【公務員】予算編成の仕組みを完全解説!概算要求から成立までの流れと実務のコツ

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予算編成の実務 予算
予算編成の実務
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官公庁で働く公務員にとって、もっとも重要かつ負担の大きい業務のひとつが「予算編成」です。

「来年度の予算要求資料を作って」と突然指示されても、初めて担当する方にとっては、何から手をつければよいのか、どのようなスケジュールで進むのか、全体像がつかめず不安になることも多いでしょう。

予算がつかなければ、どんなに素晴らしい政策や事業も実施することができません。予算編成は、組織の未来を決める重要なプロセスなのです。

この記事では、官公庁における予算編成の基礎知識から、概算要求の具体的な手順、査定への対応方法まで、実務担当者が知っておくべきノウハウを網羅的に解説します。

法令に基づく正確な知識と、現場で役立つ実践的なポイントを押さえ、スムーズな予算要求を目指しましょう。

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官公庁の「予算編成」とは?(基礎知識)

予算編成とは、国や地方自治体が翌年度(4月1日から翌年3月31日)に行う事業計画を立て、それに必要なお金の使い道と財源を見積もる一連の作業のことです。

民間企業で言えば、来期の事業計画と収支予算書を作成する作業にあたりますが、官公庁の場合は「税金」を原資とするため、厳格な法令ルールと透明性が求められます。

予算編成の実務
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予算は行政活動の「ガソリン」

官公庁の活動はすべて法律や予算に基づいています。どんなに市民や国民のために必要な事業であっても、予算が計上されていなければ、鉛筆一本買うことも、工事を発注することもできません。

予算は、行政機関が活動するためのエネルギー源、つまり「ガソリン」のようなものです。このガソリンを確保するための戦いが、予算編成です。

歳入予算と歳出予算の違い

予算には大きく分けて「歳入予算」と「歳出予算」があります。

  • 歳入予算: 国や自治体に入ってくるお金の見積もりです。税収(所得税、法人税、住民税など)や国債(借金)、手数料収入などが含まれます。
  • 歳出予算: 行政サービスを提供するために使うお金の見積もりです。社会保障費、公共事業費、人件費、物件費などが含まれます。

実務担当者が主に関わるのは「歳出予算」の要求作業です。自分の担当する事業にいくら必要なのかを計算し、財政当局(財務省や自治体の財政課)に認めてもらう必要があります。

予算のサイクル(編成・執行・決算)

予算には1年間のサイクルがあります。

  1. 予算編成: 前年の夏頃から、翌年度の予算案を作成し、議会(国会や地方議会)で審議・成立させるまでのプロセス。
  2. 予算執行: 4月1日以降、成立した予算に基づいて実際に契約し、支払いを行うプロセス。
  3. 決算: 年度が終わった後、実際のお金の出入りを確定し、決算報告書を作成するプロセス。

この3つは連動しており、決算の結果(不用額が多かった、効果が低かったなど)は、次の予算編成に大きく影響します。

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予算編成の年間スケジュール(概算要求から成立まで)

予算編成のスケジュールは、国と地方自治体で多少異なりますが、基本的な流れは同じです。ここでは国のスケジュールをベースに、一般的な流れを解説します。

4月〜6月:事業の洗い出しと検討(情報収集)

新年度が始まって間もない時期ですが、すでに翌年度の予算編成に向けた準備は始まっています。

この時期は「情報収集」と「事業の種まき」のフェーズです。

  • 現状の課題分析: 今行っている事業に問題点はないか、新たな行政需要(市民からの要望、法改正など)はないかを洗い出します。
  • 新規事業の検討: 新しいシステムを導入したい、老朽化した施設を修繕したいといった場合、どのくらいの費用がかかるのか、概算の調査を始めます。

7月〜8月:概算要求書の作成と提出(ここが山場)

夏場は、各省庁や部局における予算編成の最大の山場です。

財務省(自治体の場合は財政課)から、「概算要求基準(シーリング)」が示されます。これは、「来年度の予算要求は、今年度予算の〇〇%以内に抑えること」といった上限枠の指示です。

