官公庁の「虚礼廃止」はいつから?歴史的背景と実務対応マナー

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官公庁の「虚礼廃止」 その他
官公庁の「虚礼廃止」
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「毎年恒例の年賀状、本当に必要なのだろうか?」「お歳暮を断るのは失礼にならないか?」そんな迷いを持つ公務員や自治体関係者の方へ。現在、官公庁を中心に急速に進む「虚礼廃止(きょれいはいし)」ですが、実はこの言葉、昨日今日始まったものではありません。

その起源は昭和30年代の「新生活運動」にまで遡り、昭和48年のオイルショック、平成の公務員倫理法施行と、時代の節目ごとに形を変えながら定着してきた歴史があります。

本記事では、元公務員の視点から「虚礼廃止」の歴史的背景を深掘りし、なぜ今、DXやSDGsの観点から再び重要視されているのかを解説します。さらに、2025年の最新トレンドに対応した実務マナーや、そのまま使える「お知らせ文例」も収録。歴史を知り、迷いなく実務を行うための決定版記事をお届けします。

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官公庁における「虚礼廃止」の基礎知識

歴史を振り返る前に、まずは現代における「虚礼廃止」の定義と範囲を明確にしておきましょう。

そもそも「虚礼」とは?言葉の定義と範囲

「虚礼(きょれい)」とは、文字通り「虚しい(むなしい)儀礼」を指します。心がこもっておらず、形式だけにとらわれた挨拶や贈答の慣習のことです。

具体的には以下のものが対象となります。

  • 年賀状:儀礼的に大量送付される新年の挨拶
  • お中元・お歳暮:夏冬の恒例的な贈答品
  • 暑中見舞い・残暑見舞い:形式的な季節の便り

これらを「廃止」するという宣言は、相手に対する敬意を放棄するものではありません。「形骸化した形式を排し、実質的な信頼関係や業務の質を重視する」という、組織としての合理化の決意表明と捉えるべきです。

官公庁の「虚礼廃止」
官公庁の「虚礼廃止」

「年賀状じまい」だけではない?現代における広義の虚礼廃止

かつての虚礼廃止は、主にお歳暮や年賀状といった「物品・書面」に限られていました。しかし、現代ではその範囲がさらに広がっています。

例えば、年始の「名刺交換会」の中止や、来庁者への「湯茶提供」の廃止、さらには会議における過剰な「おもてなし」の見直しなども、広義の虚礼廃止(業務効率化)の一環として捉えられています。

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「虚礼廃止」の歴史的変遷 ~いつから始まったのか~

では、この動きは一体いつから始まったのでしょうか。日本の社会史を振り返ると、いくつかの明確な転換点(ターニングポイント)が見えてきます。

【昭和30年代】戦後の「新生活運動」と冠婚葬祭の簡素化

虚礼廃止の源流の一つと言えるのが、戦後の昭和30年代から全国的に展開された「新生活運動」です。

当時の日本は、戦後の復興から高度経済成長へと向かう過渡期にありましたが、地方では依然として旧来の因習や、派手な冠婚葬祭による経済的負担が庶民の生活を圧迫していました。

そこで、生活改善のために「冠婚葬祭の簡素化」や「香典・祝儀の適正化」を提唱する運動が行政主導で起こりました。群馬県や栃木県などの北関東を中心に、「虚礼を廃し、生活を合理化しよう」というスローガンが掲げられ、これが「虚礼廃止」という概念が一般に広まる最初のきっかけとなりました。

【昭和48年】オイルショックが決定打に。「自粛」と資源節約の波

官公庁や企業において「虚礼廃止」という言葉が爆発的に普及したのは、昭和48年(1973年)の「オイルショック」が最大の契機です。

トイレットペーパー騒動に象徴される物資不足と原油価格の高騰により、日本経済は混乱に陥りました。政府は「省エネルギー」「資源節約」を国民に呼びかけ、企業も交際費の削減を余儀なくされました。

この時、「資源の節約」と「自粛ムード」が重なり、「紙資源を使う年賀状や、過度な贈答(お歳暮等)を自粛しよう」という動きが全国一斉に広まりました。当時の新聞やニュースでも「虚礼廃止」の文字が踊り、多くの自治体や企業がこれに追随しました。

つまり、現代の虚礼廃止は、この時の「非常時の対応」が、合理的なビジネス慣習として定着・進化したものと言えます。

【平成12年】公務員倫理法の施行とコンプライアンスの確立

平成に入ると、バブル崩壊後の不況に加え、公務員を巡る汚職や接待問題がクローズアップされるようになりました。これを受け、平成12年(2000年)に施行されたのが「国家公務員倫理法」です。

この法律により、利害関係者からの贈答や接待が厳格に禁止されました。それまでは「慣習だから」と黙認されていたお中元やお歳暮の受け取りが、明確な「法令違反」となったのです。

これ以降、官公庁における虚礼廃止は、単なるマナーや節約の問題ではなく、「コンプライアンス(法令遵守)」という義務的な側面を持つようになりました。

【令和】DXとSDGsが後押しする「儀礼」から「実利」への転換

そして現在、令和の時代において虚礼廃止を後押ししているのが、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」と「SDGs(持続可能な開発目標)」です。

「働き方改革」による長時間労働の是正が進む中、年末の繁忙期に年賀状作成というアナログ作業を行うことは、業務効率化の観点から非合理的と見なされるようになりました。また、環境保護(ペーパーレス化)の意識の高まりも、この流れを決定的なものにしています。

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なぜ今、再び虚礼廃止が加速しているのか?

