企業の財務情報を調べていると、よく耳にする「連結決算」という言葉。
ですが、実際にどのような意味を持ち、なぜ必要とされるのか、正確に理解している人は意外と少ないかもしれません。
連結決算とは、親会社と子会社を一体とみなして、企業グループ全体の財務状況や経営成績を把握するための重要な会計手法です。とくにグループ経営が一般化した現代においては、個別決算だけでは企業の実態を十分に表すことができず、投資家や取引先に対して正確な情報を開示するためにも欠かせない仕組みとなっています。
本記事では、連結決算の定義や基本的な仕組みから、子会社の赤字が与える影響、税制制度との関係性、さらには連結決算が日本で導入された歴史とその目的まで、わかりやすく丁寧に解説していきます。官公庁などで会計実務に携わる方が企業の財務状況を調べる際にも役立つ内容となっていますので、ぜひ最後までご覧ください。連結決算の本質を理解することで、企業経営や財務分析への理解が一段と深まるはずです。
連結決算とは?初心者にもわかりやすく基本から丁寧に解説
企業の財務情報を正確に把握しようとするとき、「連結決算」という言葉を目にする機会は少なくありません。
しかし、連結決算とは一体どのようなものなのでしょうか?
ここでは、連結決算の定義や目的、必要とされる背景を、詳しく解説していきます。

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連結決算の定義とは?
連結決算とは、企業が単体(個別)で行う決算とは異なり、「親会社」と「子会社」を一体の存在とみなして、企業グループ全体の財務状況や経営成績をまとめて報告する手法のことです。
たとえば、親会社A社が子会社B社と子会社C社を持っている場合、それぞれの会社が単体で決算を出すだけでなく、3社の経営成績を合わせた「連結財務諸表」を作成するのが連結決算です。
連結財務諸表は、主に以下のような情報を含みます:
連結貸借対照表(BS)
連結損益計算書(PL)
連結キャッシュ・フロー計算書(CF)
連結株主資本等変動計算書(SS)
これらは、企業グループ全体の資産・負債・収益・費用などの動きを、グループ外部との取引に限定して反映させることを目的としています。
連結決算が必要とされる背景
実態経営の反映
日本において、企業が単体で上場していても、実際には多くの子会社や関係会社を持つ「グループ経営」が一般的です。個別決算だけではこうした実態を反映できないため、投資家や金融機関にとっての判断材料として不十分になります。
連結決算は、グループ全体での経営実態を正確に表すため、ステークホルダーにとって非常に重要な情報源となります。
内部取引の排除による透明性の向上
親会社と子会社間、あるいは子会社同士で行われる内部取引(例:商品の販売、資金の貸し借りなど)は、実際にはグループ外部への影響がない取引です。
個別決算ではこうした取引も売上や費用として計上されるため、数字が大きく見える可能性があります。連結決算ではこれらの内部取引を相殺・消去することで、より正確な経営状況が明らかになります。
国際的な会計基準への対応
グローバル経済が進展する中、日本企業にもIFRS(国際財務報告基準)への対応が求められるようになっています。IFRSでは連結決算が基本であり、国際競争力を高めるためにも、日本の会計制度も連結中心に移行してきました。

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連結決算の対象となる企業とは?
日本では、一定の要件を満たす企業には連結財務諸表の作成が義務付けられています。具体的には以下のようなケースです。
親会社とは?
他の企業(子会社)に対して以下のような支配力を持っている会社を指します:
発行済み株式の過半数を所有している
経営の意思決定を事実上支配している
取締役の多数を派遣している
子会社とは?
