官公庁との取り引きを始めたい営業担当者に知ってもらいたいこと

イギリスのロンドン塔 2015年 営業担当
イギリスのロンドン塔 2015年

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官公庁との取り引きを希望する営業担当者向けの解説です。民間会社の営業担当者が初めて官公庁と取り引きを行うときに知っておきたい情報です。契約実務担当者から見たときに契約を依頼したいと思う営業担当者についての解説です。

随意契約で継続的な取引

 

「官公庁と取り引きしたい」

「官公庁と随意契約したい」

 

民間会社の営業担当者にとって、官公庁と新規に取り引きすることは、継続的な取引が期待でき会社の信頼度も上がるので興味ある情報だと思います。官公庁側の契約実務担当者にとっても特定の会社との取り引きだけでなく、新たな会社との取り引きは価格競争などが期待できメリットのあることです。

 

そこで官公庁との取り引きのうち、特に契約件数の多い随意契約を受注するためのコツを、発注者側である契約実務担当者の立場から解説します。

 

契約の担当者と顔なじみの業者

 

公的組織の契約担当部署の名称は様々です。主として、契約係、調達係、会計係、総務係、用度係などがあります。そして契約手続きを実際に行う担当者は、契約金額が低いもの(100万円以下など)であれば、若い係員が契約の実施権限を持っています。(係長以上は金額の大きい契約や入札を担当することが多いです。)

 

昔から官公庁と取り引きを継続している会社は、契約実務担当者と顔なじみになっていて、契約手続に必要な書類について、細かく説明しなくても作成方法を心得ています。顔なじみの業者は正確な書類を迅速に提出します。契約実務担当者から見ると、書類不備などによる余計なトラブルを防止できるので、必然的に同じ会社への発注が多くなります。

 

特に金額の小さい文房具類の発注などは、書類ミスの少ない数社の会社に固定されてしまうケースが圧倒的に多いです。

 

官公庁によっては、契約担当係ごとに顔なじみの取引会社が決まっていることさえあります。新しく参入したい営業担当者から見れば、自分たちが排除され、新たに契約を獲得できないのは談合と同じように感じ違法ではないかと思ってしまうかも知れません。

 

しかし、会計法令では160万円未満の売買契約は、事務簡素化を目的として随意契約が可能なので違法ではありません。

 

書類ミスが致命的になる理由

 

契約手続書類で基本となる必要書類は、見積書、納品書、請求書です。様式は任意ですが日付や押印などが漏れると、処理手続きを途中でストップさせなければなりません。

 

ミスした書類があると、契約実務担当者は会社の営業担当者へ再提出の依頼を電話しなければならず、再度、修正された書類が提出するまで待機することになります。書類不備として手続きがストップすると処理の手間が2倍になります。相当な負担になります。

 

通常、官公庁の代金支払処理は処理期限が決まっています。そして契約担当者と支払担当者は内部けん制のために異なる部署が担当しています。書類提出が遅れると途中まで進めていた事務処理をリセットしなくてはならないこともあります。特にコンピューターシステムによる支払システムでは、データを削除して新規に入力しなおす手間があります。

 

ひとつの書類不備による「さしかえ」で、かなりの事務負担になると、書類ミスをする会社との取り引きは避けるようになります。気の短い支払担当者から書類不備で契約実務担当者が怒られることさえあります。

 

官公庁の契約実務担当者は、何も説明しなくてもミスのない書類を迅速に提出してくれる会社を自然と選ぶのです。

 

少額随意契約とは

 

160万円未満の随意契約(物品購入契約の場合)は、「少額随意契約」と呼ばれ、事務簡素化を目的とした契約手続きが可能です。官公庁の契約手続きの原則である入札を行わなくても、契約実務担当者の判断と権限で特定の会社と随意契約できます。(100万円未満の契約を少額随意契約として認めている省庁が多いです。)

 

