国立大学に対する会計検査院の不十分な指摘、寄附金の経理が不当とは

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会計検査院が指摘した不当事項についての解説です。平成22年頃から全国の国立大学に対して「教員等個人宛て寄附金の経理が不当」という指摘がありました。しかし、この指摘について背景等を十分に調べたものか疑問です。矛盾した制度が存在します。

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寄附金の経理が不当

 

会計検査院による平成22年度から平成24年度の決算検査報告の中に、文部科学省関連の不当事項として「教員等個人宛て寄附金の経理が不当と認められるもの」が掲載されています。東京大学、新潟大学、香川大学ほか多数の国立大学で、平成18年度から不当事項として1千万円から4千万円の指摘金額です。

 

国立大学に所属する教員等が、外部の財団法人等から研究助成金を個人的に受けた場合は、所属組織である国立大学に寄附させなければなりません。その寄附手続きを行わずに、教員等が個人経理していたものを不当事項として指摘したものです。会計検査院はその原因として、助成金を受けた教員等個人の理解不足(各国立大学では内部の規則で大学へ寄附することを定めている。)や教員等に対する指導が十分でないことが指摘されています。

 

会計検査院の参考URL

 

教員等個人宛て寄附金の経理が不当と認められるもの

 

平成22年度決算検査報告
http://report.jbaudit.go.jp/org/h22/2010-h22-0816-0.htm

 

平成23年度決算検査報告
http://report.jbaudit.go.jp/org/h23/2011-h23-0937-9.htm

 

平成24年度決算検査報告
http://report.jbaudit.go.jp/org/h24/2012-h24-0839-10.htm

 

一般の国民にとっては、会計検査院が不当事項としているので、国立大学が税金の無駄遣いをしていると思うでしょう。しかし、これは制度的な矛盾を抱えており、会計検査院はその矛盾を理解せず、国民向けに不当事項として発表しています。

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会計検査院の存在意義

 

会計検査院は不思議な組織です。不当事項として毎年100億円以上の金額を指摘しないと、会計検査院自体の存在意義が問われてしまうそうです。

 

(参考 会計検査院の指摘した不当事項の金額)

平成26年度決算 164億円
平成27年度決算 178億円
平成28年度決算 137億円
平成29年度決算  75億円

 

会計検査院の指摘事項は、過去に指摘した内容の繰り返しが多いです。根本的な解決策は提示せず、制度上の矛盾を抱えているものも放置し、永遠に指摘を繰り返すのです。まるで自己の存在をアピールしているかのようです。

 

情報公開制度やインターネットがなかった大昔は、官公庁の会計手続きを一般の国民がチェックすることは不可能でした。検査院の指摘は、国民への情報開示という意味でも重要でした。しかし現在(2018年)は、昔に比べ情報公開やマスメディアの報道が発達しています。森友問題を見ても、週刊誌報道に始まり、国会での追及となりました。国会で指摘され会計検査院が調査しましたが、その結果は曖昧でした。国民感情から乖離した会計検査院の調査結果でした。

 

インターネットが普及し情報公開の進んだ現在は、会計検査院の存在自体を見直す必要があります。毅然とした指摘や税金の無駄遣いを未然に防ぐ解決策を提示できない組織であれば、国民にとって必要なのか疑問です。

 

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財団法人の研究助成制度

 

話を戻しますが、公益財団法人等の事業として各種の研究助成金があります。財団法人が研究者へ研究助成する場合、各国立大学法人などの組織へは助成できない事実が存在します。組織ではなく研究者個人に対する助成のみが認められているのです。

 

ある財団法人の規定を掲載します。ほとんどの財団は同じようなルールを決めています。

 

ある財団法人の研究助成金の取り扱い

所属機関が間接経費の免除を認める場合には、研究助成金を所属機関の指定口座に振り込みます。この場合、所属機関の経理担当部署で委任経理金として管理してください。

 

ただし、研究助成者が自ら所属機関に間接経費の免除申請を行い、許可を得た場合に限ります。

 

許可が下りない場合、あるいは研究助成者が希望する場合は、今までどおり個人口座に振込みます。

 

簡単に言うと、「間接経費が必要であれば所属機関(国立大学)には振り込みできません」という規定です。

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間接経費とは

 

間接経費とは、日本の研究環境を間違った方向へ導いてしまっている「競争的資金」の中で生まれた制度です。研究費をピンハネする、いわば悪の親玉のような存在です。平成13(2001)年に「競争的資金の間接経費の執行に係る共通指針」が定められ、各府省の共通的な運用が開始しました。競争的資金は、応募・審査を経て研究費が配分されます。その時に一定比率(10%から30%)が間接経費として加算されます。間接経費は、研究機関のみが使用できる経費になりました。間接経費を加算とありますが、実際は予算総額の中から配分するので「ピンハネ」と同じです。

 

では、なぜ間接経費が導入されたかと言うと、やはりアメリカに倣ったのです。2001年(平成13年)に、アメリカの競争的資金に対するオーバーヘッドの仕組みを導入したのです。競争的資金は、研究者が自らの研究をアピール(申請)して、研究費を自らの力で稼ぎます。そしてその研究費に対して、一定の比率で間接経費として研究組織用の予算を加算する(オーバーヘッド)こととしたのです。

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間違った研究費の獲得競争

 

国立大学の研究者は、自ら研究費を獲得しなければなりません。多額の研究費を獲得する研究者が所属する組織は、間接経費によって組織の予算が増加します。研究費によるインセンティブ制度を作り上げたのです。

 

国民の税金で運営している国立大学が実施する基礎研究は、そもそも成果が見えない研究です。真理の探究こそが基礎研究であり、国立大学の本務です。基礎研究の波及効果として、将来、社会に役立つ研究成果が発見されるのです。過去のノーベル賞受賞者の出身大学は、国立大学が多いです。基礎研究の重要性を客観的に示しています。

 

ところが、競争的資金という制度を導入してから、短期的な研究成果に注目が集まり、有名な研究者や研究グループのみに競争的資金が集まる仕組みが構築されてしまいました。競争制度を取り入れた結果として、極めて不公平で歪んだ研究環境が、日本中のいたるところに出現してしまったのです。

 

本来、基礎研究を担う国立大学や研究所には、競争的資金ではなく安定的な予算を継続的に配分すべきです。国の政策も、競争的資金を増加させるのではなく、運営費交付金を増やすべきです。

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不当事項になる背景

 

会計検査院による不当事項の背景には、次の制度的な矛盾が存在します。

 

財団法人等が配分する研究助成金は、個人の研究を助成するもので、間接経費は認めていません。

一方、国立大学等の研究組織は、原則として間接経費を義務付けています。そのために研究助成金は個人という立場でしか受け取れないのです。もし間接経費という制度がなければ、研究助成金を研究組織が直接受け取ることが可能です。そうなれば研究助成金を個人で受け取る必要はなく、不当事項にもなりません。つまり制度的な矛盾を会計検査院は理解してないのです。(放置しているのかもしれません。)

 

競争的資金制度こそが会計検査院の不当事項を生み出し、日本の研究を歪めている諸悪の根源です、会計検査院の指摘は、これらの本質を見てない不十分な指摘です。

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