担当者は、この枠の中に収まるように事業費を積み上げ、「概算要求書」を作成します。

  • 積算: 必要な経費を一つひとつ積み上げます。
  • 要求書の作成: 事業の目的、内容、効果、積算根拠を記載した資料を作成します。
  • 部局内調整: 部や課の中で、どの事業を優先して要求するか調整を行います。

国の場合は8月末が概算要求の締め切りとなっており、この時期は多くの担当者が資料作成に追われます。

9月〜12月:財政当局による査定(ヒアリングと攻防)

概算要求書を提出した後は、財政当局による厳しい「査定」が始まります。

財務省の主計官や自治体の財政課職員が、提出された要求内容についてヒアリングを行います。

  • 「この事業は本当に必要なのか?」
  • 「積算が高すぎるのではないか?もっと安くできないか?」
  • 「前年度の実績はどうだったのか?」

こうした鋭い質問に対し、担当者は根拠を持って説明しなければなりません。査定の結果、要求額が減額されたり、事業自体が認められないこともあります。

年末(12月下旬)に政府予算案(または首長査定案)が決定されるまで、攻防が続きます。

1月〜3月:国会(議会)審議と予算成立

年が明けると、決定された予算案が国会(または地方議会)に提出され、審議が行われます。

担当者は、議員からの質問に備え、「想定問答集」などの答弁資料を作成する待機業務が発生することもあります。

3月末までに議決されれば、晴れて予算が成立し、4月からの執行が可能になります。

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概算要求を乗り切る!実務担当者のポイント

予算要求を通すためには、ただ「お金が必要です」と言うだけでは不十分です。財政担当者を納得させるだけの論理と根拠が必要です。

「積算根拠」が命!参考見積書の正しい取り方

予算要求で最も重要なのが「積算根拠」です。「だいたい100万円くらい」という感覚的な数字は通用しません。

物品購入や業務委託など、外部に発注する経費については、業者から「見積書」を取得して根拠とします。

このとき取得するのは、契約手続きで使う正式な見積書ではなく、予算要求用の「参考見積書」です。

  • 参考見積書とは: 契約を前提とせず、現在の市場価格や概算費用を把握するために依頼する見積書です。
  • 注意点: 業者に依頼する際は、「予算要求のための参考資料であること」「契約を約束するものではないこと」を明確に伝えます。
  • 金額の考え方: 実際の入札(契約)で見込まれる最安値ではなく、誰に対しても販売できる「通常の取引価格(定価に近い価格)」で作成してもらいます。
    これは、予算査定で減額されることを見越して、余裕を持たせておくためでもありますし、将来的な物価上昇リスクをカバーするためでもあります。

参考見積書があることで、「市場価格に基づいた適正な要求額である」という客観的な証明になります。

説得力のある説明資料の作り方(現状・課題・対策)

要求資料を作成する際は、ロジック(論理構成)が重要です。財政担当者は事業の専門家ではないため、専門用語を並べるのではなく、誰が読んでもわかるように記述します。

以下の3ステップで構成すると説得力が増します。

  1. 現状(Facts): 今どうなっているのか?(例:現在のシステムは導入から10年経過し、処理速度が低下している。年間〇時間の残業が発生している。)
  2. 課題(Issues): 何が問題なのか?(例:セキュリティサポートが来年終了するため、情報漏洩のリスクがある。業務効率が悪化している。)
  3. 対策(Solutions): 予算を使ってどう解決するのか?(例:新システムを導入することで、処理時間を半減させ、セキュリティリスクを解消する。)

特に「なぜ今やる必要があるのか?(緊急性)」と「費用対効果はあるのか?」という視点は必ず問われます。

「シーリング(概算要求基準)」を守る工夫

予算には限りがあるため、各省庁や部局には要求できる上限額(シーリング)が設定されます。

既存の事業をそのまま継続するだけでは、物価高騰や人件費アップなどで予算オーバーになってしまうことがあります。

  • スクラップ・アンド・ビルド: 新しい事業を始めるためには、効果の薄い古い事業を廃止・縮小して財源を捻出する必要があります。
  • 優先順位付け: 部局内で事業に優先順位をつけ、本当に必要なものに予算を集中させます。
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査定・ヒアリング対応のコツ

