御用始めとは?公務員の仕事始めの日程・マナー・実務をわかりやすく解説

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御用始め
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「御用始め(ごようはじめ)」という言葉を聞いて、具体的に何をする日なのか、すぐにイメージできるでしょうか?

公務員の世界には、民間企業とは異なる独特のスケジュールや慣習が存在します。「仕事始め」とは何が違うのか、1月4日が土日だった場合はどうなるのか、そして新人職員はどのような挨拶や服装を心がけるべきなのか。初めてその日を迎える方にとっては、不安も多いことでしょう。

また、会計や契約の実務を担当する職員にとって、御用始めは単なる新年の挨拶の日ではありません。3月の年度末に向けた「繁忙期」への入り口であり、特に年度が変わる時期は法令改正に向けた重要な準備期間のスタートでもあります。

この記事では、元国家公務員の視点から、御用始めの基礎知識や日程のルール、当日の具体的な業務の流れ、そして実務担当者が押さえておくべき会計上の注意点まで、わかりやすく解説します。良い1年のスタートを切るために、ぜひ参考にしてください。

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御用始めとは何か?言葉の意味と基礎知識

官公庁で働く職員にとって、一年の業務のスタートラインとなるのが「御用始め(ごようはじめ)」です。一般企業にお勤めの方や、これから公務員を目指す方にとっては、少し古風な響きに聞こえるかもしれません。しかし、この言葉には公務員特有の歴史と文化、そして法律に基づいた明確な定義が含まれています。ここではまず、言葉の意味や由来、民間企業との違いについてわかりやすく解説します。

御用始め
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御用始めの定義と由来

「御用始め」とは、その年の最初の執務を行う日のことを指します。「御用(ごよう)」という言葉は、江戸時代に幕府や藩の公務を指して使われていた言葉であり、商人などが「御用聞き」として公権力の仕事を受ける際にも使われていました。

明治時代以降、近代的な行政機構が整備されてからも、官公庁の業務を「御用」と呼ぶ慣習が残り、年末の業務終了日を「御用納め(ごようおさめ)」、年始の業務開始日を「御用始め」と呼ぶようになりました。現在では、単に業務を開始する日というだけでなく、気持ちを新たに職務に取り組むための儀礼的な意味合いも強く持っています。

法律で決まっている「休日」と開始日

「御用始め」がいつになるかは、慣習だけで決まっているわけではありません。これには明確な法的根拠があります。

「行政機関の休日に関する法律(昭和63年法律第91号)」 という法律により、国の行政機関の休日は以下のように定められています。

  1. 日曜日及び土曜日
  2. 国民の祝日に関する法律に規定する休日
  3. 12月29日から翌年の1月3日までの日

つまり、法律上、12月29日から1月3日までは行政機関がお休み(閉庁)となります。したがって、特別な事情がない限り、翌日の1月4日が「御用始め」の日となります。これは国家公務員だけでなく、地方公務員においても、多くの自治体が条例で同様の定めをしており、全国的に統一された動きとなっています。

民間企業の「仕事始め」との違い

民間企業では、一般的に年始の業務開始日を「仕事始め(しごとはじめ)」と呼びます。意味合いとしては御用始めと同じですが、開始日は業界や企業によって大きく異なります。

  • 金融機関: 銀行などは法律により12月31日から1月3日が休日とされているため、通常1月4日が仕事始めとなります。
  • 市場関係: 証券取引所などは「大発会(だいはっかい)」と呼ばれ、独自のスケジュールで動きます。
  • サービス業・流通業: 年中無休の店舗や、初売りを行うデパートなどでは、元日から稼働しているため、特定の一斉仕事始めの日がない場合もあります。
  • 製造業: 工場の稼働スケジュールの関係で、年末年始を長めに休み、1月5日以降に始業する場合もあります。

このように、民間企業の「仕事始め」が多種多様であるのに対し、官公庁の「御用始め」は法律に基づいて一律に日が決まっている点が最大の特徴です。これは、行政サービスが国民生活の基盤であり、いつから窓口が開くかを明確にしておく必要があるためです。

