官公庁の予算を簡単にわかりやすく解説します。会計年度独立の原則は、官公庁の予算の基本原則です。歳入予算と歳出予算は、国会や議会での承認を受けて成立します。会計年度ごとに集計され、会計年度ごとに使うことができます。
会計年度独立の原則とは
官公庁の会計実務の基本原則に、会計年度独立の原則があります。国の予算に関する原則なので、会計実務初心者だけでなく営業担当者にも役立つ内容です。
次の財政法第十二条と第四十二条は、会計実務を行なう際にとても重要な条文です。常に意識しながら事務手続きを進めなければなりません。
国の予算は、国会の議決によって会計年度ごとに、歳入予算と歳出予算が決められています。歳出予算は、税金を使うことのできる範囲を示しています。そして歳出予算は、歳入予算の範囲内で計画します。
財政法
第十二条 各会計年度における経費は、その年度の歳入を以て、これを支弁しなければならない。
第四十二条 (略)毎会計年度の歳出予算の経費の金額は、これを翌年度において使用することができない。但し、(略)
第十二条の支弁しなければならないとは、歳入予算の範囲内で、経費の支払をしなければならない、という意味です。
少しわかりにくいと思うので細かく解説します。
会計年度独立とは、例えば平成28年度に発生した経費について、予算が不足しそうな場合でも、翌年度の予算で支払ってはならないということです。もし予算が不足することになれば、他の事業経費を節約したり、事業自体を中止して支出を抑制しなければなりません。同一の会計年度内の歳入予算の範囲内で、事業を実施しなさいということです。収支の均衡を図ることを目的としています。
簡単にいえば、歳入予算を超過して経費を支出してはならないということです。歳入予算と歳出予算の総額は同じです。歳入予算の範囲内で歳出予算を組みます。
歳出予算と会計年度
歳出予算とは、事業を実施するために使用できるお金です。民間企業との契約や、人件費、旅費などです。4月1日から翌年3月31日までの会計年度内で使える予算です。
稀なケースですが、例えば100万円の支払をしてから、数ヶ月経過した後に払い過ぎだったことが判明したとします。その100万円を返してもらいます。
過去の歳出予算100万円が戻ってきたのだから、戻ってきた会計年度で、その100万円を歳出予算として使えるかというと使えません。会計年度が異なれば歳入予算に計上しなければなりません。歳出予算としては使用できないのです。つまりお金が戻っても使えず国の歳入となります。歳入予算と歳出予算を厳格に区分して収支を明確にしているのです。
ただし例外として、台風や地震などの天災の場合は、繰越承認を受けることで翌年度支払える繰越制度が別に定められています。
歳入予算と歳出予算の違い
国の予算は、4月から翌年3月までの会計年度を単位として集計します。そして歳入予算の範囲内で歳出予算を作成します。
国側から見て、お金を集める方が歳入予算、お金を出す方が歳出予算です。歳入予算と歳出予算は内容が全く異なります。
歳入予算は、国民全体から集める税金、所得税や消費税などです。国民から見ると国に払う税金などです。
歳出予算は、各省庁が実施する事業に必要な経費を集計したものです。人件費や物件費から事業費が集計されています。
財務省のサイトには、各省庁別に歳入予算と歳出予算が掲載されてます。
平成31年度予算書
地方自治体の予算
財政法は、各省庁等の国の組織を対象とする法律です。都道府県や市町村などの地方自治体は、地方自治法で定めています。上記財政法に相当するものは次のとおりです。
財政法 第十二条と同じもの
地方自治法
第二百八条
2 各会計年度における歳出は、その年度の歳入をもつて、これに充てなければならない。
財政法 第四十二条と同じもの
地方自治法
第二百二十条3 (略)毎会計年度の歳出予算の経費の金額は、これを翌年度において使用することができない。ただし、(略)
地方自治法の条文は財政法とほぼ同じです。議決機関は、国の場合は国会、地方自治体はそれぞれの議会です。
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