面倒な「年末調整」こそ期限までに書類を集める、効果的な説得方法

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給与謝金
2020年9月 忍野八海
給与謝金

年末調整の書類を提出してくれない人への説得方法です。給与事務担当者にとって、年に一度の悩みの種でもあります。給与の支払処理には期限があるのに、年末調整の書類を提出してくれない、「もう間に合わない」と板挟みになります。

 

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年末調整の書類が集まらない悩み

 

給与関係事務を担当していると、毎年、年末調整手続きが必要になります。所得税を確定させるための重要な手続きなのですが、年一回のため、処理方法を忘れてしまったり、所得税法の改正などで処理方法が変わったりして、かなり大変です。

 

年末調整は、その年の最後の給与を支払うときに実施します。通常は12月の給与あるいはボーナスを支払うときです。職場によって支給日が異なりますが、12月初旬には年末調整手続きを完了させることになります。

 

所得税は、年収や家族構成などに基づいて金額が決定します。そのため、ひとりひとり所得税が変わります。各人から提出された証明書類を確認しながら年末調整手続きを行います。例えば、提出期限を11月中旬に設定して、年末調整に必要な書類を提出してもらいます。書類の提出依頼は、2週間ほど前に一斉メールなどで行います。しかし、給与事務経験者以外は、(事務処理の大変さを理解してないので)、わりと「面倒な書類手続き」と感じてしまいます。つい提出するのを忘れてしまう、優先度の低い書類になってしまうのです。

 

「面倒」と思ってしまう原因は、複雑すぎるからです。扶養控除等申告書などの提出書類が、わかりづらいのです。専門用語が多くて、説明文の文字が小さくて、何が書いてあるのか、良くわからないです。わかりづらい書類は、「面倒な書類」になってしまいます。

 

さらに生命保険料控除などの証明書類が必要です。1ヵ月ほど前(10月くらい)に自宅へ郵送されているので、家の中を探さなくてはいけません。年に一度の書類なので、どこに置いたか忘れてしまうのです。

 

書き方もわからない、証明書類もどこにあるかわからない、という状況であれば、「面倒な書類」になることは間違いありません。年末調整は、書類提出が億劫になり、つい提出期限に遅れてしまうのです。

 

給与以外に副業などがあり、自分で確定申告するため、「年末調整は必要ない」と思ってる人さえいます。(扶養控除等申告書の提出が義務なので、年末調整が必要なのですが・・参考に所得税法を下記に記載してます。)

 

毎月の給与を支払うときは、振込用のデータを銀行へ提出しなくてはなりません。従業員全員分のデータをまとめて提出する必要があります。データがひとり分だけ完成しなければ、物理的に提出できません。つまり、誰かの年末調整関係書類の提出が遅れると、給与の支払処理全体がストップしてしまうのです。そのため年末調整の書類が提出されていない人に対して、すぐに提出するよう催促するわけです。しかし、「面倒な書類」のために協力してくれないことが多いのです。

 

通常、給与の支払いについては、処理期限が決まっています。銀行に対して4営業日前までに振込データを提出しなければ、全員分の給与が支払われなくなってしまいます。給与の支払いが止まってしまえば、それこそ大きなトラブルになります。ローンの返済ができなくなり、生活に支障が出ることもあります。

給与の支払い期限が決まっているのに、年末調整の書類が集まらない。

給与事務担当者は、板挟み状態の中で、やきもきしながら処理を行うことになります。

 

どのように説明(説得)すれば、年末調整関係の書類を重要だと理解し、すぐに提出してくれるようになるか、悩むことになります。

 

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年末調整しないと、どうなる?

 

「所得税を納める」ことは、憲法で定められている「国民の重要な義務」です。故意に所得税を払わなければ、罰せられることになります。

憲法
第三十条 国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。

 

所得税を支払うためには、原則として確定申告が必要です。しかし会社員の場合は、確定申告の代わりに、職場の給与事務担当者が「年末調整」を行ってくれます。会社員など多くの人は、「年末調整」を行うことで、確定申告が免除されているわけです。

 

では、「面倒だから」という理由で、年末調整の関係書類を提出しなかったら、どうなるでしょうか?