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2026年の御用始めはいつ?カレンダーのルール

「1月4日が御用始め」というのが基本原則ですが、カレンダーの曜日配列によって実際の出勤日は変動します。これは、先ほど触れた法律で「土曜日・日曜日は休日」と定められているためです。ここでは、具体的な日程の決まり方を見ていきましょう。

行政機関の休日に関する法律の解説

法律の原則に従うと、公務員の勤務サイクルは以下の優先順位で決定されます。

  1. 1月3日までは「年末年始の休日」として休み。
  2. 1月4日が「平日」であれば、その日が御用始め。
  3. 1月4日が「土曜日」または「日曜日」であれば、その日は「週休日」として休みとなり、直後の平日が御用始めとなる。

このルールは非常に厳格に運用されています。したがって、年によっては年末年始休暇が非常に長くなるケースが発生します。

1月4日が土日の場合の振替ルール

具体的に、1月4日が土日に重なった場合のパターンを見てみましょう。

  • 1月4日が土曜日の場合:
    1月4日(土)は休み、1月5日(日)も休みとなります。そのため、1月6日(月) が御用始めとなります。この場合、12月28日が土曜日であれば、年末年始の連休は9連休となります。
  • 1月4日が日曜日の場合:
    1月4日(日)は休みとなります。そのため、1月5日(月) が御用始めとなります。

このように、暦の巡り合わせによって、実際に役所が開く日は1月4日、5日、6日のいずれかになります。「官公庁は4日から開いているはず」と思って来庁した市民の方が、土日の壁に阻まれて閉庁していた、ということがないよう、広報紙やウェブサイトでは年末に念入りな周知が行われます。2026年は、1月5日(月) が御用始めです。

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官公庁における御用始めの1日の流れ

実際の「御用始め」の日、役所の中ではどのようなことが行われているのでしょうか。ドラマなどで見るような、厳かな雰囲気だけなのでしょうか。ここでは、一般的な官公庁における当日のタイムスケジュールと雰囲気を解説します。

出勤から始業まで:清掃と環境整備

多くの職員は、普段よりも少し早めに出勤します。年末の御用納めの日に大掃除をして帰宅していますが、6日近く空室になっていたオフィスは空気が淀んでいたり、埃がたまっていたりすることがあります。

始業時間前に窓を開けて換気をし、机を拭き、加湿器の水を入れ替えるなどして、執務環境を整えます。これは単なる作業ではなく、「新しい年を迎える準備」としての儀式的な意味合いも含まれています。

幹部による年頭の辞(訓示)と式典

御用始めの最大の特徴は、組織の長による「年頭の辞(訓示)」が行われることです。

本省庁であれば大臣や事務次官、地方自治体であれば知事や市町村長が、全職員に向けてその年の抱負や重点施策についてスピーチを行います。

  • 講堂での式典: かつては講堂や大会議室に職員が集められて行われていましたが、近年は業務効率化や感染症対策の観点から減少傾向にあります。
  • 庁内放送・イントラネット: 現在の主流は、庁内放送でのスピーチや、ビデオメッセージの配信、イントラネット(内部掲示板)へのメッセージ掲載です。

職員は、自席で起立して放送を聞く場合もあれば、通常業務を行いながら耳を傾ける場合もあります。内容は、「厳しい財政状況ですが……」といった引き締めから始まり、「住民サービスの向上に……」といった目標、そして「健康に留意して……」といった労いの言葉で締めくくられるのが定型です。

挨拶回りの慣習とマナー

式典や放送が終わると、庁内は一時的にざわめき始めます。「挨拶回り」の時間です。

所属長(課長や部長)に連れられて、関係の深い他部署(局長室や関連課)へ出向き、新年の挨拶を行います。

「明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。」

廊下ですれ違う職員同士も、この日ばかりは会釈だけでなく、声に出して挨拶を交わします。特に、会計課や人事課、総務課といった管理部門には多くの職員が挨拶に訪れます。ただし、長居は無用です。あくまで業務の合間を縫っての挨拶ですので、手短に済ませるのがマナーとされています。

午後は通常業務?「半ドン」文化の現在

昭和の時代や平成の初期までは、御用始めの日は午前中で業務を切り上げ、午後は新年会(「直会(なおらい)」と呼ぶこともあります)を行う「半ドン」のような慣習が一部で見られました。机の上にお酒や乾き物が並ぶ光景があった時代もあります。

