その3 原価計算方式による予定価格作成、人工計算で人件費総額算出

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原価計算方式
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原価計算方式による人件費の予定価格作成方法 その3です。前回は法定福利費を含む人件費の時間単価を算出しました。今回は人件費のまとめとして、契約内容を実施するための総労働時間を算出し、人工(にんく)計算により人件費の総額を算出します。

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清掃面積の算出方法

 

建物内の清掃契約を想定して、予定価格を作成する方法を解説します。

 

建物内の清掃では、建築図面に基づいて清掃面積を計算します。

 

建築図面から部屋や廊下の面積を計算します。エクセルなどの表計算ソフトを利用し、部屋ごとに面積を入力して清掃面積一覧表を作成します。

 

除外面積を算出

 

掃除ができない部分を除外面積として算出します。

 

通常、部屋の中には机やキャビネットなどが設置してあります。建築図面上の面積すべてが清掃面積になるわけではありません。実際に清掃できる範囲を、図面を基に現地で実測するのが最も良い方法です。しかし清掃場所が多数ある場合や、レイアウトが頻繁に変更になるような部屋は、その都度全ての清掃面積を巻尺で実測するのは現実的ではありません。

 

そこで平均的な除外面積を算出します。一般的なレイアウトの部屋を 2~3 実測して除外部分の比率を求め、その比率で清掃可能面積を算出します。実測データは対外的な説明資料になる重要な書類ですので大切に保存しておきます。

 

トイレなどの共通部分についても、同じようなレイアウトのトイレを数箇所実測して除外面積を算出します。

清掃面積 = 図面面積 ー 除外面積

 

特に注意したい点は、建築図面は壁芯で面積が記載されているところです。壁の厚さの部分も除く必要があります。壁の端から端まで巻き尺で実測すると、壁の厚さ、図面との差額面積が求められます。

 

ひとり当たりの清掃可能面積を求める

 

清掃面積が算出できたら、次にひとり当たりの清掃可能面積を算出します。ひとりで1日(休憩時間も含む8時間)に清掃できる面積です。

 

清掃契約では、ひとり当たりの清掃可能面積が重要なポイントになります。契約金額に大きく影響します。

 

過去に、清掃可能面積のデータとして、ビルメンテナンス業界団体が、原価計算の手引きとして公開していた基準があります。

 

1人1日(8時間勤務)当たりの清掃可能面積

(病院清掃業務)
日常清掃 1,750㎡
特別清掃 300㎡
トイレ清掃 700㎡

 

この基準を用いれば、人工(にんく)が算出できます。

 

人工(にんく)を算出

 

この解説での人工(にんく)とは、ある作業を行うために何人必要かという数値です。ひとりで1日あたり作業可能なデータから計算します。ある面積の清掃を行うのに何人必要になるか算出します。

 

計算例

1回あたり2,000㎡の清掃面積を年間24回(月2回)特別清掃する場合。

年間の清掃面積は、2,000㎡ × 24回 = 48,000㎡(年間)

 

年間の清掃面積から人工を算出します。例として上記の特別清掃1人1日300㎡から求めます。

 

48,000㎡ ÷ 300㎡ = 160人工になります。つまり年間160人分の人件費が必要という意味です。

 

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人件費の計算

 

人工が算出できれば、時間単価から人件費を計算できます。

 

時間単価 × 8時間 × 160人工で、年間の人件費になります。

 

重要なので繰り返しますが、ひとり当たりの清掃可能面積のデータによって契約金額が大きく変わります。1日に清掃できる面積をどのように設定するかが清掃契約のポイントです。ここが悩みどころでもあります。

 

1人1日当たりの清掃可能面積や人工の求め方として、次の方法があります。

  • 業界団体などが作成したデータを用いる方法
  • 過去の契約実績、清掃業者の作業日報や報告書から清掃員の必要人数を算出する方法
  • 実際にストップウォッチなどで時間計測する方法
    (現在の清掃業者へ調査協力を依頼し実測します。)

 

清掃などの人件費は、作業の方法によって契約金額が大きく変わります。から拭きなどの簡単な清掃なら安くできますし、ワックスがけなどの丁寧な清掃なら契約金額も高くなります。

 

