科研費で旅費を使うときの注意点、年度をまたぐ出張は間違えやすい

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科研費
2002年 ハワイ

科研費で出張するとには注意が必要です。旅費法だけでは間違えてしまいます。特に単年度予算の科研費は制約が多いです。大学院生の出張、旅費ルールの優先順位、合算使用、年度をまたぐ出張などの解説です。研究者と事務担当者に必須の知識です。

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科研費の種類を正確に把握する

 

科研費で旅費を使うときに、最初に注意したいポイントは研究種目の確認です。科研費が複雑になってしまった原因でもあるのですが、科研費には補助金分と基金分があり、それぞれで会計手続きが全く異なります。この2つを勘違いしてしまうと不適切な使用として指摘されてしまい大変なことになります。

 

自分が持っている科研費が、補助金分なのか、基金分なのか把握します。

 

補助金分は単年度予算です。内定日から翌年3月31日までしか使うことができません。一方、基金分であれば複数年度にわたって使用することができます。この二つは会計手続きが全く異なるので注意が必要です。例えば、年度をまたいで出張するのが可能なのは基金分だけです。

 

研究者の多くは、一人で複数の科研費を持っています。自分で申請していなくても、他の研究代表者の分担者になり、いくつかの科研費を持っています。多い人であれば 5 種類以上の科研費を使います。自分が持っている科研費がどの種類なのか、エクセルなどの一覧表で管理しないとわからなくなります。研究テーマ、研究種目、補助金分、基金分、これらを一覧表にしておきます。

 

事務担当者は、研究分担者まで把握できません。事務部門は定員削減により人手が少ないので分担者まで管理できません。分担者の分は研究者本人が把握するしかありません。事務部門が把握できるのは、申請書を日本学術振興会へ提出している研究代表者の分だけです。

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日当と宿泊料単価を調べる

 

旅費の計算は、交通費+日当+宿泊料です。交通費は、実際に利用したJR、新幹線、飛行機などの料金です。日当と宿泊料は定額です。旅費法(国家公務員等の旅費に関する法律)を基にして、各研究機関で規則が定められています。自分が所属する組織の旅費単価(日当、宿泊料)を確認しておきましょう。

 

科研費ハンドブック 2019年度版(p410)

【Q4431】 旅費の単価などの定めはありますか?

【A】 科研費では旅費、謝金などの単価や基準を定めていないため、各研究機関で定める単価に則って判断していただくことになります。

 

交通費は実費相当です。出張ごとに金額が変わります。しかし日当と宿泊料は定額です。自分がどの単価になるのか事前に把握しておくことが重要です。日当と宿泊料を理解できれば、旅費は簡単に試算できます。日当は昼食の数、宿泊料は泊まった数にそれぞれの単価をかけることになります。

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大学院生は出張可能だが、学部生は出張できない

 

科研費は、研究課題を実施するために直接必要なものであれば使うことができます。旅費として使う場合も考え方は同じです。研究課題に必要であれば旅費として支払いできます。

 

ハンドブックでは例示として、大学院生へ出張させる場合、出張が中止となった場合のキャンセル料などが記載されています。ただキャンセル料については、所属する機関のルールとして、キャンセル料を支払うことが可能な場合に限られています。厳しい組織では、キャンセル料を一切認めてないところもあります。

 

科研費ハンドブック 2019年度版(p411)

【Q4432】 旅費の支給の対象について制限はありますか?

【A】 科研費については、当該研究課題の研究遂行に直接必要なものであれば支給の対象について制限はありません。例えば、以下のようなものへの支出も可能ですが、研究代表者や研究分担者は、その経費使用に関する判断や使途に関する説明責任を負うことになります。
・大学院生が行う出張
・海外出張等に係る見積書の作成経費
・出張が中止となった場合のキャンセル料
・海外出張の際の支度料

 

大学院生は研究者の卵です。研究のために研究者と一緒に出張したり、場合によっては単独で大学院生へ出張を依頼することもあります。研究目的であれば大学院生が科研費で出張するのは問題ありません。

 

しかし学部生の場合には注意が必要です。ほとんどの大学では、学部生に対しては出張を認めていません。そもそも学部生は、勉強するのが本務です。授業のカリキュラムも余裕がなく、出張に行く時間さえ厳しいはずです。もし学部生が出張へ行くとすれば、本人にとって相当な負担になるはずです。

 

そのため学部生に対して出張依頼するということは、一般的にはありません。特別な理由が必要です。理由書の他にも、事前に所属組織や日本学術振興会への相談が必要です。教育に関することなので、教授会で審議する重要事項に該当します。

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旅費ルールは所属組織に従う

 

科研費の使用ルールは多数あります。その中でルールが複数存在し、どちらを優先すべきか迷うことがあります。例えば外部の研究者へ出張を依頼するときです。研究代表者が所属する組織のルールと、外部の研究者が所属する研究組織のルールが違う場合には、どのように判断したらよいのでしょうか。

科研費ハンドブック 2019年度版(p410)

【Q4434】 他の研究機関に所属する研究者に出張を依頼した場合に、その出張旅費はどちらの研究機関の旅費規程で算出すべきでしょうか?

