「同一労働同一賃金」の「不合理」な待遇格差、最高裁の判決から

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基礎知識
2020年9月 忍野八海
基礎知識

「同一労働同一賃金」の待遇格差、「不合理」についての解説です。2020(令和2)年10月、最高裁判所の判決がありました。正社員と非正社員の待遇格差について、旧労働契約法20条の「不合理」と認められるのか、判決がありました。わかりやすく解説します。

 

今回の記事は、官公庁の会計実務とは直接関係しない「人事・労務系」のテーマです。しかし労働者の雇用に関係する法令等の情報を持つことで、より深く会計実務を理解できます。特に役務契約や派遣契約などでは、労働契約に関する知識が必要になります。2020(令和2)年10月、「待遇格差」に関する重要な最高裁判所の判決がありましたので、わかりやすく解説します。なお、私は法律家ではありません。全くの「素人としての考え方」に基づく記事です。

 

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「同一労働同一賃金」とは

 

最初に、「同一労働同一賃金」について確認します。

 

「同一労働同一賃金」は、正社員(雇用期間の定めのない労働者)と、非正社員(有期雇用、派遣社員、アルバイト、パートなど)間の「不公平な待遇格差」をなくすことを目的にしています。

 

「同じ仕事をしているのに、給料が安い、待遇に差がある。」などの格差を是正することを目的にしています。根拠となる法律は、「パートタイム・有期雇用労働法」(短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律)です。この法律は、「パートタイム労働法」(短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律)が改正されたものです。

 

以前は、労働契約法第20条で、「待遇格差を禁止」していましたが、その内容が「パートタイム・有期雇用労働法」へ移行されました。参考に、労働契約法第二十条の改正前(削除される前)の条文を掲載します。

労働契約法

第二十条
有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。

 

この労働契約法第二十条が削除され、パートタイム・有期雇用労働法へ移行されました。

 

パートタイム・有期雇用労働法(短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律)

第八条
事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間において、当該短時間・有期雇用労働者及び通常の労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない。

 

つまり「待遇格差」を禁止する法律は、従来は「労働契約法 第二十条」、2020年4月1日からは、「パートタイム・有期雇用労働法 第八条」です。

 

なお、「パートタイム・有期雇用労働法」は、2015(平成27)年4月1日、「パートタイム労働法」から改正された法律です。パートタイムだけでなく、有期雇用の社員も対象に加え、法律の名称も「パートタイム・有期雇用労働法」に変わりました。大企業は2020(令和2)年4月1日から適用です。中小企業は2021(令和3)年4月1日から適用されます。このあたりの経緯が複雑です。

 

大企業、中小企業の判断は、資本金の額と従業員の人数で区分します。例えば小売業であれば、資本金5千万円以下、または従業員50人以下です。業種により基準が変わります。詳細は厚生労働省の下記資料です。

 

https://www.mhlw.go.jp/content/000596564.pdf

 

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同一労働同一賃金、「不合理」についての最高裁判決

 

2020(令和2)年10月13日と15日は、同一労働同一賃金の事件に対して、法律が施行された後、初めて判決のあった日です。10月13日の判決は、使用者側(会社側)の主張を認めた判決でした。原告側の労働者にとっては納得できない判決かもしれません。一方、10月15日の判決は、労働者側に寄り添う判決でした。

 

それぞれの判決を読むと、いずれも、「同一労働同一賃金の判断は、ケースバイケースで考えるべきであり、統一的には判断できない」ことを、最高裁が明確に示したものでした。

 

管理人は、法律の専門家ではありません。普通の人(法律の知識が少ない、並みの人)が、どう感じたか、素人としての解説です。判決文を、私なりに、わかりやすくまとめました。

 

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大阪医科大学事件 2020(令和2)年10月13日判決

令和元年(受)第1055号,第1056号 地位確認等請求事件
令和2年10月13日 第三小法廷判決

 

最高裁判所 判事事項(事実認定内容)

「無期契約労働者に対して賞与を支給する一方で有期契約労働者に対してこれを支給しないという労働条件の相違が労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条にいう不合理と認められるものに当たらないとされた事例」

 

判決の概要

(1) 賞与について

正職員に対する賞与は、算定期間における労務の対価の後払いや一律の功労報償,将来の労働意欲の向上等の趣旨を含むもの。

正職員の基本給については,勤務成績を踏まえ勤務年数に応じて昇給するものとされており,勤続年数に伴う職務遂行能力の向上に応じた職能給の性格を有するものといえる上,おおむね,業務の内容の難度や責任の程度が高く,人材の育成や活用を目的とした人事異動が行われていたものである。

