国が実施する競争入札への参加資格の解説です。全省庁統一資格の審査項目、等級の格付方法、等級制限のある競争入札の予定価格の範囲です。競争参加資格にはA~Dの等級がありますが、営業成績ではなく、単に会社の規模を表すものです。
全省庁統一資格とは
官公庁が実施する競争入札へ参加するためには資格が必要です。今回は、各省庁等の国が実施する競争入札へ参加するための資格について解説します。最初に根拠法令から確認します。
予算決算及び会計令 第七十二条 第一項
各省各庁の長又はその委任を受けた職員は、必要があるときは、工事、製造、物件の買入れその他についての契約の種類ごとに、その金額等に応じ、工事、製造又は販売等の実績、従業員の数、資本の額その他の経営の規模及び経営の状況に関する事項について一般競争に参加する者に必要な資格を定めることができる。
入札へ参加するための資格は、全省庁統一資格として審査が行われます。昔は、各省庁ごとに資格を審査していました。省庁が異なると参加できない不便さが解消されました。
予算決算及び会計令(予決令)の第70条と第71条が「入札へ参加させない者」を定めているのに対して、上記の予決令第72条は、入札へ参加するために必要な資格を定めています。予決令第72条をくわしく見ると、「・・資格を定めることができる。」となっています。理論上は、資格がない者による入札も可能です。入札保証金を預かり入札することになりますが、かなり恐い入札になります。資格を取得している会社であれば、怪しい会社でないことが事前に審査されているので安心できます。
競争参加資格は、売上高や従業員数、財務諸表の数値などによって、会社の規模ごとにA~Dのランク付けが行われます。そして全省庁統一資格として名簿が公開されています。ランク付けについては後半でくわしく説明します。
通常の入札は広く競争参加者を募ります。実質的な競争性を確保するため、より多くの者が入札へ参加できるように等級の制限を緩やかにします。
入札参加資格は、なにかと有利
全省庁統一資格は、毎年、定期的に申請を受け付けています。3年間有効な資格です。それ以外の時期でも随時に審査が行われます。
官公庁との取引を希望する会社は、全省庁統一資格の審査を受けておくと、いろいろとメリット(官公庁側から見積依頼など)があります。
随時の審査では3週間から1ヶ月ほど時間がかかりますので、注意しましょう。
インターネットが普及していなかった時代は、各省庁ごとに競争参加資格を定めていて、財務諸表を確認しながら手作業で配点し、等級の格付けを行なっていました。私も実際に資格審査を担当していました。毎年600社ほど審査していました。当時(1993年頃)、入札への参加を希望する会社は、いろいろな省庁へ同じ内容の申請書を提出しなくてはならず、かなり大変でした。今はインターネットで申請可能となり、さらに自動的に全省庁への参加資格が取得できます。
全省庁統一資格の等級とは
入札に参加しようとする会社は、あらかじめ全省庁統一資格による等級の格付けを受けておきます。
物品の販売であれば、A等級からD等級までランクがあります。しかし等級は、成績表のようなランクを意味していません。会社の営業成績を表したものではなく、会社の規模を表しているにすぎません。
入札の際は、可能な限り多くの会社が参加できるよう、競争参加資格はA等級からD等級まで含めるのが一般的です。そして等級によって有利不利になることもありません。
競争参加資格の申請に必要な書類
申請する前に、必ず、上記のWEBサイトで確認しましょう。主な必要書類は次のとおりです。
登記簿の写し(法務局などで取得します。)
「現在事項全部証明書」又は「履歴事項全部証明書」
会社の登記状況のわかる資料です。「履歴事項全部証明書」は、過去の変更登記も記載されてます。
財務諸表(決算が確定したときの書類です。)
貸借対照表、損益計算書及び株主資本等変動計算書や正味財産増減計算書、収支計算書及び財産目録等
個人の場合は、確定申告書の控えです。
納税証明書(税務署へ申請します。)
その他資料
代理人が申請するときは「委任状」、社名等で外字を使用しているときは「外字届」
競争入札の資格審査項目の解説
資格の等級(A~D)に関係する審査項目について解説します。
製造・販売等実績(売上額・収入金額)
直前分と、その前年の2年分の金額を入力します。審査は平均額で行います。
自己資本額
直前決算の金額と、剰余(欠損)金処分額を入力します。
資本金、準備金・積立金、次期繰越利益(欠損)金