【A】 どちらの研究機関の旅費規程に基づいて出張旅費を算出するかは、相手方の研究機関と協議の上決めることができます。

 

本来、旅費の支給は、旅費を支払う組織のルールに従うべきものです。ところが科研費では、ルールが複数あった際には協議によって決めることができるとしています。メールや書面で協議した内容を残します。しかし1回だけの出張のために関係者を集めて検討している時間もありません。そのため実際には、旅費を支給する組織のルールに従うのが一般的です。(よく、こんな無責任な記載があるなと驚きますが・・)

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旅費の合算使用が認められる場合とは

 

旅費は、所属組織の規則に基づき事務手続きを行うことになります。 しかし通常の研究費と大きく違う部分があります。科研費独特の合算使用の制限です。

 

科研費は、特定の研究課題を実施するための研究費です。目的外使用は禁止されています。

科研費ハンドブック 2019年度版(p103)

科研費で合算使用できる場合

補助事業に係る用務と他の用務とを合わせて1回の出張を行う場合

・ ひとつの契約で往復航空券を購入するが、旅程の前半が補助事業に係る用務であるため、往路分について直接経費から支出

・ ひとつの契約でホテルに5泊し、補助事業に係る用務に関係する2泊分について直接経費から支出

 

補助事業に係る用務と他の用務とを合わせて行う1回の出張において、用務内容に応じて別々に契約・支払をする場合

→それぞれの使用目的に合致した別々の契約であるため、合算使用に当たらない(例えば、旅程の前半が補助事業に係る用務であり、往路と復路で別々に切符を購入した場合、往路の交通費は科研費からの支出となります。)

 

また合算使用にならない例として、合算使用で使う予算が制約のない場合です。使途が決められてない一般の運営費交付金や寄附金などが該当します。

科研費ハンドブック 2019年度版(p103)

③ 直接経費に使途の制限のない他の経費(委託事業費、私立大学等経常費補助金、他の科研費及び間接経費など、当該経費の使途に制限のある経費を除く。)を加えて、補助事業に使用する場合

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年度をまたぐ出張、単年度予算の制限

 

科研費の補助金分は単年度予算です。単年度予算は会計年度内のみ有効な予算です。年度を超えて使うことはできません。例えば、3月30日に出発して4月2日に帰ってくるような出張については、ひとつの会計年度から旅費を支払うことは不可能です。年度をまたぐ出張旅費は、単年度予算の科研費から支払えません。3月31日までの年度内の旅費しか支払いできません。

研究者使用ルール(2019年度)

【直接経費の年度内使用】
2-6 直接経費は、研究課題の研究期間が複数年度にわたるものであっても、(略)、補助事業を行う年度を越えて使用することはできない。

 

科研費ハンドブックの質疑応答でも明記されています。

科研費ハンドブック 2019年度版(p411)

【Q4439】 年度をまたいでの出張を行う場合に、科研費から旅費を支出できますか?

【A】 科研費(補助金分)にあっては、年度をまたぐ旅費のうち当該年度分を支出することはできますが、次年度に係る出張の経費を、前年度の補助金から支出することはできませんので注意してください。

一方、科研費(基金分)にあっては、年度をまたぐ支出について制約はありませんので、旅費を年度によって分けて支出する必要はありません。

 

多くの大学では、ミスや勘違いを防ぐため年度をまたぐ出張は避けるよう指導しています。出張の終わりを3月29日までにするよう指導しています。ギリギリだと、うっかり飛行機に乗り遅れると、翌年度の出張になってしまいます。潤沢に自由に使える研究費を持っている研究者であれば心配ないですが、多くの研究者はギリギリの研究費です。余計な負担にならないよう計画した方が良いです。

 

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各組織に共通する旅費のルール

 

科研費は、日本学術振興会や文部科学省が、明確な使用ルールを定めていません。使用ルールのほとんどを各研究組織へ委ねています。そのため各組織ごとに数百ものルールが存在しています。(統一ルールを作らずに、現場へ責任を押し付けているというのが正しい表現かと思います。)

 

その中でも、多くの組織で共通しているルールを参考にまとめました。

 

飛行機を使う場合は、領収書と搭乗券の半券(搭乗証明書)が必要です。実際に乗った飛行機と、実際に支払った航空賃を証明する必要があります。

 

タクシーを使ったときは、電車やバスを使えなかった理由と領収書が必要です。領収書が発行できないような場所(海外の地方都市など)なら、スマホ写真で金額を撮影します。

 

急行料金、特急料金、新幹線料金は、距離数や役職に応じた制約があります。例えば、急行料金は50キロ以上、特急、新幹線料金は100キロ以上などのルールがあります。各組織のルールを把握しましょう。

 

宿泊料は定額支給です。定額なら領収書は提出しません。定額を超えた旅費請求を認めている場合のみ領収書を提出します。定額についても各組織の規則で定めています。

旅費法の日当、宿泊料の一例

国内出張

日当 2,200円 または 2,600円

宿泊料 10,900円 または 13,100円

 

海外出張(大都市)

日当 7,200円 または 6,200円

宿泊料 22,500円 または 19,300円

ほんの一例ですが、多くの組織は旅費法をベースに定めています。日当は昼食代、宿泊料は夕食・朝食代を含んでいます。

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