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「科研費」で旅費を使うときのルール、絶対に覚えておきたいこと

科研費
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科研費で旅費を支払うときのルールについての解説です。科研費は、研究費の中でも制約が多いです。ものすごい数のルールがあり、すべてを理解している人は皆無です。そこで、「旅費」に絞って解説します。研究者や事務担当者に必須の知識です。

 

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科研費のルールは、非常に複雑

 

科学研究費補助金(科研費)の使い方は、非常に複雑です。ルールが多すぎて、すべてを理解している人が誰もいないほどです。

 

科研費を使用するときは、最初に「科研費ハンドブック」を参照することになります。2019年度版「科研費ハンドブック」は、研究者用が28ページ、事務担当者用が438ページです。(2020年6月現在)

 

研究者用「科研費ハンドブック」は、概要が書いてあるだけです。「かいつまんで」記載してあるだけなので、実務には、ほとんど役に立ちません。事務担当者用「科研費ハンドブック」のページ数と比較するとわかります。

 

最新(2019年度版)の「科研費ハンドブック(研究機関用)2019年度版」を開くと、 「科研費に関するルール」というページ(p13)があります。そこには、応募ルール、評価ルール、使用ルールと3つのルールがあります。そして、それぞれについて「補助金」分と「基金」分があります。つまり、ここだけでルールが6通りあるわけです。

 

さらに前ページ(p12)の「文部科学省と日本学術振興会の関係」という部分を見ると、それぞれの所掌範囲が決められています。文部科学省と日本学術振興会でも、それぞれのルールがあります。さらに、所属機関のルール(実際に科研費を経理する組織)が加わるので、ルールが3倍になります。ひとつのルールを把握することさえ困難なのに、ルールが18もあるわけです。大学の研究者は、複数の科研費を獲得していることが多いです。複雑すぎて、もはや誰もルールを覚えようと思いません。もし本気でルールを覚えようとしたら、研究する時間がなくなってしまいます。2020年現在、科研費は、このように誰も理解できない複雑なシステムになっています。

 

そこで部分的に理解するしかありません。出張する時の「旅費」にポイントを絞って、注意したい点などをわかりやすく解説します。研究者だけでなく、科研費を担当する事務担当者、研究室の秘書さんたちに役立つ情報です。

 

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最初に、複雑なルールの「判断手順」を知っておく

 

様々なルールがありますが、科研費を使うときに「どのルールを適用するか」は、次の順番で判断します。すべてをクリアーして使うことができます。どこかで抵触すれば使えません。例え、上位のルールで認められていても、認められません。(公平性の観点から、その組織で、みんなが守っているルールは、守らなくてはいけません。ここが科研費のややこしい点です。これは科研費独自のルールが存在しないためです。)

1 所属する機関のルール

2 補助条件(交付決定の条件です。)

3 日本学術振興会のルール(独立行政法人日本学術振興会科学研究費助成事業(科学研究費補助金)取扱要領など)

4 文部科学省のルール(文部省告示、科学研究費補助金取扱規程など)

5 補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(適化法)、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律施行令(適化法施行令)

 

上位の法律などは、具体的なルールが定めていないことが多いです。旅費についても、適化法、適化法施行令ともに記載はありません。次に文科省の科学研究費補助金取扱規程にもありません。その次に日本学術振興会の科学研究費助成事業(科学研究費補助金)取扱要領にも記載はありません。

 

補助条件には、科研費の費目の例示として、次の記載があるだけです。

旅費

研究代表者、研究分担者及び研究協力者の海外・国内出張(資料収集、各種調査、研究の打合せ、研究の成果発表等)のための経費(交通費、宿泊費、日当)等

 

つまり旅費については、科研費ハンドブックと、各組織の規則等に従うことになります。

 

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次に「自分の科研費」を正確に把握する

 

科研費で旅費を使うときに、最初に注意したいポイントは、「研究種目」(科研費の種類)です。科研費が複雑になってしまった原因でもあるのですが、科研費には「補助金」と「基金」があります。そしてこの2つは、会計手続きが全く異なります。この2つを勘違いしてしまうと、不正使用を疑われるなど、大変なことになります。

 

まず、自分が持っている科研費が、「補助金」なのか、「基金」なのか、明確に把握しておく必要があります。

 

「補助金」分は、単年度予算です。内定日(前年度からの継続は4月1日)から翌年3月31日までしか使うことができません。一方、「基金」分であれば、単年度予算ではありません。複数年度にわたって使用することができます。この二つは、会計手続きが全く異なるので注意が必要です。例えば、年度をまたいで出張するのが可能なのは、「基金」分だけです。

 

