科研費の正しい使い方、研究に必要な経費の判断方法

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お台場科研費
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科研費を正しく使うための解説です。正しい研究は、研究費の使用方法も正しくなければなりません。競争的資金の科研費はルールが複雑です。使用方法を間違えるとペナルティを受けます。科研費で使える経費の判断方法についてわかりやすく解説します。

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日本の厳しい研究環境

国立大学などの公的組織では、毎年、研究費が削減されています。安定的な研究費を持たない研究者が多数存在します。そのため多くの研究者は、競争的資金と呼ばれる研究費を自ら獲得しなければなりません。競争的資金にはいろいろな種類がありますが、最も一般的な研究費が科研費(科学研究費補助金・助成金)です。

 

科研費を獲得するためには、多忙な研究の時間を割いて申請書を作成しなければなりません。申請しても100%の金額が認められるわけではなく、倍率も相当激しいです。何度申請しても認められないこともあります。さらに研究費を獲得した後も、毎年、研究の進捗状況について報告しなければなりません。

 

苦労して、ようやく獲得した科研費は貴重な研究費です。会計検査院や内部監査などで、科研費の使用方法について指摘を受けないためにも、科研費の正しい使い方を理解しておきたいものです。科研費の使用について疑義をもたれないよう基礎知識を学んでおきましょう。

 

この記事では科研費を例に説明します。政府系の他の研究費も考え方は同じです。研究者と会計事務担当者に必須の知識です。

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科研費とは

科研費(科学研究費補助金、科学研究費助成金)は、国民の税金を原資とした補助金です。法律により使用目的が制限され、目的外使用の場合には厳しいペナルティが課せられます。万が一、研究費の不正使用を疑われ、十分な説明ができず大きな問題になれば、研究者としての人生が終わりになるほど厳しいものです。

 

不正使用があった場合、2003(平成15)年度から、研究代表者だけでなく、同じ研究グループのメンバーも連座制としてペナルティーが課されました。その後、2013(平成25)年度に連座制は廃止されました。

 

本来、公的組織に所属する研究者に対しては、安定した研究費を保証し、長期的な視点に基づく基礎研究を推進することが理想です。ところが2004(平成16)年頃から、安定的な財源(運営費交付金)が毎年削減され、代わりに科研費などの競争的資金が増えつつあります。つまり研究環境が年々競争化されているのです。競争的資金の多くは短期的(5年程度)な研究成果を求めています。長期的な視点に基づく基礎研究が行えない研究環境になってます。これは良い方向ではないと思いますが、日本の科学技術政策なので仕方ありません。

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科研費の複雑なルールと優先順位

科研費を使用するときは、さまざまなルールに基づかなければなりません。適化法(補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律)、日本学術振興会のルール、所属機関のルールが複雑に絡み合っています。

 

科研費は、申請した研究課題を遂行するために必要な経費であれば使用できます。ところが、この必要な経費の判断がむずかしいのです。判断を間違えると痛い事態に陥ります。必要な経費の考え方は、科研費の使用方法の根幹です。正しく理解しておくことが重要です。

 

また科研費を使用するときは、複数のルールに注意しなければなりません。そして、どのルールを優先すればいいのか?と悩むことになります。ルールに合致しているか検討するときは、次の順番で考えます。ひとつのハードルを超えたら上位のルールを検討します。

1.所属組織のルール(規則など)に違反してないか

2.日本学術振興会のルールに違反してないか

3.文部科学省のルールに違反してないか

4.法律「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」に違反してないか

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研究に必要な経費とは

日本学術振興会(学振)の取扱要領に次の記載があります。

独立行政法人日本学術振興会科学研究費助成事業(科学研究費補助金)取扱要領

(補助金の使用制限)
第13条 補助金の交付を受けた者は、補助金を補助事業に必要な経費にのみ使用しなければならない。

 

上記第13条には、補助事業に必要な経費にのみ、と定められています。必要な経費とは、その経費を使用しないと研究が遂行できないという意味です。ここが実際に勘違いしやすい部分です。科研費の研究課題に、関係していれば良い、関連していれば良い、ということではありません。(ここでは、関係よりも関連の方が、つながりが近いという意味で使い分けています。関係=間接的、関連=直接的)

 

ここが重要なポイントです。関連した経費であれば支払いできる、ということではないのです。むしろ関連した経費とか、関係した経費と説明するときは、その真の意味は逆です。本当は直接必要ではないけれど、研究上、関連していると説明できるということです。つまり、本当は違う(直接関係ない)けど、うまく説明がつくという意味なのです。

 

関連した経費と、必要な経費は、意味が全く違います。

 

関連した経費という説明は、(本当は必要ないけれど)研究課題に関連していると(超拡大解釈や虚偽に近いが)説明できるということです。

 

