われないように進めなければなりません。

 

一般的に契約担当者は、信頼できる会社と契約したいと考えます。再委託は、契約担当者にとっても怖いものです。それでも再委託を問題ないと判断したのであれば、それを裏付ける根拠資料が存在するはずです。担当者レベル、係長レベル、課長レベル、局長レベル、すべてが再委託を認めたわけですから、委員会等の資料で簡単に説明できるはずです。

 

報道を見ていると、再委託は適正なのか、中抜け(?中間マージン)は問題ではないか、という質問が多いです。しかし行政側としては「適正」と考えて契約しているはずです。適正と思わなければ契約してないです。また中間マージンの質問にしても、委託事業は精算払いなので、経費が未定な段階で答えられるはずもありません。意味のない質問よりも、仕様書の作成経緯や業務提案書の審査など、適正な契約手続きが実施されたのかを確認すべきです。

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