研究者の多くは、一人で複数の科研費を持っています。自分で申請していなくても、他の研究代表者の分担者などで、いくつかの科研費を使っています。多い人であれば10種類以上の科研費を使うはずです。自分が持っている科研費が、どの種類なのか、エクセルなどの一覧表で明確にしておく必要があります。研究テーマ、研究種目、「補助金」と「基金」の区分、これらを一覧表にしておきます。

 

事務担当者は、研究分担者の分まで把握できません。ほとんどの事務部門では、定員削減などにより人手がないので、分担者までは管理してないです。研究者本人が把握するしかありません。事務部門が把握できるのは、申請書を日本学術振興会へ提出しているもの(研究代表者)だけです。

 

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旅費の単価について

 

旅費の計算は、交通費+日当+宿泊料です。交通費は、実際に利用した交通機関(JR、新幹線、飛行機など)の料金です。日当と宿泊料については、定額が定められています。国家公務員等の旅費に関する法律(旅費法)で、役職に応じた定額が定められています。この旅費法を基にして、各研究機関で規則などが定められています。自分が所属する組織の旅費単価(日当、宿泊料)を確認しておきましょう。

 

科研費ハンドブック 2019年度版(p410)

【Q4431】 旅費の単価などの定めはありますか?
【A】 科研費では旅費、謝金などの単価や基準を定めていないため、各研究機関で定める単価に則って判断していただくことになります。

 

交通費は、実費相当になるので、出張ごとに計算方法が変わります。しかし日当と宿泊料は定額です。自分がどの単価になるのか、事前に把握しておくことが重要です。日当と宿泊料を理解できれば、旅費は簡単に試算できます。

 

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出張用務や出張者の制限

 

科研費は、研究課題を実施するために直接必要なものであれば使うことができます。旅費として使う場合も、考え方は同じです。研究課題を実施するために必要であれば、旅費として支払いできます。

 

ハンドブックでは例示として、大学院生へ出張させる場合、出張が中止となった場合のキャンセル料などが記載されています。ただキャンセル料については、所属する機関のルールとして、「キャンセル料を支払うことが可能な場合」に限られています。厳しい組織では、キャンセル料は、一切認めてないところもあります。

 

ハンドブック 2019年度版(p411)

【Q4432】 旅費の支給の対象について制限はありますか?
【A】 科研費については、当該研究課題の研究遂行に直接必要なものであれば支給の対象について制限はありません。例えば、以下のようなものへの支出も可能ですが、研究代表者や研究分担者は、その経費使用に関する判断や使途に関する説明責任を負うことになります。
・大学院生が行う出張
・海外出張等に係る見積書の作成経費
・出張が中止となった場合のキャンセル料
・海外出張の際の支度料

 

大学院生は、「研究者の卵」なので、研究課題を遂行するために研究者と一緒に出張したり、場合によっては単独で大学院生へ出張を依頼することもあります。いずれも研究を目的としているので大学院生であれば問題はありません。しかし学部生の場合には注意が必要です。ほとんどの大学では、学部生に対しては出張は認めていません。そもそも学部生は「教育を受ける」のが本務です。授業のカリキュラムも余裕がなく、出張に行っている時間さえ、かなり厳しいはずです。もし学部生が出張へ行くとすれば、本人にとって相当な負担になるはずです。

 

そのため学部生に対して出張依頼するということは、一般的にはありません。よほどの理由が必要になります。理由書の他に、事前に所属組織や日本学術振興会への相談が必要です。(教育に関することなので、教授会で議論するような重要事項です。)

 

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旅費のルールが複数あるとき

 

科研費の使用ルールは、すでに説明したとおり、多数あります。その中でルールが複数存在し、どちらを適用すべきか迷うことがあります。例えば外部の研究者へ出張を依頼するときです。研究代表者が所属する組織のルールと、第三者の研究者が所属する研究組織のルールが違う場合には、どのように判断したらよいのでしょうか。

科研費ハンドブック 2019年度版(p410)

【Q4434】 他の研究機関に所属する研究者に出張を依頼した場合に、その出張旅費はどちらの研究機関の旅費規程で算出すべきでしょうか?