賞与の支給は、正職員としての職務を遂行し得る人材の確保やその定着を図ることが目的。

原告の職務内容は、相当に軽易であること。

正職員の職務内容は、原告と共通する部分もあるが、さらに、学内の英文学術誌の編集事務等,病理解剖に関する遺族等への対応や部門間の連携を要する業務又は毒劇物等の試薬の管理業務等にも従事する必要があった。

 

両者の職務の内容に一定の相違があった、正職員は人事異動の可能性もあった。
また、アルバイト職員については,契約職員及び正職員へ段階的に職種を変更するための試験による登用制度が設けられていた。

 

正職員と原告との間に賞与に係る労働条件の相違があることは,不合理であるとまで評価することができるものとはいえない。

 

以上によれば,本件大学の正職員に対して賞与を支給する一方で,アルバイト職員である原告に対してこれを支給しないという労働条件の相違は,労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たらないと解するのが相当である。

 

(2)私傷病による欠勤中の賃金

正職員とアルバイト職員には、職務の内容が相違しているなどの事情に加えて,アルバイト職員は、契約期間を1年以内とし,更新される場合はあるものの,長期雇用を前提とした勤務を予定しているものとはいい難いことにも照らせば,教室事務員であるアルバイト職員は、上記のように雇用を維持し確保することを前提とする制度の趣旨が直ちに妥当するものとはいえない。

 

また,原告は,勤務開始後2年余りで欠勤扱いとなり,欠勤期間を含む在籍期間も3年余りにとどまり,その勤続期間が相当の長期間に及んでいたとはいい難く,原告の有期労働契約が当然に更新され契約期間が継続する状況にあったことをうかがわせる事情も見当たらない。したがって,正職員と原告との間に私傷病による欠勤中の賃金に係る労働条件の相違があることは,不合理であると評価することができるものとはいえない。

 

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メトロコマース事件 2020(令和2)年10月13日判決

令和元年(受)第1190号,第1191号 損害賠償等請求事件
令和2年10月13日 第三小法廷判決

 

最高裁判所 判事事項(事実認定内容)

「無期契約労働者に対して退職金を支給する一方で有期契約労働者に対してこれを支給しないという労働条件の相違が労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条にいう不合理と認められるものに当たらないとされた事例」

 

判決の概要

「東京メトロ」の駅構内の売店における販売業務に従事していた第1審原告退職金等に相違があった。正社員は,無期労働契約を締結した労働者であり,定年は65歳。

 

労働契約法20条は,有期契約労働者と無期契約労働者の労働条件の格差が問題となっていたこと等を踏まえ,有期契約労働者の公正な処遇を図るため,その労働条件につき,期間の定めがあることにより不合理なものとすることを禁止したものであり,両者の間の労働条件の相違が退職金の支給に係るものであったとしても,それが同条にいう不合理と認められるものに当たる場合はあり得るものと考えられる。

 

退職金は,上記の職務遂行能力や責任の程度等を踏まえた労務の対価の後払いや継続的な勤務等に対する功労報償等の複合的な性質を有するものであり,第1審被告は,正社員としての職務を遂行し得る人材の確保やその定着を図るなどの目的から,様々な部署等で継続的に就労することが期待される正社員に対し退職金を支給することとしたものといえる。

 

そして,第1審原告らにより比較の対象とされた売店業務に従事する正社員と契約社員Bである第1審原告らの労働契約法20条所定の「業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度」(以下「職務の内容」という。)をみると,両者の業務の内容はおおむね共通するものの,正社員は,販売員が固定されている売店において休暇や欠勤で不在の販売員に代わって早番や遅番の業務を行う代務業務を担当していたほか,複数の売店を統括し,売上向上のための指導,改善業務等の売店業務のサポートやトラブル処理,商品補充に関する業務等を行うエリアマネージャー業務に従事することがあったのに対し,契約社員Bは,売店業務に専従していたものであり,両者の職務の内容に一定の相違があったことは否定できない。

 

売店業務に従事する正社員については,業務の必要により配置転換等を命ぜられる現実の可能性があり,正当な理由なく,これを拒否することはできなかったのに対し,契約社員Bは,業務の場所の変更を命ぜられることはあっても,業務の内容に変更はなく,配置転換等を命ぜられることはなかったものであり,両者の職務の内容及び配置の変更の範囲(以下「変更の範囲」という。)にも一定の相違があったことが否定できない。