そして、この違いが問題になるのは、内部告発で指摘されたときだけです。通常のときには問題になりません。内部告発の多くは、研究室内などの人間関係のトラブルが原因です。仲の良かった人が、感情のもつれから豹変します。そして足を引っ張るために内部告発します。内部告発されたときに、必要な経費以外に使用していると、目的外使用の疑義が持たれ、不正使用と認定されてしまうのです。

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科研費を使用するときの安全な判断

科研費を使用できる経費かどうか、を判断するときは、最初に次のように考えると安全です。誰からも批判されません。

 

その経費を使用しなければ、科研費の研究が止まってしまうかどうか

 

そして次の判断として、所属機関の定めた会計ルールに従うことです。例えば、他大学などで認められていても、自分の組織で認められていなければ使えません。最初に自分の組織のルールが優先されます。(私個人としては違和感がありますが・・そもそも複数のルールが存在すること自体がおかしいです。税金であれば政府が使用するためのルールを整備すべきです。)

 

学振 科研費FAQ H28.8.版(部分抜粋)

【Q4104】 科研費の使途に制限はありますか?

【A】 科研費は採択された研究課題の研究を行うための研究費であり、対象となる研究課題の「補助事業の遂行に必要な経費」として幅広く使用することができます。

 

しかし、研究活動に使うといっても、対象となる研究課題以外の研究に使うことは目的外使用になり認められません。

 

また、ルールにしたがって使用することが求められており、研究者の勝手な解釈によってルールに違反して使用した場合には、不正使用として返還やペナルティが科せられることになります。

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科研費が使えない経費

科研費の研究課題を遂行するために必要な経費であれば使用できるわけですが、例外もあります。

 

科研費を使用できない経費
研究機関用ハンドブック2016から抜粋

建物等の施設に関する経費

補助事業遂行中に発生した事故・災害の処理のための経費

研究代表者又は研究分担者の人件費・謝金

間接経費を使用することが適切な経費

例えば、出張が中止となった場合の航空機やホテルのキャンセル料は、所属機関の定めるルールとして支払いが可能であることが前提になります。そして止むを得ない理由(本人の責めによらない、台風や大雪、地震などの不可抗力)の場合のみ支払いが認められます。当然のことながら、事前に正式な出張手続きがなされ、その出張を中止する、旅行命令の中止手続きを終えた後、キャンセル料として支払います。

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科研費と他の経費の合算使用

科研費は、目的外使用が禁止されている研究費ですが、他の経費と合算できるという例外があります。

研究機関用ハンドブック2016(102ページ)から抜粋・要約

原則

使用目的が定められている経費(他の科研費や政府系補助金など)を合算して使用することはできない。

例外(合算使用が認められるケース)

〇1回の出張で、それぞれの用務が、日にちごとに区分できる場合
7日間の出張で、前半3日間と後半4日間で、それぞれの経費の用務を行なうなど

〇物品の購入契約で、数量を分割して、それぞれの経費で支払う場合

〇科研費と使途の制限のない経費(運営費交付金や寄附金など)を合算して支払う場合

共用設備を購入する場合、但し、負担額の割合やその算出根拠を明確にルール化(規則の制定など)しておく必要あり。

同一課題の補助金と助成金(一部基金分)を合算して使用する場合

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科研費の残額を使用するときの注意点

科研費のうち補助金分は単年度予算です。3月31日までに使用しなかった科研費は返還です。返還によるペナルティは一切ありませんので、科研費の残額は、無理に使用する必要はありません。

 

例えば年度末近くになって、残金が10円とか7円とかの端数になった場合、そのまま返還して問題ありません。

 

あるいは、他の経費(使途が自由な寄附金や運営費交付金など)との合算使用も認められています。科研費で使用する消耗品等を、運営費や寄附金と合算して、次のように支払うことができます。

 

科研費に使用するデータ保存用DVD10枚を5千円で購入

科研費の残額 7円
寄附金 4,993円

 

ただし、次の残額使用方法は問題になります。

 

残額7円でダブルクリップ1個を購入

 

問題となる理由は、ダブルクリップ1個が、科研費の研究を遂行するために必要な経費かどうかです。常識的に考えて、ダブルクリップ1個であれば、科研費で購入しなくても、事務室や研究室にたくさん残っているでしょう。ダブルクリップを1個だけ科研費のために購入する必要はないと考えられます。ダブルクリップが1個不足することによって研究課題が遂行できないのでしょうか。(これが厳密に言えば虚偽の理由になってしまいます。)

 

科研費に使用しているという理由は、科研費に必要という理由とは違うのです。このような使用方法は、予算消化を目的とした使用です。目的外使用と看做されてしまいます。無理に使用せず、素直に残額は返還すべきです。

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科研費で年度をまたぐ旅費

科研費は、従来からある単年度予算の補助金と、平成23年度から導入された基金の2つがあります。年度をまたぐ出張の際には注意が必要です。

 

