初めて庶務の仕事を担当するときに知っておきたい情報です。国立大学の庶務担当は、様々な仕事を行っています。具体的にどのような仕事を行っているのか、庶務担当に向いている人、庶務担当から人事異動を希望するときにスキルアップする方法について解説します。
庶務と総務の違いとは
組織の規模によって庶務担当と総務担当という呼び方があります。庶務よりも総務の方が仕事の範囲が広いです。小さな組織ほど仕事の範囲が広くなり、庶務の他に、給与や人事の仕事までを含めて総務としているところが多いです。稀ですが、小さな組織では総務担当の中で全ての事務分野の仕事を行っていることもあります。
国立大学の各学部や研究所にある庶務担当では、主に次の仕事を担当しています。
◯他部署や他の係との連絡調整に関すること
◯郵便物の発送と受け取りに関すること
◯教授会や各種委員会などの会議の開催に関すること
◯勤務時間管理に関すること
◯出張命令に関すること
その他、他の係に含まれないことも庶務係の範囲になります。誰も担当したがらない仕事や、複数の係に関係する仕事、鍵の管理、庁舎の警備まで含むこともあります。
庶務担当の重要な仕事のひとつに、上司や他の係、外部との連絡調整があります。つまり周りとの連絡調整役です。外部からの仕事の依頼文書は、直接担当者へ届くことは少なく、ほとんどが庶務宛に届きます。例えば「◯◯学部御中」などの組織名あての依頼文は、すべて庶務担当が受け付けることになります。文書の内容を見て、どこが担当するのが最も良いのか考えて振り分けるのです。毎日多数の調査依頼などが公文書として届きます。
そのため庶務担当の基本的な考え方としては、「他の担当へ依頼できるものは、可能な限り他で担当してもらう」というのが鉄則です。庶務担当が安易に引き受けてしまうと、他が担当すべき専門的な内容まで含んでいると対応できませんし、いちいち専門の担当者へ尋ねることになり、かえって効率が悪くなってしまいます。正確な内容で作成することもできません。
庶務担当の仕事は、やろうと思えば、全ての仕事を引き受けることができてしまいます。しかし、それではアップアップになり、本来の庶務の機能が果たせなくなってしまうのです。庶務が十分に機能していない組織は、組織全体がどんよりと曇っています。 覇気のない職場になります。
他で担当できるものは、なるべく周りの担当者に引き受けてもらうのが、庶務担当の基本姿勢です。
ただ、ここで重要なのは、自分たちが暇になるように他へ仕事を押し付けるという姿勢だと、絶対にうまくいきません。庶務担当は筆頭の係です。組織の名簿でも一番最初に位置しています。事務組織のまとめ役という意識が庶務担当には必要です。他へ協力を仰ぎながら仕事を進めていくことになります。庶務担当のメンバーは、自分たちが一生懸命に仕事をすれば、他の人たちもついてきてくれる、という意気込みが最も大切です。
庶務担当の主な業務
庶務担当には、落ち着いてマイペースで出来るような仕事はないです。外部からの問い合わせ電話も最初に庶務に入りますし、文書などもまず庶務で受け取ることになります。
主な日常業務として、郵便物の受け取りと関係部署への配布があります。郵便物の到着時刻になると、すぐに内容を確認して関係部署へ配布しないと大きなトラブルになってしまいます。特に公文書で依頼のある調査は、回答期限が設けられています。1日遅れるだけでも大騒ぎになることがあります。特定の人しか知らない調査内容で、1日遅れたことによって、海外出張へ出かけてしまったときなどは対応不能になるのです。そのため可能な限り早く担当者へ公文書を渡さなければなりません。
公文書の封筒の宛名に担当者名が記載されてないものは、封を開け内容を確認して該当するであろう担当者へ、対応可能か事前に相談します。担当者が快く引き受けてくれる内容であれば問題ありません。毎年実施している定例的な調査依頼などは問題ないのですが、初めて届く調査依頼などは、担当者にとっても負担になるので受けたくないのです。庶務担当との間で、どちらが担当すべきなのか意見が食い違った場合には、上司へ相談し判断を仰ぐことになります。
大きな組織になると、毎日のように新しい調査依頼文が届きます。庶務担当は、すべての所掌範囲を把握していなければなりません。依頼文を見て、どの担当者が対応するのが一番適切なのかをすぐに判断して、担当者へ引き受けてもらえるか相談することになります。
郵便物だけでなく、電話も同じです。担当がわからないような外部からの問い合わせ電話は、庶務へ最初に入ります。内容を聞いて担当者を探して、電話をつなげることになります。内容をしっかり把握しておかないと、担当外のところへつないでしまい、結果的に電話をたらい回しにしてしまいます。そうなると後日クレームが入ったり、その場で「上司を呼べ!」と怒られ、大きなトラブルになります。さらにクレーマーのような電話も年に数回はあります。
庶務担当が大変なところは、平日は次々に電話がかかってくるところです。じっくりと落ち着いて書類を作ったりできません。平日の昼間は、電話応対や来客対応などに追われ、自分でじっくりと書類を作るのは閉庁後の残業時間帯になってしまうのです。
