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国立大学の教育関係の仕事、学務担当、教務担当、大学院担当の違い

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大学生への窓口対応
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国立大学の教育を大きく区分すると、学部生への教育と、大学院生への教育に分かれます。学部教育を担当するのが学務担当、大学院教育を担当するのが大学院担当です。教育に関係する仕事を担当する事務職員の役割について解説します。

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教務担当と大学院担当の違い

 

国立大学の重要な役割は、学生への教育です。社会に役立つ専門的な知識を習得させるだけでなく、豊かな人間性を養うことを目的にしています。知識だけでなく、豊かな心を育て、社会で活躍できる人材を育てるのが目的です。

 

大学設置基準
第十九条 大学は、当該大学、学部及び学科又は課程等の教育上の目的を達成するために必要な授業科目を自ら開設し、体系的に教育課程を編成するものとする。
2 教育課程の編成に当たつては、大学は、学部等の専攻に係る専門の学芸を教授するとともに、幅広く深い教養及び総合的な判断力を培い、豊かな人間性を涵かん養するよう適切に配慮しなければならない。

 

豊かな人間性とは、ひとことで表現すれば、相手を思いやる心を持つという意味です。自分本位でなく、相手のことや周りの人のことを考えることができる人です。つまり勉強だけできても、周りから嫌われるような人はダメということです。多くの人の感情を正しく理解できる、正しい心を持つ人を育てることです。

 

これらの学生教育を担当するのが、教務担当と大学院担当です。教務担当は学部学生への教育を担当し、大学院担当は大学院生を担当します。教務担当と大学院担当を含めて学務担当といいます。学部学生への教育は、講義を中心とした授業です。大学院教育は、研究を中心とした論文を書くための教育になります。学部教育をさらに専門化した教育が、大学院教育ともいえます。(厳密にいえば、学部教育にない専門領域を研究する大学院もありますが。)

 

大学院教育は、修士課程の上に博士課程があります。修士過程が2年、博士過程が3年です。ただ現実問題として、博士過程まで進んでしまうと、専門的な研究者になってしまうので、就職できるポストが少なくなってしまいます。そのため修士課程を終えた段階で就職し、博士過程へは進まない人が多いです。

 

大学教育の中心は学部教育です。多くの学生は4年間の学部教育を終え、学士号を取得して社会で働くことになります。

 

学部教育を担当するのが教務係あるいは教務担当です。修士課程や博士課程の大学院生を担当するのが大学院係あるいは大学院担当です。事務職員の定員削減により、係からチーム制に変わり、教務担当あるいは大学院担当という呼び方に変わってきました。

 

小さな組織になると、学部教育と大学院教育を含めて学務係あるいは学務チームなどとしているところもあります。一般的には学務担当と大学院担当を含めて学務系といいます。国立大学の事務組織では、学務系以外に、会計系、庶務系、人事系があります。

 

窓口で学部学生や大学院学生への対応をしていると、やはり学部学生の言動は幼く感じます。大学院生になると、だいぶ大人らしくなってきます。もちろん年齢の違いもありますが成長の過程を間近に感じることができます。大学院生になると、挨拶や言葉使いなど礼儀正しく感じます。

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学務担当の日常業務

 

学務担当の日常業務は、授業を計画どおりに実施することです。授業を担当する教員や教室の手配や確認などを行います。学生の履修状況や成績管理がメインの仕事です。入学時期には新入生への説明会なども開催します。

 

中でも重要な仕事として試験があります。春学期、夏学期、冬学期などの季節ごとの中間試験、期末試験、さらに入学試験のための大学入試センター試験、二次試験などです。試験は準備期間も長いので、一年中、どれかの試験関係の仕事を行うことになります。

 

実際に授業を行うのは教育職の教員です。教授や准教授が中心になり、学生へ講義を行います。授業で使うテキストや講義の内容は教員自身が考えて担当します。事務職員が担当するのは、授業の割り振り、定員を超えた科目の割り振り、教室の確保、試験のための問題用紙や解答用紙の準備です。

 