しかし、現在ではそのような慣習はほぼ消滅しています。

コンプライアンス意識の高まりや、「市民の税金で運営されている組織が昼から宴会とは何事か」という世論の変化、そして何より業務量の増大により、御用始めの日であっても午後は完全に通常業務です。

窓口には住民の方が訪れますし、電話も鳴ります。挨拶回りが一段落する午前10時頃からは、普段と変わらない多忙な一日が始まります。特に会計担当者にとっては、1月はのんびりしていられない事情があります(後述します)。

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新人公務員が知っておくべき挨拶とマナー

初めて御用始めを迎える新人職員にとって、当日の振る舞いは緊張の種でしょう。先輩職員が忙しなく動く中で、どのように振る舞えば失礼にならないか、具体的なポイントを紹介します。

上司や同僚への挨拶のタイミングと文例

出勤して最初に顔を合わせた際、はっきりと挨拶をします。

  • 文例: 「おはようございます。明けましておめでとうございます。本年もご指導よろしくお願いいたします。」

所属長(課長など)への挨拶は、課員全員が揃って朝礼などで挨拶する場合と、個別にデスクへ行く場合があります。職場の空気を読み、先輩に「課長への挨拶はいつ行きますか?」と確認するのが最も無難です。

また、廊下やトイレなどで他部署の上司に会った場合も、必ず立ち止まって一礼し、新年の挨拶を述べましょう。この一言があるかないかで、その後の仕事のしやすさが変わることもあります。

電話応対やメールでの「明けましておめでとう」はいつまで?

  • 外部への電話・メール:
    基本的に「松の内(関東では1月7日頃、関西では1月15日頃)」までは、「明けましておめでとうございます」を使用しても問題ありません。しかし、ビジネスのスピード感としては、御用始めからの1週間(第1週目)程度が目安です。
    それ以降は、「本年もよろしくお願いいたします」や「寒中お見舞い申し上げます」といった表現に切り替えるのがスマートです。
  • 内部(庁内)メール:
    庁内メールの冒頭に「明けましておめでとうございます」をつけるのは、御用始めの当日か翌日くらいまでで十分です。いつまでも正月気分を引きずっていると思われないよう、早めに通常の「お疲れ様です」に戻しましょう。

服装や身だしなみで気をつけるポイント

最近は「クールビズ」や「ウォームビズ」でカジュアルな服装が許容されている職場も多いですが、御用始めの日は少し事情が異なります。

式典がある場合や、議員・外部の来客が多い日は、多くの職員がスーツやジャケット着用で出勤します。

特に新人職員の場合、初日はきちんとした服装で出勤し、周囲の様子を見て翌日から調整することをおすすめします。「だらしない」という第一印象を新年早々に持たれるのは避けたいところです。女性の場合も、あまり派手すぎない、オフィスカジュアルの中でもフォーマル寄りの服装が無難です。

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会計・契約担当者が御用始めに意識すべき実務

ここからは少し専門的な視点になります。官公庁の会計・契約・総務担当者にとって、御用始めは「お正月気分の終わり」ではなく、「年度末決戦の開始」を意味します。実務担当者がこの日に意識すべきポイントを解説します。

第4四半期のスタートと年度末処理への助走

日本の官公庁の会計年度は4月始まりの3月終わりです。つまり、1月は第4四半期のスタートであり、年度末まで残り3ヶ月を切った状態です。

御用始めの日から、以下のような業務が一気に動き出します。

  1. 補正予算の執行: 冬季に成立した補正予算の執行手続き。
  2. 不用額の調査: 今年度の予算で使いきれない分(不用額)がないか、各課へのヒアリング。
  3. 翌年度予算の査定: 来年度の当初予算案を固める最終調整。

会計課や財政課の職員にとって、1月から3月は一年で最も忙しい時期です。御用始めの日は、そのためのスケジュール確認と、各部署への締め切り通知(依頼文)の作成など、段取りを行う重要な一日となります。