この「少額随意契約」を理解せずに、自分が参入できないことに不満を持ち、官公庁の契約実務担当者に対して「いつも同じ会社と随意契約するのは違法ではないですか?」などと発言すれば、もう二度と、取り引きはできなくなります。

 

官公庁の契約実務担当者が一番避けたい行動は「公平性や公正性に疑義をもたれるような契約手続と違法性が疑われること」です。外部から批判されるような契約手続きを最も恐れます。契約実務担当者は、法令違反や不公平・不公正な取引と指摘されるような状況は極力避けたいのです。

 

批判ばかりのトラブルメーカー

 

公的組織は、周りの迷惑を考えずに、自分の会社の利益のみを最優先するような「トラブルメーカーの会社」とは一切取引しません。官公庁の手続きを批判したり、他社を批判して、自社に都合の良いところだけ説明するような身勝手な会社は信用しません。

 

正義感から注意しようと発する言葉でも、仮にその言葉が正しいとしても、周りから「不正」を疑われるような発言(言動)をする営業担当者は、官公庁側の契約実務担当者から見れば「危ない営業担当者」「危ない会社」でしかありません。

 

営業担当者の鉄則

 

契約実務担当者は、対外的な説明が十分に可能な事務手続きを行なおうとします。説明責任を常に考えています。簡単に言えば、誰もが納得する事務手続き(違法とか不正を疑われない事務処理)を最重視します。

 

官公庁との取り引きを行おうとする営業担当者には、ぜひ覚えておいてもらいたい鉄則の解説です。

 

営業担当者の官公庁向け行動指針です。

 

  • 批判的な言動は避ける、正義感や正当性などを口にしない。
  • 他社の批判をしない。(批判するような会社は信頼できないと思われます。)
  • 押し売りは逆効果、将来的に受注できなくなります。
  • 素直さ、誠実さだけを前面に出す。
    (例えば自社で不得意な商品は、ライバル企業であっても詳しく調べ、他社を紹介するくらいの誠実さがあれば信頼を獲得できます。)

 

基本的な心構えの前置きが長くなってしまいましたが、では具体的にどうすれば随意契約を獲得することが出来るでしょうか。

 

契約実務担当者に顔を覚えてもらう

 

まず第一に契約実務担当者に顔を覚えてもらうことが大切です。

 

効果的な方法は、一般競争入札などで正式に受注し、その契約のアフターサービスを丁寧に十分に行い信頼を勝ち取ることです。これが一番効果がありますが、最初の入札は十分な利益は見込めないかも知れません。また高額な契約しか入札になりませんから100万円未満のスポット的な少額随意契約は該当しません。

 

簡単な営業回りを行う

 

次の手段として営業回りを行うことです。しかし官公庁は押し売り的な会社とは契約しません。2001年に「えせ同和行為」による押し売りが社会問題になり、法務省から全省庁に通知まで流れましたから無理です。(このときは、危ない組織が全国の官公庁へ押し売り行為を行なっていました。新聞の一面に掲載され社会問題になりました。)

 

勤務時間中にいきなり押しかけて、名刺を出し「お話を聞いてもらえませんか」と言っても門前払いされるだけです。押し売り行為による契約は禁止されているので当然です。契約実務担当者は笑顔で対応しますが、内心は「相手のことを考えない危ない会社」と警戒され契約は獲得できないでしょう。

 

飛び込み的な営業を行うには次の手順が必要です。

 

電話で挨拶

まず、電話で挨拶します。セールスの時間をとってもらえそうなら面会時間を予約し、忙しそうであれば名刺とカタログだけ置かせてもらえないか依頼します。この時に「合見積(あいみつ)だけでも良いのでお願いします。」と丁寧に挨拶します。

 

契約実務担当者は、金額が少額であれば自分で契約先の会社を選ぶ権限を持っていますが、意外と「合見積(相見積)」を取るのに苦労しています。(正確には「見積もり合わせ」です。厳密には「合見積」とは異なります。)

 