【A】 どちらの研究機関の旅費規程に基づいて出張旅費を算出するかは、相手方の研究機関と協議の上決めることができます。

 

本来、旅費の支給は、旅費を支払う組織のルールに従うべきものです。ところが科研費では、ルールが複数あった時には、協議によって決めることができるとしています。協議をするには、メールなり書面で、約束した内容を記録として残す必要があります。1回だけの出張で、関係者を集めて、そんな検討をしている時間はありません。そのため実際には、旅費を支給する組織のルールに従うのが一般的です。(よく、こんな無責任な記載があるなと驚きました。)

 

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合算使用の制限

 

原則として旅費は、所属組織の規則(ルール)に基づき、事務手続きを行うことになります。 しかし、通常の研究費と大きく違う部分があります。科研費独特の「合算使用の制限」です。

 

これは、すでに説明したとおり、科研費は特定の研究テーマを実施するための研究費です。目的外使用は禁止されています。

科研費ハンドブック 2019年度版(p103)

補助事業に係る用務と他の用務とを合わせて1回の出張を行う場合
・ ひとつの契約で往復航空券を購入するが、旅程の前半が補助事業に係る用務であるため、往路分について直接経費から支出
・ ひとつの契約でホテルに5泊し、補助事業に係る用務に関係する2泊分について直接経費から支出

 

補助事業に係る用務と他の用務とを合わせて行う1回の出張において、用務内容に応じて別々に契約・支払をする場合
→それぞれの使用目的に合致した別々の契約であるため、合算使用に当たらない(例えば、旅程の前半が補助事業に係る用務であり、往路と復路で別々に切符を購入した場合、往路の交通費は科研費からの支出となります。)。

 

また、合算使用にならない例として、合算使用する予算が、制約のない予算の場合です。使途が決められてない一般の運営費交付金や寄附金などが該当します。

科研費ハンドブック 2019年度版(p103)

③ 直接経費に使途の制限のない他の経費(委託事業費、私立大学等経常費補助金、他の科研費及び間接経費など、当該経費の使途に制限のある経費を除く。)を加えて、補助事業に使用する場合

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年度をまたぐ出張、単年度予算の制限

 

科研費の多くは単年度予算です。「補助金」分が単年度予算です。単年度予算は、ひとつの会計年度内のみ有効な予算です。年度を超えて使うことはできません。例えば、3月30日に出発して4月2日に帰ってくるような出張については、ひとつの会計年度から旅費を支払うことは不可能です。年度内(3月31日までの分)の旅費しか支払いできません。

研究者使用ルール(補助条件)(平成31年度(2019年度))

【直接経費の年度内使用】
2-6 直接経費は、研究課題の研究期間が複数年度にわたるものであっても、(略)、補助事業を行う年度を越えて使用することはできない。

 

科研費ハンドブックの質疑応答でも明記されています。

科研費ハンドブック 2019年度版(p411)

【Q4439】 年度をまたいでの出張を行う場合に、科研費から旅費を支出できますか?

【A】 科研費(補助金分)にあっては、年度をまたぐ旅費のうち当該年度分を支出することはできますが、次年度に係る出張の経費を、前年度の補助金から支出することはできませんので注意してください。
一方、科研費(基金分)にあっては、年度をまたぐ支出について制約はありませんので、旅費を年度によって分けて支出する必要はありません。

 

多くの大学では、ミスや勘違いを防ぐ意味でも、年度をまたぐ出張は避けるよう指導しています。出張の終わり(帰ってくる日)を3月29日くらいにするよう指導しています。ギリギリだと、うっかり飛行機に乗り遅れたりして、年度を超えた出張になってしまいます。潤沢に自由に使える研究費を持っている研究者であれば心配ないですが、多くの研究者はギリギリの研究費で生活しています。余計な負担にならないよう注意が必要です。

 

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各組織に共通する旅費のルール

 

科研費は、日本学術振興会や文部科学省が、明確な使用ルールを定めていません。使用ルールのほとんどを、各研究組織へ委ねています。そのため、各組織ごとに数百ものルールが存在しています。(統一ルールを作らずに、現場へ責任を押し付けているというのが正しい理解だと思いますが)

 

その中でも、多くの組織で共通しているルールを参考に記載します。

 

航空賃は、領収書あるいは搭乗券の半券(搭乗証明書)が必要です。実際に乗った飛行機と、実際に支払った飛行機代を証明する必要があります。

 

タクシーを使ったときは、他の交通機関を使えなかった理由と領収書原本が必要です。領収書が発行できないような場所(海外の地方都市など)なら、スマホ写真で金額を撮影することが必要です。

 

急行料金、特急料金、新幹線料金は、距離数や役職に応じた制約があります。例えば、急行料金は50キロ以上、特急、新幹線料金は100キロ以上などのルールがあります。

 

宿泊料は、定額支給なので、定額以内なら領収書は提出しません。定額を超えた旅費請求の場合のみ領収書を提出します。定額についても各組織の規則で定めています。

旅費法(一般的)の日当、宿泊料の一例

国内出張

日当 2,200円 または 2,600円

宿泊料 10,900円 または 13,100円

 

海外出張(大都市)

日当 7,200円 または 6,200円

宿泊料 22,500円 または 19,300円

ほんの一例ですが、多くの組織は、旅費法をベースに定めています。日当は昼食代、宿泊料は、宿代と夕食・朝食代です。


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