財務諸表の金額を、そのまま入力します。
流動比率
流動資産÷流動負債の比率です。
設備の額
「物品の製造」(メーカー)として申請するときに、審査対象項目になります。
営業経歴
設立してからの営業年数です。
ランク付けは、毎年11月頃に官報に掲載される「競争参加者の資格に関する公示」に基づきます。審査方法は全省庁統一資格のサイトで内容が公開されてます。
審査数値は100点満点で、次のようにランク付けされます。
物品の製造(メーカー)
90点以上 :A
80点以上 90点未満:B
55点以上 80点未満:C
55点未満 :D
物品の販売及び役務の提供等
90点以上 :A
80点以上 90点未満:B
55点以上 80点未満:C
55点未満 :D
競争入札参加資格の各審査項目ごとの点数
点数は次のように付与されます。自己採点で等級を確認できます。
物品の製造(メーカー)の点数
年間平均(生産・販売)高
200億円以上 :60
100億円以上 200億円未満 :55
50億円以上 100億円未満 :50
25億円以上 50億円未満 :45
10億円以上 25億円未満 :40
5億円以上 10億円未満 :35
2.5億円以上 5億円未満 :30
1億円以上 2.5億円未満 :25
5,000万円以上 1億円未満 :20
2,500万円以上 5,000万円未満 :15
2,500万円未満 :10
自己資本額の合計
10億円以上 :10
1億円以上 10億円未満 : 8
1,000万円以上 1億円未満 : 6
100万円以上 1,000万円未満 : 4
100万円未満 : 2
流動比率
140%以上 :10
120%以上 140%未満 : 8
100%以上 120%未満 : 6
100%未満 : 4
営業年数
20年以上 : 5
10年以上 20年未満 : 4
10年未満 : 3
機械設備等の額
10億円以上 :15
1億円以上 10億円未満 :12
5,000万円以上 1億円未満 : 9
1,000万円以上 5,000万円未満 : 6
1,000万円未満 : 3
合計 (最高点) 100
物品の販売及び役務の提供等の点数
年間平均(販売)高
200億円以上 :65
100億円以上 200億円未満 :60
50億円以上 100億円未満 :55
25億円以上 50億円未満 :50
10億円以上 25億円未満 :45
5億円以上 10億円未満 :40
2.5億円以上 5億円未満 :35
1億円以上 2.5億円未満 :30
5,000万円以上 1億円未満 :25
2,500万円以上 5,000万円未満 :20
2,500万円未満 :15
自己資本額の合計
10億円以上 :15
1億円以上 10億円未満 :12
1,000万円以上 1億円未満 : 9
100万円以上 1,000万円未満 : 6
100万円未満 : 3
流動比率
140%以上 :10
120%以上 140%未満 : 8
100%以上 120%未満 : 6
100%未満 : 4
営業年数
20年以上 :10
10年以上 20年未満 : 8
10年未満 : 6
合計 (最高点) 100
競争入札の参加資格を等級制限する場合
各省庁が実施する一般競争入札では、多くの場合、競争参加資格としてA等級からD等級までを認めています。つまり、全省庁統一資格を取得していれば誰でも参加可能です。等級によって落札のときに影響が出ることはありません。A等級の会社も、D等級の会社も平等に参加できます。
しかし時々、予定価格によって制限をかけていることがあります。参加者が多すぎるので混乱を避けるために制限することがあります。等級制限のある入札は、予定価格が次のとおりとなってます。
「競争参加者の資格に関する公示」で公表されてます。
競争入札の参加資格に等級制限のある予定価格の範囲
物品の製造契約
A等級は3,000万円以上
B等級は2,000万円以上3,000万円未満
C等級は400万円以上2,000万円未満
D等級は400万円未満
物品の販売及び役務の提供等
A等級は3,000万円以上
B等級は1,500万円以上3,000万円未満
C等級は300万円以上1,500万円未満
D等級は300万円未満
つまり等級制限のある競争入札では、予定価格が上記の範囲内にあることが多いです。
本サイトでは、競争入札へ参加するときのコンサルティングも受け付けています。
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