2022年現在は、コンピューターの普及によって学務システムが整備され、成績管理がコンピューター上で簡単にできるようになりました。昔は職員が手書きで成績を管理していたので大変でしたが、現在はその負担はなくなっています。

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学務関係の大変な仕事

 

学生への教育に関する仕事の中で、最も重要なのは試験です。試験問題の作成は、教授や准教授などの教員が行います。事務職員の役割としては試験実施に関する周辺業務を担当することです。

 

例えば、試験問題の作成は委員会で決定します。どのような問題を作成するか、誰が担当するかを決めることになります。委員の発令、委員会の開催、試験問題の作成状況の管理を事務職員が行います。

 

試験問題の原稿ができた後は、解答用紙と合わせて印刷します。部数が多くなれば印刷専門会社へ発注することになります。試験問題が漏洩したら大事件になります。厳重に秘密にしなければなりません。中間試験や期末試験は、担当教員が自分で試験問題を作ることができるので、試験の実施もそれほど困難ではありません。担当教員の判断で実施することができます。

 

しかし入学試験になると大変です。特に全国で一斉に実施する大学入試センター試験は、教職員が一体となって実施します。試験問題は大学入試センターが作成して配布しますが、各大学では試験を実施しなければなりません。

 

全国一斉に実施する入学試験では、公平であることが最重要視されます。問題用紙や解答用紙の配布方法、試験開始前の説明内容まで全てがマニュアルどおりに進められなければなりません。試験時間も秒単位で管理します。教員や事務職員は、試験当日にはみんなで時報を聞きながら秒針まで合わせます。

 

大学入試センター試験では、数か月前から準備を始め、関係者は3センチの分厚いマニュアルを覚え試験を実施することになります。そして万が一、当日にミスが起これば再試験になってしまいます。例えば試験開始時刻や試験終了時刻を十秒間違えただけで再試験になってしまうのです。学務系の仕事の中で、最も気を使うのが入学試験です。参考に大学入試センター試験における、教員と事務職員の主な役割分担です。センター試験当日は、朝7時頃から夜8時くらいまで仕事になります。待機命令が発令されるので、食事などの外出も禁止になります。何かトラブルがあれば、終電まで帰れません。徹夜になることもあります。

 

事務職員の担当

試験実施の説明会開催、試験場の確保、受験番号貼付などの会場設営、会場周辺への案内板設置、試験当日の試験問題と解答用紙の配布と回収、試験中の監督と質疑応答の対応、試験本部との連絡

 

教員(教授、准教授)

試験当日の試験問題と解答用紙の受け渡し、試験開始前の受験生への案内、試験中の監督、質疑応答への対応

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学務担当に向いている人

 

学務関係の仕事は、教員が行う教育を手伝う仕事です。そのため事務職員が自ら判断して中心となって動くようなことはありません。すべての最終判断は教員が行います。教務委員会、試験委員会などが決定した判断に従って仕事をするのが学務関係の事務職員です。

 

事務職員の役割は、教員を補佐することです。誰かに指示されるのが苦手な人は向いていません。逆に、指示されたとおりに動くことを好む人には向いている仕事です。

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学務担当に役立つ勉強方法

 

学部教育や大学院教育の具体的な方法は、法令では定めていません。学校教育法で大学の目的が定められていますが、理念だけです。

 

学校教育法
第八十三条 大学は、学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させることを目的とする。

② 大学は、その目的を実現するための教育研究を行い、その成果を広く社会に提供することにより、社会の発展に寄与するものとする。

 

大学設置基準では、学生定員、授業時間や単位数の基準などが示されていますが、実際の教育をどのように行うかは、各国立大学の各学部に委ねています。学部では、重要な方針については教授会で決定し、細かい運用方法は各種委員会で決定します。

 

つまり、教務担当や大学院担当が毎日行う仕事については、自分が所属する学部の規則類を覚えるのが重要になります。学部の規則類は、教職員専用サイトに掲載されています。受験生に関係するものは一般公開されますが、教員や職員の実務上の規則類は専用サイトに掲載されていることがほとんどです。学務関係の仕事は、学部内の規則に基づいています。