 

もちろん自分で確定申告するのであれば、所得税をきちんと確定させることができるので問題ありません。しかし、確定申告もせず、年末調整の関係書類も提出しない、このような場合どうなるのでしょう。

 

実は、想像以上に、かなり不利な状況に陥ります。

 

主に2つのデメリットになります。ひとつは「実際に損する」ことになります。ふたつめは、税金や社会保険に関する貴重な情報を得られなくなります。

 

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年末調整を忘れると、「数万円、損するかも」

 

最初のデメリットです。年末調整をしないと、一般的に、「かなり損する」ことになります。

 

毎月の給与から天引きされている所得税は、多めに取られていることが多く、さらに、年末調整のデータが住民税に連動しているからです。年末調整は、所得税と住民税、2つの税金の基礎データになります。

 

年末調整によって所得税を確定すると、所得税の還付を受ける(所得税が戻ってくる)人が多いです。これは、年末調整を行うことで課税所得を圧縮(生命保険料控除などの各種控除を適用)できるからです。各種の控除によって課税所得を少なくできれば、所得税だけでなく、住民税も少なくできます。

 

年末調整の結果は、税務署だけでなく市区町村へもデータが通知されます。(「給与支払報告書」を市区町村あてに提出することが義務付けられています。下記に根拠法令を記載してます。)所得金額だけでなく扶養家族や生命保険料の金額など、住民税の課税所得を少なくするためのデータ(控除項目)が通知されます。つまり所得税と住民税は、データが連携しています。

 

もし、年末調整を「面倒くさい」と感じ、課税所得を圧縮(控除)するための申告をサボってしまうと、所得税と住民税、二つの税金が多く取られることになってしまいます。

 

次のデメリットとして、給与事務担当者に嫌われます。

 

「好き、嫌い」は、仕事には関係ないと思っていると、とんでもなく甘いです。年末調整などの給与事務に協力しない人に対しては、給与事務担当者としても、当然、積極的に協力しません。仕事上の最低限のことしか対応しません。

 

もし、年末調整に協力しない人から何か依頼されたとしても、後回しにします。当然ながら、年末調整に協力してくれている人の依頼を優先します。また、給与に関係する重要なアドバイス(不利にならないための各種の情報)も受けられなくなるでしょう。この傾向は、職場の人数が多いほど顕著になります。(見た目には誰にもわからない部分なので、ダメージも大きいです。)

 

現在(2020年11月)は、税金だけでなく、社会保険なども相当複雑です。法令だけでなく職場内の人事給与規則も複雑です。実際に給与事務を担当している人でないと、正確に判断することはできません。何か困ったときのアドバイスを受けられなくなります。

 

給与事務担当者の依頼に対しては、誠実に協力しないと、かなり痛い状況に陥ります。「自分の仕事よりも最優先」と位置づけることが重要です。

 

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年末調整の書類を提出しない人への説得(説明)方法

 

年末調整の関係書類を、提出期限までに提出しない人は、「面倒くさい」あるいは「もっと大事な仕事がある」と思っている人がほとんどです。年末調整を「ないがしろ」にすれば、所得税と住民税で「実際に損する」ことになり、なおかつ「給与事務担当者から嫌われる」、というデメリットを理解していないのです。

 

年末調整の重要性を理解し、自分の中で優先度を高くしていれば、必ず提出期限までに書類が集まるずです。

 

提出期限までに年末調整関係書類を提出するよう「催促する」場合のポイントは次のとおりです。

デメリットを強調する。

 

人間は本能的に、得をすることよりも、損をしない「リスクを避ける」方を優先します。

 

「年末調整の書類を提出すれば、所得税が還付され、得ですよ。」と言うよりも、「年末調整の書類を提出しないと、かなり損してしまいますよ。自分で確定申告するのは大変ですよ。」と言う方が効果的です。

 

年末調整をしないと「損をしてしまう」ことをアピールします。

(実際に、どのぐらい損をするの?と聞かれるでしょう。その時は、年末調整書類を実際に確認しないとわかりません、と答えましょう。あるいは、金額の多い人なら5万円くらい、ハワイ旅行くらいですと答えましょう。

 

また、「職場で年末調整しないと、後で自分で確定申告することになります、かなり大変ですよ」と説明しましょう。(実際には、確定申告は簡単です。税務署へ行けば、親切に教えてくれますし。)

 

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年末調整関係の根拠法令

 

年末調整が義務になっているという根拠法令です。個人ではなく、給与の支払者(職場)の義務として明文化されています。

所得税法

第百九十条
給与所得者の扶養控除等申告書を提出した居住者で、(略)給与等の金額が二千万円以下であるものに対し、その提出の際に経由した給与等の支払者がその年最後に給与等の支払をする場合(略)において、(略)税額に比し過不足があるときは、(略)翌月十日までに国に納付しなければならない。

 

扶養控除等申告書の提出自体は、法律で義務になっています。通常、年末調整のときに(翌年分を)提出します。新規採用のときは採用時に提出してもらいます。

第百九十四条
国内において給与等の支払を受ける居住者は、(略 扶養控除等申告書を、給与の支払者を経由して)所轄税務署長に提出しなければならない。

 

 

住民税の計算に必要なデータ(年末調整のデータと同じ)を通知する根拠法令です。

地方税法

第三百十七条の六
1月1日現在において給与の支払をする者(略)は、同月31日までに、(略)前年中の給与所得の金額その他必要な事項を(略)同月1日現在における住所所在の市町村別に作成された給与支払報告書に記載し、これを当該市町村の長に提出しなければならない。


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