「原価計算方式」による「人件費の予定価格作成方法」の解説「その2」です。前回は、人件費の各項目(給与、ボーナス、社会保険などの事業主負担分)について、年額を算出する方法を解説しました。今回は、「人件費の年額」から、「時間単価」を算出する方法を説明します。
「時間単価」を算出する方法
「時間単価」を算出する方法として、まず、「年間の人件費」を便宜的に計算します。
「時間単価」を算出する場合は、毎月の給与だけでなく、数ヶ月ごとに支払われるボーナス(賞与、夏のボーナスや冬のボーナスなど)部分を加えます。これは、賃金構造基本統計調査(賃金センサス)のデータが、「ボーナス部分は年額」で集計されているからです。ボーナスのデータが「年間の支払額」なので、月額の給与部分も「年間の人件費に換算」してからでないと「時間単価」が算出できないのです。
「年間労働時間」の算出
「時間単価」は、「年間の人件費」が算出できれば、「年間の労働時間」で割ることによって求めることができます。
年間人件費÷年間労働時間=1時間あたりの人件費(時間単価)
「年間労働時間」の算出は、賃金構造基本統計調査(賃金センサス)の「月間労働時間」を用います。
所定内実労働時間数 163時間(月間)
月間163時間を年間(12ヶ月)に換算して「年間の労働時間」を算出します。
163時間(月間)×12月=1,956時間(年間)
賃金センサスの職種別のデータを利用したときには、この「所定内実労働時間数」も、職種別に数値が異なります。該当箇所をプリントアウトしてマーカーし、証拠書類として保存することが大切です。
年間の人件費総額を、この1,956時間(年間)で割ることによって、1時間当たりの人件費(時間単価)を算出します。
「年間人件費」の集計
前回の各項目を集計します。
給与部分
年間給与 月給(所定内給与)×12月
月額給与 160,200円×12月=1,922,400円/年
年間健康保険料(事業主負担分のみ)
月額9,232円×12月=110,784円/年
年間厚生年金保険料(事業主負担分のみ)
14,546円×12月=174,552円/年
年間児童手当拠出金
16万円×0.2%×12月=3,840円/年
賞与(ボーナス)部分
夏のボーナスや冬のボーナスなどの「年間賞与額」は、賃金センサスで「年間の額」が記載されています。
年間賞与その他特別給与額 103,400円/年額
賞与の健康保険料
103,000×0.1154÷2(折半額)=5,943.1円/年額
賞与の厚生年金保険料
103,000×0.18182÷2(折半額)=9,363.73円/年額
賞与の児童手当拠出金
103,000×0.002=206円/年額
雇用保険料と労災保険料
雇用保険料と労災保険料は、月額給与とボーナスの「年間合計額」に対して保険料率をかけて算出します。給与の12ヶ月分とボーナスの合算額を計算します。
月額給与×12月分+年間賞与
160,200円/月×12月+103,400円/年額
=2,025,800円/年額(人件費年額)
年間雇用保険料(事業主負担分のみ)
保険料率は、一般の事業 7/1000で0.7%です。
(賃金年額)2,025,800円/年額×0.7%
=14,180.6円
1円未満の端数を切り捨て、14,180円/年額
年間労災保険料
保険料率は、ビルメンテナンス業 5.5/1000で0.55%です。
(賃金年額)2,025,800円/年額×0.55%
=11,141.9円
1円未満の端数を切り捨て、11,141円/年額
年間人件費(社会保険料等の法定福利費込み)
上記を合計すると、「年間の人件費」が算出できます。
年間給与 1,922,400円
年間健康保険料 110,784円
年間厚生年金保険料 174,552円
年間児童手当拠出金 3,840円
賞与部分(年間)
賞与 103,400円
賞与の健康保険料 5,943円
賞与の厚生年金保険料 9,363円
賞与の児童手当拠出金 206円
年間雇用保険料 14,180円
年間労災保険料 11,141円
上記を合計して、年間人件費 2,355,809円
「時間単価」の算出
そして、年間の人件費2,355,809円を、年間労働時間1,968時間で割ることによって、人件費の「時間単価」が算出できます。
年間人件費2,355,809円 ÷ 1,968時間(年間)=1時間当たりの人件費1,197.05(円)
1円未満を切り捨てて、1,197円/時間 となります。
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