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学務担当の次は、どこへ異動すべきか

 

学部学生や大学院学生への教育を担当する学務系の仕事は、国立大学の本務といえます。教育は一番重要な仕事になります。ところが学部によって教育内容が全く違います。基本理念は共通していますが、学部が変われば、教育内容も全然違います。

 

そのため学務関係の仕事については、なるべく同じ学部内で異動した方が知識を身につけることができます。例えば学部担当から大学院担当へ異動したり、あるいは逆に大学院担当から学部担当へ異動するのが良いです。学部内の教育実務すべてをマスターした後に、他学部の学務課へ異動することをお勧めします。

 

学務系の仕事は、会計系や人事系、庶務系などとは全く違います。学務系以外では、過去の経験や知識を活かすことができません。

 

会計系や人事系の仕事は、会計法や労働基準法などの法律を基に進める仕事です。学部が変わっても実務に関する法律は共通しています。

 

しかし学務関係の仕事は、他学部と共通する部分はほとんどないのです。さらに他の会計系とは全く異なるのです。

 

つまり学務系から他の会計系や人事系、庶務系へ異動すると、過去の経験がリセットされてしまいます。学務系の仕事をマスターしたいのであれば、異動希望も学務系としましょう。

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コメント

  1. 匿名希望 より:

    いつも大変参考に拝見しております。ありがとうございます。
    国立大学法人での契約業務経験がある管理者様にお伺いしたいことがあり、コメントさせていただきました。

    学校にとって契約相手方の企業はいわば学生の就職先ともなりえる顧客である反面、国公立の学校はは会計令等の縛りがあり、特定の企業を贔屓するといったことが私学に比べてできない環境であると感じております。
    入札、随意契約にかかわらず、「うちと契約しないとあなた方の学校からは一切学生を採用しません」といった脅しのようなことはあったりするのでしょうか?
    また、直接でなくとも「入札を開始したその年からそこの企業に採用される学生がいなくなった」等の話を聞いたことはありますでしょうか?(大手の大学様であればブランド力もあるので、そういったことが少ないとは思いますが…)

    また、そういった場面に万が一遭遇した場合、どう対処するべきだと考えますでしょうか?

    よろしければ、コラムでも構いませんのでご意見伺えますと幸いです。

    • 矢野雅彦 管理人 より:

      貴重なコメントありがとうございます。

      民間会社から、取り引きをしないと学生を採用しない、という話は聞いたことがありません。もちろん入札や隨意契約の相手先の会社は、学生が就職する会社と同じです。しかし、おそらく担当部署が違うので関連していないのだと思います。民間会社では、入札や隨意契約を担当するのは営業ですが、学生の就職を担当するのは人事なので、相互に情報を交換することはないはずです。

      また国立大学側では、教員と学務系の職員が学生の就職に関わるのですが、教員と学務系の職員は、入札や隨意契約の仕事に触れることができません。契約を担当する職員は、秘密保持などの責任を伴うので、内部規則で明確に定められています。どこの会社と契約するか、あるいは契約しているかという内部情報は、教員などは知ることができません。教員や学務系の職員が知ることのできる契約関係の情報は、一般公開されている情報だけです。

      つまり、民間会社側も国立大学側も、学生の就職と契約手続きは切り離されています。

      もし仮に、民間会社側から、取り引きを条件に学生を受け入れるような話があれば、大学側としては、そのような会社とは一切関わらないと思います。法令を平気で無視するような、自分本位の危険な考え方の会社なので、学生への就職も勧めません。

      なお少し話がそれますが、学生の就職は、産学連携とは関係しています。産学連携は、大学と民間企業が共同研究契約を締結し、より良い商品などを一緒に開発するものです。産学連携は、お互いに共同で研究を行うので、大学院生の就職にも役立つ制度です。

      • 匿名希望 より:

        コメントさせていただいたものです。ご回答いただきありがとうございます。
        根本的に法令を遵守できない企業・団体とは学務、契約問わず関わらないことが一番ですね。大変勉強になりました。ありがとうございました。

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