親会社に支配されている企業であり、その経営や財務に関して親会社の意思が反映される立場にある会社です。子会社がさらに他の子会社を持っていることもあり、「多階層の連結」が必要になることもあります。
連結決算の義務と法律上の位置づけ
日本では、金融商品取引法に基づいて、上場企業は連結財務諸表を提出することが義務付けられています。さらに、会社法においても一定の要件を満たす会社は、連結計算書類を作成しなければなりません。
たとえば以下のいずれかに該当する場合、連結財務諸表の作成が必要になります:
資本金が5億円以上
負債総額が200億円以上
有価証券報告書の提出義務がある企業
(上場企業などの大企業は連結財務諸表の作成が義務付けられていますが、中小企業は任意です。)
初心者が理解するためのポイント
初心者が連結決算を理解するうえで最も重要なポイントは、「企業グループ全体を一つの会社と見なして財務諸表を作成する」という考え方です。
以下の3点を押さえておくと、全体像が見えやすくなります:
1. 親会社と子会社の関係性を理解すること
2. 内部取引をなぜ消去するのかを理解すること
3. 企業の実態に近い財務情報を提供する目的を知ること
連結決算は、企業グループの経営実態を正確に表すために欠かせない会計手続きです。単なる義務として捉えるのではなく、その目的や仕組みを正しく理解することで、会計や経営の基礎力が格段にアップします。
それでは、さらに詳しく見ていきましょう。
親会社・子会社・関連会社との関係:個別決算との違いをわかりやすく解説
企業の財務情報を理解する上で、「連結決算」という言葉を耳にすることがあるでしょう。
しかし、連結決算とは具体的に何を指すのでしょうか?

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また、親会社・子会社・関連会社とはどのような関係にあるのでしょうか?
ここでは、連結決算の定義や必要性、個別決算との違いについて、わかりやすく解説します。
連結決算の定義とは?
連結決算とは、親会社とその子会社を一つの企業グループとみなし、グループ全体の財務状況や経営成績を一体的に報告するための会計手続きです。これにより、企業グループ全体の経済活動を正確に把握することが可能になります。
例えば、親会社が子会社を通じて製品を販売している場合、個別の決算ではそれぞれの売上や利益が計上されますが、連結決算ではこれらの内部取引を相殺し、実際の外部との取引に基づいた財務情報を明らかにします。
親会社・子会社・関連会社の関係とは?
連結決算を理解するためには、親会社・子会社・関連会社の関係を把握することが重要です。
親会社:他の会社(子会社)に対して支配力を持つ会社。具体的には、議決権の過半数を所有している場合や、経営の意思決定を実質的に支配している場合が該当します。
子会社:親会社に支配されている会社。親会社が議決権の過半数を所有している、または実質的に経営を支配している場合に該当します。
関連会社:親会社が議決権の20%以上を所有し、重要な影響力を持っている会社。子会社ほどの支配力はないものの、経営方針に対して一定の影響を与えることができる会社です。
これらの関係性を理解することで、連結決算の対象となる企業や、連結財務諸表における取り扱いが明確になります。

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個別決算との違いと連結決算の必要性
個別決算は、企業が単体で行う決算であり、その企業単体の財務状況や経営成績を報告します。一方、連結決算は、企業グループ全体の財務状況や経営成績を報告するものです。
個別決算では、グループ内の取引も売上や費用として計上されるため、実際の経済活動を正確に反映していない可能性があります。連結決算では、グループ内の取引を相殺し、実際の外部との取引に基づいた財務情報を提供することで、企業グループ全体の経営実態を正確に把握することができます。
連結決算が必要とされる理由は以下の通りです:
1. グループ全体の経営状況の把握:企業グループ全体の財務状況や経営成績を正確に把握することで、経営判断や戦略立案に役立ちます。
2. 財務の透明性の向上:連結決算により、企業グループの財務情報が明確になり、投資家や取引先などのステークホルダーに対して信頼性の高い情報を提供できます。
3. 法的義務の遵守:一定の条件を満たす企業は、法律(会社法、金融商品取引法)により連結決算の作成が義務付けられています。例えば、資本金が5億円以上または負債総額が200億円以上の企業は、連結財務諸表の作成が求められます。
このように、連結決算は企業グループ全体の経営実態を正確に把握し、ステークホルダーに対して透明性の高い情報を提供するために不可欠な手続きです。
連結決算の基本的な仕組みを初心者向けにわかりやすく解説
連結決算は、企業グループ全体の財務状況を正確に把握するための重要な手続きです。このセクションでは、連結財務諸表の構成や、グループ会社間の取引の相殺処理、のれん(営業権)の取り扱いなど、連結決算の基本的な仕組みについて詳しく解説します。

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連結財務諸表とは?