また2012年時点の古いデータですが、清掃可能面積として次のデータもあります。

1人1日あたりの清掃可能面積

共用部で1,000㎡(汚れが多い)
専用部で4,000㎡(汚れが少ない)

 

人件費の計算は、時間単価 × 8時間 × ◯人工です。

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清掃契約に必要な消耗品等

 

清掃契約に必要な消耗品については、最初に参考見積書を提出してもらい、それを基に作成するのが一般的です。前回契約実績のある会社から参考見積書を提出してもったり、物価資料やインターネットで販売価格を調べて積算します。価格を採用した資料は、必ずプリントアウトして保存します。重要な予定価格の積算資料になります。

 

洗剤などは実際の使用量で積算し、モップなどは一般的な使用期間(2年ないし3年程度)で計算します。稀ですが、清掃用の消耗品は契約に含めず、官公庁側で別途購入して支給する方法もあります。官公庁側が材料を提供するときは官給品といいます。

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諸経費をいくらとすべきか

 

最後に諸経費を計算します。この諸経費率も会社からの参考見積書を参考にします。

 

建設工事関係の諸経費率については、各省庁から標準的な積算基準が通知されていることが多いです。しかし清掃契約などの役務契約では標準的な諸経費率が設定されていません。役務契約は内容が複雑すぎて一律に設定できないのです。

 

一般的に諸経費率は、契約金額が高額になれば低くなります。通常、15%程度であれば諸経費率として妥当と考えられています。

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予定価格作成方法のまとめ

 

清掃契約を例とした予定価格の作成方法をまとめると次のとおりです。

 

該当する職種の人件費年額を計算

賃金構造基本統計調査(賃金センサス)を基にして年額を算出します。月給、ボーナス、健康保険料、厚生年金保険料、児童手当拠出金、雇用保険料、労災保険料の年額を計算します。これは賃金センサスのボーナスが年額なので計算単位を揃えるためです。

 

具体例(その2で解説)では 年間人件費 2,355,809円です。

 

人件費の時間単価を算出

 

年間人件費2,355,809円 ÷ 1,968時間(年間) = 1時間当たりの人件費1,197.05円 ⇒ 1,197円/時間

 

清掃面積から人工(にんく)を求める

業務を行うための人工を求めます。1日8時間換算で、業務を実施するのに何人分必要か計算します。

48,000㎡ ÷ 300㎡ = 160人工

 

時間単価 × 8H × 人工で、年間の人件費を求める

1,197円/時間 × 8時間 × 160人工で、年間の人件費 1,532,160円

 

消耗品費から消費税を除く

仮定でモップや消毒液など、税抜きで年間 200,000円

 

諸経費を算出

人件費 1,532,160円

消耗品 200,000円

計 1,732,160円

諸経費を15%とする 259,824円

 

消耗品代金が高額なときは人件費のみに諸経費を加算します。通常は消耗品代は少額なので、そのまま加算して諸経費を求めます。

 

予定価格(税抜き)を設定

以上を合計して、消費税を除いた予定価格を設定します。

人件費 1,532,160円

消耗品 200,000円

諸経費(15%)259,824円

合計(税抜き)1,991,984円 ⇒ 端数処理 1,991,000円

 

消費税相当額を算出

消費税相当額(8%)

1,991,000円 × 0.08 = 159,280円

 

予定価格の決定

税抜き予定価格 1,991,000円(入札比較価格)

消費税相当額(8%)159,280円

予定価格(税込み)2,150,280円

 

以上が原価計算方式による予定価格の作成方法です。

 

その1 原価計算方式による予定価格作成、職種から年間の人件費計算
原価計算方式で予定価格を作成する方法です。清掃契約や警備契約などの役務契約の予定価格は、人件費の積算が中心になります。人件費を求める方法は多数ありますが、厚生労働省が公表している賃金構造基本統計調査を用いて具体例で解説します。
その2 原価計算方式による予定価格作成、人件費の時間単価を算出
原価計算方式による人件費の予定価格作成方法 その2です。前回は、月額給与、年間ボーナス、事業主が負担する法定福利費を算出して、年間の人件費総額を計算する方法を解説しました。今回は年間の人件費総額から、時間単価を算出する方法です。

コメント

  1. 匿名希望 より:

    いつも大変参考にさせていただいております。
    国立大学病院にて、契約事務に従事している者です。

    役務契約(清掃・警備等ではない)の予定価格積算について2点質問がございます。

    記事内で「通常、「15%程度」であれば諸経費率として妥当と考えられています。」と記載されいていますが、根拠となるデータや省庁からの公表等がございますでしょうか。当方もある役務契約の予定価格にて、「諸経費率は10%とする。」として決裁を回したところ、10%という数字の根拠について指摘がありました。何か根拠となり得るデータや省庁からの公表等があればご教示いただけますと幸いです。それとも、契約ごとに他施設への実績を照会するなどして、根拠を作る必要があるでしょうか。

    2つ目は「この「諸経費率」も、会社からの参考見積書を基に算出します。」と記載されていますが、複数社に「諸経費率」の提出を依頼した場合、会社毎に「諸経費率」として算出する項目(法定福利費、福利厚生費等)に差があることが想定されるかと思います。依頼する際に明確に諸経費の項目を指定する、差については考慮しない、などの対応が考えられるかと思いますが、この点についてはどのようにお考えでしょうか。

    ご回答いただけますと幸いです。

    何卒よろしくお願いいたします。

    • 矢野雅彦管理人 より:

      管理人です、コメントありがとうございました。

      契約実務を担当すると、諸経費については悩ましい問題ですね。

      先に質問に回答し、その後に補足説明します。

      ひとつめの回答です。
      予定価格を算出するときの諸経費率は、根拠が必要です。根拠がないと、「説明できない予定価格」になってしまいます。ただ根拠が正当なのかまで深く考える必要ありません。

      ふたつめの回答です。
      諸経費率を参考見積書から採用する場合は、最安値(率が小さいもの)を採用します。個々の項目や中身までは考慮しません。

      以下は補足説明です。

      2021年現在、役務契約の諸経費率を定めた法令や資料は存在しません。

      しかし予定価格を作成するときは、根拠が必要になります。予定価格の積算項目の中で、根拠が不明なものが含まれてしまうと、予定価格全体が適正と言えなくなってしまいます。この場合の根拠というのは「正当なのか、ほんとに正しいのか」までは考えません。妥当と判断した数値を用いるだけです。「この数値を採用した」ことがわかれば十分です。

      おっしゃる通り、諸経費は様々です。会社によって、契約内容によって異なります。諸経費の定義自体があいまいなためです。おそらく人によって、どの範囲を諸経費とするか変わるでしょう。いろいろな(明確でない)経費という意味で諸経費ですし。

      理想は、過去の契約実績を基にして、諸経費率の基準を作成しておくことです。契約内容や契約金額ごとに設定してあると悩まないです。契約金額が高くなれば、諸経費は低くなります。契約金額と諸経費は、反比例の関係です。ただ諸経費の基準を作成するには、多くのデータが必要です。(膨大な契約実績を把握している会計検査院で諸経費率を公表してもらいたいものです。おそらく、みんなの悩みが消えて莫大な税金の節約になります。)

      一般的に諸経費は、会社の利益を意味します。(実際には利益だけでなく販売費・一般管理費も含まれます)会社全体の利益は、財務諸表の中の損益計算書で確認できます。つまり、その会社全体の諸経費率であれば、損益計算書から算出できます。売上総利益や営業利益で確認できます。(ちょうど、記事を執筆しているところです、まもなく公開します。)しかし個々の契約ごとの諸経費率までは算出できません。

      そのため諸経費の根拠は、参考見積書を用いることが多いです。複数の参考見積書から最も率の低い諸経費率を採用します。諸経費の主要部分を利益とみなすので、率の低いものを採用します。諸経費の積算項目は考慮しません。

      他省庁の契約実績に基づく諸経費率は、金額を調整している可能性があるので採用しません。値引分を諸経費から控除していることが多いです。

      • 匿名希望 より:

        早速ご回答いただきありがとうございます。

        非常に勉強になりました。会計検査院による諸経費率の公表は是非とも行っていただきたいところです・・・。
        ご教示いただいた内容を担当内で共有し、今後の方針を定めていきたいと思います。

        ご回答いただきありがとうございました。
        今後も勉強させていただきますので、執筆活動大変かと思いますが、どうぞご自愛下さい。

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