PR
外部資金

会計検査院の指摘は正しい?国立大学の寄附金経理が不当とは?

スポンサーリンク
外部資金
イギリス ロンドン
記事内に広告が含まれています。

会計検査院の指摘は正しいのでしょうか?不当事項として指摘された教員等個人宛て寄附金の経理についての解説です。会計検査院は、制度的な矛盾を放置したまま不当事項として指摘しています。実務を経験してない人たちによる指摘では誰も信用しません。

スポンサーリンク

寄附金の経理が不当とは?

 

会計検査院による平成22年度から平成24年度の決算検査報告の中に、文部科学省関連の不当事項として、教員等個人宛て寄附金の経理が不当と認められるものが掲載されています。東京大学、新潟大学、香川大学ほか多数の国立大学で、平成18年度から不当事項として1千万円から4千万円の指摘金額です。

 

国立大学に所属する教員等が、外部の財団法人等から研究助成金を個人的に受けた場合は、所属組織である国立大学に寄附させなければなりません。その寄附手続きを行わずに、教員等が個人経理していたものを不当事項として指摘したものです。会計検査院はその原因として、助成金を受けた教員等個人の理解不足や教員等に対する指導が十分でないことが指摘されています。各国立大学では、個人として受けた寄附は、大学へ寄附することを内部規則で定めているので違反しているという指摘です。

 

会計検査院の参考URL

 

教員等個人宛て寄附金の経理が不当と認められるもの

 

平成22年度決算検査報告

教員等個人宛て寄附金の経理が不当と認められるもの | 平成22年度決算検査報告 | 会計検査院
教員等個人宛て寄附金の経理が不当と認められるもの

 

平成23年度決算検査報告

教員等個人宛て寄附金の経理が不当と認められるもの | 平成23年度決算検査報告 | 会計検査院
教員等個人宛て寄附金の経理が不当と認められるもの

 

平成24年度決算検査報告

教員等個人宛て寄附金の経理が不当と認められるもの[11国立大学法人、2大学共同利用機関法人](456)-(468) | 平成24年度決算検査報告 | 会計検査院
教員等個人宛て寄附金の経理が不当と認められるもの[11国立大学法人、2大学共同利用機関法人](456)-(468)

 

一般の人から見れば、会計検査院が不当事項としているので、国立大学が税金の無駄遣いをしていると思うでしょう。しかし実際には制度的な矛盾が原因になっています。会計検査院は制度的な矛盾を見ようともせずに、不当事項として公表しています。しかも3年連続で。

スポンサーリンク

会計検査院の存在意義

 

官公庁の実務経験者から見ると、会計検査院は不思議な組織です。不当事項として毎年100億円以上の金額を指摘しないと、会計検査院自体の存在意義が問題になるようです。会計検査院の運営予算は令和2年度で160億円です。会計検査院のように批判しかしない公的組織は、毎年160億円もの税金を使い、国民の役に立っているのか疑問です。森友問題など国民が知りたい真実を何も明らかにできない組織なのですから。

 

参考 会計検査院が指摘した不当事項の金額推移

平成26年度決算 164億円
平成27年度決算 178億円
平成28年度決算 137億円
平成29年度決算  75億円

 

会計検査院の指摘事項は、過去に指摘した内容の繰り返しが多いです。根本的な解決策は提示せず、制度上の矛盾を抱えているものも放置し、永遠に指摘を繰り返すのです。国民のことなど考えずに、自己の存在だけをアピールしているだけの組織です。自分の組織のためだけに仕事しているように感じます。

 

情報公開制度やインターネットがなかった大昔は、官公庁の会計手続きを一般の国民がチェックすることは不可能でした。検査院の指摘は、国民への情報開示という意味でも重要でした。しかし現在(2018年)は、昔に比べ情報公開が進み、マスメディアの自由な報道が可能になっています。森友問題を見ても、週刊誌報道に始まり国会での追及となりました。国会で指摘され会計検査院が調査しましたが、調査結果は曖昧なものです。何も明らかにされず国民感情から乖離した検査結果でした。

 

インターネットが普及し情報公開の進んだ現在は、会計検査院の存在自体を見直す必要があります。権力に対する毅然とした指摘もできず、税金の無駄遣いを未然に防ぐ解決策を提示できない組織であれば、国民には必要ありません。

 

スポンサーリンク

財団法人の研究助成制度に問題

 