連結財務諸表は、親会社とその子会社を一つの企業グループとみなし、グループ全体の財務状況や経営成績を一体的に報告するための財務諸表です。主な連結財務諸表には以下のものがあります。
連結貸借対照表(連結B/S)
企業グループ全体の資産、負債、純資産の状況を一定時点で示すものです。親会社と子会社の個別貸借対照表を合算し、グループ内の取引や残高を相殺消去して作成されます。
連結損益計算書(連結P/L)
一定期間における企業グループ全体の収益と費用を示し、最終的な利益を計算します。親会社と子会社の個別損益計算書を合算し、グループ内の取引による売上や費用を相殺消去して作成されます。
連結キャッシュ・フロー計算書(連結C/F)
企業グループ全体の現金の流れを、営業活動、投資活動、財務活動の3つの区分で示します。親会社と子会社の個別キャッシュ・フロー計算書を合算し、グループ内の資金移動を相殺消去して作成されます。
グループ会社間の取引の相殺とは?
連結決算では、親会社と子会社間、または子会社同士の取引を相殺消去する必要があります。これは、グループ内の取引をそのまま合算すると、売上や費用が二重に計上され、実態を正確に反映しないためです。
相殺消去が必要な主な取引
投資と資本の相殺消去
親会社が子会社に対して行った投資(子会社株式)と、子会社の資本(資本金や資本剰余金)を相殺します。これにより、親会社の投資と子会社の資本が重複して計上されるのを防ぎます。
取引の相殺消去
親会社と子会社間、または子会社同士で行われた商品やサービスの売買に関する売上と仕入を相殺します。これにより、グループ内の取引による売上や費用が二重に計上されるのを防ぎます。
債権債務の相殺消去
グループ内で発生した売掛金と買掛金などの債権債務を相殺します。これにより、グループ内の債権債務が重複して計上されるのを防ぎます。
未実現利益の相殺消去
グループ内で商品や固定資産を売買した場合、外部への販売が完了していない限り、その取引による利益は未実現とされ、相殺消去されます。これにより、実現していない利益が計上されるのを防ぎます。
のれん(営業権)とは?
のれん(営業権)とは、企業買収時に支払った買収金額が、被買収企業の純資産額を上回る場合に、その差額として計上される無形資産です。これは、被買収企業のブランド力、顧客基盤、技術力など、目に見えない価値を表しています。
のれんの会計処理
日本の会計基準では、のれんは20年以内の期間で定額法により償却されます。償却期間は、のれんの効力が及ぶと見込まれる期間を基準に設定されます。また、のれんの価値が著しく低下した場合には、減損処理が行われます。
連結決算の基本的な仕組みを理解することは、企業グループ全体の財務状況を正確に把握し、適切な経営判断を行うために不可欠です。連結財務諸表の構成や、グループ内取引の相殺処理、のれんの取り扱いなど、連結決算の基礎をしっかりと押さえておきましょう。
子会社の赤字が連結決算に与える影響とは?親会社やグループ全体への影響と対処法をわかりやすく解説
企業グループの財務状況を正確に把握するためには、連結決算が重要な役割を果たします。しかし、子会社が赤字を計上した場合、その影響は親会社やグループ全体にどのように及ぶのでしょうか?