国立大学の庶務担当の重要な仕事としては、教授会の開催があります。学部や研究所では、月に1回教授会が開催されます。教授会で重要な運営事項が審議されます。学生の教育に関すること、教員の人事に関すること、予算要求などの運営に関する重要なことを教授会で決定します。審議が遅れると、学生の授業が遅れたり、運営に支障をきたすこともあります。
教授会では、適切な時期に審議して議決しないと部局運営ができないのです。重大な審議事項になれば、事前に関係者への説明なども行われます。また教授人事や内部規則の改正などの重要事項になると、慎重に取り扱うために2回審議を行うこともあります。1回目では説明と意見交換を行い、1ヶ月後の2回目の教授会で最終的に議決します。意見が対立する場合には投票によって賛否を問うことになります。
教授会の審議事項は、各学部や研究所によって様々です。会議資料の電子化も進んではいますが、それでも事前に教授会用の資料を準備するのは庶務が担当することになります。履歴書などの人事関係書類を回収資料として紙で配布する場合には、事前に部数をコピーしておかなければなりません。電子化している場合でも、事前に原稿をアップロードして、関係者だけにパスワードを事前に配布しなくてはいけません。教授会用の会議資料だけでも100枚以上になります。会議資料の作成、開催通知、出欠の確認、議事進行メモの作成、学部長など執行部との事前打ち合わせ、教授会終了後の議事録作成などはかなりの負担です。
特に教授会の議事録については、2015年頃から多くの大学で公開するようになりました。ホームページで一般向けに公開するときは、多くの人へわかりやすく伝わるように教授会議事要録を作ることが多いです。教授会出席者だけが理解できる内部向けの議事録と、一般向けの議事要録の二つを作るのもかなり大変です。実際に教授会を担当すると、月に一度の開催であっても、ほとんど毎日何かの教授会の資料作りを行うことになります。過去の議事内容を知りたいなど、いろいろな問い合わせがあるので、毎日ずっと教授会の仕事をしている感じになります。
勤務時間管理も庶務担当の大きな仕事です。人事が担当することもありますが、多くの場合、勤務時間管理は出張命令と関連するので庶務が担当します。勤務時間管理を担当すると、毎月超過勤務時間の集計が必要になります。超過勤務時間を集計し給与担当へ毎月報告しなくてはなりません。超過勤務時間の集計を間違えると(特に割増率など)後日トラブルになります。
庶務担当に向いている人
庶務担当の仕事は、じっくりと腰を落ち着けて進めることはできません。そのため人と接するのが得意な人に向いています。いろいろな人と話をするのが好きな人、社交的な人は庶務担当に向いています。また笑顔が自然な人も向いています。
庶務担当は、職場の顔でもあります。職場内だけでなく、外部の人とも接することが多いです。いろいろな人に出会うことができ、いろいろな仕事に触れ合うことができます。深く物事を考えて仕事するというよりも、浅く広く仕事を楽しむという人に庶務担当は向いています。
また上司と接する機会も庶務は多いです。教授会に関係する仕事や、外部からの依頼に対して判断に迷うような場面では、上司へ相談しながら仕事を進めることになります。上司と会話するスキルが鍛えられます。
庶務担当の次の異動は、どこを希望すべきか
国立大学の事務系職員は、3年以内で人事異動になることが多いです。ひとつの場所に長くいる人の方が少ないです。自分が庶務を担当した後、どのようにスキルアップするのが望ましいでしょうか?
庶務担当の次に異動するなら人事担当がおすすめです。
庶務の中には、人事に関係する仕事が多く含まれています。庶務担当で広く浅く経験し、その後に人事担当でより深く実務を経験すると、仕事を正しく理解できるようになります。また庶務担当も人事担当も、上司との接点が非常に多いです。上司との会話を通して広く見渡す考え方を学ぶことができます。庶務と人事は、相互に関連しているのでより深く理解することができます。
人事担当の次に希望したいのは、学務や大学院などの教務系です。教務系の仕事は、学生や教員とのやりとりが非常に多くなります。幅広く人脈が増え、視野も一気に広がります。
庶務担当と一番対照的な仕事は、会計系になります。特に契約担当は、庶務とは考え方が全く逆の仕事になるので最初はきついかもしれません。庶務は、みんなと楽しく仕事するのが一番大切なポイントになります。しかし契約担当は、職場内ではみんなと仲良くして問題ないのですが、取引業者との関係では困ってしまいます。むしろ業者と楽しくつきあってしまうと、癒着や談合を疑われることになってしまうのです。契約担当は、業者と接するときには距離を保ち厳正に接しなければいけません。庶務担当と契約担当の考え方は全く違うので注意が必要です 。
庶務担当の仕事は、基本的に上司の指示に基づいて進めます。しかし契約担当の仕事は、上司の指示に従うのではなく、会計法令や内部規則に基づいて進めます。会計法令の方が優先します。特に上司が懇意にしているような業者との契約を依頼された場合は、癒着を疑われるので契約しないのが原則です。
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