歴史的背景を踏まえた上で、2025年の現在、なぜこれほどまでに虚礼廃止が加速しているのか、その現代的な理由を整理します。

デジタル化(DX)による業務効率化の至上命令

行政のデジタル化は待ったなしの課題です。AIやRPA(ロボットによる業務自動化)が導入される中で、職員が手作業で宛名を確認し、印刷し、一言添えるというプロセスは、もはや時代遅れとなりつつあります。

メールやチャット、あるいはSNSといったデジタルツールでの挨拶へ移行することは、通信コストの削減だけでなく、双方向のコミュニケーションを円滑にする上でも有効です。

SDGs(持続可能な開発目標)と環境配慮への責任

「つくる責任 つかう責任」。SDGsの目標12にあるように、大量の紙資源を消費し、配送によるCO2排出を伴う物理的な挨拶状の送付は、環境負荷の観点から見直しが迫られています。

「当市はSDGsの観点から年賀状を廃止します」という宣言は、自治体の環境政策への姿勢を市民に示すアピールとしても機能しています。

経費削減と税金の適正使用に対する市民意識の高まり

物価高騰が続く中、税金の使い道に対する市民の目はかつてなく厳しくなっています。

「儀礼的な挨拶のために、年間数十万円、数百万円の税金(送料や印刷代、人件費)を使う必要があるのか?」という問いに対し、明確な答えを出せる自治体は少ないでしょう。

実質的な住民サービスへ予算を振り向けるためにも、虚礼廃止は避けて通れない選択なのです。

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公務員が絶対に知っておくべき「贈答禁止」のルール

ここでは、実務担当者が特に注意すべき法令上のルールについて解説します。

国家公務員倫理法が定める「利害関係者」との境界線

公務員がお中元やお歳暮を受け取ることは、相手が「利害関係者」である場合、国家公務員倫理規程で原則禁止されています。

  • 利害関係者とは:許認可の申請者、補助金の受給者、立入検査を受ける対象者、契約業者など。
  • 禁止事項:金銭、物品、不動産の贈与を受けること。

「お世話になったから」という個人的な感情であっても、公務員という立場である以上、受け取ることはリスクそのものです。「虚礼廃止を宣言している」という事実は、こうした贈答を断る際の強力な盾となります。

政治家の「挨拶状禁止」と公職選挙法の関係

公務員組織とは別に、市長や議員などの「政治家」に関しては、公職選挙法によって挨拶状の送付が厳しく制限されています。

政治家が選挙区内の有権者に年賀状や暑中見舞い状を出すことは、答礼(相手から来たものに対する返事)かつ自筆の場合を除き、禁止されています。

自治体全体で虚礼廃止が進む背景には、こうした首長(市長など)自身の法的制約が、職員を含めた組織全体の文化に波及している側面もあります。

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【実務編】スマートに断るための対応マナーと文例集

最後に、実際に虚礼廃止を運用する際に役立つ具体的なマナーと文例を紹介します。

物品が届いてしまった場合の正しい返送手順

虚礼廃止を公表していても、お歳暮等が届くことはあります。その際は以下の手順で対応します。

  1. 原則受け取らない:配送業者へ「受取拒否」を伝えるのがベストです。
  2. 開封せずに返送:受け取ってしまった場合は、決して開封せず、さらに上から包装するなどして返送します。開封すると「消費する意思があった」とみなされるリスクがあります。
  3. 「通知状」を送付:お礼状ではなく、「公務員倫理規定(または虚礼廃止の方針)により受け取れない」旨を丁寧に記した手紙を別途送ります。

【文例】ホームページ・広報誌用のお知らせ

【重要】年賀状および季節のご挨拶の廃止について

平素は市政運営に多大なるご協力を賜り、厚く御礼申し上げます。

さて、当市におきましては、近年の社会情勢の変化、環境配慮(SDGs・ペーパーレス化)、および行政改革の一環として、令和〇年以降、すべてのお取引先様および関係機関に対し、年賀状をはじめとする季節のご挨拶状(お中元・お歳暮を含む)の送付を控えさせていただくことといたしました。

昭和の時代より長きにわたり続いてまいりました慣習ではございますが、今後は形式的な儀礼を省略し、より実質的な市民サービスの向上と信頼関係の構築に努めてまいる所存です。

つきましては、皆様におかれましても、当方へのお心遣いはご無用にてご理解賜りたく存じます。何卒ご理解とご協力をお願い申し上げます。

【文例】取引先へのメール通知用

件名:【お知らせ】季節のご挨拶(年賀状等)の廃止について

〇〇株式会社

〇〇部 〇〇様

いつもお世話になっております。〇〇省〇〇課の〇〇です。

平素は当課の業務にご理解をいただき、誠にありがとうございます。

本日は、当組織における儀礼の見直しについてご連絡いたしました。

当組織では、昨今の虚礼廃止の潮流や環境負荷低減の観点から、本年度より、すべてのお取引先様に対し、年賀状やお中元・お歳暮によるご挨拶を控えさせていただくこととなりました。

つきましては、貴社におかれましても、今後は弊社へのお気遣いはなさいませんようお願い申し上げます。

メールにて恐縮ではございますが、長年の慣習を見直すことへのご理解をいただけますと幸いです。今後とも変わらぬお付き合いのほど、よろしくお願いいたします。

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まとめ:歴史を知れば「断る勇気」が持てる

虚礼廃止は、単なる「最近の流行り」ではありません。

戦後の生活改善運動から始まり、オイルショックでの資源節約、そして平成の公務員倫理確立を経て、令和のDX・SDGsへと繋がる、日本の社会変化を映し出す鏡のような取り組みです。

この歴史的背景を知っていれば、年賀状やお歳暮を断ることは「失礼」ではなく、「時代の要請に応じた正しい公務員の姿」であることが理解できるはずです。

形式にとらわれない、真に価値のある関係性を築くために、自信を持って虚礼廃止に取り組んでください。

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