子会社の赤字が連結決算に与える影響と、その対処法について詳しく解説します。

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子会社の赤字が連結決算に与える影響
連結決算では、親会社と子会社の財務諸表を合算し、グループ全体の財務状況を明らかにします。そのため、子会社が赤字を計上すると、連結損益計算書においてグループ全体の利益が減少し、場合によっては連結赤字となる可能性もあります。
例えば、親会社が100億円の利益を計上していても、子会社が20億円の赤字を計上していれば、連結ベースでの利益は80億円となります。このように、子会社の赤字は親会社の業績にも直接的な影響を及ぼします。
会計上のインパクト
子会社の赤字が連結決算に与える会計上の影響は多岐にわたります。
親会社の投資評価への影響
子会社の業績が悪化すると、親会社が保有する子会社株式の評価にも影響を及ぼします。場合によっては、子会社株式の減損処理が必要となることもあります。これは、親会社の財務諸表において損失として計上され、純資産の減少を招く可能性があります。
繰延税金資産の回収可能性の低下
子会社が継続的に赤字を計上している場合、将来の課税所得が見込めず、繰延税金資産の回収可能性が低下します。その結果、繰延税金資産の取り崩しが必要となり、追加の損失が発生する可能性があります。
キャッシュ・フローへの影響
子会社の赤字は、グループ全体のキャッシュ・フローにも影響を及ぼします。特に、赤字が続く場合、親会社からの資金支援が必要となることが多く、グループ全体の資金繰りに悪影響を及ぼす可能性があります。

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子会社の赤字への対処法
子会社の赤字が連結決算に与える影響を最小限に抑えるためには、適切な対処が必要です。
再建支援を行う
親会社が子会社の再建を支援することで、業績の改善を図る方法です。具体的には、経営陣の刷新や事業戦略の見直し、資金援助などが含まれます。再建計画が合理的で実行可能である場合、子会社株式の減損処理を回避できる可能性もあります。
子会社の売却
子会社の業績改善が見込めない場合、第三者への売却を検討することも一つの方法です。売却により、親会社は子会社の赤字から解放され、連結決算への影響を回避できます。
子会社の清算
子会社の事業継続が困難な場合、清算を選択することもあります。清算により、親会社は子会社の赤字から解放されますが、清算に伴う損失や費用が発生する点に注意が必要です。
子会社の赤字は、連結決算において親会社やグループ全体の財務状況に大きな影響を与えます。適切な対処法を講じることで、影響を最小限に抑えることが可能です。企業グループとしての健全な経営を維持するためにも、子会社の業績管理と早期の対応が重要となります。
連結納税制度とグループ通算制度の違いを解説
企業グループが税務上の効率化を図るために導入されてきた「連結納税制度」は、2022年4月1日より「グループ通算制度」へと移行しました。このセクションでは、両制度の歴史的背景、制度の概要、そしてそれぞれのメリット・デメリットについて、初心者の方にも理解しやすいように詳しく解説します。
税務上の連結処理の歴史と背景
連結納税制度の導入背景
連結納税制度は、2002年(平成14年)に導入されました。この制度は、企業グループ全体を一つの納税単位とみなし、親会社が子会社の所得や損失を合算して法人税を申告・納税する仕組みです。導入の背景には、企業グループ内での損益通算を可能にし、税務上の効率化を図る目的がありました。
しかし、制度の運用においては、親会社がグループ全体の申告・納税を一括で行う必要があり、事務手続きが煩雑になるという課題がありました。また、子会社の修正申告が必要な場合でも、親会社が連結申告書を修正する必要があるなど、柔軟性に欠ける面も指摘されていました。
グループ通算制度への移行
これらの課題を解消するため、2022年4月1日から「グループ通算制度」が導入されました。新制度では、企業グループ内の各法人が個別に法人税の申告・納税を行いながら、グループ内での損益通算を可能とする仕組みとなっています。これにより、事務手続きの簡素化と柔軟な対応が可能となりました。

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グループ通算制度の要点と注意点
制度の概要
グループ通算制度は、完全支配関係にある内国法人(親会社と100%子会社)を対象に、グループ内の各法人が個別に法人税の申告・納税を行いながら、グループ全体で損益通算を行う制度です。これにより、グループ内の黒字法人と赤字法人の所得を相殺し、グループ全体の税負担を軽減することが可能となります。
注意点
承認申請の必要性