概算要求書を提出した後の「査定」は、予算獲得のための最大の関門です。財政担当者との折衝を有利に進めるためのコツを紹介します。

財政課(財務省)の視点を知る

財政担当者の役割は「無駄な支出を削ること」と「全体のバランスを取ること」です。彼らは意地悪で減額しているわけではありません。

「積算に誤りはないか」「過大な仕様(オーバースペック)になっていないか」「他で代替できないか」といった視点でチェックしています。

相手の視点を理解し、「この予算は無駄ではなく、将来的なコスト削減につながる投資です」といった切り返しができるように準備しましょう。

想定問答集(Q&A)の準備

ヒアリングで聞かれそうな質問を予測し、回答を用意しておきます。

  • 「参加者が集まらなかったらどうするのか?」
  • 「類似の事業と重複していないか?」
  • 「単価が相場より高い理由は?」
    即答できないと、「検討不足」とみなされ、査定で不利になる可能性があります。参考見積書の内訳や、過去の実績データなどを手元に用意し、数字で答えられるようにしておきましょう。
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知っておきたい予算用語(補正予算・暫定予算・繰越)

実務の中で頻出する、予算に関連する重要用語を解説します。

補正予算(ほせいよさん)

年度の途中で、当初の予算に変更を加える予算のことです。

災害対策や経済対策など、緊急に予算が必要になった場合や、当初の見込みよりも予算が不足した場合などに編成されます。逆に、予算が余りそうな場合に減額する補正を行うこともあります。

暫定予算(ざんていよさん)

新年度(4月1日)までに本予算(当初予算)が国会で成立しない場合に、つなぎとして組まれる予算です。

予算が成立しないと役所がストップしてしまうため、当面の必要最低限の経費のみを計上し、本予算が成立するまでの期間をカバーします。

繰越(くりこし)

原則として、予算はその年度内に使い切らなければなりません(単年度会計の原則)。

しかし、工事の遅れや災害など、やむを得ない事情で年度内に支払いが完了しない場合、翌年度に予算を持ち越して使うことができます。これを「繰越」といいます。

繰越には、「繰越明許費」や「事故繰越」などの種類があり、それぞれ要件が厳格に定められています。

事項要求(じこうようきゅう)

概算要求の段階では詳細な金額や内容を固めきれない場合に、「〇〇に関する事項」として項目だけを要求することです。

制度改正の詳細が決まっていない場合や、緊急の課題に対応する場合に使われますが、年末の予算決定までに詳細を詰める必要があります。

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2026年度(令和8年度)予算編成に向けての視点

現在(2026年1月時点)、令和8年度予算の審議が進められている時期かと思いますが、予算編成のトレンドは常に変化します。

近年では、以下のようなキーワードが予算編成の重点分野となっています。

  • デジタル・トランスフォーメーション(DX): 行政手続きのオンライン化、AIの活用、システムの標準化など。
  • 物価高騰・賃上げ対応: エネルギー価格の上昇や人件費の高騰を踏まえ、契約金額(予定価格)への適切な転嫁や、公定価格(介護・保育報酬など)の見直し。
  • 少子化対策・こども政策: 児童手当の拡充や保育環境の整備など。

実務担当者は、自分の担当事業がこれらの国の重点施策や、自治体の総合計画とどのように関連しているかをアピールすることで、予算を獲得しやすくなります。

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まとめ:予算編成は「準備」が9割

予算編成の実務は、スケジュールに追われる大変な業務ですが、以下のポイントを押さえることでスムーズに進めることができます。

  1. 早期着手: 4月〜6月の早い段階から情報収集と構想を練る。
  2. 根拠の確保: 「参考見積書」を適切に取得し、積算の正当性を証明する。
  3. 論理的な説明: 「現状・課題・対策」のストーリーで必要性を訴える。

予算編成業務を通じて得られる、事業全体を俯瞰する視点や、論理的な説明能力は、公務員としてのキャリアにおいて非常に強力な武器になります。

まずは目の前の「参考見積書」の依頼から、着実に準備を進めていきましょう。

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