話を戻しますが、公益財団法人等の事業として各種の研究助成金があります。財団法人が研究者へ研究助成する場合、各国立大学法人などへ直接助成できない事実が存在します。組織ではなく研究者個人に対する助成のみが認められているためです。

 

ある財団法人の規定を掲載します。ほとんどの財団は同じようなルールを決めています。

 

ある財団法人の研究助成金の取り扱い

所属機関が間接経費の免除を認める場合には、研究助成金を所属機関の指定口座に振り込みます。この場合、所属機関の経理担当部署で委任経理金として管理してください。

 

ただし、研究助成者が自ら所属機関に間接経費の免除申請を行い、許可を得た場合に限ります。

 

許可が下りない場合、あるいは研究助成者が希望する場合は、今までどおり個人口座に振込みます。

 

簡単にいうと、政府が定めている間接経費が必要であれば、国立大学へは振り込みできませんという財団の規定です。政府のルールに基づくなら個人にしか研究費を配布しないというものです。本来、ここを指摘すれば根本的な解決になるはずです。間接経費を必要とする場合でも、所属機関へ振り込むよう変えれば、何も問題ありません。財団法人へ指示するだけの話です。

スポンサーリンク

競争的資金の間接経費とは

 

間接経費とは、日本の研究環境を間違った方向へ導いてしまっている競争的資金の中で生まれた制度です。平成13(2001)年に競争的資金の間接経費の執行に係る共通指針が定められ、各府省の共通的な運用が開始しました。競争的資金は、応募・審査を経て研究費が配分されます。その時に一定比率(10%から30%)が間接経費として加算されます。間接経費は、研究機関のみが使用できる経費になりました。間接経費を加算とありますが、実際は予算総額の中から配分します。

 

間接経費が導入されたのは、やはりアメリカに倣ったのです。アメリカの競争的資金に対するオーバーヘッドの仕組みを導入しました。競争的資金は研究者が自ら申請して獲得します。他の研究者と研究費の獲得競争を行うので、競争的資金といわれています。そして獲得した研究費のうちの一部分を研究組織用の間接経費として割り当てることにしたのです。

スポンサーリンク

間違った研究費の獲得競争

 

国立大学の研究者は、自ら研究費を獲得しなければなりません。多額の競争的資金を獲得できる研究者が所属する組織は、間接経費によって組織の予算もが潤います。国の政策として、ライバルに勝つような研究費によるインセンティブ制度を作り上げたのです。

 

税金で運営している国立大学の基礎研究は、そもそも成果が見えない研究です。真理の探究こそが基礎研究であり国立大学の本務です。基礎研究の波及効果として、将来的に社会で役立つ研究成果が生まれるのです。過去のノーベル賞受賞者の出身大学は国立大学が多いです。ノーベル賞が基礎研究の重要性を客観的に示しています。

 

ところが競争的資金という制度を導入してから、短期的な研究成果のみが強調され、有名な研究者や研究グループへ競争的資金が集まる仕組みになってしまいました。競争制度を取り入れた結果として、極めて不公平で歪んだ研究環境が日本中のいたるところに出現してしまったのです。若い研究者へ研究費が配分されない状況になっています。

 

本来、基礎研究を担う国立大学や研究所には、競争的資金ではなく安定的な予算を継続的に配分すべきです。国の政策も、競争的資金を増加させるのではなく、運営費交付金を増やすべきです。

スポンサーリンク

不当事項になる背景

 

会計検査院による不当事項の背景には、次の制度的な矛盾が存在します。

 

財団法人等が配分する研究助成金は、個人の研究を助成するもので、間接経費を認めていません。

 

一方国立大学などは、政府の指針にもあるように、原則として間接経費を義務付けています。そのために財団法人からの研究助成金は個人という立場でしか受け取れないのです。

 

そもそも財団法人が研究助成金を国立大学へ直接振り込むことができるなら、研究者は寄附手続きも必要なく、今回のような不当事項として指摘されることもありません。つまり制度的な矛盾を会計検査院は考えないのです。今後も継続して指摘できるように放置しているのかもしれませんが。

 

競争的資金制度こそが会計検査院の不当事項を生み出し、日本の研究を歪めている諸悪の根源です。会計検査院の指摘は、これらの本質を見ないのです。会計検査院の不十分な指摘を批判する仕組みがないのも問題かもしれません。

スポンサーリンク

コメント

タイトルとURLをコピーしました