市場価格方式による予定価格作成方法のまとめです。納入実績一覧のデータから購入実績の調査を終えると、契約実績の値引率が判明します。過去の契約実績の値引率と、直近の参考見積書の値引率から予定価格を設定します。予定価格調書作成方法の解説です。
過去の契約実績から値引率を算出
納入実績一覧表を基にした購入実績の調査(前回までの記事で解説)を終えると、過去の契約実績の値引率が確定できます。値引率を算出し、納入実績一覧表の余白にメモします。値引率を求めるときは消費税を除いた金額で算出します。
例 定価 350万円 契約金額 300万円
値引率 14.28%(少数3位切り捨て)
金額から消費税を除く
最初に消費税相当額を除外してある金額か確認します。金額の中に消費税が含まれているときは、次の算式によって消費税を除きます。消費税を含んだ金額の上段や右側に、赤のボールペンで税抜き◯◯円とメモします。
消費税が8%の場合
税込み金額 ÷ 1.08 = 税抜き金額
もし消費税が含まれた金額か不明な場合は、必ず、相手方へ電話で確認します。カタログ製品などの定価は、消費税が除外されいるのが一般的です。消費税の記載がないときはメーカーへ電話して確認します。消費税の確認作業は極めて重要です。
今まで、過去の契約実績について労力と時間を費やして調べてきたのに、ここで消費税を間違えると、調査が台無しになってしまいます。
また契約関係書類には、調査した内容を必ずメモしておきます。いろいろなメモ書きの多い書類ほど、内容を確認し精査したことを証明しています。
据付調整費や設置費は除外して値引率を算出
物品の購入契約では、100万円を超えるような高額契約の場合、一般的に搬入費や据え付け調整費は無料です。しかし、まれに特殊な設置場所、例えば高層階のビルでクレーン搬入を必要とするときなどは、本体価格の他に、搬入費用、運搬費用、車両費用、作業費用、諸経費が含まれることがあります。
値引率を求めるときは、搬入費などの費用は除き、本体価格のみで算出します。
値引率の算出方法
納入実績一覧表のデータ
定価 1,000万円(消費税抜き価格)
契約金額 759万円(消費税抜き価格)
契約金額 ÷ 定価
759 ÷ 1000 = 0.759
値引率
1 - 0.759 = 0.241
これをパーセント表示とするため100倍して、24.10%
つまり納入実績による値引率は 24.10%です。
値引率を計算するときに小数点以下の数値が多く生じた場合は、小数点以下第3位を切り捨てます。
予定価格の端数処理は、会計法令で定められていません。小数点以下の端数処理は、組織ごとにルール化しておくと悩まなくて良いです。契約ごとに端数処理の方法を変えてしまうと、故意に予定価格を操作していると疑惑を招きます。端数処理は一定のルールに基づいた方が望ましいです。
参考見積書の値引率を算出
次に、参考見積書の値引率を算出します。
納入実績一覧表が過去の取引価格を示すのに対して、参考見積書は直近の取引実例価格を示します。
参考見積書の値引率が25.00%だったと仮定しましょう。予定価格の作成方法は次のようになります。
予定価格調書の作成方法
予定価格調書は、作成した予定価格を書面としてまとめ、担当者から契約権限を持つ部長や課長まで決裁による承認を受けた正式な書類です。
ふたつの書類を作成します。
最初に予定価格算出内訳明細書を作成し、次に予定価格調書を作成します。
予定価格算出内訳明細書
A4の紙に横レイアウトで作成します。(レイアウトの決まりはありません。横でも縦でも作成者の好みで構いませんが、職場の慣例に従う方が良いです。)
右上に作成年月日を記入します。
決裁欄を作ります。作成担当者から上司までの決裁印を押印するための四角い決裁欄です。
中央にタイトルとして大きく太字で、予定価格算出内訳明細書と記載します。
平成28年◯月◯日
(決裁欄)
予定価格算出内訳明細書
品名 ◯◯◯◯ 一式
定価 10,000,000円(内訳は別紙定価証明書のとおり)
①納入実績による算出(値引率24.10%)
10,000,000円 × 0.759 = 7,590,000円
②参考見積書による算出(値引率25.00%)
10,000,000円 × 0.750 = 7,500,000円
上記の①と②を比較検討した結果、参考見積書による②の金額が有利なため、これを予定価格として採用する。
予定価格(消費税相当額を含まず) 7,500,000円
消費税相当額(8%) 600,000円合計 8,100,000円(消費税相当額を含む)
補足説明
消費税相当額とは、非課税や不課税に関係なく、消費税率分(上記の例では 8 % 相当)の金額です。落札決定後に消費税率分を加算するので、入札比較金額は、 8 % 相当を加算する前の金額になります。
予定価格調書
次に予定価格調書(かがみ)を作成します。入札の場合は、封筒に入れ密封して開札場所に置く書類です。開札までの間は、金庫で厳重に保管管理します。
予定価格調書は簡単です。A4の紙に大きく下記項目を記載します。
そして作成者が記名押印します。作成者は、支出負担行為担当官などの契約権限を持つ役職が指定されています。押印は、公印ではなくて私印(決裁に使用する認印)です。予定価格調書は、外部へ公表するものではないので公印は使用しません。
封筒に入れる場合は、糊で封筒を密封し、糊付けした部分に押印(割り印)します。割り印も作成者の印鑑(認印)です。封が開けられないよう、漏洩や差し替え防止のための割り印です。封筒の継ぎ目のある真ん中と四隅も割り印しておくと安全です。
予定価格調書
件名 ◯◯◯◯
予定価格 8,100,000円(消費税相当額を含む)
内訳
入札書比較価格(消費税相当額を含まず) 7,500,000円
消費税相当額(8%) 600,000円
作成者 支出負担行為担当官
◯◯省大臣官房 契約課長 ◯◯◯◯ 認印
A4の横レイアウトで、文字ポイントを大きくし、全体的にバランスよく配置します。
決裁手続きは、予定価格調書を上にして、その下に決裁欄のある予定価格算出内訳明細書を添付し、関係資料(参考見積書、購入実績回答書類、納入実績表、定価表、カタログ、その他関係資料)をその下に挟みクリップ止して決裁に回します。
国の会計法令では、予定価格は秘密扱いなので、上司が在籍していれば持ち回りで説明し決裁する方が安全です。もし上司が不在などで決裁箱に書類を置くときは、外部から内容が見えないようにします。決裁書類の表に厚い色紙などを乗せ、予定価格が見られないようにします。あるいは大きな封筒に入れて決裁することもあります。
予定価格の漏洩は、犯罪を疑われてしまう危険性があります。予定価格の決裁は持ち回りが原則です。そして決裁完了後は鍵のかかる金庫などで開札時まで厳重に保管します。
以上が、市場価格方式での予定価格作成方法です。
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