 

また,第1審被告は,契約社員A及び正社員へ段階的に職種を変更するための開かれた試験による登用制度を設け,相当数の契約社員Bや契約社員Aをそれぞれ契約社員Aや正社員に登用していたものである。これらの事情については,第1審原告らと売店業務に従事する正社員との労働条件の相違が不合理と認められるものであるか否かを判断するに当たり,労働契約法20条所定の「その他の事情」(以下,職務の内容及び変更の範囲と併せて「職務の内容等」という。)として考慮するのが相当である。

 

以上によれば,売店業務に従事する正社員に対して退職金を支給する一方で,契約社員Bである第1審原告らに対してこれを支給しないという労働条件の相違は,労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たらないと解するのが相当である。

 

ただし、裁判官の中には「不合理である」との反対意見があった。

 

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日本郵便事件 2020(令和2)年10月15日判決

令和元年(受)第794号,第795号 地位確認等請求事件
令和2年10月15日 第一小法廷判決

 

最高裁判所 判事事項(事実認定内容)

「無期契約労働者に対して年末年始勤務手当,年始期間の勤務に対する祝日給及び扶養手当を支給する一方で有期契約労働者に対してこれらを支給しないという労働条件の相違がそれぞれ労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条にいう不合理と認められるものに当たるとされた事例」

 

判決の概要

正社員と契約社員では、年末年始勤務手当,祝日給,扶養手当,夏期休暇及び冬期休暇(以下「夏期冬期休暇」という。)等に相違があったことは労働契約法20条に違反するとの訴えがあった裁判。

 

(1) 年末年始勤務手当について

郵便の業務を担当する正社員と本件契約社員との間に労働契約法20条所定の職務の内容や当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情につき相応の相違があること等を考慮しても,両者の間に年末年始勤務手当に係る労働条件の相違があることは,不合理であると評価することができるものといえる。

 

したがって,郵便の業務を担当する正社員に対して年末年始勤務手当を支給する一方で,本件契約社員に対してこれを支給しないという労働条件の相違は,労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たると解するのが相当である。

 

(2) 年始期間の勤務に対する祝日給について

最繁忙期における労働力の確保の観点から,本件契約社員に対して上記特別休暇を付与しないこと自体には理由があるということはできるものの,年始期間における勤務の代償として祝日給を支給する趣旨は,本件契約社員にも妥当するというべきである。

 

郵便の業務を担当する正社員と本件契約社員との間に労働契約法20条所定の職務の内容や当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情につき相応の相違があること等を考慮しても,上記祝日給を正社員に支給する一方で本件契約社員にはこれに対応する祝日割増賃金を支給しないという労働条件の相違があることは,不合理であると評価することができるものといえる。

 

したがって,郵便の業務を担当する正社員に対して年始期間の勤務に対する祝日給を支給する一方で,本件契約社員に対してこれに対応する祝日割増賃金を支給しないという労働条件の相違は,労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たると解するのが相当である。

 

郵便の業務を担当する正社員に対して扶養手当が支給されているのは,上記正社員が長期にわたり継続して勤務することが期待されることから,その生活保障や福利厚生を図り,扶養親族のある者の生活設計等を容易にさせることを通じて,その継続的な雇用を確保するという目的によるものと考えられる。このように,継続的な勤務が見込まれる労働者に扶養手当を支給するものとすることは,使用者の経営判断として尊重し得るものと解される。

 

本件契約社員についても,扶養親族があり,かつ,相応に継続的な勤務が見込まれるのであれば,扶養手当を支給することとした趣旨は妥当するというべきである。

 

郵便の業務を担当する正社員に対して扶養手当を支給する一方で,本件契約社員に対してこれを支給しないという労働条件の相違は,労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たると解するのが相当である。

 

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「労働契約法20条にいう不合理」とは

 

最高裁の判決を見ると、「ケースバイケースで判断する」ということです。使用者側(会社側)、労働者側、双方の事情によって判決が変わることになります。

 

ただ、はっきりしていることは、「同一労働同一賃金」は、現在、実際に行っている仕事だけを捉えて判断するものではないということです。責任の度合や、人事制度、労働者が置かれている立場(バックグラウンド、背景)によって、「不合理」の判断が変わるということです。

 

ある一面だけを捉えるのではなく、総合的に判断することになります。

 

なかなかむずかしいです。


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