グループ通算制度を適用するには、事前に国税庁長官の承認を受ける必要があります。承認申請は、適用を開始しようとする事業年度の開始日の3か月前までに行う必要があります。
電子申告の義務化
グループ通算制度を適用する場合、電子申告が義務付けられています。紙での申告は認められておらず、e-Taxを利用した申告が必要です。
中小企業向け特例の適用制限
グループ内に資本金1億円を超える法人が含まれる場合、グループ全体が中小企業向け特例の適用対象外となります。これにより、軽減税率や交際費の損金算入限度額の特例が受けられなくなる可能性があります。
税制の観点から見た連結とそのメリット・デメリット
メリット
損益通算による税負担の軽減
グループ内の黒字法人と赤字法人の所得を相殺することで、グループ全体の課税所得を減少させ、税負担を軽減することができます。
税額控除の限度額の増加
研究開発税制などの税額控除制度において、グループ全体の法人税額を基準に控除限度額を計算するため、単体で申告する場合よりも控除額が増加する可能性があります。
税務コンプライアンスの向上
各法人が個別に申告・納税を行うことで、税務処理の透明性が高まり、グループ全体の税務コンプライアンスが向上します。
デメリット
繰越欠損金の利用制限
グループ通算制度では、グループ加入前の繰越欠損金は、原則としてその法人の所得に対してのみ利用可能であり、グループ全体での通算はできません。
中小企業向け特例の適用制限
前述の通り、グループ内に大法人が含まれる場合、中小企業向けの税制優遇措置が適用されなくなる可能性があります。
事務手続きの増加
各法人が個別に申告・納税を行うため、申告書の作成や税額計算などの事務手続きが増加する可能性があります。
新制度の導入により、企業グループにとっては柔軟性が増し、税務上のリスクや不便が軽減される一方で、制度への正しい理解と実務上の対応力が求められるようになりました。
特に中小企業やグループをこれから形成する企業にとっては、以下のような判断が重要になります。
税負担の最適化を図る視点で制度を選ぶこと
事前承認や電子申告の要件を確実に満たす体制整備
将来的なグループ戦略(再編・M&A)への影響を踏まえた計画立案
また、税務の専門家との連携を強めることも、スムーズな制度運用には欠かせません。制度の理解不足により想定外の税負担や手続きミスが発生するリスクを避けるためにも、実務担当者が基本知識を持ち、経営判断の一助として活用する姿勢が重要です。
補足:制度比較の早見表(参考)
項目 | 連結納税制度 | グループ通算制度 |
---|---|---|
適用開始 | 2002年 | 2022年 |
対象法人 | 完全支配関係(100%)の内国法人 | 同左 |
所得・欠損の通算 | 親会社が一括で申告・納税 | 各法人が個別申告、通算は通算親法人で調整 |
申告義務 | 親会社がグループ全体をまとめて申告 | 各法人が個別に申告(電子申告必須) |
繰越欠損金の取り扱い | 通算可能(一定制限あり) | 加入前の欠損金は通算不可 |
中小企業向け特例 | 一部適用可 | 大法人が1社でもあれば不適用 |
連結納税制度とグループ通算制度は、見た目には似ているものの、実務における取り扱いや税務インパクトは大きく異なります。企業としては、制度の選択と適用にあたり、メリットだけでなくデメリットも含めた包括的な視点を持つことが求められます。
ここでは、税制面から見た企業グループの戦略的選択について基礎から丁寧に解説しました。次章では、「連結決算はいつから始まったのか、そしてその目的とは?」という歴史的視点に移りながら、連結制度の根本的な意義に迫ります。
連結決算はいつから始まったか、その目的とは?制度の歴史と導入背景をわかりやすく解説
連結決算とは、親会社とその子会社を一体として財務諸表を作成し、企業グループ全体の経営状況を明らかにする会計手法です。日本では、2000年3月期から連結財務諸表の作成が原則義務化されました。本セクションでは、連結決算が導入された背景やその目的、そして海外との制度比較について、初心者の方にもわかりやすく解説します。
日本で連結決算が義務化された歴史
日本における連結決算の義務化は、2000年3月期から始まりました。それ以前は、親会社単体の財務諸表が重視されており、子会社の業績は個別に報告されていました。しかし、企業グループ全体の経営実態を正確に把握するためには、連結ベースでの財務情報が必要とされるようになりました。
この背景には、以下のような要因がありました:
企業グループの多様化と複雑化:企業が多角化や国際化を進める中で、子会社や関連会社の数が増加し、グループ全体の経営状況を把握する必要性が高まりました。
会計基準の国際化:国際的な会計基準との整合性を図るため、連結財務諸表の作成が求められるようになりました。
投資家への情報提供の充実:投資家が企業グループ全体の財務状況を把握できるよう、連結決算の導入が進められました。
なぜ連結決算が導入されたのか?