見積もり合わせに参加

官公庁の契約手続きは競争性の確保という大原則があります。あらかじめ特定の会社と契約しようと思っても、合見積書が必要なケースが多くあります。そして合見積書は、いろいろな会社から取りたいと考えています。

 

ここで、少し「あいみつ」「合見積書」「相見積書」の説明をしましょう。

 

会計法令(予決令第99条の6)には、随意契約によろうとするときは、なるべく二人以上の者から見積書を徴さなければならないという規定があります。

 

組織によって金額の設定が異なりますが、一定金額(20万円とか50万円とか100万円など)以上の場合は、複数の会社から見積書を取り寄せて、そのうち一番安い会社と契約しなくてはならないというルールがあります。

 

官公庁の契約原則である競争性の確保という意味でも、いろいろな会社から見積書を取り寄せて、一番安い会社と随意契約したいのです。

 

会計検査や外部監査のときに、随意契約で一番問題となるのは契約金額の妥当性です。契約金額が妥当かどうか、他の会社と比較した見積書が必要になるのです。また、取引相手の会社を公平に選定しているか、偏っていないかが問題になります。いつも同じ会社と随意契約していたり、見積もり合わせの会社がいつも同じだったりすると指摘されます。そのために多数の会社の見積書が必要なのです。

 

見積もり合わせに参加することによって、契約実務担当者の信頼を得て随意契約を勝ち取っていくのです。最初はガツガツではいけません。契約実務担当者の意向を十分に理解して「当て馬」的でも良いから参加させてもらうのです。

 

見積書の提出方法は、メールでの送信や訪問して手渡すなど、契約実務担当者の指示どおりに対応します。見積書の提出依頼から2~3日以内で提出しましょう。書類を期限までに正確に作成して提出できるという信頼感を与えることが大切です。提出が遅いと信頼を失います。

 

書類の日付欄や押印欄については、契約実務担当者の指示どおりに対応します。「この日付では作成できません」とか、「社長の印は押せません」とか言ってしまうと取引は困難になります。

 

契約実務担当者からすれば、何度も「合見積書」を依頼していれば、(契約が取れないのに、いつも誠実に対応してくれ、迷惑かけているから今回は契約してみよう」という気持ちになります。そうなれば「見積り合わせ」も必要ない少額な随意契約を獲得できます。

 

チャンスの多い契約獲得手法

 

「あいみつもり」に参加させてもらう。

 

これが現実的で、チャンスの多い契約獲得手法です。

 

また訪問するときは、相手の様子を見て、相手が質問してくるようなら話すことは可能ですが、忙しそうなら書類だけ置いて出直します。強引に説明するようなセールスは避けます。「名刺とカタログだけを置かせてもらう」くらいの潔い営業が、結果的に好印象を与え随意契約の獲得に結びつきます。

コメント

  1. tkalice より:

    はじめまして。

    当方、営業職の者ですが貴重な情報でとても役立ちます。
    もし気が向きましたらで構いませんので今後もこのような営業に役立つ記事(例えば官公庁のCTIの仕様はどのように決定しているか等)を更新して頂きたいです。

    是非よろしくお願いします。

    • 管理人 より:

      管理人です。

      コメントありがとうございます。

       

      回答が大変遅れ、申し訳ありません。
       

      官公庁のCTI関連の仕様作成について、一般的な作成プロセスを参考に記載します。(詳細は後日記事にします。)
       
      前提として、発注者である官公庁側に専門技術者がいないケースです。

       
      1.複数の専門業者へ、おおまかな内容を伝え、提案書を提出してもらう。

       
      2.提案書の内容を調べ、その中で、必須の仕様(求める内容)を抽出し、官公庁側の複数の人に検討してもらう。(仕様策定委員会のような会議形式で仕様書を作ることもあります。)

       
      3.ある程度の仕様が固まったところで、再度、専門業者へ参考見積書を提出してもらう。

       
      その後、入札手続きを実施します。