3月25日から4月5日までアメリカへ出張

 

補助金は、年度を超えての使用は認められていません。3月25日に出発する行きの航空賃と3月31日までの日当宿泊料のみを支払うことができます。(3月31日の夜の宿泊料は、4月1日分なので新年度から支払います。)

 

4月1日以後の日当・宿泊料と帰りの航空賃代は、前年度の補助金は使用できません。同一の継続課題であれば翌年度の補助金から支払うことは可能です。しかし同一課題がなければ、他の経費(寄附金や運営費交付金)から支払うしかありません。

 

一方、基金化された科研費は、会計年度の区分はありません。前年度でも新年度でも支払可能です。

 

科研費FAQ(平成28年8月版)

【Q4439】 年度をまたいでの出張を行う場合に、科研費から旅費を支出できますか?

【A】
科研費(補助金分)にあっては、年度をまたぐ旅費のうち当該年度分を支出することはできますが、次年度に係る出張の経費を、前年度の補助金から支出することはできませんので注意してください。

 

一方、科研費(基金分)にあっては、年度をまたぐ支出について制約はありませんので、旅費を年度によって分けて支出する必要はありません。

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科研費の個人経理と機関経理とは

科研費の使用方法は、ゆるくなったり、厳しくなったりと、大きく変わってきた歴史があります。

 

1982年頃の話です。科研費は、個人経理と機関経理という二つの制度に分けられていました。個人経理の科研費は、研究者個人が自由な発想で機動的に使用することができるよう設けられた制度でした。領収書と銀行の通帳さえ研究者が管理すれば、その使用方法には一切の制約がありませんでした。研究者個人が、科研費用の銀行口座を新しく作り、その銀行口座から支払を行い、領収書だけ保存しておくという経理方法でした。国立大学などの事務組織を経由しないので、使用に伴うルールは一切なく、それこそ科研費を自由に使用することができたのです。科研費の使用方法は、研究者個人の良心に任せられ、自由に使用できたのです。

 

現在も外国(韓国など)では、研究者の個人口座へ研究費を振り込み、使用方法を管理しないところもあるようです。(公私混同や横領のオンパレードらしいですが・・・)

 

当時の機関経理に区分された科研費は、事務職員の負担が増えないよう、補助金額が少ない研究種目に限られてました。そして、現在よりも使用ルールが厳しく制限されていました。

 

参考・・昔の厳しい科研費使用ルール

備品は11月以降は購入できない(研究計画がずさんと看做されてしまう)

事務用品やパソコンは購入できない(経常経費で通常備えるべきもの)

修理はできない(科研費は修理を目的としていない)

人は雇用できない(昔は、雇用の大前提として長期間の予算が保証されていることが必要でした。科研費は単年度予算なので、そんな短期間では人を雇用できないと判断していました。)

 

科研費の個人経理が廃止されたのは、科研費の不正使用が後を絶たず、社会問題になったことです。目的外に使用される違反事例が多数問題になりました。科研費の経理は、もう研究者個人には任せられないという社会の流れになりました。その後、事務職員がルールに沿って科研費の会計手続きを行なう、という現在の制度に落ち着きました。

コメント

  1. 矢野雅彦管理人 より:

    管理人です。

    コメントありがとうございます。

    科研費などの競争的資金の使用ルールについては、平成28年6月から内閣府に窓口が設置され、研究者等からの改善要望を取り入れた弾力化が進められているようです。

    人件費の取扱いについて、将来的には、弾力的な使用が認められる可能性もありますが、現時点(2018年1月)では、合算使用は問題があると考えます。

    主な問題点は次のとおりです。

    ご存知のとおり、科研費は、補助事業として目的が制限されていて、雇用する際には労働条件通知書に「補助事業の内容や勤務日等」が明記されること。

    仮に、科研費が不足した月分のみ合算使用で賃金を支払ったとき、科研費を使用した賃金部分について、それを客観的に証明できる資料(科研費の事業を行なった勤務時間の証明)の整備が困難なこと。このため、単なる予算消化を疑われてしまうリスクがあること。

    原則として、科研費で雇用する際は、人件費を十分に確保する必要があります。超過勤務など予想できない部分も、予算を十分確保しておき、余ったら返還する方が安全です。

    (個人的な感想ですが、科研費は使いにくいです。せっかく補助金という名前なのですから、運営費交付金で不足する部分に、自由に使いたいものです。)

  2. 匿名 より:

    科研費の使用について大変参考になりました。特に合算使用の箇所で,クリップの例はなるほどと思うところがありました。さて,質問ですが物品についての残額使用は理解しましたが,人件費については当てはまるのでしょうか。通常は12月頃より人件費の試算をして大体の金額は確保するのですが,例えば,遡及して賃金を支払う場合,予算を超過してしまうことから,使用制限のない経費(運営費交付金等)を使用することは可能なのでしょうか。

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