連結決算の導入には、以下のような目的があります。
グローバル基準との整合性(国際会計基準)
国際的な資本市場では、企業の財務情報の比較可能性が重要視されています。国際会計基準(IFRS)では、連結財務諸表の作成が求められており、日本もこれに対応する形で連結決算の導入を進めました。
投資家にとっての企業グループ全体の透明性向上
投資家は、企業グループ全体の財務状況を把握することで、より正確な投資判断を行うことができます。連結決算により、親会社と子会社の財務情報が統合され、企業グループの実態が明らかになります。
経営実態の正確な把握
連結決算は、企業グループ全体の経営実態を正確に把握するための手段です。親会社単体の財務情報だけでは見えない、子会社の業績や財務状況を含めた全体像を把握することができます。
海外と日本の制度導入の違い
海外では、連結決算の導入が日本よりも早く進められていました。例えば、アメリカでは1970年代から連結財務諸表の作成が一般的となり、国際会計基準(IFRS)でも連結財務諸表の作成が求められています。
一方、日本では、2000年3月期から連結決算が義務化されました。これは、国際的な会計基準との整合性を図るとともに、企業グループ全体の経営実態を明らかにするための取り組みでした。
連結決算は、企業グループ全体の財務状況を正確に把握し、投資家や利害関係者に対して透明性の高い情報を提供するための重要な手段です。日本では、2000年3月期から連結決算が義務化され、国際的な会計基準との整合性を図るとともに、企業の経営実態を明らかにする取り組みが進められています。
まとめ|連結決算の基本から制度の背景までを総復習!会計実務者が押さえるべきポイントとは
これまでの解説で、連結決算について基本から仕組み、背景、税制制度との関係、さらには制度の歴史に至るまで掲載してきました。ここでは、全体の要点を整理しつつ、特に官公庁などの会計実務者が企業会計を学ぶ上で注意したいポイントについてもご紹介します。
連結決算の定義とその意義を再確認
連結決算とは、「親会社と子会社などを一体とみなして、企業グループ全体の財務諸表を作成する会計処理」のことです。親会社単体では把握できないグループ全体の経営成績や財政状態を、より正確に把握できるという点で、企業活動を公正に評価するための基礎となっています。
連結決算の基本的な仕組みの復習
連結財務諸表の構成:連結貸借対照表(B/S)、連結損益計算書(P/L)、連結キャッシュ・フロー計算書(C/F)など
内部取引の相殺:グループ内での取引(売買・債権債務など)を消去し、外部取引ベースで財務を表示
のれん(営業権)処理:企業買収時のプレミアム部分を無形資産として認識し、償却または減損処理
税制との関係性:連結納税とグループ通算制度
連結納税制度(2002〜2022):親会社がまとめて申告・納税を行う
グループ通算制度(2022〜):各法人が個別申告しつつ損益を通算する仕組み。電子申告必須
税務面での制度移行は、実務に大きな変化をもたらしており、特に中小企業の特例や承認手続きなどには注意が必要です。
制度の導入背景と国際的な視点
日本での義務化は2000年3月期から
目的は主に3つ
1. 国際会計基準との整合性
2. 投資家への情報開示の高度化
3. 経営実態の的確な把握
グローバル経済においては、連結決算は“当たり前”のスタンダードです。今後の日本企業の成長戦略や資本市場での信頼確保にも不可欠な制度です。
### 官公庁の会計実務担当者が学ぶうえでの注意点
公的部門の会計は「単式簿記」「現金主義」で行われることが多い一方、企業会計は「複式簿記」「発生主義」に基づいています。連結決算を学ぶ上で、以下のポイントに注意すると理解が深まります。
1. 会計原則の違いを理解する
例:企業は将来の収益・費用も発生主義で計上、公的部門は現金の収支ベースで処理される。
2. 会計用語の使われ方が異なることに注意
「支出」と「費用」など、似ていても異なる意味を持つ言葉が多数あります。
3. 組織の構造の違いを認識する
企業では株主、取締役会、子会社などの明確な支配構造が存在するため、連結会計が重要視される背景がある。
4. 財務情報の開示スタイルの違い
企業会計は外部の投資家や金融機関に対して開示を行うため、透明性や正確性が強く求められます。
このように、企業会計、特に連結決算を理解することは、官民を問わず、財務を通じた組織運営への理解を深める重要なステップです。
最後に
連結決算は、単なる会計手法の一つではなく、企業グループの経営実態を最もリアルに映し出す鏡とも言える存在です。制度の背景や仕組みをしっかり理解することで、企業分析・財務理解・投資判断など、あらゆる面で応用可能な基礎力が身につきます。
この連結決算の入門ガイドが、実務担当者の一助となれば幸いです。
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