休暇中に溜まった郵便物と請求書の処理

6日間の閉庁期間中も、郵便物は届いています。御用始めの朝、総務課から大量の郵便物が各課に配布されます。その中には、12月末締めの請求書が多く含まれています。

官公庁の支払いは「適法な請求書を受理してから一定期間内(通常30日以内など)に支払う」というルールがあります。年末年始の休みがあったからといって、この支払いサイトのカウントが止まるわけではありません。

担当者は、届いた請求書の日付を確認し、支払い遅延が起きないよう、直ちに支出負担行為の確認と支出命令書の起案準備に取り掛かる必要があります。

契約手続きのラストスパートと次年度準備

3月末までに納品や工事を完了させるためには、逆算して1月中に契約を結ばなければならない案件が多数あります。入札案件であれば、公告期間を考慮すると、1月早々に手続きを開始しないと年度内に間に合いません。

  • 3月納品のリスク管理: 年度末ギリギリの納品は、検査や検収の時間が確保できず危険です。できるだけ前倒しで進めるよう、業者や原課(事業担当課)と調整を始めます。
  • 長期継続契約の準備: 4月1日から切れ目なく役務(清掃、警備、システム保守など)を開始するために、翌年度契約の入札準備もこの時期に行います。

【重要】法令改正に向けた準備の開始

特に注意が必要なのが、昨年、2025(令和7)年4月1日のように、法令改正があった場合の準備です。

前回は、予算決算及び会計令や地方自治法施行令の改正により、2025年4月から随意契約や指名競争入札が可能となる上限額が引き上げられます。

例えば、国の契約や一部の自治体では、工事の随意契約上限額や、物品購入の少額随契の上限額が変更(増額)されました。また、契約書の作成を省略できる基準額も引き上げられています。

御用始めの段階から、4月からの法令改正の施行などに注意し、以下の点を確認しておく必要があります。

  • 規則や要綱の改正準備: 条例や規則の改正案はできているか。
  • マニュアルの更新: 4月以降の契約事務手引書の数値を新しい基準額に修正する準備。
  • 周知徹底: 3月中に発注する「4月1日契約開始案件」はどちらの基準(旧基準か新基準か)で処理するのかの整理。

2026年の御用始めは、単なる新年のスタートではなく、こうした「会計法令の大きな改正」に対応するための準備期間の初日でもあるのです。

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御用始めに関するよくある疑問(FAQ)

最後に、御用始めに関する細かな疑問についてお答えします。

自治体と国の機関で違いはあるのか

基本的には「1月4日開始」という点は同じです。しかし、地域の慣習によって若干の違いが見られることがあります。

  • 一部の窓口業務: 人口の多い都市部の自治体などでは、1月4日が土日であっても、住民票の発行など一部の窓口業務だけを開けるケースがあります(コンビニ交付の普及で減ってはいますが)。
  • 儀式の簡素化: 比較的小規模な町村役場では、全員が集まっての式典が残っている一方、霞が関の中央省庁ではメール一本で済ませるなど、組織の規模によって「イベント感」には差があります。

閉庁日でも窓口が開くケースとは

「12月29日から1月3日は休み」とお伝えしましたが、例外もあります。

  • 戸籍の届出: 出生届や死亡届、婚姻届などは、365日24時間受け付けています。これは「守衛室」や「時間外窓口」で預かる形となります。
  • ライフライン関係: 上下水道局などの緊急対応部門は、年末年始も当番制で稼働しています。
  • 医療・消防・警察: 公立病院や消防署、警察署には当然ながら「御用納め・御用始め」という概念はなく、24時間体制で稼働しています(事務部門のみカレンダー通りです)。
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まとめ:御用始めは年度末への号砲

「御用始め」は、単に正月休みが明けて仕事に戻る日、というだけではありません。

法律によって定められた行政機関のサイクルの節目であり、組織全体が気持ちを切り替える儀式の場でもあります。

そして何より、実務担当者にとっては、目前に迫った「年度末(3月末)」というゴールに向けて、猛烈なラストスパートが始まる号砲でもあります。

新人職員の方は、まずは元気な挨拶から。ベテラン職員の方は、法改正への備えと年度末処理の段取りを。それぞれの立場で、良い1年のスタートを切れるよう、御用始めの日を大切に過ごしてください。

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